ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)
第168話【放火魔は誰だ?】
魔法使いギルドを出て二人と別れた俺は、一人で貰ったメモ書きを眺めていた。
人通りの激しい魔法使いギルドの前で、置いてあった樽に腰かけている。
まずは、小難しい話をしよう。
エスキモーから貰ったメモ書きには、七件の火事現場と、七つの被害者たちの名前だけが書かれていた。
要するに、一件の火災に対して、場所と被害者一人ずつの情報しか無いのである。
こうなったら時間が掛かるが、古典的な方法で調査するしかないな。
そう、足を使った聞き込みである。
まさか俺が、刑事のような地味な聞き込み作業を行わなければならない日がこようとは、思ってもみなかったぜ。
まあ、たまにはいいかな。
これも経験だ。
これもすべてはスカル姉さんに、恩返しを果たすためだ。
とりあえず頑張るしかないか。
そして、俺はメモに書かれた現場に向かった。
そこは以前俺がミーちゃんの不動産屋から借りようとしていた下宿である。
しばらく歩くと現場に付いた。
やはり建物は無い。
大通りから狭い路地を進んで四軒目。
立地的には、スカル姉さんの診療所よりは放火しやすそうに思えた。
俺は空の敷地を眺めたあとに、隣の家の扉をノックした。
すると扉の隙間からモチモチの奥様が怪訝そうな顔を出す。
「すみません。隣のマダムは火事のあと、どこに引っ越したか知ってますか?」
俺は小銭をチラ付かせながら訊いた。
それを見てモチモチ奥様が笑顔に変わる。
この時代の情報収集だと、小銭の力は絶大だ。
兎に角賄賂万歳なのである。
そんでもってモチモチ奥様は、俺から小銭を受けとると、上を指差しながら言う。
「天国よ……。独り身だったから、家も財産も火事で失って、精も根もつきたのでしょう。可愛そうにね……」
「そうですか……」
俺はトボトボと路地を出た。
一発目から重たい感じだったわ……。
めっちゃ心がメルトダウンしたぜ。
この足を使った調査は、いろいろへこみそうだな。
なんだか爽快ハクスラストーリーとは程遠い展開になりそうだぞ。
これは不味いな……。
俺自信がこのテンションではまいってしまいそうだわ。
畜生……。
ここは全裸になって、逆立ち瞑想でもしながら、名案でもひらめいてみようかな。
ポクポクポク、チィーーンって感じにさ。
昔そんな感じで難問を、指定時間内で解決していた「暴れ一休さん」とかいう番組もあったっけな~。
そんな感じでサクサクっと解決したいわな。
てか、魔法が有る世界なんだから、魔法でチャッチャと解決できないのか?
出来てたらゾディアックさんたちが解決しているか?
やっぱり面倒臭いが足を使って地道に調査するしか無いのかな。
こう言う調査を得意とする探偵っぽい冒険者も居るだろうが、俺はそう言うタイプじゃあないしね。
頭を使うより、身体と勢いでどうにかするタイプだもんな。
やっぱりこのミッションは俺には無理かな。
そんなことを考えながら歩いていたら、二件目の火事現場に到着していた。
「あ~、やっぱりな……」
そこも空き地だった。
俺は隣の家の人に、この家の人は何処に言ったかを訊いてみた。
勿論ながら小銭をチラ付かせながらだ。
すると家族三人でスダンの町に移住したと言う。
なんでも三代に渡って燃えた家に住んでいた家族だったらしいから、スダンに移住するのも苦肉の策だったらしい。
でも、住む場所と貯金も無くなったから、仕方がないとのことだ。
スダンの町でお金を貯めたら、またいつか戻って来る気らしく、土地は売らずにそのままにして置くらしい。
これで二組が犯人候補から消えたわ。
この町に居ないなら、無関係なのかも知れない。
最初のほうに火災にあった誰かが放火魔に変貌したかと推理していたが、その説は消えたってことになる。
一件目の婆さんは自殺。
二件目の家族は町の外に移住しているから、この先に犯行は無理だろう。
よし、三件目の現場に向かうかな。
そして、日が沈みかけたころに三件目の現場に辿り付いた。
そこはスバルちゃんの家の側である。
三軒向かえにスバルちゃんの工房が建っていた。
この際だし、スバルちゃんのところに顔を出そうか。
久しぶりだしね。
でも、居るかな~………、臭い!!!
