ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第63話【冒険者の日々】

病室の窓から朝日が入って来る。

眩しいな……。

まだ眠いが鳥の鳴き声が五月蝿いから俺はベッドを出て三階のスカル姉さんの住居スペースに向かった。

俺が勝手に部屋へ入ると眠たそうなスカル姉さんがカップにコーヒーを注いでいる最中だった。

「おはよう、スカル姉さん」

「おはよう。お前も飲むか、コーヒー?」

「ミルクとか砂糖とか入れてくれる?」

「ミルクは無い。砂糖なんて高価なものは尚無いぞ。朝から寝ぼけているのか、おまえは」

「じゃあ、ブラックでくださいな」

「ほれ、座れ。朝食も準備が出来ているから、食え」

「サンキュー」

この異世界で砂糖は貴重品らしい。

だから甘いお菓子なんて見たことがない。

まあ俺は、甘い物好きでもないから構わないけれど、甘い物好きな女子が転生してきたら絶望するだろうな。

この世界は、やっぱり過酷で不便だよ。

もしも魔法が無かったら、俺も絶望していたかも知れない。

誰か早くトイレットペーパーを発明して貰いたいものだ。

今度レベル20になったら、トイレットペーパーを作る魔法でも貰おうかな。

多分それだけで大金持ちになれそうだよ。

寧ろトイレットペーパーを作れる異世界転生者の設定で、一本ラノベが書けるかもしれんな。

そんな詰まらないことを考えながら、スカル姉さんが作ってくれた朝食を食べていたら、スカル姉さんが俺に質問を始めた。

「お前はいつまで下の病室で寝泊まりするつもりだ?」

「んん~……。スカル姉さん的には迷惑かな?」

「いや、私は構わんぞ。そもそも入院するほどの患者なんてほとんど居ないしな」

「だよね」

俺がスカル姉さんの診療所に転がり込んで、そろそろ何日ぐらい過ぎただろうか?

その間に病室に入院してきた人なんて見たことがない。

「私は考えたんだがな」

「何を考えたのさ?」

「どうせ病室として部屋を空けているなら、二階を改装して下宿にでもしようかと思うんだ」

「おお、それは名案だね」

「そうすれば、お前からも堂々と家賃が取れる」

「それは反対かな」

「舐めんなよ、クソガキ」

確かに名案だ。

俺が居候している病室のほかに、二階にはもう二部屋ある。

要するに、二階には計三部屋あるのだ。

正直なところ無駄なスペースとなっているのは間違いない。

だから下宿として解放するのは名案だ。

だが、問題も有る。

二階に上がるには一階の診療所内を通らなければ階段まで辿り付けない。

二階に人が住むなら、それは不便だ。

スカル姉さんが診療中に、住人がほいほいと通れば何かとじゃまだし、印象も悪かろう。

この辺の問題をどうするのかと俺は訊いてみた。

するとスカル姉さんの回答は──。

「だから大胆に建物を改装しようと思っているんだ」

「大胆にか、マジで?」

「まあ、大工には相談して簡単な見積りを出してもらっている」

「予算はどのぐらいなの?」

「それはお前が気にすることではないぞ」

「そうなん……」

「問題は改装の期間、お前が出ていかないとならんことだ。大工が作業中に、住人が居たら邪魔だろう」

「それは大問題だね。スカル姉さんは俺をソドムタウンの魔境に放り出すつもりかい?」

「そのつもりだが」

「それは酷寒の大地に全裸で放り出すのと一緒だよ」

「お前なら全裸でも楽しく生きていけるさ」

「それはそうだけど……」

「そこは否定しないんだ」

「うん」

「じゃあ、この三階で、私と同じベットで夜を過ごすかい?」

「それは無いわ」

「てか、なんでテメーの呪いが発動しない。なんで今の振りで苦しまないんだよ。そこは気絶するぐらい妄想しろよ!」

「ごめんな、スカル姉さん。朝からそんな気分にはとてもなれなくってさ。そう言うのやめてくれるかな」

「すまん……」

「分かって貰えればいいよ、スカル姉さん」

「今のは私が謝るところか!」

怒ったスカル姉さんがテーブルを両手で叩いた。

テーブルの上の食器が激しく跳ねる。

「マジで、その間、どうしよう……?」

「まあ、考えておけ。いいな」

「うん」

俺は食事が終わると二階の病室に戻って武具を装備する。

まだちょっと早いが冒険者ギルドに行くことにした。

ギルマスのギルガメッシュに昼から呼ばれているのだ。

まあ、時間潰しは適当にやればいいか。

そんな考えでスカル姉さんの診療所を俺は出た。

俺はのんびりとソドムタウンを闊歩した。

すると冒険者ギルドに行く道中に在る薬屋の前で人集りが出来ているのに気付いた。

なんだろうと覗き込むが、よく分からないので近くの人に訊いてみた。

どうやらこの人集りは新薬の購入待ちの人集りらしい。

それにしても、この世界の住人は、並んで待つって文化が無いようだ。

そう考えると日本って凄いよね。

こう言うのってカルチャーショックて言うのかな?

