ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第184話【メトロ・ガイスト】

部屋に入って来た老紳士は滑らかな口調で言った。

「おはようございます、ワイズマン殿」

「やあ、おはよう、メトロ・ガイストさん」

えっ、何、その名前?

直訳すると『地下鉄の幽霊』なのかな?

この世界に地下鉄ってあるんかい?

「メトロ・ガイストさん、仕事の話の前に、紹介したい方がいましてな」

「その若者ですなぁ」

「はい、そうです」

ワイズマンが俺を紹介する。

「私のベストフレンドのアスランくんだ」

ベストフレンドは余計だ……。

マジでキモイわ……。

「ほほぅ~」

ワイズマンが俺を紹介すると、メトロ・ガイストが口髭を撫でながらこちらに近付いて来た。

「あなたが噂になっているアスラン殿ですかぁ」

「噂になっている?」

俺は首を傾げた。

なんか変な噂が立っているのか?

ワイズマンとの変な噂じゃあないだろうな……。

メトロ・ガイストが述べる。

「ええ、前君主の依頼で閉鎖ダンジョンを攻略したっていう冒険者が、ソドムタウンのソロ冒険者アスランだとか。まあ、噂ですがね」

「あ~……」

どうしようかな。

否定したほうが良いのかな。

それとも自慢してもいいのかな。

確かこの依頼は秘密だったような気がするぞ。

それに閉鎖ダンジョンって、年に何日しか解放されないんじゃあなかったっけ?

ここはグッと我慢して、真実は伏せておこうか。

何せベルセルクの爺さんは死んだことになっているしさ。

変なトラブルに巻き込まれたくないからな。

「まあ、噂だ。信じるも信じないも、あなた次第だぜ」

これで誤魔化せたかな……。

「まあ、いいでしょう。ソドムタウンの冒険者に閉鎖ダンジョンが攻略されたと知れたら、どんな騒ぎに成るか分からないですからね。ここは噂ってことにしておきましょうか」

「うむ、助かる」

このギルマスは、なかなか空気が読めるヤツで助かるな。

「では、ワイズマン殿、仕事の話に入りますか」

「はい、分かりました、メトロ・ガイストさん」

その後、二人は仕事の話をしばらく続けた。

荷物の輸送がどうのとか、人件費がどうとかの話だった。

どうやら荷物の輸送中に冒険者を警護に付けたいとの話らしい。

まあ、ちょくちょく有る話だな。

冒険者が旅商人の警護に付くって依頼はさ。

でも、二人の話を聞くからに、大規模の輸送らしい。

コンボイが大きく、相当の人数を護衛に付けたいらしくて、話が難航してやがる。

この辺は上の人間がする難しい話だ。

末端の俺みたいなヤツが口を挟む問題ではないだろう。

まあ、ちょっとした勉強程度に黙って聞いててやるよ

そんなこんなで二人の話が終わる。

どうやらワイズマンのいいように商談は纏まったようだ。

メトロ・ガイストが「ワイズマン殿には敵いませんよ」と言って苦笑っていた。

「では、私たちは帰りますね」

そう述べたワイズマンがソファーから腰を浮かせると、メトロ・ガイストが「ちょっと待ってくれないかぁ」と止めた。

ワイズマンは腰をソファーに戻した。

「何かね、メトロ・ガイストさん?」

メトロ・ガイストは、口髭を撫でながら言う。

「すまないが、アスラン殿に仕事を頼みたいのだ。いいかな?」

「俺にか?」

「そう、あなたにだ」

何故だろう。

俺は自分の疑問を訊いてみた。

「何故に、ゴモラタウンの冒険者ギルドの長が、ソドムタウンの冒険者の小童に、仕事を依頼しなければならないのだ?」

「それはキミの実力を試して見たいのだよ」

「試す? 何故に?」

「それで噂が本当かどうかを測りたい」

「ならば断るよ」

「それこそ何故に!?」

「俺はあんたに測られる理由がないからだ。俺になんの得があるんだ」

「そうだな、得と言えば、金になる。それと信頼が買える。私に名も売れるぞ」

「金は欲しいが、その他は別に要らんがな」

「分かりました。ならば率直に口説きましょう。60000Gの報酬を払いましょう」

なに!