超臭い!!
なに、この家!?
臭いよ!?
悪臭がプンプンしますがな!?
悪臭はスバルちゃんの工房から漂って来ていた。
体臭を消す魔法を開発したはずだよね。
なのになんでこんなに臭いのさ!?
俺は鼻を摘まみながらスバルちゃんの家の扉をノックした。
するとしばらくしてスバルちゃんが顔を出す。
「あ~、アスランさーん。お久しぶりです。ゴモラタウンに出張しているって聞きましたが、帰ってきてたんですね!」
明るく微笑むスバルちゃんのテンションがグイグイと上がる。
「ああ、もうゴモラタウンの仕事は終わったんだけど……。それよりなんなの、この臭いは……?」
「あー、これですか。新薬を開発中なんですが、なんだか悪臭を放つようで、近所にも迷惑を掛けていますわ」
「これが悪臭っていう自覚はあるんだね……」
「そんなにキツイ臭いでもないから、いいかなって思ってます」
あー、自覚無いわ。
この子の鼻はぶっ壊れてますよ。
てか、この子は、悪臭に運命づけられた人生なのかも知れないな。
それよりも話を本題に戻そうかな。
「スバルちゃん、ちょっと火事の話を訊きたいんだけど、いいかな?」
「火事って、向かえのですか?」
「うん、その話が聞きたくてね」
「構いませんよ。じゃあ、中でお茶にでもしませんか?」
「い、いや、ここでいいよ……。ほら、時間も無いからさ……」
「そうですか?」
スバルちゃんは疑問に抱いていたが、こんな悪臭満々の家に入ったら、俺のHPがミルミル低下していって死んでしまうがな……。
今、玄関で立っているだけでも、嘔吐を吹き出したい気分を我慢しているのにさ。
「それよりも、あの家の人たちはどうなったか知らないか?」
「確か、別の家に住んでいますよ。あの家の住人は、この辺の地主で、私もこの工房を借りているぐらいですから」
「なんだ、地主の家が燃えたのか……」
「でも、夫婦でゴモラタウンのパーティーに招かれていたらしく、火事で被害者は出なかったらしいですよ」
「被害者無し?」
「はい、息子さんも別の家で夫婦で暮らして居るらしいですから」
「なるほど」
地主だから土地関係の怨みごとかとも考えたが、それも共通点が薄いな。
一件目の婆さんも、二件目の家族も、燃えたのは自分の土地の自分の家だ。
この地主と関係があるのかな?
共通点は土地持ちってことぐらいだ。
「その地主と話したいのだが、どこに行けばいいかな?」
「んー、それはちょっと私には分かりませんね……」
そうだよね~。
まあ、しゃあないか。
「ありがとう、スバルちゃん。じゃあ俺は行くぜ!」
俺はかっこつけながら踵を返した。
ピンクに染まる如何わしい町の中に消えて行く。
うぷっ……。
やーーべ!
喉のところまでゲロが上がって来ていたわ。
危なかったぜ……。
それにしても空気が旨いな~。
空気って、腐るんだね~。
初めて知ったわ。
それにしてもだ……。
あー、なんかさー、本当にこのミッションはテンションが上がらないわ~。
もう日も沈んだし、帰ろっかな~。
でも、帰ってもテントだしな~。
スカル姉さんがあの調子だから、飯なんて用意されて無いだろうしな~。
飯だけでも冒険者ギルドで食って帰ろうかな。
スカル姉さんにはパンとチキンをお土産に買って帰ればいいよね。
よし、まずは飯だ。
残りの調査は明日だわ。
こんなペースだと放火犯を捕まえるのは難しそうだな。
たまたま火を付けてる現場とかに出くわさないかな。
そうしたら話が早いんだけどさ。
そんな御都合主義的な展開は無いか……。
あんな感じでさ、人気の無い路地でさ、魔法のキャッチファイヤーを使ってさ、こっそりと他人の家の荷物にさ、放火中の犯人に出くわさないかな~。
えっ?
あんな感じで?
あーーーー!!!!
いーーーたーーー!!!!
放火魔を発見だわ!!!!
こんな簡単に遭遇したら、この一話分の話が無駄になるけれど、この際だからラッキーってことでOKだわ!!
