ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第74話【勝手な約束】

俺は病室のベッドに寝転びながら考えていた。

ドラゴンルビーの指輪は欲しいが、本当にドラゴンのグラブルを騙しきれるだろうか?

相手は文化レベルが低い世界の住人だが、5400歳を超えるドラゴン族だ。

彼らドラゴン族は人間を下等と述べるほどの高い知能を持ち合わせている。

舐めて掛かっては、駄目なのではないのだろうか?

グラブルは、恋心と性欲に目が眩んでいるとはいえ、知能の高いドラゴンなのだ。

ドラゴンがどれほど賢いのか?

俺より賢いのか?

むしろ、俺なんかより賢いのではないだろうか?

騙すなんて、もってのほかなのじゃあないのだろうか?

分からん……。

難しいや……。

寝よ……。

そして、朝が来た。

俺はスカル姉さんと朝食を取り終わると、ウェイトレス姿の上にいつものローブを羽織りバトルアックスを背負った。

いつもより軽装だが、別に町の側の洋館までしか行かないのだ、問題なかろう。

俺は、フードを被るとソドムタウンを出た。

そして、洋館を目指す。

俺が洋館に到着すると、洋館の前ではアンが待ち受けていた。

リボン姿のままで仁王立ちしている。

「遅かったな、人間人間人間のアスラン!」

「やあ、アン。異次元牢獄から出して貰ったんだな」

「慈悲深いお兄様が許して許してくれたのだ。しばらく言い寄らなければと、条件を出されたがな!」

「守る気があるのか、お前には?」

「うむ、有る!」

以外だな。どういう心境の変化だろう。

「そうかそうか」

俺がアンの頭を撫でてやると、彼女は気恥ずかしそうに畏まっていた。

「で、お兄様は居るのかい?」

「屋敷の二階に居る。アンが案内案内案内する!」

「ああ、よろしく」

俺はアンに案内されて二階の一室に通される。

そこは昨日の部屋だった。

グラブルがソファーに腰かけながら俺を待っていた。

「やあ、アスランくん。早いね。もう、ウェイトレスの彼女が見付かったのかい?」

アンは部屋の中に入って行ったが、俺は部屋の外に居た。

「それなんだがな、ちょっとこれを見て貰いたい」

「何かね?」

俺は一度壁の陰に隠れると、ローブを脱いでからウェイトレス姿をグラブルに見せる。

「おお、キミは!」

グラブルがウェイトレス姿の俺を見て歓喜していた。

この馬鹿ドラゴンは、やっぱり気付いていないよ。

「グラブル、俺だよ……」

「へぇ?」

グラブルは俺の声を聞いて可笑しな表情を見せていた。

俺は真実を語る。

「あんたが一目惚れしたウェイトレスさんは、俺だよ。このアスランだ」

「へぇ?」

ここまで言っても理解できていない様子だった。

そりゃあそうだろうさ。

一目惚れの相手が実話男だと分かれば混乱もするわな。

「いやいやいや、ちょっと待ってくれ……」

グラブルは眉間を摘まみながら俯いた。

「えーと、まずは話を整理しようじゃあないか」

「どうぞ、ゆっくり整理してくれ」

「僕が一目惚れしたウェイトレスさんは、アスランくんだったと言うのかね?」

「そうだ」

「昨日一昨日と僕が彼女を探しても見付からなかったわけは、僕がキミを異次元牢獄に閉じ込めていたからだと?」

「そうだ」

「結論からして、僕は男であるキミに一目惚れしたのかね?」

「結論はそうだな」

「うむむ~……」

グラブルは深く俯きながら考え込んでいる。

やはり真実を正直に突き付けるのは不味かったかな?

怒っちゃったかな?

「なるほどね」

グラブルはムクリと頭を上げた。

その顔は、不思議と落ち着いた真顔だった。

「キミが一目惚れの相手で男だとは理解できた」

「そうですか」

さて、どう出るドラゴン?

