ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げをしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語。(タイトルに一部偽り有り)

ヒィッツカラルド

第13話【少女A】

俺が眼を覚ますと、椅子に縛られていた。

全裸でだ……。

おいおいおいおい!

唐突だな、おい!!

てか、また全裸かよ!?

何故に全裸なんですか、俺!?

全裸、多くね!?

そして、何で椅子に縛られてるの、俺!?

しかも猿轡で口が塞がれているじゃん!?

分からん!?

何が何だか分からねーーよ!!

とりあえず、冷静になろう……。

先ずは状況把握からだ。

今、俺は何故か全裸で椅子に縛られている。

身に付けていた服も装備も全部無い。何もない。

ルビーの原石を入れといた巾着袋も無くなっている。

口は頑丈な布で猿轡をされていた。

声も出せない。

とてもじゃあないが、噛み切れるレベルじゃあない。

背もたれの後ろに両手を回されて、荒縄で手首を縛られている。

背もたれに手首がロープで固定されているから、まったく腕は動かせない。

更に上半身を荒縄で縛られていて苦しいぐらいだ。

両足首も椅子の足に縛られていて固定されている。

立ち上がるのは不可能だ。完全に身動きできない。

ジャッキーみたいに、椅子に縛られたまま戦うなんて真似はできないな、こりゃあ……。

俺の前には木製の手作り感が溢れるテーブルが置かれていた。

テーブルの上にはくたびれたランプが一つ置かれていて、薄暗い部屋を照らし出している。

このランプが、この部屋で唯一の明かりだ。

部屋の広さは十畳ぐらいかな。

壁は煉瓦作りで窓は無い。

天井は板張りだ。

隅にクモの巣が張っている。

上りの階段が一つあるから、ここは地下室っぽかった。

耳をすましてみると、上の階に誰か居るのだろうか、木の床が軋む足音が微かに聴こえてくる。

壁際には棚が幾つかあり、粗末な木箱が収納されていた。

その他にも何だかいろいろな物が置かれているから、物置だと思う。

さて、ここまでは問題ない。

俺が全裸で、地下室の椅子に縛られて居ること以外は問題ない。

いやいや、普通なら、それだけで大問題だわ……。

でも、それよりも問題なのは、俺の前に置かれたテーブルの上にあった。

ランプが置かれている以外に大きな異変が見て取れた。

なんか、すっごく染みだらけだ。

赤茶色に乾いた染みが全体的に広がっている。

なんだか血溜まりが乾いて赤茶色に変色したような感じである。

それに嗅いだことがないような臭いが室内に充満していた。

とても気持ちが悪い臭いだ。

生臭いのだ。

この部屋に居ると、悪臭で気分が悪くなる。

本能から拒否している感じだった。

さてさて、これからどうしたものか……。

上の階に誰か居るから、騒いで助けを求めるか?

否。愚策だろうな。

おそらく上の階に居る人物が、俺を縛り上げて監禁した犯人だろう。

犯人が助けてくれるわけがない。

しばらく考えていると、上の階から扉が開くような音がしたあとに、誰かが会話をしているような声が聞こえてきた。

耳をすまして会話を聞き取ろうと集中する。

二人居るようだった。

男性と女性の声だ。

「──旅人が来なかったかい。家の坊主が言ってたんだがな?」

「あ~、あのかたですか」

「なんでも急に気絶して倒れたとか?」

「その旅人さんなら、少し休んだら、直ぐに旅立ちましたよ。なんでも急ぐ旅だとか」

最初の声は男性だった。

次に聞こえた声は女性である。

女性の声は可愛い。

聞き覚えがある声だった。

確かキッズたちに宿屋の場所を訪ねていたら、後ろから声を掛けて来た彼女だろう。

可愛いポニーテール女子だったな。

一目惚れのあまりに胸が痛みだして、それで気絶したのだ。

今もちょっと胸が痛み出す。

なんだか、これだけ聞くと、俺が凄く無垢でピュアなキャラクターっぽく聞こえるな……。

本当は糞女神の呪いのせいなのだが……。

更に上の階の会話が続いた。

「……ちゃんも、気を付けるんだよ。ここ数ヶ月、コボルトたちが人攫いをしているんだから。もう四人の村人が拐われているんだからね」

「はい、気を付けますわ。ちゃんと戸締りもしておきます」

「お年寄りや、子供のような弱い者ばかり狙われるから、独り暮らしの……ちゃんは、本当に気を付けなよ」

「はい」

なんてことだ。

やっぱりあのコボルトたちは悪党じゃあないか。

家畜を襲うどころか、酷いことに村人を拐っているなんて残忍な話しである。

村人なんて拐ってどうするんだ?

家畜なら拐って食べるんだろうが、村人も拐われたら食われるのかな?

人食いコボルトなのかな?

やっぱりコボルトも雑食モンスターなんだな~。

にしても……。

俺は眼の前のテーブルの赤茶色な染みを凝視した。

それから自分の拘束された状況を冷静に把握する。

そして先ほど彼女は嘘を付いていた。

一字一句、覚えている。

コピペしたかのように覚えている。

彼女は、こう言った。

『その旅人さんなら、少し休んだら、直ぐに旅立ちましたよ。なんでも急ぐ旅だとか』

これって俺のことだよな。

やっぱり彼女は嘘を付いてるよね。

上の階の話が続く。

「それにしても、酷い話だよ。食べ残した骨を村の隅に捨てるなんて、コボルトは鬼畜なモンスターだな」

「本当に怖いですよね……」

「じゃあ、そろそろワシも晩飯の時間だから帰るね」

「私も晩御飯にしますは。では、気を付けて。お休みなさい」

「お休み───」

そして扉が閉まる音がした。

あー、ヤバイな~。

騒ぐタイミングを逃してね、俺?

絶対、今の男性が扉を閉める前に、出来るだけ騒ぐべきだった……。

今からでも遅くないかな?

いいや、ここは体力を温存しておこう。

まだチャンスは来るはずだ。

しばらく上の階で彼女が歩き回る音が続いていた。

その音がこちらに近付いた。

そして階段のほうから、ぎぃー、って、床下扉が開かれる音がした。

彼女が地下室の階段を下りて来る。

満面の笑みだった。

安物のスカートに、茶色くくすんだ色のエプロンを着ている。

ポニーテール少女の笑みは可愛かった。

流石は一目惚れの相手である

しかし、今回はペナルティーが発動しなかった。胸は苦しくならない。

何故なら彼女の片手に、鉈のような肉切り包丁が握られていたからだ。

ヤバイわ~……。

超ピンチだわ~……。


【つづく】

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