神に気に入られて異世界転生した俺は、救世と終焉の神殺しとなる

あざらし

67話 迷宮攻略と聖魔剣




10階層の大扉を開けて中に入ると、そこは大きな部屋1つのみだった

部屋を進んでいくと召喚陣が魔物を呼び出す

出てきたのは殻竜と翼竜のコンビだ

後ろの5人は警戒し、戦闘態勢に入るが、俺は見下ろす2体の首を瞬時に刎ねた

神双剣サティーヤ・ダズラを一振りである

5人は呆気に取られたまま、何が起こったのか理解できない様である

そんな彼らに「さっさと行くぞ」と告げて、歩き出す

2体の死体はさっさと空間収納にしまって出発だ



11階層

ここからはアンデットが多く出現した

光魔法で瞬時に倒せるので苦労は何も無かったりするが

ただ、余分にお荷物が増えたので攻略スピードは少し落ちてはいる

あまり気にする程でもないけど

11~19階層を突破する迄にかかった時間は約6時間

全員が無事に20階層へ到達する



時刻は21時頃だと思うが、構わず攻略に入る

この先も迷宮が続くようなら、20階層を攻略してから考えよう

考えを纏め、大扉を開ける

後ろの5人は疲労困憊に加え、畏怖もあるようだが概ね狙い通りなので気にせず進む

部屋の中は10階層と同じで大きな部屋が一つだけ

恐らく、またボス級がいるだろうが問題無いだろうと考え進んでいく

少し進むと召喚陣が現れ、魔物が姿を現す

現れた魔物を見て、一気に警戒度を引き上げ戦闘態勢に入る



現れた魔物は超危険指定で、ギルド危険ランクSSSのグリムリーパーであった

普通のグリムリーパーなら苦でもないが、こいつは明らかに異質だった

グリムリーパーは前世での死神に近いイメージの様な姿だ

骸ドクロの顏に黒いフードと大鎌を持っていて魔法は闇魔法を使う

だが、召喚陣から出てきたのは同じ姿ではあるが、黒いオーラを纏わせている

明らかに普通とは違うので、出し惜しみ無しで行く

アンデットには違いないが魔法がどこまで効くかは不明な為、神器を使用しておく



神双剣を出し、一気に距離を詰めて一閃!

キンッ!っと甲高い音が鳴り、攻撃を受け止められた

今まで攻撃を防がれたことが無い俺はこの時点で警戒度を最大限迄引き上げ、最悪の場合は神器開放も視野に入れた

2閃、3閃と攻撃を入れるが全て防がれる

チッ!っと舌打ちすると同時に後方から5人が攻撃に加わるが、俺にとっては邪魔でしかない

相手との実力差を読み違えれば待つのは死である



大声で「下がれ!!」と叫ぶが、聞く耳を持たず突撃し、吹き飛ばされる5人

今の攻撃だけで5人は満身創痍である

致命傷の者はいないが継戦は困難であろう

来栖ってやつ以外は全員が諦めている

来栖だけは「勇者が負けるはずない」とか「隠された力が・・」とか言ってる

俺は冷めた目でそれを見ながら敵と相対する



あの勇者(笑)はゲームか何かと勘違いしてないか?

ここは現実で、自分達は死に直面していると気付かないのだろうか?

いや・・4人の内3人は死を感じ取っている

諦めもあるようだが、それでも死を免れようと状況把握に努めているのは、八木宗太、春宮優華、姫崎桜花の3人

来栖光闇、阿藤玲次に至っては現状を理解できていないな



阿藤は来栖の言葉に納得してしまっている様子で思考放棄している

これは非常にマズいな・・・荒療治が必要かな?

