ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第61話【昭和との決着】

俺と三人組プラス1が向かい合い睨み合う。

チビマッチョが棘付き棍棒を振りかぶり、痩せた男がクロスボウの銃口をこちらに向けている。

黒マントの女はストーンゴーレムに寄りかかりながら、ゆったりとした眼差しでこちらを見ていた。

黒マントの女から余裕の自信が感じられる。

正面で向かい合い、四対一の状況が、そうさせるのだろう。

更に悪い状況があった。

俺の背後は遺跡の壁で退路が塞がれている。

かなり不味いポジションであった。

それを理解している黒マントの女が、更なる提案を述べる。

「坊屋、あなたが私の首を直ぐにかっ切らなかったことは誉めてあげるわ」

坊屋扱いですか。

急に態度が大きくなりましたな。

これだから乳の大きな女は困るわぁ~。

まあ、乳に関しては俺の個人的な偏見だけど。

どちらかって述べれば、小さいより大きいほうが俺は好みであるんだけどね。

あっ、ちょっと胸が痛み始めましたから、この話は終了で~。

「でも、敵の命は絶てる時に絶っておくべきよ」

「忠告ありがとうございます。参考にはなりました」

黒マントの女が本題の提案に入る。

「ねえ、あなた出来そうだから、やっぱり私たちと組まない。リーダーは私だけどね」

「あんたの子分に加われと?」

「そうよ。そうなれば私のセクシーでダイナマイトなボディーを鑑賞し放題のスペシャルオプションも付いてくるわよ~」

言いながら女は、黒マントの前を少しだけチラリと広げて見せる。

ボンテージに飾られたむっちり系エロボディーが僅かに見えた。

「おっ!」

ぐあっ!

好奇心と後悔が並んで順々にやって来る。

畜生、呪いめ!

でも、呪いの苦痛がなかったら黒マントの女の提案に乗っていたかも知れんな。

あぶねえぜ……。

「でもさ、お姉さん。あんた、もうそろそろ30歳ぐらいでしょう。十代の俺から見たら、賞味期限が切れかかってるんだよね。いや、切れてるかな?」

「なんですって!?」

俺はもう一度言う。

「お姉さん、30歳ぐらいでしょう。十代の俺から見たら、賞味期限が切れかかっているか、切れているかかな」

「二度も言わなくっていいわよ!」

「なんですってって訊いたのあんたじゃんか。そんなに怒るなよ。おばさん」

「おばさんですって!?」

「違うの?」

「まだ私は24歳よ!」

以外に若いな。ちょっとびっくりだ。

痩せた男が口を挟む。

「僕ちゃんも25歳ですよ~ん」

更にチビマッチョも年齢を語る。

「ワイだけが30歳でまんねん……」

「まあ、十代の俺からしたら、おばさんとおじさんだよ。三人ともさ」

「きぃーー、もう怒ったわよ。あんたたち、やっておしまい!!」

「「あらほらさっさ!」」

うわ!

完全に昭和の乗りだよ!

今時の若者には、ネットで昔のアニメを見てないと分からんネタだわ!

今回は中高年層へのサービスタイムなのかな?

ほとんどの十代を置いてきぼりにするつもりだよ。

そんなことより痩せた男がクロスボウを撃ってきたぞ。

でも、矢は俺の側を過ぎていき壁に刺さった。

俺、避けてませんからね!

こいつが勝手に外したんだからね!

