神に気に入られて異世界転生した俺は、救世と終焉の神殺しとなる

あざらし

63話 収穫祭の日々 前編




収穫祭2日目

昨日、秘密を話した俺は王城で1泊し、現在は朝食の最中だ

今日の予定は特に決まって無いので街をぶらつこうかと思っている

同行者はリア、ナユ、ティアだ

国の頂点に属する3人はちょっとしたお仕事らしい

何の仕事かって?ちょっとした貴族のお相手だそうだ

俺は「暫くのんびりするように」と、王妃含め色んな人から言われたので、今日は祭りを楽しむ予定である

ついでに皆へ振舞う手料理の材料探しも兼ねている



「出来れば、収穫祭の間にお披露目して欲しいのですが」



と頼まれたのだ・・リアフェル王妃に・・・

どうやって知ったかわからないが、俺が手料理を振舞う情報を仕入れていたのだ

本当は収穫祭後の予定だったが、仕方ないと諦め、更に婚約者全員の家族とヴァルケノズさんも入れて、俺の手料理を堪能する流れに・・・・・・

まぁ・・別に良いけどさ・・・材料費は持つらしいし

なので、現在商業区で食材探し中である



まずはあれを見付けないと話にならないので探しているのだが見付からない

あれとは薄力粉の事だ

と言うのも、全部が小麦粉で販売されているからで、売られている小麦粉はパンや麺等に使用されている物なので強力粉の方だろう

最悪はそれで作るしかないのだが、それは探し回って無い時の最終手段である

・・・・・そう言えば、ベガドリオの親が商店のオーナーだったな

確かシャミット商会だっけか?

リアとティアの二人に聞くと合ってると言われて、4人でシャミット商会へと向かう



シャミット商会は見た目は大商会だった

店舗は大きく、従業員も多いし、品揃えもかなり良い

あれ?もしかしたらここで全部揃うんじゃね?

そう考えながら店内へと入って行く



シャミット商会は店舗3つ分の広さがあり、1階は主に食品売り場で2階が貴金属や衣服の売り場で3階は事務所の様だ

地下室もあり地下は装備品と倉庫になっている模様

あれだな・・複合商業施設とほぼ同じようなものだな

ちょっと興味が出た俺は皆と一緒に見て回る事にした



まずは地下に行ってみる事にした

装備品が並んでいるがぱっと見、量産品がほとんどの様だ

中には一点物もいくつかあるけど、性能的にそこまで気になるほどではない

だが、ナユとリアは真剣に物色していた

これは冒険者ゆえであろう・・職業病だな・・・

ティアも見て回るが、令嬢であるティアには作りの良し悪しはわかっても、耐久性や切れ味等の冒険者が見る部分はわからないみたいだ

30分程物色して地下を後にする

冷やかしっぽいが、これといったものが無い以上はしょうがない



次に2階へと足を運ぶ

貴金属や服飾エリアで、同じく平均的な物が売られていた

良くも悪くもなく、衣類に至ってはお手頃価格である

リアとナユはそれなりに着れたら良いと考えているので軽く物色中

一方、ティアはさっきと打って変わり、超物色している

衣類は早々に見切りをつけて、貴金属の方を超物色中である

こちらも30分程見て回ったがお気に召した物は無かった様だ



1階へ降り当初の目的に戻るのだが、店に入ってから周りがざわついている

そして、仕方ないともわかっている

昨日、陛下が俺への陞爵を国民の前でやったので顔バレしているからな

更に、婚約発表した女性とは違う女性を連れているし・・・・

そこへ、ベガドリオがこちらを見付けて声を掛けてきた



「いらっしゃいませ!今日は何かお探しで・・ってラフィじゃん。珍しいね?今日はどうしたの?」



そんな風に声を掛けるものだから周りが更にざわついた

声を掛けた本人も⦅あ!しまった!⦆という顔になっており、ざわつきに気付いたオーナーが奥から出てきて・・ベガドリオに拳骨を落とした



「申し訳ありませんクロノアス辺境伯様!!せがれが無礼を働きまして!何卒お許しを!!」



そう言って頭を下げるオーナーなのだが、俺は私事プライベートで来ているし、級友でもある

ベガドリオの対応は間違ってはいないと告げると



「ベガドリオは手伝いですが、接客対応は仕事で、商人だと公の立場になりますから」



と言って、再び頭を下げた

ベガドリオも気付いて言葉遣いを直そうとしたが改まれると気持ちが悪いのでいつも通りでと頼んだ



「俺が公の立場だった場合は気を付けてくれ」



と注意はしておいた

オーナーに謝罪の意味も込めて何か贈らせて欲しいと言われたので、



「探している食材があるから、店にあるか確認して欲しい」



そして、食材を伝えるとベガドリオとオーナーが先導してくれた



向かった先は小麦粉が置いてある場所なのだが・・見た感じなさそうだ

オーナーに「小麦粉は何種類かあるのか?」と聞き、いくつかあると辺答が来る

小麦の粗さが違うそうで、店にある小麦を全て試食したがわからない



どうしようか・・・と悩んだところで、異世界知識と全智を使う

2つのスキルを使い、質問の仕方を変えた

まず、パンや麺に良く使われる小麦粉を除外してもらう

これで残るは中力粉と薄力粉に分けれたはずだ

次は稀に麺へ使う小麦粉を除いてもらった

そして残った小麦粉の種類は2種類となった

まさか2種類残るとは・・どっちが薄力粉なんだ?