ため息を吐くと同時に後方に下がり、5人に任せる事にした

俺が後方へ下がると諦めたと思ったのだろうか?まだマシな3人が、生き残るために震える体を起こし、敵に相対する

5人は今、死を乗り越える戦いに身を投じたのだ



5人に変わってから10分経ち、意識はあるが継戦は不可能な状態に陥っていた

もう少し戦えるかと思っていたが、来栖と阿藤が無謀な攻撃や突撃を繰り返し、回復役に必要以上の負荷を与え、連携しているようで連携できていない状況だ

八木・姫埼は冷静に生き残る事を優先していたが、回復と補助担当である春宮の魔力枯渇により、戦線は一気に瓦解した



それでもここまで戦えたのは、八木の牽制と姫埼の攻守が機能していたからだ

せめて阿藤が防御に専念し、春宮が来栖の回復を最低限にしておけばまだ戦えたであろうが、所詮はたらればの話

敵は全くダメージを負っていないし、俺がいなけりゃこいつら死んでんぞ

再びため息が出たが、遊びもここまでにするかと思い直し、男3人の服の襟首を掴み、後方へと放り投げる



女性相手にはヤバい状況でない限り、放り投げたりはしないので、尻の下に手を回して片手ずつ腕に座る様に持ち上げ、後方へと運ぶ

敵は当然攻撃をしてきているが、回避して素早く行動している

女性2人は若干顔が赤く、姫埼に至っては何か言っているが、全て後で聞く事にする

2人を後方へ運び、俺は距離を開ける為、前に出る

観察していてわかったが、こいつはグリムリーパーの上位種か変異種っぽい

特殊能力等は無いが、全体的に能力が数倍上なのだ

仕方ないか・・と、再度ため息を吐き神器を開放する



『我が神器よ!我が求めに応じよ!我は汝らの主なり!汝らの真なる姿を、今ここに開放せん!我が意に沿い、我が眼前の敵を滅ぼせ!我が求めしは汝也!神器開放!!顕現せよ!神双剣インフィニティ・マクスウェル!!』



神言を唱え、俺は手に持つ神双剣を同時に交差するように振るう

放たれるは生と死を司る表裏一体でありながら真逆な力の波動

グリムリーパーは受け止めるが、2刃1殺による対消滅の斬撃は一定空間に猛威を振るい、数秒後には何も残らなかった

魔物の消滅を確認して俺は警戒度を解き、自身の身体を確かめる

以前のような感じは無いので問題無いと判断し、5人の元に向かう



一連の攻撃を見ていた彼らは、思考が追い付いていない様で呆然としている

体も動かないだろうから回復魔法をかけて、春宮には俺お手製の魔力回復薬を渡す

数分後、どうにか復帰し、傷も癒え、魔力もそれなりに回復した5人は、こちらに質問をぶつけてくる・・・が全て無視した

だが、あまりにもしつこいので一言「不法侵入者が質問できる立場か?」とだけ告げ、彼らを黙らせた



彼らを黙らせ奥に進むと今までと違わず、またも扉があった

連戦は勘弁してほしいなぁ・・と思いつつ扉を開けると、そこには剣が1本地面に突き刺さっていた

これが聖剣かな?そう思うと同時に来栖が駆け出し、近付こうとするのを足を引っかけて転ばせ「何をしようとした?」と言い、殺気を放つ

来栖は「聖剣は勇者の物だろ!」と言い出し、敵意を向けて来たので、殴って、吹っ飛ばして、動けないようにした

来栖は苦悶の声を上げているが、容赦なく蹴りを入れて



「お前は何を聞いていた?これはランシェス王家から俺が依頼されたものだ。そもそも、グリムリーパーにすら勝てなかったのだから、お前はここに到達すら・・・いや、生きてすらいない。勝手な事はするな」



かなり冷めた目で見下ろし、踵を返してその場を後にする

全員、何か言いたそうではあるが、実際には俺に命を救われた形である

押し黙り、そのまま俺が剣に近付くのを見送る

聖剣に近付き・・・・あ~、っと俺は天を仰ぐ

何事かと5人がこちらを伺うので、これに関しては危険な事もあり、流石に説明してあげた



「浸食されてるわ、聖剣。抜こうと持った瞬間に、生命力とか魔力とか一気に吸われて死ぬわ・・・めんどくさいわ~」



悲壮感もなく、楽観的に言う俺に、3人は不思議そうな顔をする

俺はそれを放置して、聖剣をどうするか思案する

その隙に来栖が、俺の話が嘘だと言って聖剣に近付き、抜こうとする

周りは止めに入ったが、俺は好きにやらせることにした

警告しても信じずに行動したのだから、死んでも自己責任である



・・・・・・案の定、来栖は死にかけた

生きているのは仲間のおかげである

彼らが俺に頭を下げて頼んできたから、仕方なしに助けたのだ

義理も義務も無いが、頭を下げて頼んできたのを無下にするわけにもいかない

それに、この後は連行して事情聴取もあるので、本当に仕方なくである



助けた後、疑問に思って訊ねてみる・・何故、俺に頼んだのかと

彼らの答えは



「この中で一番強く、目利きも確かで、自分達よりも助けられる可能性が高いから」



なのだが、殴って気絶させて引き離せば良くないか?

