神に気に入られて異世界転生した俺は、救世と終焉の神殺しとなる

あざらし

89話 勇者(偽)(笑)一行との再会



ギルドの受付前で体がぶつかり、再開したくもない一行と再会をした俺


彼らの反応は二通りで






「な、なんで・・お前がここに!」






「あ、お久しぶりです」






といった感じで言葉を発する


前者は勇者(笑)の来栖と小判鮫的な戦士の阿藤


後者はレンジャーの八木、賢者の春宮、剣士の姫崎


前者二人の相手は疲れるので






「久しぶり。あの件から12か月か。今日は何でフェリックに?」






後者三人にだけ挨拶を返し、色々と聞いてみることにした


いや、だってね・・・もう既に前者二人は喧嘩腰で話になんないし、興味もないから無視した方が楽なんだよ


好きや嫌いの反対語は無関心って言うけどさ、あれって興味がないからそうなるんだよね


そして俺は、あの二人に興味が無いので無関心になるわけだ


尤も、俺の大切な者達に何かするなら、ただじゃ済まないが・・


とりあえず、何故ここにいるのか聞いてみるか






「どうしてここに?君達は確かダグレストで活動してたはずじゃ?・・いや、そもそも冒険者登録してたのか?」






「それについては順を追って説明しますね。まず・・・」






そう言って説明し始めたのは春宮だった


春宮は国外追放処分の後の事から話し始めた






国外追放処分後、ダグレストにて大臣と王に報告し、王家の紋章を売りに来た商人を処刑


その後、俺にボロ負けした話を聞き、勇者(笑)を徹底的に鍛え上げるべく、半年間の訓練


その後、いくつかの実践訓練を得て、3か月前に『外を知るのも必要だな』とダグレスト王が意見し、冒険者登録


3か月でBランク冒険者にまで一気になったそうだ


ただ、開始ランクがDランクだったと付け加えていたが






春宮の説明を聞いたが、少し腑に落ちない


Dからのスタートとはいえ、3か月でBなら冒険者ギルドで話題になるはず


それは自国だろうが他国だろうが絶対に噂にはなるし、情報も流れてこないのは明らかにおかしい






思案してると、そこにギルマスが現れ






「何か騒がしいと思ったら、また君達か。それで、クロノアスも何をそんなに考えている?」






おや?他の人にわかるほど俺はそんなに考え込んでいたのか?


だが、丁度良い時に現れてくれたものだ


ギルマスの方へ向き直り






「この3人とは少しばかり縁がありまして。それで、気になる事が出来たので、ギルマスにも同席してもらえないかと」






この提案にギルマスはちょっと嫌な顔をする


その顔はまるで「絶対面倒事だよな!?そうだよな!?」と物語っており、正解なので否定はしなかった


代わりに「ダグレストの情報が得られるかもですよ」的な顔をして見せる


ギルマスはため息をつき






「え~と・・そこの3人とクロノアスはわしの執務室に来てくれ」






とだけ告げ、部屋に戻っていく


3人しか呼ばれなかったことに来栖は






「何故3人だけなんだ!?俺も行くぞ!」






と息巻いて、阿藤と一緒について来ようとするが






「以前に非協力的だったので、お断りさせていただきます」






端的に、感情を乗せず、事務的に断ってやった


癇癪を起したように喚き散らす勇者(笑)


これでは流石に邪魔になるので






「これ以上迷惑をかけるなら、然るべき処置を取ることになるけど?フェリック冒険者ギルドのギルドマスターが俺と3人を指名した。それにな、俺はSSSでお前らよりも先輩冒険者だ。その俺が3人と話をしていて、それを見たギルドマスターが決めたことだ。ダグレストじゃどうか知らないが、ここはフェリックだ。身の程をわきまえろ」






感情を全く乗せず、正論で論破していく


論破は全く効果をなしてはいないが、然るべき処置をすると言われて、黙り込み睨む勇者(笑)


