ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第141話【拷問】

場所はいつも食事を取る厨房だった。

俺たち三人は、胸の前で腕を組ながら仁王立ちしている。

俺、パーカーさん、ピーターさんの順に横一列に並んでだ。

ピーターさんは裸エプロンのままだし、パーカーさんは全裸のままである。

俺たち三人は、スパイダーさんを椅子に縛り付けながら、彼の前で厳つく腕を組み、忌々しい表情で睨み付けていた。

スパイダーさんは猿轡をされて喋れないでいた。

表情は怯えて若干ながら震えている。

パーカーさんがスパイダーさんの顔に強面を近付けて言う。

「スパイダー、良く聞けよ。イエスなら首を縦に振れ。ノーなら首を横に振れ、いいな?」

スパイダーさんが首を縦に数度振った。

どうやらチャラ男も理解したようだ。

「じゃあ、質問に入るぞ」

パーカーさんが顔を離して問うとスパイダーさんが頷く。

「お前、さっき俺らが演劇の練習中に、サラリと舐めたことを言ったよな」

スパイダーさんは何が言いたいのか分からずに首を傾げた。

「忘れたかい。そうか、忘れたか……。ピーター、お前は覚えているよな?」

「イエッサー!」

「よーし、じゃあさっきスパイダーが何気無く言った言葉を言ってみろ!」

ピーターさんがスパイダーさんの物真似をしながら述べる。

「俺、メイドのアンナと付き合ってますから~。っと述べてました!」

俺たち三人が、キッとスパイダーさんを睨み付ける。

「これはどう言う意味だ。なんでお前だけ彼女ができてる!?」

「そうですよ、スパイダーさん。僕やパーカーさんに長年彼女が出来なくて寂しい想いをしているのにさ!」

俺も言う。

「俺なんて呪いに掛かってるから、エロイことも出来ないんだぞ!」

「「えっ、マジで!?」」

パーカーさんとピーターさんが驚いて、真横に立つ俺を見た。

「あれ、言ってませんでしたっけ?」

「うん、初耳……」

「俺、呪われた冒険者アスランですから!」

「それでか……。アスランくんは女の子と遊べないんだ……?」

「そうそう、だってエロイことをしようとすると、心臓が爆発しそうになるんだもの」

「それは残酷な呪いだね……」

「なるほど、デブな彼女でも幸せなスパイダーが妬ましいわけだな」

「そうなんですわ~」

「よし、では、質問に戻るぞ、スパイダー!」

パーカーさんの矛先が椅子に縛り付けられているスパイダーさんに戻った。

「お前、彼女とやってるんか?」

スパイダーさんが首を縦に何度も振るった。

「「「イラっ!」」」

俺たち三人の額に血管が浮き上がる。

更にパーカーさんの質問が続いた。

「お前はアンナと結婚するつもりなのか?」

再びスパイダーさんが首を縦に何度も振るった。

「「「イラっ!!!」」」

俺たち三人の額に浮き上がった血管の数が更に増えた。

三人は歯を食い縛り引きつっている。

完全に憤怒が露になっていた。

別にスパイダーさんがアンナをゲットしたことが羨ましいのではないのだ。

ただ他人の幸せが、悔しくも妬ましいのだ。

「なあ、スパイダー……」

言いながらパーカーさんが振り返る。

スパイだーさんに尻を向けて天井を見上げながら言う。

「この詰所の決まりは知っているよな」

スパイダーさんが静かに頷く。

なんだろう。俺は知らないぞ?

「この詰所は独身専門の職場だ。結婚したら、詰所を離れて別の勤務に付かなければならない。分かっているよな?」

スパイダーさんはコクリと頷いた。

なるほどね。

スパイダーさんがアンナと結婚したら、この詰所から出て行くのか。

「お前は、ここで一番の後輩であり、一番の年下だ。なのに結婚して出て行くのかね?」

パーカーさんは少しだけ体を動かして背後を確認していた。

そのパーカーさんを見詰めながらスパイダーさんは強く頷く。

「はぁ~、仕方がないか……。ピーター、アスラン。彼のズボンを下ろせ」

「「イエッサー!」」

「んっんっんっ!!!」

俺とピーターさんは、激しく抵抗するスパイダーさんのベルトを外すと、履いていたズボンを足首まで下ろした。

全裸のパーカーさんが踵を返して前を向く。

「もう一度訊くぞ、スパイダー?」

半裸状態のスパイダーさんは怯えながら全裸男性を見詰めていた。

「お前は、本当にアンナと結婚するつもりなのか?」

スパイダーさんが何度か頷いた。

「ピーター」

「はい、なんで有りましょう。パーカー隊長!」

「グツグツに煮込んだコーンスープをここに持て……」

「は、はい……」

裸エプロンのピーターさんがグツグツに沸騰しているコーンスープの鍋をパーカーさんに手渡した。

パーカーさんはグツグツの鍋をお玉で掻き回しながら問う。

「俺たち先輩が結婚も出来ないで、こんな隅っこで燻っているのに、お前は本当に結婚して先に出て行くのかね?」

怯えるスパイダーさんが一つ頷いた。

するとパーカーさんがお玉で掬ったコーンスープをスパイダーさんの腿の上に持って来る。

「そうかそうか~」

言いながらパーカーさんは、熱々グツグツのコーンスープを一滴だけ腿に垂らした。

「んんーーーーーッ!!!」

スパイダーさんが椅子の上でバタバタと跳ねた。

そりゃあ一滴でも熱かろう。

お玉を持ったままのパーカーさんがもう一度問う。

「本当にお前はアンナと結婚したいのか?」

スパイダーさんは鼻息を荒くしながら頷いた。

「そうか……。たらぁ~~ん」

再びコーンスープが垂らされる。

「んんんんッんんんんッ!!!!」

椅子に縛られたスパイダーさんがバタバタと暴れた。

もう顔は汗だくで涙目である。

鼻水も垂らしていたし、少しチビっているようだ。

椅子が少し濡れている。

「なあ、スパイダー。次はチ◯コに直接かけちゃうぞ」

スパイダーさんは必死に首を左右に振っていた。

もう、そろそろ心が折れても可笑しくないころだ。

「これが三度目の問いだ。お前は本当にアンナと結婚するんだな」

汗だく汁だく状態のスパイダーさんは、それでも必死に頷いた。

ああ、この人は本当におデブちゃんを愛しているんだなって思えたわ。

「そうか……」

ここまで来てパーカーさんがコーンスープを掬っていたお玉を鍋に戻した。

そしてコーンスープの鍋をピーターさんに返す。

「だ、そうだぞ」

言いながら全裸のパーカーさんは部屋の出入り口に向かって歩いた。

そして、扉を開く。

そこにはデブなメイドさんが一人立っていた。

アンナだ。

初めて見るけどアンナだと分かったぜ。

だってかなりのおデブちゃんなんだもの。

絶対にレスリングが強いよね、この女性ならばさ。

「うわぁ~~ん。スパイダー!!」

アンナは泣きじゃくりながら椅子に縛られたスパイダーさんに抱きついた。

その光景を見ながらパーカーさんとピーターさんが笑顔で述べる。

「「スパイダー、アンナ。結婚おめでとう!」」

なに、祝いの言葉ですか?

なんだよ、これ……。

茶番ですか?


【つづく】

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