間違ってたらごめん。コメントで好きなだけ突っ込んでくれ。

兎に角、訊いた話だと体臭を消すポーションが新発売されて話題になっているらしいのだ。

多分スバルちゃんが例の魔法を完成させたのだろう。

これで彼女も毒ガス美少女を卒業して、ただのツインテール眼鏡っ子美少女にクラスチェンジできただろう。

きっと幸せになれるさ。

めでたし、めでたしだ。

俺は微笑みをフードで隠しながらソドムタウンを進んだ。

すると突然に話しかけられる。

「やぁ~、アスランくんじゃあないか~」

この声はあいつだな。

えーと、んーと、たしかー。

俺が顔を上げてヤツの顔を見ながら考え込んでいると、ヤツのほうが悟ってくれる。

「クラウドだよ。名前を忘れてたね……」

「いやいや、覚えてたよ。ぜんぜん忘れてないから、スクライドくん」

「いや、もう間違えてるから。スクライドちゃうよ、クラウドだよ……」

完全装備のクラウドの後ろには、あのゴリラ男も立っていた。

凄い野生的な眼光で俺を睨み付けている。

しかし、何も言わずに立っているだけだった。

でも、突っかかりたいのを我慢している様子だな。

そんな中でクラウドが俺に話し掛けてくる。

「アスランくん、キミはまだ冒険者をやっていたんだね。僕はもう辞めて故郷に帰ったかと思ったのにさ」

なんだろう。前以上に、むかつく感じに成ったような気がするな。

「なんで俺が故郷に帰らなければならんのだ?」

「いや、だってキミはもうパーティーを誰とも組んで貰えないじゃあないか」

「だから?」

「だからって……。キミはアマデウスさんに逆らって、もう冒険者としては終わりじゃあないのか?」

「いや、今はソロで頑張っているが」

「ソロって、本気かい?」

「ああ、本気だ」

「一人で何が出来るって言うんだい、笑わせるなよ」

「なんでも出来るぞ?」

「なんでも?」

俺はショートソードを抜いてマジックトーチをかけた。

更にクラウドにフォーカスアイとディフェンスアーマーをかけてやった。

更に更にとサモンインプとサモンキャットを唱えて小悪魔と猫を召喚した。

初めて使う魔法だったが、どれもこれも成功する。

するとインプとキャットが喧嘩を始めたのでインプだけ消して猫を抱え上げる。

俺は猫を抱えながらクラウドに言った。

「一人でも、このぐらいのことは出来るぞ」

「あ、ああ……」

クラウドとゴリラの目が点になっていた。

そうだろうさ。コンビニエンス魔法とエンチャント魔法にサモン魔法とデビルサマナー魔法を唱えたのだから。

更に俺は奮発して空を目掛けてマジックアローとファイヤーシャードを放った。

これでアタッカー魔法にシャーマン魔法を加えて計6種類の魔法を披露したことになる。

魔法使いじゃない俺が魔法をあり得ない法則で披露したのだ。

一人が習得出来る魔法は二種類か精々三種類が限度である。

更に言うなら俺には魔力に筋力を食われた様子すらないのだ。

そりゃあ、驚くわな。

「す、凄いね、アスランくん……」

「ああ、俺は凄いよ。だからソロでも大丈夫なんだ」

「そ、そうだね……」

クラウドがボケッとしていると、ゴリラが畏まりながら彼に耳打ちする。

「クラウド兄さん、そろそろ行きませんとアマデウスの若頭がお待ちです」

「そ、そうだね、ゴリ……。じゃあ、またな。アスランくん……」

手を力無く振るうクラウドが去って行く。

俺は抱えた猫の手を取り振ってやった。

それにしてもクラウドが兄さんでゴリラが子分なのかな。

あいつも出世したな。

まあ、あいつはあいつなりに頑張ってるってことか。

凄い凄い──。

若干、進む道を誤ってる感じはするがね。

でも、アマデウスの野郎が若頭とは、冒険者ギルドの派閥じゃあなくて、もう893じゃあね?

それはそれで──。

とりあえず俺は猫を抱えて冒険者ギルドを目指した。

サモンキャットはインプと違って消せないようなのだ。

召喚したらで続けないと行けないらしいな。

魔法が切れる十二時間も……。

まあ、可愛いからいいか。

でも俺は犬派なんだよね。


【つづく】

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