事件解決に百歩近付いたぜ!!
【つづく】
人通りの激しい魔法使いギルドの前で、置いてあった樽に腰かけている。
まずは、小難しい話をしよう。
エスキモーから貰ったメモ書きには、七件の火事現場と、七つの被害者たちの名前だけが書かれていた。
要するに、一件の火災に対して、場所と被害者一人ずつの情報しか無いのである。
こうなったら時間が掛かるが、古典的な方法で調査するしかないな。
そう、足を使った聞き込みである。
まさか俺が、刑事のような地味な聞き込み作業を行わなければならない日がこようとは、思ってもみなかったぜ。
まあ、たまにはいいかな。
これも経験だ。
これもすべてはスカル姉さんに、恩返しを果たすためだ。
とりあえず頑張るしかないか。
そして、俺はメモに書かれた現場に向かった。
そこは以前俺がミーちゃんの不動産屋から借りようとしていた下宿である。
しばらく歩くと現場に付いた。
やはり建物は無い。
大通りから狭い路地を進んで四軒目。
立地的には、スカル姉さんの診療所よりは放火しやすそうに思えた。
俺は空の敷地を眺めたあとに、隣の家の扉をノックした。
すると扉の隙間からモチモチの奥様が怪訝そうな顔を出す。
「すみません。隣のマダムは火事のあと、どこに引っ越したか知ってますか?」
俺は小銭をチラ付かせながら訊いた。
それを見てモチモチ奥様が笑顔に変わる。
この時代の情報収集だと、小銭の力は絶大だ。
兎に角賄賂万歳なのである。
そんでもってモチモチ奥様は、俺から小銭を受けとると、上を指差しながら言う。
「天国よ……。独り身だったから、家も財産も火事で失って、精も根もつきたのでしょう。可愛そうにね……」
「そうですか……」
俺はトボトボと路地を出た。
一発目から重たい感じだったわ……。
めっちゃ心がメルトダウンしたぜ。
この足を使った調査は、いろいろへこみそうだな。
なんだか爽快ハクスラストーリーとは程遠い展開になりそうだぞ。
これは不味いな……。
俺自信がこのテンションではまいってしまいそうだわ。
畜生……。
ここは全裸になって、逆立ち瞑想でもしながら、名案でもひらめいてみようかな。
ポクポクポク、チィーーンって感じにさ。
昔そんな感じで難問を、指定時間内で解決していた「暴れ一休さん」とかいう番組もあったっけな~。
そんな感じでサクサクっと解決したいわな。
てか、魔法が有る世界なんだから、魔法でチャッチャと解決できないのか?
出来てたらゾディアックさんたちが解決しているか?
やっぱり面倒臭いが足を使って地道に調査するしか無いのかな。
こう言う調査を得意とする探偵っぽい冒険者も居るだろうが、俺はそう言うタイプじゃあないしね。
頭を使うより、身体と勢いでどうにかするタイプだもんな。
やっぱりこのミッションは俺には無理かな。
そんなことを考えながら歩いていたら、二件目の火事現場に到着していた。
「あ~、やっぱりな……」
そこも空き地だった。
俺は隣の家の人に、この家の人は何処に言ったかを訊いてみた。
勿論ながら小銭をチラ付かせながらだ。
すると家族三人でスダンの町に移住したと言う。
なんでも三代に渡って燃えた家に住んでいた家族だったらしいから、スダンに移住するのも苦肉の策だったらしい。
でも、住む場所と貯金も無くなったから、仕方がないとのことだ。
スダンの町でお金を貯めたら、またいつか戻って来る気らしく、土地は売らずにそのままにして置くらしい。
これで二組が犯人候補から消えたわ。
この町に居ないなら、無関係なのかも知れない。
最初のほうに火災にあった誰かが放火魔に変貌したかと推理していたが、その説は消えたってことになる。
一件目の婆さんは自殺。
二件目の家族は町の外に移住しているから、この先に犯行は無理だろう。
よし、三件目の現場に向かうかな。
そして、日が沈みかけたころに三件目の現場に辿り付いた。
そこはスバルちゃんの家の側である。
三軒向かえにスバルちゃんの工房が建っていた。
この際だし、スバルちゃんのところに顔を出そうか。
久しぶりだしね。
でも、居るかな~………、臭い!!!
