ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第27話【呪いの対策】

ソドムタウンに到着したその日、俺はスカル姉さんの家に泊めてもらった。

スカル姉さんはソドムタウンで医者をやっているそうな。

診療所の三階に住居スペースが在り、そこで暮らしている。

俺は二階の病室に泊めて貰えた。

この三階建ての建物全部がスカル姉さんの所有物らしい。

医者を営んでいるだけあって、結構お金持ちっぽい。

夕食はスカル姉さんの手料理を頂いたんだが、不味かった。

それを口に出したら喧嘩に為った。

危うく追い出されるところだったが、最終的に俺が土下座して謝り許してもらえた。

次の日の朝食中にスカル姉さんに問われる。

「あんた、これからどうするの?」

「なにも考えていない。とりあえずは、冒険者を目指して頑張るだけかな」

「やっぱり冒険が目的でこの町に来たんだね、あんたも」

意味が分かんなかったから問う。

「この辺って冒険が盛んなのか?」

「そうよ、知らないで来たのか?」

「うん」

「この辺は遺跡やダンジョンが沢山在るし、モンスターも沢山巣くっている土地でな。その昔には魔王も誕生したヤバイ土地柄なんだ」

「へぇ~、魔王まで」

「だから一攫千金を狙って多くの冒険者がやって来る。だから男は冒険者を目指し、女はその男たちの性欲を満たすために体を売りに来るんだ」

「あー……」

俺は、どうリアクションしていいか困った。

「町並みを見て、気付かなかったか?」

「なにを?」

「男も女も若くて活きのいいヤツらばかりだっただろ」

胸が痛くて見ている余裕は無かったが、確かに女性は若い美人さんばかりだったような気がする。

「男は冒険が出来る間しかこの町に居ないし、女は稼げる間しかいない。町の住人の入れ替わりも激しいんだ」

「なるほどね~」

男の冒険者は体が効く若い間しか冒険が出来ない。

歳を取って体力が無くなれば冒険者を引退しないとならない。

女は、若いうちにしか娼婦として稼げない。

どちらも旬を過ぎたら町を出て故郷に帰るってわけか──。

そして、新しい若者が夢と金を求めてどんどんとやって来る。

その繰り返しなのだろう。

殺伐とした現実だな。

昔の中世の時代に、そんな町がちらほらあったって洋画でみたが、本当にあるんだな。

海外は、そう言うところがシビアだからな~。

あー、ここも俺から見たら海外か……。

やっぱりここは、ジャパニメーション的なファンタジーじゃなくて、海外のリアルファンタジーに近いのね。

スカル姉さんが更に語る。

「まあ、何を隠そう、私も二年前まで冒険者だったんだがな」

「え、もう引退したってことは、実はすげーババァーなのか? 若作りの達人なの?」

「解剖するぞ、小僧!!」

「じゃあ、なんで引退したんだ?」

スカル姉さんは、被っている髑髏のマスクを指差しながら延べる。

「目を怪我したんだ」

「あー……、それで」

「顔面に特殊魔法の攻撃をもろに受けてな。その特殊魔法ってのが、ヒールの効果を無効化するヤバイ魔法効果を持ってたんだ」

「あちゃー……」

「それで、目の視力が落ちて、冒険者として終わったってわけよ。その後はこの建物を買い取って医者を始めたんだ。もともとヒーラーだったからな」

「スカル姉さんも、苦労したんだな」

「まあ、私の場合は冒険でたんまり稼いでいたから。実のところ老後まで安泰よ」

「すげー、いいねー」

「あんたも冒険者を目指すなら、この町を拠点にするのがベストなんだけど……」

「そうなんだよね~。呪いのせいで、この町は生き地獄なんだよね~。困ったもんだ」

俺が他人事のように延べているとスカル姉さんが訊いてくる。

「あんたの呪いって、エロイ人を見ると発動するの?」

「そうなんだ。見たり考えたりするだけで発動するんだ。胸が痛くなって、最悪の時は気絶する。おそらくもっと最悪は死ぬんだと思う。死んだことがないから分からんけど」

「じゃあ、なんで私を見ても発動しない?」

俺はスカル姉さんを足先から舐めるように見上げて行く。

俺より高い身長。

ハイヒールも高い。

スラリと伸びた長い脚。

引き締まった腰まである長い黒髪。

スレンダーな体にボディコン衣装。

その上から白衣と聴診器を下げている。

胸はほどほどに小さなサイズ。

そして、綺麗だと思われる顔に髑髏のマスク。

結論。

「スカル姉さん、エロく無いじゃんか、官能度低いよ」

なんだか身内のお姉さんっぽいのだ。

だから身内には興奮しない。

「なんだとクソガキ!!」

スカル姉さんが掴み掛かってくる。

「ウッキィーー!!」

また、揉み合いの喧嘩となった。

しばらくして二人は落ち着く。

「なるほどね。じゃあ、目線を伏せて見なければいいのか?」

「たぶん」

「じゃあさ──」

するとスカル姉さんが、タンスの中からフード付きのローブを取り出した。

「これで目線を隠してたらOKじゃない?」

「おお、頭いいね!」

俺はフード付きローブを手に取ると着込んだ。

フードを深々と被り目元を隠す。

いい感じかも知れない。

「ちょっと外出て試してくるぜ」

「いってらっしゃ~い」

俺はスカル姉さんに見送られながら町に繰り出した。

朝だというのに既に娼婦の姿がポツリポツリと窺える。

だが、フードで視線を下げて、余り上まで見なければ胸は痛まなかった。

やったぜ、成功である!

できるだけ誘惑的な言葉を無視すれば普通に町中を闊歩できた。

完璧ではないが、これならいけると自信を持てた。

俺はルンルン気分でスカル姉さんの診療所に帰る。

「ただいま~」

「おかえり。で、どうだった?」

「バッチリだぜ、これならいけそうだ」

「そうかそうか、それなら早速だが冒険者ギルドに行って会員登録してきな。登録がないと依頼も受けられないし、パーティーも組めないからな」

「そうなのか?」

「ほれ、これを持ってけ」

そう言うとスカル姉さんがスクロールを差し出した。

冒険中に拾ったスクロールと違って綺麗で新しい羊皮紙である。

俺はスクロールを受けとりながら問う。

「なにこれ?」

「紹介状だ。私からのお墨付きが書いてあるから、審査も簡単になるだろうさ。これでも昔は有名な冒険者だったんだぞ、わたしは」

「ありがとう、スカル姉さん!」

「とりあえず、荷物はここに置いてっていいからな。登録を済ませて住む場所を確保しろ」

「イエッサー!」

俺はスカル姉さんの診療所を飛び出した。

だが、直ぐに診療所に戻る。

「早いな、どうした?」

「冒険者ギルドって、場所どこなん?」


【つづく】

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