ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第140話【激熱スープ】

俺はワイズマンの母ちゃんが経営していた店を出て城に帰った。

──に、してもだ。

意外だったな。

ワイズマンの母ちゃんが、あんな店をやっていたなんてさ。

どういうカラクリだろう。

年齢が可笑しいが、俺なんかが名探偵ぶって、それを解明する必要は無いだろうさ。

兎に角、柄じゃあないね。

まあ、今度にでも訊いてみるさ、ワイズマンによ。

そんなことを考えながら城内を歩いて裏庭の詰所に俺が帰ると、裸エプロン姿のピーターさんが昼食を作って待っててくれた。

俺がパーカーさんやスパイダーさんと一緒のテーブル席に付くと、裸エプロン姿のピーターさんが昼食を運んで来る。

「はぁ~い、皆さん、お待たせしました。今日の昼食はパンとサラダとコーンスープですよ」

「有り難う、ピーター。いつも済まないな」

パーカーさんが裸エプロン姿のピーターさんに感謝する。

そう言えば、いつも料理を作ってるのはピーターさんばかりだな?

何故だろう?

「ところで、パーカーさん、ピーターさん。なんでいつもピーターさんが料理を作っているんだ。交代とかじゃあないのか?」

俺の質問に裸エプロン姿のまま席に付いたピーターさんが答える。

「それは僕が三人の中で一番料理が得意だからだよ、アスランくん」

「あ~、確かにピーターさんの料理は旨いな~」

「有り難う、アスランくん。誉めて貰えると、僕も嬉しいよ」

「ところでピーターさん」

「なんだい、アスランくん?」

「なんで、裸エプロンなん?」

素朴な疑問だった。

しかし、誰もピーターさんの裸エプロン姿を見ても突っ込まないから、俺は皆が見えていないのかと自分の目を疑ったぐらいなのだ。

これは、仕方ないので訊くしかないだろう。

だが、ピーターさんは微笑みながら昼食を取り続けて答えない。

他の二人も黙ったまま飯を食べている。

しばらく我々四人は黙ったまま昼食を取り続けた。

まずったかな?

訊いてはならなかったかな?

まあ、答えて貰わなくてもいいだろう。

今日は午前中だけで、いろいろあったのだ。

全裸で拘束されたり、リックディアスに再会したり、ワイズマンの母ちゃんに出会ったりとだ。

もう、盛り沢山な午前中だったのだから、凄くお腹一杯なのだ。

これ以上の珍エピソードは沢山である。

しかし、ピーターさんが答えた。

 「実は、僕ね……」

あー、なんか嫌な感じの切り出しかただな……。

口調が暗いよ。

「好きな人が居るんだ……」

うわぁ~……。

めっちゃ暗い顔で言いやがったよ。

やぁ~な感じ~。

「え~、ピーターさん、誰を好きなんですかぁ~」

スパイダーの馬鹿野郎、訊くなよ!!

流せよ!!

ドブに流しちまえよ!!

この話を進めたら、泥沼に踏み込むぞ!!

「実を言いますと……」

答えるなピーターさん!!

馬鹿野郎の問いに答えなくっていいからさ!!

「実は僕ね。パーカーさんが好きなんだ!!」

あー、そう来ましたかぁ~。

そっちに振りましたか~。

あれ~、パーカーさんが思ったより冷静だな?

静かですよ?

衝撃を受けませんか、パーカーさん?

「ピーター、お前まさか──」

あれ、パーカーさんも真面目に答えますか?

「お前、まさか。あの晩のことを本気にしているのか?」

えっ、あの晩ってなんだよ?

どの晩ですか?

「当たり前じゃあないか、パーカーさん!」

えっ、なに、どういうこと?

このまま話が進むのですか?

「あの晩のことは忘れてくれ、遊びだったんだよ……」

なに、どんなことして遊んだのさ!?

すげー、興味有るわ!?

「ひ、酷いよパーカーさん。あの晩の激しさは嘘だったのかい!?」

「ああっ、嘘だよ。遊びだって言ってるだろ!」

うわ~、俺とスパイダーさんが置き去りだわ。

すげー置き去りだわ~。

「あんなに激しかったのに!!」

「馬鹿野郎が。激しいから遊びなんだよ。本気だったら、もっと優しくするだろう!」

「ひっ、酷い!!」

ちょっと待ってくれ、どこまで二人で突っ走るんですか!?

もう追い付けませんよ!!

今日はいろんな人々に追い付けない日々だわ!?

「ちょっと待ってくださいよ~、二人とも~。恋愛話なら飯の後にしませんかぁ~。まずは美味しく御飯を食べましょ~ぜ~」

なにこの馬鹿スパイダー!?

この修羅場で何を言ってるんだよ!?

馬鹿は黙ってろよ!!

「黙ってろ、この脳タリンが!!」

パーカーさんがスパイダーさんの襟首を掴んで引き寄せた。

「俺はお前のために言ってるんだぞ!」

「へっ……?」

「俺が好きなのは、スパイダー、お前なんだぞ!!」

「マジで……」

えっ、マジで大暴走じゃあねえ!?

どこまで行くのさ!!

「いや、でも、俺はパーカーさんのこと何とも思ってないし……」

「分かった。そこまで言うなら、今晩を俺と過ごそう。ベッドの中で再教育してやるぞ!」

「いやいやいや、結構で~す。俺、彼女いますから~」

「な、なんだって……!?」

「俺、メイドのアンナと、付き合ってますから~」

「「「マジで!?」」」

「マジマジ~。もう付き合い始めてから~、半年ぐらい経ちますよ~」

「う、嘘だろ……」

パーカーさんが、膝から崩れ落ちたわ。

そんなにショックでしたか。

すると裸エプロン姿のピーターさんが、両膝を付いて崩れているパーカーさんに背後から抱きついた。

「パーカーさん、僕が慰めてあげます。僕になら、何をしても構いませんよ」

あー、そろそろこの茶番も終わりかな。

良かったは、終わりが見え始めてさ。

「だまれ、この売女!!」

「きゃ!!」

「お前みたいな汚らしい女が俺を慰めるだと。舐めるなよ!!」

「ひ、酷い!!」

えー、まだ続くの~。

もう飽きたわ~。スパイダーさん、助けてよ~。

あー、駄目だ。

スパイダーさんも鼻糞ホジってるよ。

俺、部屋に帰ろっかな~。

それともこの際だからダンジョンにでも入ろっかな~。

「ピーターさ~ん、スープのおかわりいいっスかぁ~」

「あ、はいはい、ちょっと待ってくださいね。スパイダーさん」

えっ、なにそこは普通に対応するんだ。

おいおい、そんなこんなしている間にパーカーさんが脱ぎだしたぞ!?

なんて脱ぐん!?

しかも何故、全裸になるん!?

「ピーター、ならば慰めて貰おうか!!」

いやいや、さっきと言ってることが違うじゃんか!?

「分かったよ、パーカーさん。これでも食らえ!!」

「アチッ! アチッ!」

うわー、激熱スープをお玉でかけ始めましたぞ!?

もうマジで、何がなんだか分かんねえよ!?

「あー、食った食った~。腹一杯だわ~」

何を落ち着いて食い終わってるんだよ、スパイダーさんはよ!?

そして、驚愕する俺の目線を感じ取ったスパイダーさんが言う。

「あ、これ、今度やる演劇の練習だから~、気にしないでくれよ~」

「演劇って……」

「アチッ! アチッ! 馬鹿野郎、マジで汁をかけるなよ!!」

「ぴっ、ぴっ」

「アチッ! アチッ!!」

激熱スープをかける演劇ってなんだよ?


【つづく】

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