超臭い!!
なに、この家!?
臭いよ!?
悪臭がプンプンしますがな!?
悪臭はスバルちゃんの工房から漂って来ていた。
体臭を消す魔法を開発したはずだよね。
なのになんでこんなに臭いのさ!?
俺は鼻を摘まみながらスバルちゃんの家の扉をノックした。
するとしばらくしてスバルちゃんが顔を出す。
「あ~、アスランさーん。お久しぶりです。ゴモラタウンに出張しているって聞きましたが、帰ってきてたんですね!」
明るく微笑むスバルちゃんのテンションがグイグイと上がる。
「ああ、もうゴモラタウンの仕事は終わったんだけど……。それよりなんなの、この臭いは……?」
「あー、これですか。新薬を開発中なんですが、なんだか悪臭を放つようで、近所にも迷惑を掛けていますわ」
「これが悪臭っていう自覚はあるんだね……」
「そんなにキツイ臭いでもないから、いいかなって思ってます」
あー、自覚無いわ。
この子の鼻はぶっ壊れてますよ。
てか、この子は、悪臭に運命づけられた人生なのかも知れないな。
それよりも話を本題に戻そうかな。
「スバルちゃん、ちょっと火事の話を訊きたいんだけど、いいかな?」
「火事って、向かえのですか?」
「うん、その話が聞きたくてね」
「構いませんよ。じゃあ、中でお茶にでもしませんか?」
「い、いや、ここでいいよ……。ほら、時間も無いからさ……」
「そうですか?」
スバルちゃんは疑問に抱いていたが、こんな悪臭満々の家に入ったら、俺のHPがミルミル低下していって死んでしまうがな……。
今、玄関で立っているだけでも、嘔吐を吹き出したい気分を我慢しているのにさ。
「それよりも、あの家の人たちはどうなったか知らないか?」
「確か、別の家に住んでいますよ。あの家の住人は、この辺の地主で、私もこの工房を借りているぐらいですから」
「なんだ、地主の家が燃えたのか……」
「でも、夫婦でゴモラタウンのパーティーに招かれていたらしく、火事で被害者は出なかったらしいですよ」
「被害者無し?」
「はい、息子さんも別の家で夫婦で暮らして居るらしいですから」
「なるほど」
地主だから土地関係の怨みごとかとも考えたが、それも共通点が薄いな。
一件目の婆さんも、二件目の家族も、燃えたのは自分の土地の自分の家だ。
この地主と関係があるのかな?
共通点は土地持ちってことぐらいだ。
「その地主と話したいのだが、どこに行けばいいかな?」
「んー、それはちょっと私には分かりませんね……」
そうだよね~。
まあ、しゃあないか。
「ありがとう、スバルちゃん。じゃあ俺は行くぜ!」
俺はかっこつけながら踵を返した。
ピンクに染まる如何わしい町の中に消えて行く。
うぷっ……。
やーーべ!
喉のところまでゲロが上がって来ていたわ。
危なかったぜ……。
それにしても空気が旨いな~。
空気って、腐るんだね~。
初めて知ったわ。
それにしてもだ……。
あー、なんかさー、本当にこのミッションはテンションが上がらないわ~。
もう日も沈んだし、帰ろっかな~。
でも、帰ってもテントだしな~。
スカル姉さんがあの調子だから、飯なんて用意されて無いだろうしな~。
飯だけでも冒険者ギルドで食って帰ろうかな。
スカル姉さんにはパンとチキンをお土産に買って帰ればいいよね。
よし、まずは飯だ。
残りの調査は明日だわ。
こんなペースだと放火犯を捕まえるのは難しそうだな。
たまたま火を付けてる現場とかに出くわさないかな。
そうしたら話が早いんだけどさ。
そんな御都合主義的な展開は無いか……。
あんな感じでさ、人気の無い路地でさ、魔法のキャッチファイヤーを使ってさ、こっそりと他人の家の荷物にさ、放火中の犯人に出くわさないかな~。
えっ?
あんな感じで?
あーーーー!!!!
いーーーたーーー!!!!
放火魔を発見だわ!!!!
こんな簡単に遭遇したら、この一話分の話が無駄になるけれど、この際だからラッキーってことでOKだわ!!
事件解決に百歩近付いたぜ!!
【つづく】
コメント