阿藤も同様に黙って睨む






そんな二人を放置して、三人へ執務室へ行くように促し、俺もその後に続く


二人の方へ振り返ることなく、俺達は執務室へと入っていった






執務室に入り、ギルマスが座る様に促す


俺は慣れたもので即座に座り、三人も俺にならい、順に座る


皆が座り、ギルマスが質問をしていく






「一体ダグレストで何が起こっているのか?話してもらえるかな?」






優しくも、どこか威圧感のあるギルマス


色々と疑いがあるので仕方ないのだが


そんな中、姫崎が






「答える前に、少しだけ愚痴っても良いですか?」






なんてことを言いだす


ん~・・・あの二人だし、ストレス溜まってるのかな?なんて考えが頭をよぎる


ギルマスも「話してくれるなら」と了承し、三人の愚痴大会が開かれることになった








「あの馬鹿!優華に気があるくせに、私を口説いてきたのよ!私は、裏の顔が最悪な男なんてお断りよ!」






「私も粘着されて気持ち悪かったな。正直、最近の光闇はおかしいのよね」






「俺は相変わらずパシリにされてるな・・たまに、マジで暗殺したろうかって思うときがあるわ」






「そもそも!この世界が多妻制で、男尊女卑でも、こっちにだって選ぶ権利はあるわよ!」






「八木君・・もういっそ殺っちゃわない?」






「いや・・・春宮の考えの方が怖いわ。そこは理性をだな・・」






「八木・・殺るなら協力するわよ?私はもう、うんざりだしね」






「阿藤君も目つきがいやらしいよね?私、何度か着替えを覗かれそうに・・・」






「優華・・そういう時は目を潰しなさい。どうせ治せるんだから」






「2回くらいは潰したよ?それでも覗いてくるんだけど・・」






「あいつら・・・マジ殺った方が安寧は得られそうなだけに、断りづらいんだが」






とまぁ、愚痴の一部だけでこんな感じだ


八木に至っては「何度か捨て駒にされたなぁ」なんてことを言い出し、遠い目をしている


だが八木よ、何でお前はそれで生きて帰ってこれてるんだ?


ツッコミたいのを必死に我慢


そして・・愚痴大会は20分にも及び、最後には「「「聞いてますか!?クロノアスさん!」」」と言われる始末


つうか今までのって全部・・・






「(俺に聞いて欲しかったのかよ!)」






などと内心で叫び、ギルマスが「もうそろそろ・・良いかな?」と聞いたところで愚痴大会は終了する








「さて、本題に入る前に・・・」






「何かあるのかね?」






ギルマスが不思議そうに尋ねてくる


しかしこの件はギルマスに伝えるわけにはいかない


「ちょっと・・」と言って神眼を発動し、三人を凝視


・・・確認したが、特に何かされてるわけではなさそうだ


勇者(笑)一行は、知らない内に誓約をされてる可能性があるので、念の為に確認したわけだ


万が一、発動条件に触れて何かあってからでは遅いからな






「特に問題はなさそうだな。それじゃ、色々聞かせてくれ。・・・愚痴以外で」






さっきの愚痴大会は結構精神力を削られたので、嫌味も込めて注意しておく


注意された三人は視線を外し、愛想笑いで返した






「では、今ダグレストの冒険者ギルドはどうなっているんだ?」






空気を読んだギルマスが直球で切り込んだ


ナイス!ギルマス!


