神に気に入られて異世界転生した俺は、救世と終焉の神殺しとなる

あざらし

77話 クラン発足

カクヨム累計50万PV・なろう累計20万PV達成!


同盟会議がようやく終わり、肩の荷が下りた俺だが、最後に揉めた爵位の件で気付いてしまった事があった

いや、正確には気付いていたけど放置していたが正解かな

と言うのも、会議には当然だがお付の人がいる訳で・・・ランシェス側のお付に何故か父が居た

だから有耶無耶には出来なくなってしまった

自分が父より爵位が上な件について・・・



だがその懸念は、聞くと意外とあっさりとしたものだったが、衝撃的でもあった

何と父も陞爵しており、自分と同じ侯爵だったのだ!

ただ、陞爵の条件として、領地を早々に兄達へ継がせる事になった模様

陞爵して法衣侯爵となった父は、新しく作った相談役という役職に就き、王城勤めになったそうだ



兄達は辺境伯と伯爵の爵位を与えられ、独立貴族のクロノアス家となった

父と俺が法衣侯爵で王都クロノアス家になり、クロノアス領領主2名を加えたクロノアス閥が誕生したわけだ

俺は未成年と言う事もあって分家扱いのままではあるが

また兄達は、領地運営の勉強をしていたとは言え、圧倒的に経験値が少ない

その為、暫くは父が後見人を務め、10年後位には完全に手を離すそうだ



ただ、ここで疑問が一つ

何故父や兄達は陞爵で来たのか?

その疑問は陛下の言葉によって解決する



「実はな、クロノアスから辺境伯を無くすわけにはいかないのだ。先祖からの申し送りで〖あの領地を治めている間は、絶対に辺境伯以下にしてはならない〛とあってな。新しい領地が増えて治める際は、その限りではないのだが。ああ、後は法衣になった場合は〖子爵以下にしてはならない〛ともされているな」



過去からの密約か

我が家の系譜は、小国家王族になるからな

兄達の爵位は密約と領地の広さに合わせたと言った所か

そう結論付けた俺に、父が本音をぶっちゃける



「と言うかな・・グラフィエルが他国に勧誘され、出奔されると困るからな」



とんでもな俺が居るせいで『もういっそ囲っちまえ!』と言う風になり、クロノアス閥が更に拡大したわけだ

陛下も近い将来に俺が義理の息子となるので、それならば!と俺の父を傍に置いておき『心労を共に分かち合おう』と言う意図もあり、父を陞爵させて今に至る



心労を分かち合おうとか失礼にもほどがある

・・・・・・はい!すいません!ごめんなさい!