大金じゃんか!

それは欲しいぞ!!

まあ、冷静に……

「俺はソロ冒険者だぞ?」

「報酬は、勿論ながら独り占めでも構いませんとも」

マージーでー!!

やーりー!!

「ただし依頼を解決してもらえるならね」

冷静に、冷静に……。

ここはクールに対処しなければ。

「じゃあ、話だけでもお聞きしましょうか」

メトロ・ガイストが畏まって話し出す。

「あなたはウィンチェスターと言う人物をご存知ですか?」

「知らんな」

向こう側の世界の偉人としてなら知っている。

ウィンチェスター銃を作った金持ちで、奥さんが東京ドーム14個分の敷地に迷路のような屋敷を作ったってヤツだ。

しかし、今の俺には、この世界で、そのような名前の人物は記憶に無い。

聞き覚えの無い名前だった。

だが、メトロ・ガイストが出した名前に、ワイズマンが反応する。

「まさか、あの依頼ですか、メトロ・ガイストさん……?」

「はい、ワイズマン殿……」

答えたメトロ・ガイストが上着を脱ぎ出した。

なんで、脱ぐの?

そしてメトロ・ガイストが語り出す。

「ゴモラタウンにはウィンチェスター一家と呼ばれる大工の一族がおりました」

「過去形だな」

メトロ・ガイストは俺の質問に答えながらズボンのベルトを外した。

なんで!?

「はい、ウィンチェスター一族は、今現在壊滅状態です。あと一人しか生き残ってません」

「その大工の一族に、何があったんだ?」

メトロ・ガイストはズボンを脱ぎながら答えた。

おいおいおい、何故にストリップを始めるん!?

老紳士のストリップなんて見せられても嬉しく無いぞ!!

「ウィンチェスター一族は大工としてゴモラタウンに多くの屋敷を建てました。それはそれは素晴らしい出来の屋敷ばかりでした」

ワイズマンも言う。

「私の屋敷もウィンチェスター一家の建築物だよ」

なるほどね。

確かにあの屋敷を見るからに、ウィンチェスター一家の腕が良いのは分かるな。

「でえ、なんでウィンチェスター一家は一人を残して全滅したんだい?」

メトロ・ガイストは蝶ネクタイを外しながら答える。

ちょっと色っぽいな……。

「呪いですよ……」

「呪い……」

そして何故かワイズマンまで服を脱ぎ始めた。

マジで、なんで!?

全裸の呪いなの!?

「ウィンチェスター一家は、とある魔法使いに依頼されて、塔を建てたんです」

「魔法使いの塔かい?」

「そう。しかし、その塔が嵐の晩に倒壊して、魔法使いが生き埋めになって死んだんだ」

「その魔法使いに呪われたと?」

メトロ・ガイストはYシャツを脱ぎながら語る。

マジでなんで脱ぐん!?

そっちの説明もしろよな!!

「その通り。その魔法使いが亡霊と変わってウィンチェスター一家を殺し出したんです」

パンツ一丁になったメトロ・ガイストが言う。

「その魔法使いの亡霊が、今私に取りついております……」

「へぇ?」

メトロガイストが振り返ると、背中から太股にまで皮膚が爛れて人の形を作っていた。

それは紛れもなく老人の魔法使いの姿に見えた。

「こわ、何それ!?」

それと、メトロ・ガイストがそれを見せるために服を脱いだのは分かるが、何故にワイズマンまで服を脱いだのかが不明だわ!!

ただ、脱ぎたかっただけだよね!!

メトロ・ガイストが述べる。

「その魔法使いって言うのが、私の兄でね……」

「身内かよ!!」

「これは、我々ガイスト一家とウィンチェスター一家の望まれない戦いなのです!!」

「そんなの自分で片付けろや!!」


【つづく】

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