続いてチビマッチョが棘付き棍棒を振り回しながら襲いかかって来る。

俺は手にあるショートソードで応戦した。

「おら、おら、おら!!」

「ふぬ、ふぬ、ふーぬ!」

何度か刀身と棍棒がぶつかり合った後に鍔迫り合いに発展する。

「ぐぐぐっ!!」

「ぬゆぬっ!!」

流石は押す力は凄いな。

でも、駆け引きは出来るか試してやろう。

俺は身を引き横に翻すとチビマッチョは押す勢いのまま前につんのめる。

その隙をついて俺は、棘付き棍棒を持つ手をショートソードで叩いた。

チビマッチョは痛がりながら棘付き棍棒を落とす。

やっぱり脳まで筋肉のようだぜ。

チビマッチョは「痛いまんねん~!」とかヘンテコなしゃべりかたで仲間の元に戻って行く。

するとクロスボウの再装填が終わった痩せた男が再び狙撃して来た。

しかし、俺は避けてもいないのに、矢は狙いを外して壁に刺さる。

あれだね。完全に避ける必要が無いよね。

この人の存在は無視でいいよね。残念だけどさ。

黒マントの女がヒステリックに言う。

「なにをやってるんだい、あんたたちは。退いてな。私がやるわ!」

黒マントの女は何やら呪文を唱えてストーンゴーレムを操り出す。

ドシンドシンと地鳴りを響かせてストーンゴーレムが俺に迫る。

眼前まで接近したストーンゴーレムが、固そうな拳を振りかぶった。

あんな岩みたいな拳で殴られたら、たまらんわ。

いや、岩みたいじゃあなくって、岩か……。

まあ、兎に角ストーンゴーレムの攻撃が迫っていた。

俺は回避のために身構える。

避けを重視した姿勢であった。

あんな重そうな攻撃は、避けるしかないだろう。

さあ、来いや!

って、俺が気合いを入れて身構えていると、ストーンゴーレムの動きが止まった。

魔力に輝いていた双眸からも光が失われて行く。

なぜ?

「ぜぇぜぇ、私の魔力が切れたわ……」

息を切らせながら黒マントの女が言った。

ちょっと待てや!

マジですか!

これから俺のかっこいいところを披露するところだったんだぞ!

もっと真面目にやろうぜ、あんたらさ!!

「姉さん、どうしやす!」

「こうなったら逃げるわよ!」

「「あらほらさっさ!」」

いやいやいや!!

逃げないでよ!

諦めないで最後まで戦いましょうよ!

あなたがた、いい大人でしょう。諦めんの早すぎだよ!

「てか、逃がすかよ!」

三人組が踵を返して逃げ出した。

真面目な俺は三人組を追いかける。

ここまで真剣モードで頑張ったのだから逃がしてたまるか!

「待てや、おまえら!」

俺が逃がさない意思を叫ぶと痩せた男が振り返る。

その手にはボールが握られていた。

そのボールを俺の足元目掛けて投げつける。

馬鹿め、また狙いを勝手に外しているよって思ったら、地面にぶつかったボールが破裂して凄い量の煙りを上げた。

俺の足が止まる。

「な、なに!?」

煙で視界を奪われただけでなく、鼻に突く悪臭が喉にまで届いて激痛を感じさせた。

目眩めくらましの煙玉かよ!?

「ちょ、超小賢しい!?」

俺がたじろいて居る間に三人組は山を登って遠くに行っていた。

速くね!?

超速すぎじゃあね!?

逃げ足だけは、超一流だな……。

しかもチビマッチョはなんか風呂敷を背負ってやがる。

最低限の荷物か戦利品をちゃんと持って逃げやがったな。

緊急避難ようの荷物でも纏めてあったのか?

だとすると、やっぱりあいつらは逃げるのは達人級だな……。

俺は遺跡跡地に一人残された。

まだ、大量の荷物が残されているから、やつらが戻ってくるかも知れないと考えて、一晩ここで過ごして待つことにした。

でも、ヤツらは戻って来なかった。

逃げ足が一流なだけあって、引き際も心得ているようだった。

それから俺は荷物の山を漁って、マジックアイテムだけを探し出す。

マジックアイテムは、ダガー一本と、指輪の一つが残されていた。

その他に魔法の羊皮紙スクロールが二枚あった。

これらだけは俺へのご褒美だとして、ガメさせてもらう。

猫ばばみたいでごめんなさい。

残りはソドムタウンに戻ったら商人ギルドに報告して取りに来てもらおうと思う。

上手くしたら山賊に合った商人たちの元に戻るかもしれない。

多分、困っているだろうしな。

こうして俺はソドムタウンに戻って冒険者ギルドに事件の解決を報告した。

三人組を取り逃がしたのは残ねんだが、もうヤツらはこの辺で悪さもしないだろう。

儲けた金で、真っ当な道に人生設計を修正してくれればいいのだが。

まあ、淡い期待だろう。

そこまで俺が心配しても仕方がないことかな──。


【つづく】

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