結構色々とやらかしてるので反論できません



まぁ、こんな感じで会議の最後は締めくくられて閉会した

余談だが、竜王国国王一行と皇帝陛下一行は1~2週間遊んでから帰るそうだ

帰る時は当然、俺のゲートを使用する事に

・・・・・俺はタクシーじゃないんですがねぇ




同盟に関するややこしい話も終わり



「(気分転換に何か依頼を受けよう)」



と閉会の翌日にギルドへ向かうと、ギルマスに部屋へ来るように言われる



「(何か指名依頼かな?)」



なんて考えがよぎったが、部屋に入った後に話をして、ギルマスに思いっきりため息を吐かれ、呆れられることになった

何故そんなことになったか?それは、この様なやり取りがあったためだ



「わざわざすまないな。まぁ、座ってくれ」



「では、遠慮なく。それで話と言うのは?」



「前に伝えていた〝クラン〟についてなんだが、色々と思う所もあってな・・・試験的に3つ作る事にしたんだが」



「はぁ・・それで?」



「高ランクで評判の良い奴に任せようと思ってるんだが、問題は〝どのランクからならクランを作っても良いか?〟と言う判断がな」



「Aからで良いのでは?クランへの所属は任意にして、AがトップならA以上は入れないか、審査を厳しくするか、所属時に何かしら決めれば良いかと」



「それで行くか・・とりあえず、Aから1名とSから1名立ち上げて貰うとして、そちらはどうだ?」



「どうだ?・・・とは?」



「?・・・・クラン立ち上げの進捗具合なんだが?」



「・・・・あ!・・・え~と・・」



「忘れてたんだな?そうなんだな!?」



「あはは・・・」



「はぁぁぁぁ・・もうこの際、忘れてた事は良いから。いつ頃出来そう何だ?」



「建物とスタッフさえ見つかれば、とりあえずは出来るかなぁと」



「なるべく早く頼むよ・・・」



こんなやり取りがあって、相当に呆れられてしまったのだ

てなわけで、早急に建物を見つけなければならない

だが、懇意にしてる店が少ないので困った



当てもなく歩いていると・・・とある人物と出会う

ダズバイア侯爵と婚約者のノスシアだ

二人もこちらに気付いた様で、シアは手を小さく振っている

こちらも手を振り返してから、二人の元に赴く



「こんにちは。ドバイクス卿。今日は買い物ですか?」



「ああ。娘の服を買いにね。ところで、クロノアス卿は私の事をお義父さんと呼んで良いんだぞ」



「まだ気が早いですよ。ドバイクス卿」



他愛のない挨拶を交わし、その場を去ろうとするとシアに呼び止められる

何かな?とシアを見ると、彼女は首をコテンと傾げて



「ラフィ様は何かお困りで悩んでるですか?」



と、見事に悩んでる事を当てられてしまった

俺は顔に出やすいのであろうか?

そんな考えを読み取った様にシアが説明してくれた



「ラフィ様のオーラがいつもと違かったのです。それで何か悩んでると思ったのです」



オーラだと!?まさか精霊眼で見ていたとは・・・って!そうじゃなくて、何で精霊眼で見てたか?だろうが!

心の中でノリツッコミをしてからシアに聞いてみると



「ラフィ様と会った時は、変わった様子が無いか毎回確認してるのです」



なるほど・・今日はいつもとオーラがちょっと違うから、悩んでいるとわかった訳か

シアに見抜かれてしまったし、ドバイクス卿に相談してみるか

チラッとドバイクス卿を見ると『任せなさい!』って顔をしていたので話してみる



「実は、不動産関連でちょっと困ってまして・・」



「うん?確か屋敷は、この前完成したよね?」



「屋敷ではなく、冒険者ギルドで試験的にクランを作る事になりまして。それでギルドの近所に、それなりの建物を用意しないといけないのですが・・・。生憎と不動産屋に知り合いが・・・」



「ふむ。・・・一つ解っていないようだから教えておくよ。グラフィエル・フィン・クロノアスになら、何処の不動産屋でも揉み手で良い物件を紹介するぞ」



「え?・・面識も無いのに何故?」



「勘違いしたらいけないのは、クロノアス家ではなく〝グラフィエル・フィン・クロノアス〟と言う一個人に対してだ。君はそれだけの偉業を成し遂げているんだよ。商会等は土下座して考えられない貢物をしても君の筆頭商会になりたいだろうねぇ」



そんなわけ・・と思うがドバイクス卿の顏は至って真面目であった



「うちに来る商会も『クロノアス卿と会えるように取り持って欲しいのです!』と言われていてね」



この言葉に、俺は反論できなくなってしまった



そこでふと考えを変えてみた

ドバイクス卿は将来お義父さんになる人で、付き合いのある商会から俺を紹介してくれと懇願されている

俺は不動産に関して悩んでいる

ならここは、ドバイクス卿に花を持たせても良いのでは?

その考えのまま、ドバイクス卿に質問をする



「先ほど言っていた商会は不動産も扱っているのですか?」



「一応扱っているが、数は不動産屋より少ないし、少し高めだな。質は贔屓目に見ても悪く無いと思うが」



「不動産専門の取引先もあるのですか?」



「実は無くてな・・・。だから今の商会に一任している。特に悪さを働いているわけでは無いし、少しお高めなのは数が少なく専売特許ではないゆえの事だしな。売買は両方高めとも聞くし」



