ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第38話【魔法使いギルド】

ゴブリン退治の依頼から俺がソドムタウンに帰還して二日が過ぎた。

俺が引き起こしたウルブズトレイン事件は、瞬く間に広まり俺の悪名だけが先行することとなる。

あの事件で兵士に負傷者が沢山でたが、死者は無かったらしい。

また、一般人への被害も無かったとのことだ。

その二つのニュースが幸いだったと思う。

スカル姉さんが、この事件の犯人は俺だと知ったのが、多数の怪我人が出ているとして呼ばれ、ヒーリングを駆け回っている時だったらしい。

それで俺が捕まり留置されていると知り、身元保証人になってくれたとか。

それに、すんなり釈放されたのは冒険者ギルドの口添えもあったかららしいのだ。

何せ俺も新人だがギルメンなのだからね。

そもそも悪意があって引き起こした事件でもない。

ウルフファングネックレスのペナルティーに付いては誰にも語っていないけれど……。

でも、ネックレスをプレゼントしたスカル姉さんにはちゃんと効果とペナルティーは説明してある。

ネックレスを付けたまま町をでないこと。これは絶対条件だ。

そして俺は診療所に居候しながら二日間ほど怠惰に休憩していた。

だが、スカル姉さんに、ちゃんとした住む場所を見つけろと急かされる。

いつまでも病室用のベットを占領してもいられないってことだ。

とりあえず俺は、纏まった金額を作りたかったので『ムーンワンド』を売ることにした。

限定過ぎて俺には合わないマジックアイテムだからだ。

正直なところ名残惜しくもない。

俺がスカル姉さんに良い販売場所はないかと訊くと、魔法使いギルドを進めてくれた。

更にスカル姉さんのサイン入り紹介状を、また書いてくれた。

これを持って魔法使いギルドのゾディアックって人に会えばいいと進めてくれる。

なので俺は杖と紹介状を持って診療所を出た。

それが午後一の話である。

魔法使いギルドは、町の一角に聳えるやたらと目立つ塔のような背高い建物全部がそうらしい。

全国に広がる魔法使いギルドのソドムタウン支部らしいのだ。

ソドムタウンに来た時から目立っていた建物だったから、俺はてっきり見張り櫓をかねた軍事施設だと思っていた物が魔法使いギルドだったと知って、少し驚いた。

でも、塔に巣くう魔法使いのイメージ通りだと思った。

やっぱりキャラ建ては大事である。

そして、塔の中に入ると、一階は広いショッピングスペースだった。

ショーケースに幾つものマジックアイテムが並び、値段や効果の説明書きがされていた。

戦闘用から一般生活用などと様々あるが、どれもこれも高額である。

これでは一般人が、おいそれと買える代物ではないだろう。

だからかな。このショッピングスペースには客が少ない。

寧ろ警備のほうが多く見受けられる。

俺が興味本意で商品を眺めて歩いていると、とあるマジックアイテムの前で足が止まった。

商品名と値札を見れば───。

【ウルフファングネックレス。2700G】 

うむーー……。

まさかね……。

俺は確認のために説明文を読む。

【ウルフファングネックレス±1。視力向上。ただし野外で狼の怒りを買いやすくなる】

間違いねえ!

あのペチャパイ女、売りやがったな!!

しかも速攻で!!!

マジで信じられないわ!!!

まあ、落ち着け!

まあまあ、落ち着け、俺!

ともあれ一度くれたものを本人がどうしょうと、持ち主の自由だがな……。

それにしても、ひでえ……。

二日前は、俺もちょっぴりウルウルってしてたのにさ。

本当に女って現金だよね……。

キャバ嬢に貢いで振られる野郎の気持ちが少し分かった気がした。

まあ、気を取りなおしていこう。

あのネックレスが2700G で中古販売されているならば、この杖だって同じぐらいの価値は有りそうだ。

少なくても販売価格の半値では買い取ってくれるはずだろう。

よし、俺は買い取りカウンターに向かい杖と紹介状を出す。

受付をやってくれていたお姉さんが「少々お待ちを」と言って奥に引っ込んで行った。

するとしばらくして痩せたお兄さんと一緒に戻って来る。

あのお兄さんがゾディアック氏なのだろう。

お兄さんがカウンター腰に話し掛けて来る。

「手紙は読んだよ。ドクトル・スカルの弟子なんだってね」

弟子!?

そう言う設定なの!?

「いやあ、なんといいますか……」

突然の設定だったので、どう反応していいか分からず、しどろもどろとしてしまった。

「私はゾディアックだ。キミの名前は?」

「アスランです」

「じゃあ、アスラン君。奥で話そうか」

「あ、はい」

踵を返して歩いて行くゾディアックを俺は追った。

カウンターの横を過ぎて奥の部屋を目指す。

そこは応接間だった。

艶ある黒革のソファーセットに漆塗りの美しいテーブル。

幾つもの立派な家具がならび、部屋の中に在るものすべてが高級品に窺えた。

ここは上等な客が招かれる部屋だろう。

俺のような貧乏少年が入って良い場所には思えなかった。

お兄さんがソファーに腰を下ろすと、向かえに座れと俺に促す。

お兄さんの見た目年齢は、二十歳後半から三十歳前半ぐらいに窺えた。

ブロンドの短髪を七三に分けている。

堀の深い顔は、かなり痩せていた。

細い体型だったが、背は高い。

おそらくスカル姉さんと同じぐらいだ。

人当たりが良さそうだし、しゃべりかたも慇懃である。

歳が離れている俺を子供扱いせずに、ちゃんとした客として迎えていた。

「商売の話の前に、少し雑談でもしようじゃあないか。いいかな?」

「ええ、構いませんよ……」

何故か挑戦的に聞こえた。

そこに俺は戸惑う。

「最近ドクトル・スカルが、若い燕を側に置いてるって噂は聞いていたが、少しイメージとは違ったよ」

なんか嫌な噂が立っていたようだ。

若い燕って、あれだろ。

ほれ、あれさ……。

オブラートに包んだ適正な言葉が出てこない……。

まあ、いいか。

兎に角だ。

だとすると、スカル姉さんに迷惑を掛けていたのかも知れない。

早めに軍資金を作って診療所を出たほうが良いかも知れないな。

それにしても、少しムカッとしたので、俺は反撃っぽく強気で言い返す。

「どんなイメージだったのですか?」

「いやいや、それは本人の前だから伏せておくよ。ドクトル・スカルの耳に入って機嫌を損ねられても困るからね」

丁寧で礼儀正しかったが、嫌みである。

なんだか個人的な話を始めたとたん、この人のイメージが悪くなった。

この後に始まる売買交渉前の威嚇なのだろうか?

俺の呑気だった表情も引き締まる。


【つづく】

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