それに対する4人の答えは



「来栖は、4人全員でも引き剥がせないし、気絶させるのも難しいから」



との事であった

ああ・・ステータス的に不可能なのかと結論付けた



その後、再び思案して・・あれしか無いかと諦めた

人前ではやりたくないが仕方ない

俺は聖剣に近付き引き抜こうとすると、4人が止めるように言ってくる

問題無いと返し、聖剣を引き抜こうとして魔力が吸われ始める

だが、全く問題無かった



吸収量よりも回復量が上回ってるので、全く意味がないのだ

そのまま聖剣を引き抜き・・・吸収が結構うざいので神力を叩き込む

すると吸収がぴたりとやみ、聖剣が白と黒の光を放つ

そこで俺は全てを理解した・・いや、聖剣から力が逆流し、理解できた



この聖剣は神喰いの欠片に浸食されていたようだ

ただ、聖力と神力では喰われ方に違いがあるらしく、完全には浸食されていなかった

後10年遅ければ完全に侵食されて、聖剣は邪神核になっていただろう

これを何故知れたのか?力の逆流と答えたが、正確には神喰いの思念が残っており、真実と新しいスキルの譲渡があったからだ

スキルは二つで収納拡張と無限空間

そして、全智神核から告げられる言葉



『解放条件が満たされました。虚数空間が解放されました。使用に辺り、並列演算を同期して全智神核が制御します。マスター、おめでとうございます』



一方的に告げ、全智神核は引っ込んだ

後で色々確認しておこう




来栖は気が付いた後、色々と喚き散らし、癇癪を起す

阿藤も来栖に追随し、俺が本気でキレそうになり、周りが止めに入ったのはお約束だ

そんな中で聖剣を鑑定すると聖魔剣となっていた

こちらも帰ったら調べないとな



帰りは全く苦労しなかった

迷宮が消滅してしまったのだ

聖魔剣が攻略の証と同意義だったみたいだ

こうして俺は5人を引き連れて、リアとナユが待つ場所へと戻った



二人が待つ場所に戻り、時間も遅いが事情もある為、ゲートで王都に帰還する

5人も逃げようとはせず、大人しく従ったので手荒な真似はしてない

王都に着くと門番に衛兵を呼んで貰い、5人を引き渡す

不問にするとは言ったが、事情聴取は当然あり、一応は罪状があるので、薄暗く少々寒い地下のホテルに1泊して貰う事にはなる



また来栖が文句を言い、阿藤は睨み、他の3人は仕方ないといった感じだ

来栖が五月蠅いので



「これ以上騒ぐなら、不問は無理だぞ」



とだけ告げて、後は任せた

リュミナとシンティラも一緒にゲートを潜っており、5人が逃げ出さない様に、地下牢近くの郊外で一晩監視をしておくそうだ

2竜に「頼んだ」と言い残し、ご褒美に翼竜の肉を夜食として渡す

2竜はとても喜び、気合いを入れて監視任務に就いた



リアとナユに挟まれて、俺は屋敷へと帰る

時刻は22時を回っており、メイド達も本来は寝ているか自分の時間を過ごしているのだが、屋敷の主の帰宅となれば出迎えなければならない

出迎えが無ければ怒る貴族もいるそうだが、俺はそんなことで怒りはしない

でも、謝罪はあるだろうから、気にしない様にと言わないとな



だが、その考えは全く必要無かった

そう!今日からは完璧超人メイドのナリアが働くのである

屋敷の扉を開けるとそこには「お帰りなさいませ」と佇む、ナリアとメイド2名が居たのである

何故出迎えが?と考える前にナリアが



「ご当主様の事を考えれば、日が変わる迄は、お出迎えがいつでもできるようにするのが当たり前でございます」



と、先に答えを言ってしまう程である

子供の頃からナリアの完璧超人ぶりは知っていたが、まさかここまでとは・・・

2人のメイドもナリアが再教育したのであろうか?

それが当たり前であるかのように振舞っていたのだ・・ナリア恐るべし・・・

ナリアは「先に湯あみを」と告げ、メイドに先導するように目配せし、俺達を浴場へと案内する

あれ?うちの浴場って男女別に分かれていなかったような?

脱衣所に着くと、中で簡易的にしきりがされて分かれており、浴場内も簡単ではあるが男女別になっていた



女湯の方には、先導したメイドが付いて入り、背中を流すそうだ

まぁ男湯に来ないのであれば・・と油断してたら、ナリアが男湯に入ってくる

何事!?と思うや否やナリアが背中を流すというのである

流石に自分で出来ると断るのだがナリアは引かず、結局は背中を流された



風呂から上がると、残っていたメイドが調理を終わらせ、いつでも配膳できるように待っていた

料理は消化の良い物を中心に満足感のある物にしたそうだが、うちのメイドはここまで完璧超人だっただろうか?

ナリアに目を向けると「鍛え直しました」と、ただ一言

そして、配膳を始め、食事に移るが、どう鍛え直せば1日でここまでになるんだ?



そんな考えばかりが頭をよぎり、初めて食事の味がわからなかった気がする・・前のままでもメイド達は十分合格点だった気がするんだけどなぁ

そんな考えを読んだのか、食後にナリアが



「今で最低限の合格基準です」



と告げてきたのに対し



「(心読めるんじゃねぇのナリアって)」



と、ちょっと畏怖したのは仕方ないと思う

・・・・・仕方ないと思う・・・そう自分に言い聞かせた



食事を済ませ、今日は最後に一番疲れたので、直ぐに就寝する事にした



「(明日も色々と大変な日になりそうだな)」



と思いつつ、眠りについた

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