「質は悪くなく評判も悪くないのですか。・・・それでしたら、ドバイクス卿の口添えでその商会に合わせて頂きたいのですが」



「それは構わんが・・本気かね?」



「本当に質がそれなりならば、今後お付き合いもあるでしょうし。もし良い物件なら、不動産だけになるかもしれませんがドバイクス卿も面目を保てるのでは?」



最後の言葉にドバイクス卿は少し考えた後、後日伺うのではなく、シアとの買い物を切り上げて時間を割いてくれた

親子の団欒を邪魔するのも悪いので、後日で良いと断ったのだが「娘も喜ぶし」と言われては、流石に断れなかった



ドバイクス家の馬車に乗せて貰い、3人で商会へと向かう

俺含めて3人だったので「奥さんは?」と聞くと、お茶会と言う名の貴族特有なドロドロとした婦人会にご出席で、この後合流するそうだ

その後は他愛のない話をしつつ、15分位で目的の商会へ着く



商会の名前はシャートゥルー商会

ロケット積んで宇宙に行きそうだなと思ってしまった

そんなことを考えている間にドバイクス卿は商会の主人を呼んで話をしている

少し話すと俺を含めた3人はVIP室らしいところに案内され、商会の主人が揉み手で挨拶をし、商談へと移る



「この度は我が商会を選んでいただき誠にありがとうございます。ダズバイア侯爵様にお聞きしましたが、建物をお探しだそうで」



「試験的にだが、冒険者ギルドでクランというものを作る事になってな。それなりの規模で質もそれなりの物件を探しているんだが」



少し上から目線なのは、俺が貴族家当主であるからだ

ドバイクス卿に紹介されてるとは言え、それ相応の態度にしなければならない

貴族が平民に遜へりくだる事などあってはならない

その為にノブレス・オブリージュなんてものがあるのだから



この場では誰もがわかっているので問題も無い

少しフレンドリーになるのは、それなりに付き合いが長く時間が経ってからか、良く商談するかのどちらかになってからである

現状、この商会とは前者になりそうな感じだな

尚、級友の両親が経営するシャミット商会は、本店のみ後者になる



俺の態度と言葉に、商会の主人は少し考え、いくつかの紙を店員に持ってこさせた



「お話を聞く限り、こちらの3軒が良さそうですが。整備と補修は終わらせてあります。掃除も3日に一度は行っておりますので、直ぐにでもお引渡し出来ます。規模に関しては、具体的なご提示がございませんでしたので、それなりに広い物件をご用意させて頂きました」



そう言われて3枚の見取り図を見比べる

その中の一つは直ぐに断った

2階建てで部屋数は多いがどれも狭い

最大の広さでも2Kでは話にならなかった

で、迷っているのが残りの二つ



一つは平屋

建物面積が縦にも横にも広い

デメリットは平屋なので事務的な物が丸見えになりそうなこと



もう一つは3階建て

用途に合わせて使い分けが可能だが、平屋の物件よりは1部屋の広さが狭くなる

それでも断った物件よりは遥かに広い



・・・・一つ気になったので聞いてみる



「この二つの建物だが、増改築や内装工事は可能か?」



「平屋の方ですが、増築は無理です。職人が変なこだわりを見せた物件でして、増築すると1階が重みに耐えれません。3階建ての物件も同様ですが、一部分限定であれば増築は可能です。内装に関しましては、部屋数の増加や減少でしたら、3階建ての物件なら全て可能です。平屋の方は、一部の部屋を繋ぎ合わせるか減少なら可能と言った所でしょうか。平屋の作りから考えると、飲食店が向いていると思います」



そうなると3階建ての物件の方が好ましいかもな

ただ、平屋の方も捨てがたくはあるな

う~ん・・・金はあるし、値段を聞いて買えそうなら両方買うか



「値段はいくらだ?」



「3階建ての方は白金貨1枚で平屋の方は8枚になります」



「ちょっと高いな。さて、どうするか」



「それでしたら、物件を見て頂いてから決めては如何でしょうか?工事が必要でしたら、我が商会で承らせて頂けたなら、調度品や家具類など、全て無償で手配させて頂きます」



「クランだからな。全て手配すると白金貨1枚は確実に行くぞ?」



「その程度でクロノアス卿にご利用して頂けるなら安い出費ですとも。私としては家具と調度品で白金貨6枚を想定しておりますれば」



「それ、ほとんど儲け無いよな?」



「今回はクロノアス卿とお見知りおきになれたことが何よりの利益ですので」



「上手いこと言うな。・・・両方買おう。工事に関しては、物件を見てから決める。代金は工事分も含めて払うから付き合え」



「ありがとうございます。では、馬車をご用意してまいりますので」



そう言って席を離れていく商会主人

ドバイクス卿はちょっと驚いており、その理由を聞いてみた



「貴族家当主とはいえ、未成年が大人顔負けの商談をするとは。貴族とて値引き交渉はする。だがクロノアス卿は一切せずに、大枚を出した。それにより商会側は、非常にやりずらくなった訳だ。」



俺は面倒な駆け引きを避けただけなのに過大評価されてしまっていた

そして、やりずらくなったとはどういう意味だろうか?

