ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第282話【女神再々降臨】

周りの景色が灰色に染まり上がると時間が静止する。

俺が周囲を見回せば、自分の胸を抱き寄せるようにしているバーバラも止まったままだった。

森も草木も止まり、風すら止んでいる。

太陽の光すら灰色に染まり上がっていたが、周囲は明るく照らしだされていた。

すると魔法使いの塔の頭上から神々しい光が輝いた。

女神降臨の前ぶれだ。

「出て来るか、糞女神が……」

俺は異次元宝物庫を開けて、ガイアを封印していたショートブレード+1を取り出そうとした。

だが──。

異次元宝物庫の扉は開いた。

しかし、いつものようにアイテムが出てこない。

いつもならば異次元宝物庫内の亡者が念じただけで願ったアイテムを差し出してくれるのにだ。

あれれ……?

俺が異次元宝物庫内を覗き込めば、中の亡者も動きが止まっていた。

この空間は、ドラゴンのグラブル以上の魔力で時間を止めてやがるのか……。

流石は神業ってことかよ……。

俺が神封じの短剣を出せずに戸惑っていると、天に輝く眩い光から階段が伸び降りて来る。

こうなったら今回は大人しく糞女神にボーナスの願いを叶えて貰おうか。

次は時間が止まる前に神封じの短剣を出して置こうっと。

「はぁ~~い、お久しぶり~♡」

出やがったな糞女神が……。

俺が光の階段の先を見上げれば、あの糞女神が悠々と姿を表す。

「あ~、も~、またツンデレてるわね~。あ・な・た・は・さ~♡」

うるせえよ、ボーナスタイムに来たんだろ。

だったらさっさと願いを叶えて帰りやがれ!

「もう、言われなくったって、そうしますよ~だ。私だって可愛がってた部下が謀反を起こして忙しいんだからさ~」

あっ、そう言えばその部下の神様はどうなったの?

「左遷よ、左遷~。地獄寄りの片田舎の小さな支店に左遷したわ~。もう一生日陰暮らしよ、彼らはさ~」

うわ……。

神様も左遷とかあるんだ……。

出世コースを外れたのね。

可哀想にな……。

「あなたも詰まらないことを企んでないで、ちゃんと第二のライフをエンジョイしないと駄目よ~♡」

むむ……。

もしかして、バレてるのか……。

「そりゃあ当然よ。謀反が合ってから、警戒と監視を強化しちゃってるもの~。お陰で最近はちゃんと仕事に励んじゃって、録画したドラマのストックが増えて大変なのよ~。まあ、その内に有給を使ってぱぱっと観ちゃうけれどね~♡」

呑気な糞女神だな……。

「もぉ~。クソクソばっかり言ってると、ボーナスをキャンセルして帰っちゃうわよ~。プンプン」

あー、ごめんなさい。

ボーナスだけはくださいな……。

「じゃあ早く願いを言ってね。まだ二回目のボーナスだから、派手なのは駄目よ~♡」

それじゃあ、俺の左腕を新しく生やしてくれ、たのんます。

「おお、今回はちゃんとお願いできましたわね、良い心掛けね~。女神ちゃん、嬉しいな~♡」

何が女神ちゃんだ……。

いい歳して、ぶりっ子をぶっこいてるなよ。

「もう、乙女に歳のことを言っちゃあ駄目よ。殺すわよ♡」

うわ、殺気が凄い!?

まあ、兎に角だ。

俺の左腕を、新しく生やしてくれ!

それで、とっとと帰って録画したドラマを観賞しろよ。

「分かったわ。じゃあ新しく左腕を差し上げますわ~。そしてあなたの願い通り、早く帰って録画したドラマを観賞しますわん♡」

ドラマ観賞までは願いじゃあないからよ……。

ぬぬぬぬぬぬ!!

熱い!?

突然ながら俺の左肩が熱く輝いた。

すると眩い光と共に左腕が再生して行く。

光輝く腕が生え伸びると、眩さが消えて、俺の新たな左腕が現れる。

それは、普通の腕ではなかった。

なんじゃあ、こりゃあ!?

「新しい腕よ~♡」

鉄の腕じゃあねえか!!

「ちょっとサービスしすぎました~。てへぺろ♡」

肩から鋼の皮膚だった。

動くな……。

ごっついが、肘も肩も軽々動く。

指の一つ一つスムーズに動くぞ。

それに重さは感じられない。

腕一本丸々が鋼で包まれているのに重さは無かった。

それに感触も確かに有る。

プレートのガントレットを装備しているように見えるが、まるで何も着けていないかのような感覚だった。

これ、いいな……。

スゲー、戦闘では役に立ちそうだぞ……。

防御力高そうだわ~。

「喜んでくれたかな~♡」

う、うん……。

「今後は素直に私を崇めなさ~い。そうしたら、ご褒美はすっごくなるわよ~♡」

ちくしょう……。

崇めたくないが、すっごいボーナスは欲しいな……。

「じゃあ、私は帰るからね~。バイバイ~♡」

踵を返した糞女神が光の扉に引き返して行くと、眩かった世界が収まり灰色の景色に色彩が戻って行く。

「ふぅ~。帰りやがったか……」

俺は新しく頂いた鋼の左腕で額の汗を拭った。

「硬いっ!?」

うわ、やっぱり鉄だわ……。

感触は有るがゴツゴツしてるわな。

「ア、アスラン……。その腕は……?」

バーバラが、新しくなった俺の腕を見て驚いていた。

「ああ、新しく生えたんだ。凄いだろ」

俺は自慢気に左腕を見せた。

「人間って、鉄の腕が生えるのか……」

「ああ、そんなヤツだっているんだよ」

「人間って凄いわね……」

あー、信じ込んでるよ。

本当に昆虫たちって、素直だな……。

こうして壁の中の冒険は終わった。

これから後処理が忙しくなるぞ。


【つづく】

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