心の中でサムズアップをし、三人の返答を待つ


最初に話し始めたのは姫崎だった






「ダグレストは今、軍備増強をしています。ダグレスト国内では魔物の討伐依頼が極端に減ってるので、救済案として兵士の新規雇用をしていると聞きました」






「だが新規雇用をしているのはDとCだけと情報が上がっているが?」






「B以上の冒険者は貯えがあると判断されているみたいです。E以下に関しては実力不足だと聞いてます」






「・・・ギルドは人材を取られているのに何も言わないのかね?」






「同じBの先輩冒険者に聞いたのですが、何名かの幹部は不満に思っているようです。後、王宮からギルドに何名か派遣されているとも聞きました」






「国がギルドに介入したのか・・・」






「あくまで聞いただけなので、真相は分かりません」






今の内容に、ギルマスは片手で頭を掻きながら「これは、情報規制が必要かもな」と一人愚痴る


俺も気になっていることがあるので聞いておこう






「君達は3か月でBになったんだよな?なのに何で情報が流れてこないんだ?それだけ短期間の内に上がったのなら、噂が流れても可笑しくないんだが?」






この質問には春宮が答えた






「私達全員がBになったんですけど、それも王宮から何らかの要求があったみたいなんです。多分そのせいで、情報が流れなくなってるのかもしれません」






「それは確定情報なのか?」






「大部分は噂ですが、ダグレストのギルマスからは『君達の情報は極力伏せる様に通達が来ている』と言われました」






春宮の答えを聞く限り、ダグレストのギルドは王宮に乗っ取られつつあると見て良いのかもな


ギルマスを見ると、同じ考えらしく、首を縦に振っていた






こうなると、ダグレストは要注意国へと上げるべきだろう


ただ、どうやったらそこまでギルドに介入できるのか?


ぶっちゃけると、ギルド側の方が国への弱みを握っている事の方が多い


勿論国側もギルドの弱みは握っているだろうが、一方的にはならない


国側の方が闇の部分が多いのだから






この考えにしても、ギルマスとは一致した


ただ、ギルマスは視線で






「(それでも我々が、国に対して喧嘩を売ることはないがな)」






と合図をよこした


実はこれにも理由があった






冒険者養成所の一部資金を国が援助しているのが一つ


そしてもう一つが、貴族と言うものに関してだ






冒険者と貴族はそこまで相性が良くない


特に法衣貴族は冒険者を見下す傾向にある


流石にA以上には表立って見下すことはない


領地経営をしている貴族は、魔物の領域で仕事してもらわなければ、経済にダメージが入るので、素行の悪い冒険者を見下す位だ






だが基本的には、冒険者は野蛮で礼儀知らずと言うのが共通認識


なのに、家を継げない下級貴族は冒険者になる割合が多いと言う矛盾を抱えている


中には、当主なのに副業で冒険者をしている者までいる


流石に、子爵家以上はしていないが






そんな歪な状況を国とギルドが連携して成り立たせている背景があるので、基本は不干渉の協力関係になる


例外もいくつかはあるが・・・


例えば俺なんかがそうだ






俺の場合、何かあった時は国の意向が強い


例えば、ギルド側で不備があり、俺が危機的状況に陥って報告を上げれば、国から色々言われたり、報酬関係について口出しされることもある


代表的なのは上納金の辞退などだな






逆に国の方で不備があった場合は、報酬が上乗せされて、上納金は国が支払うなどの処置がとられる


俺は経験してないけどな


過去には、SSに上記が適応されて、ギルド側に色々と王宮から介入があった国もあるらしい






そんな関係がある以上、一方的な介入は明らかに異常であった


ギルマスも俺も思案するが・・・






「(情報が足りないなぁ・・)」






三人の話を聞く限り、確定情報が少ないのだ


確定情報でわかっていることは〘ダグレストが軍備増強をしている〙事だけ


ギルマスを見るも、両手を肩まで上げ、首を左右に振る


やはり、情報不足らしい






思案し続けること数分、八木が手を上げ






「え~と・・役に立つかわからないですが、一つ言い忘れてたことが・・・」






そんなことを言い始める


こちらは情報が欲しいので、話を続けるようにと八木を促す






「実は俺達を召喚した人物なんですが、ダグレストの王宮筆頭魔導士なんですよ」






王宮筆頭魔導士ねぇ・・・ん?それってどう違うんだ?


この世界の人間は多かれ少なかれ、全員が魔力持ちだ


なので、魔法使いと言う概念がない


魔法は使えて当たり前というのが世界規模での共通認識だ


たまに【魔術師】という者がいるが、これは媒体を用いて魔法を強化する


故に【魔術師】は【魔道具】を作る方に才能があり、別職業として区別されている


では【魔導士】とは一体?