「ちょっとだけいいかな、アスランくん」

「えっ?」

グラブルがソファーから立ち上がり、俺に歩み寄る。

そして、人差し指を立てながら腕を伸ばして来た。

そのまま人差し指の先を俺の額に付ける。

その瞬間であった。

「うわっ!!」

まるで意識だけが凄い勢いで撥ね飛ばされたような感覚だった。

身体だけ残されて魂だけが星の輝く世界を昇って行く。

そして、目の前を幾つかの映像が猛スピードで流れては消えて行った。

なんだ、これは!?

これが噂に聴く走馬灯ですか?

「貴方は間違っているわ!」

あれ、スカル姉さんだ。

それにゾディアックさんとギルガメッシュさんも居る。

他にも何人か、ごっつい人が居るな。

皆が何かを見上げているぞ?

「私は行き着くところまで行くのだよ!」

あれは、アマデウスの野郎じゃあないか?

なんか、すげー高い場所でグランドピアノを弾いていやがるぞ?

周りには竜巻が何本も吹き荒れているな。

もう、天変地異が起きているようだった。

あいつ、何を仕出かしているんだ?

「もう、止めてください、若頭!!」

あれは、クラウドとゴリじゃあないか?

これは、未来か?

俺は未来でも見ているのかな?

「こんなゴミ溜めのような町は、無くなればいいのだよ!」

うわぁ~~、アマデウスの野郎、狂喜乱舞してるね。

目が行っちゃってるよ、マジで!!

あれは破壊神にでもなった乗りですな!!

「うらぁぁぁぁああああ!!」

あれ、俺の声だ?

どこからかな?

上だ!?

皆が見上げているアマデウスの更に上からだ!

すげー勢いで降ってくるぞ、俺が!?

そして、アマデウスが弾いているグランドピアノに突っ込んだ!

グランドピアノが爆発したかのように吹っ飛ぶ。

「なるほどね」

「えっ!?」

そこで映像は途絶えた。

俺は洋館の部屋でグラブルと向かい合いながら立っていた。

「今のはなんだ!?」

「未来かな。確定こそしていないが、起こりうる未来の一つだよ」

「やっぱり、そうだよね……」

「どうやらキミには英雄の気質が有るようだ」

アンが横から口を挟む。

「やっぱり彼は、古い古い古い英雄神に何か関係しているの、お兄様?」

「アスランの名は、我らがドラゴン族の英雄神の名前だからね。そもそも人間が知っている名前ではないはずだ」

うむ、間違いないぞ。

俺をおいてけぼりにして、話が一人歩きしているな。

そして、グラブルがドラゴンルビーの指輪を俺に差し出した。

「約束通り、キミは僕の想い人を連れてきてくれたから、これを譲渡しよう」

「えっ、 マジでくれるのか!?」

なんか凄くラッキーな展開だぜ。

棚から牡丹餅だな!

「ああ、約束だからね。我々ドラゴン族は、約束をたがえない」

「サンキュー!」

俺はグラブルから指輪を貰うと早速指にはめた。

俺の頭の中にメッセージが流れる。

【ドラゴンルビーの指輪の譲渡完了。新規登録を致しました。これからは貴方が正当なる所有者です】

やったぜ、四次元宝物庫をゲットしたぜ!

「じゃあ、アスランくん。ドラゴンルビーの指輪の正式な保有者になった証に、この書類にサインをしてくれたまえ」

そう言いながらグラブルが、羊皮紙の書類をテーブルの上に広げる。

そこには何やら読めない字で色々と書かれていた。

どうやらドラゴン族の文字のようだ。

「ささ、ここにサインしてくれ。人間の文字で構わないからさ!」

俺はグラブルに急かされながら羽ペンを手渡された。

「んん、なんか可笑しくね?」

「な、何がだね……」

さっき確かに頭の中に所有者が俺になったとメッセージが流れたはずだが、何故にまた書類にサインせにゃならんのだ?