わからない事は聞くに限る



「ドバイクス卿。やりずらくなったとは、どういう意味でしょうか?」



「意図してやったのではないとしたら、天然の商人殺しだな。・・・簡単に言うと、〝クロノアス卿はこの程度の買い物では気にも留めない〟と思われたのだよ。」



「それが何故、やりずらくなるのですか?」



「商人とてプライドがある。勿論、粗悪品を売りつける詐欺師みたいなのもいるが、9割以上はプライドを持っている。そして、店主が自信を持って、値引き交渉を想定した商品を全くせずに購入される」



「とても良い事に思いますが・・・」



「私も思うです」



俺とシアの答えがシンクロする

それを聞いたドバイクス卿は、微笑みつつ



「二人とも若いから仕方ないか。・・・確かに良い事だが、商人のプライドはズタズタだろうね。そして、一方的に有利な取引など、怖くて仕方が無いだろうね。だから、店主は自ら利益率を下げたのさ。今後とも良いお付き合いをする為にね。相手からじゃなく、自ら利益率を下げなければならない相手と言うのは、非常にやりずらいんだよ」



この商会だが実は品物の質はもの凄く良く、主人も相当にやり手なので値引きしたとしても十分利益を出せるラインだ

その商会の主人から値引きを提案する話は聞いた事が無く、それを普通に出させた俺に驚愕しているわけか



何処が値引きなのかな?思ったが、家具や調度品を提供するのは初めてらしい

あの主人どれだけやり手なんだよ・・・

馬車の用意をしに行った店主が戻って来るまで、お茶を飲みながらドバイクス侯爵と話をし、シアは



「ラフィ様は、やっぱり凄いです!」



と笑顔であった




・・・・馬車の準備を済ませ、店主が戻って来た

ドバイクス卿も奥さんとの合流時間が迫っていたので、商会前にてお別れとなった



「是非クランにも遊びに来てください」



と2人に告げ、俺は物件を見に行く為、馬車に乗り込む

15分程馬車に揺られると物件の前に着くが・・見て驚く

買った建物は何と隣同士であった

細目でジロッと店主を見るもどこ吹く風で、挙句には



「こちらの方が、都合が良いと思いまして」



と言ってくる始末である

尚、購入しなかった2階建ての物件は、更にギルド寄りにあって遠目でもわかった

どう見ても格安宿っぽい建物なので買わなくて良かったと思う

買った物件を見て思った事は



「(それほど内装工事はしなくても良いかな)」



である

平屋の方は、出来る限り部屋は広くして部屋数は減らす工事を依頼する

結果、平屋の部屋数は6になり、広さは酒場が出来るほどになった



3階建ての方は3階を事務所にし、書類仕事はほぼ3階で行うようにした

2階は階段と大きな一部屋だけにし、非常事態時の会議室兼招集場所

1階はクランへの指名依頼受付と依頼達成報告にクラン加入希望者受付などの総合受付とした



平屋の方は酒場風の情報交換に指導部屋や休憩部屋等の待機場所

通常依頼の張り出しなども平屋の方で行っている

鍛冶屋には無理を言って頼み込み、装備の手入れや修理が出来る鍛冶部屋も作った

鍛冶部屋は簡単な設備しか置いてない

買い替えなどは提携した鍛冶屋に優先的に頼むことになっている



提携した鍛冶屋は、王国でも名の知れた鍛冶屋で量産品でも高く、クランでは弟子が作った武具を格安で販売して貰っている

弟子が作った装備は、余程の物でない限り販売せずに廃棄するので、それを格安で譲ってもらったわけだ

親方作かオーダーメイドは自分で稼いで作って貰ってくれ



物件を見てから、工事に関して指示を出し、建物の代金と工事費用に家具と調度品を頼む

ついでにと、クラン職員の募集も頼んで白金貨10枚を渡した

流石に貰い過ぎだと半分を返してきたが



「優秀な職員と受付に関してはクランの顏となる職員を」



と注文を出して、手間賃込みで受け取らせた

商会の主人は目をぎらつかせ



「最高の人材を集めます」



と言って、商会挙げての採用募集をかけたそうだ

ドバイクス侯爵に後で話を聞くと



「『人材については逆に試されてしまいました。流石はクロノアス卿です』と言っておったよ」



と、感心していたと言われ



「(実はもう面倒くさくなって、押し付けたとは言えないな)」



俺は愛想笑いで誤魔化した



何とか月が替わる前に全てを終える

翌月、正式にクランが発足して稼働した

クラン名は白銀の翼

何故この名前かって?特に意味はない!







後に〝クラン・白銀の翼〟は世界的に有名になるのだが、それはまだ先の話である


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