首を傾げていると、ギルマスが説明してくれた






「【魔導士】とは、国が与える称号みたいなものだ。王宮に雇われ仕える中でも、一番上に立つ者が筆頭になるわけだ」






「ああ、そういう・・あれ?・・・でも、それだと・・・・」






そこで疑問がいくつも浮かび上がる


ギルマスは「何かおかしなことでもあったか?」と聞いてくる


だが、これについては話せないので






「待たれよ」






思わず素で返す


全員が「ア、ハイ」と片言で返したのを意にも止めず、全智神核を起動して一つ一つ精査する






『ただの人間が、他世界から召喚とか不可能だよな?』






『はい。マスターの前の世界ならば、科学的ならば理論上は可能ですが、それを行う為のエネルギーも召喚装置の素材も無く、絶対的起点と相対座標が無いので机上の空論となります。但し、理論上可能なのは、マスターの前の世界は複数の神々が手を放しているためです』






『この世界はそうではないと?』






『・・・本当は駄目なのですが、今回は異常事態とも取れるので説明します。召喚に必要なのは先に言った通りですが、この世界はエネルギーだけなら、条件を満たしています。召喚装置は、あくまでもエネルギーの収束機になるので、起点と座標があれば召喚は可能です。ですが、召喚に必要なエネルギーは、マスターの魔力を最低半分は絶対に使います。故に、マスター以外の人間には不可能です。神に関しては、生命神と死神以外、前の世界では手を放してます。破壊神は世界を終わらせるためにしか動きませんので、両世界から除外して頂いて構いません」






『収束機を作っていた場合は?』






『この世界では不可能です。制作に必要な鉱石は取れますが、加工が出来ません。特殊な加工が必要となるので、絶対に不可能です』






『・・・・となると、やはり・・・』






『神が関与しているか、神喰いの強力な欠片かの二択になりますが、私はそのどちらも関与していると提言します』






『根拠は?』






『それだけの莫大なエネルギーを神が使えば、他の神々が確実に気付きます。なので、起点と座標のみ手助けしたと思われますが・・・』






『時空の壁か・・そうなると、時空神様が怪しくなるが・・・』






『情報が不足しているので、どの神が関与したかは不明です。しかし、関与したと思われる神は絞られます』






『創世神様、時空神様、全智神様、魔法神様、死神様、そして・・・』






『生命神ですね。これらの神は干渉が可能です。』






全智神核との会話を終え、思考加速して思案


一番の容疑者は、神喰いの言葉を信じるのならば生命神


しかし、証拠が無い






だが、一つだけわかったこともある


ダグレスト国内の、それも召喚に立ち会った者の誰かが、神喰いの強力な欠片を自我を保って使用出来ているという事


そしてもう一つ






「(黒竜の事とスタンピードに、何か関与している可能性があるか)」






そうすると、このまま三人をダグレストに帰すのは危険ではなかろうか?


彼らの体内にある魔道具に気付かれたら、消去される可能性も0ではない


そこまで力があるのかは不明だが






さて、どうしようか?


更に思案して、出した答えは






「3人の魔道具を強化しようと思う。高い確率じゃないが、不安要素が出来た」






「その不安要素って何ですか?」






八木が代表して聞いてくるが






「悪いが答えられない。ただ、その不安要素を払拭するために強化する。今回はかなり本気で強化するから安心してくれ」






俺の言葉に三人は不安顔になりながらも承諾する


強化自体は魔道具を飲み込んだまま、服の上からでも出来るので、胃の辺りに手を当て、力を流し込む


少し熱かったようだが、火傷とかは無く、無事に強化完了


そして、ギルマスには






「情報規制とダグレスト内の情報収集を綿密にした方が良いでしょう。それと、急激に力をつけた者は要注意です」






「その根拠は?」






「詳しくは言えませんが、腐竜に似た力を持つ何かがいる可能性があります。そして、それを分け与えられるなら?」






「・・・なるほどな。しかしそんなことをして、無事でいられるのかね?」






「だから要注意なんですよ。警戒しすぎても損なことは無いでしょうし」






「・・・・・わかった。皇城には・・」






「軽く報告を上げて、情報収集と注意喚起を。ランシェスには自分から報告します」






こうして、話し合いは終了した


思わぬ情報も出たが、これは幸運と言うべきだろうか?


判断に悩むところではある


ただ一点、確実にわかったことがあるのは収穫だな


どの神かは確定してないが、確実に世界へ大きく関与している神がいる






だから俺は誓う








俺の大切に手を出すのならば、もう一度〝神殺し〟をしてやると








そして俺は、大切な人達がいる場所へと帰った



3月からは19時に更新します
次話は3月1日の19時になります
        

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