これは可笑しいぞ。

グラブルのヤツは、何かを企んでいやがるな。

「なあ、アン。この羊皮紙の文字を読めるよな?」

「ああ、読める読める読めるとも!」

「なんて書いてあるんだ?」

「アン、言っちゃ駄目だ!!」

グラブルが凄く慌てているが、アンは無情にも羊皮紙の内容を俺に教えてくれる。

「それはそれは婚姻届だな。お兄様の名前も書いてある!」

「なに!!」

「あー……、言っちゃったよ」

こわ!

何それ!

この野郎、俺と結婚しようとしてたのかよ!

男同士でさ!!

多分この羊皮紙は契約魔法のスクロールだろう。

危うくサインをしていたら契約魔法に魂を縛られるところだったぜ!

そして、慌てたグラブルが言い訳を延べる。

「ほら、僕からの婚約指輪も受け取ってくれたから、結婚してくれるのだと思ってね。あははははー」

ドラゴンルビーの指輪は、婚約指輪かよ!

「笑ってんじゃあねえよ。なんで男同士で結婚せにゃあならんのだ!」

「我々ドラゴン族には性別とか関係ないからさ」

「人間の俺には大ありだ!」

そりゃあ、一部では同性愛者が結婚できる制度は幾らでもあるけれど、俺は普通に女の子と結婚したいのだ!

こんなホストっぽいドラゴンお兄様と結婚なんてしたくないわ!

「そもそも、あんたは世継ぎが欲しくて、嫁さん探しをしてたのじゃあないのかよ!?」

アンの話ではそんな感じだったはずだ。

「まあ、そうなんだが。その辺は、相手に産ませるか、自分が産むかの差でしかないからね」

「はあ? 言っている意味が分かりませんが?」

「我々ドラゴン族は性別を変えられるから、私が産めばいいと言っているのだよ」

「マジで……」

「ああ、性転換に百年ぐらいかかるが、私が産むのには、やぶさかではないぞ」

「ちょっとまて!」

「なんだい、ダーリン?」

「幾つかの問題があるぞ!」

「だから、なんだい、ダーリン?」

「まず、俺はお前と子作りする気がない!」

「それは時間をかけて口説いて行くさ」

「二つ目は、俺は百年も生きれないぞ。お前が性転換をすませたころには、生きていたとしても、干からび欠けたヨボヨボのジジイになっとるわ!」

「なるほど。では、僕が性転換を急ぐか、キミの寿命を伸ばすかの策を取ろう。アドバイスを有り難う、ダーリン」

「三つ目だ。ダーリンって呼ぶのを止めろ、キモイ!!」

「それは何れ慣れるから、問題ないぞ」

「すべて大ありだ!!」

「アン、お前からも何とか言ってやれ。お前はお兄様ラブだっただろ。それが俺と子作りしていいのか!?」

「なに、それは問題問題問題無いぞ。お兄様が性転換を済ませる前に、私がお前の子供を孕めば良いだけだからな!」

「はて? アンさん、言っている意味が微塵も理解出来ないのですが!?」

「何を言っているのだ。お前が異次元牢獄から出れたら、どんな願いでも聞いてやると約束約束約束したではないか!」

「いやいやいや、それとこれとが何故に繋がるのさ!?」

「当然ではないか、ドラゴン族の最大の願いは種族の継続だ。その最大級の願いを聞き入れて当然ではないか!」

「それはお前の願いであって、俺の願いでは無いぞ!」

「馬鹿を馬鹿を馬鹿を言うな。私の願いはお前の願いだろ!」

「馬鹿はお前だ!!」

グラブルが更に状況を複雑にする。

「アスランくん。我々ドラゴン族は個体数が少ないから、近親相姦が許されている。だから、兄妹揃って抱いてもらっても構わないぞ」

「兄妹とか言うな、せめて姉妹になってから言えよ!!」



【つづく】

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