わからんので両方買って行こう

袋に番号を書いてもらい、探してる方を後で伝える事にする



「奥に調理スペースがあるから試されては?」



と言われたので、いくつかの食材を買って調理開始だ

指示を出せば調理は店側がと言われたが



「自分でやってみないとわからない部分があるから」



と断り調理を開始する



作る料理は天ぷらだ

異世界知識と全智があるので作り方は完璧だ

あくまで作り方は・・・だが

さて、幾つかの野菜を買い調理を開始する



まずは卵1個と冷水を混ぜるのだが、冷水が無いので魔法で冷やす

次に混ぜた泡をすくって、別々の容器に2種類の薄力粉を分けて入れる

軽く混ぜて、火の通りが良さそうなキノコ類に衣をつけていく

今回は中温で揚げる事にする

油が温まったので試しに衣を入れて確かめる

問題無い様なので、1番と書かれた袋の方を揚げる

浮いてきたら頃合いを見計らって取り上げ、余分な油を切る

2番目も同じようにして揚げていき、油を切る

余熱で火を通して完成だ

さて・・どっちの小麦粉が正解かな?



ベガドリオとオーナーにも食べて貰い感想を聞く

3人に今回は遠慮して貰った

皆で一緒に食べて欲しかったから

今回はわかりやすくするように塩を付けての実食にしてある

結果は・・・よりサクサクなのは1番の小麦だった

ベガドリオとオーナーも同じ答えだった



そして、わかったのは粉が細かいほど番号が低い事だ

試しに一番高い数字の6番を使って見る

さっきとは違い衣がちょっとベチャッとなっていた

だが、粉の選定も済んだので天ぷらは作れそうだ

ついでに、お好み焼きやたこ焼きにうどんも作れそうだな

俺は1番と3番と4番の小麦粉を買い、わかりやすい様に番号を書き、届け先は王城を指定する

一筆書いて、その紙を門番に見せれば良いと告げ、次は食材の品定めに入る



野菜と肉はあるのだが、魚介系が無かったので聞いてみる

すると、生臭さもあるので別店舗で販売しているとの事だ

見に行きたかったが、流石に女性を連れては・・・と断念した

小麦は日持ちするので先に運んで貰い、手料理を振舞う当日に、新鮮な食材を運んで貰う事にする

代金は魚介類無しで大銀貨2枚ほどだ

その後、ぶらぶらしながらカフェで休憩して、2日目は終了

3日目は一人で商業区に出向き、シャミット鮮魚店へ足を運んだ

話は通っていて、天ぷらに合いそうな食材を選び、大銀貨6枚分を頼み、残りの時間は4神獣と遊んで1日を過ごした



4日目は実家に行き、久々に母の手料理を堪能した

久しぶりに食べる母の手料理は美味しく、少し食べ過ぎた

明日、王城で俺が手料理を披露する事を告げ、夕食は王城に来て欲しいと告げる

家族は楽しみだと少しはしゃいでいるように見えた



それと、父に1つお願いをする

ナリアをメイド長として、俺の家で雇いたいと

父は「ナリアが望むなら構わない」と言い、ナリアを呼ぶ

ナリアに話をすると快く引き受けてくれた



次に両親と俺とナリアで執事の話をするが、リアフェル王妃から何名かのリストを貰う予定になっているので、収穫祭後になると話す

ナリアも収穫祭後に移動で構わないとしたが



「ナリアは、ラフィの方を優先するようにしてくれ」



と父が言うので



「それなら、収穫祭の間は休暇にしてはどうですか?父上」



と提案する

荷造りなどもあるし、10日程だがゆっくりして貰おうと言う訳だ

今日の夜には屋敷のメイドに話しておくので、荷物は明日以降いつでも運んでくれて構わないとした

その後は実家でのんびりと過ごし、屋敷に戻った



5日目、今日は手料理を振舞う日である

シャミット商会には今日の昼過ぎには全て運び終えて欲しいと伝えてある

なので、午前中はのんびり過ごし、昼過ぎに王城へと向かう

王城に着くと、シャミット商会が最後の荷を運びに来ていた

荷下ろしが終わるの待ち、全て完了し、代金を支払う

ホクホク顔でシャミット商会の者は帰って行った



調理場には食材が大量に並んでいる

一つ一つ下ごしらえをしていき、全ての下ごしらえを終えたのは1時間後だった

今日は天ぷらの他にみそ汁と白米を出す予定だ



天ぷらも肉、魚、野菜と豊富にしてある

大量に作らないといけないので、油を入れた鍋を3つ用意する

低温、中温、高温に分けて食材ごとに調理をするためだ

ただ、揚げるには時間がまだ早いので、先にみそ汁を作り、米を炊く



ガスコンロは無いが魔道具を使った火力機はあるので、調節さえ出来れば前世のコンロと変わらない

その内、炊飯器でも作ろうかな・・・

そんなことを考えながら、みそ汁を作り、米を炊く

みそ汁の器も拘こだわって自作してみた

何時したかって?3日目に神獣たちと遊びながら作ってました

最も漆うるしが無かったから別の物で代用してますけど



1時間ほどで米も炊き上がり、蒸らすだけになった

みそ汁はあら汁にしてみたのだが・・・骨とか大丈夫かな?

最悪、頭の部分は入れないでおこう



皆が集まるまであと2時間か・・・

少し時間があったので、お好み焼きを作って出そう

3番と4番の小麦粉をブレンドし、ふるいにかける

独自に作った鰹節もどきを風魔法で薄く削り、お湯に入れて出汁を取る

粗熱を取った出汁と卵とすった長芋を混ぜ小麦粉を加える

次に刻んだ野菜を入れて混ぜ、生地を作る

肉は前に余った竜肉を薄く切って使おう

紅しょうがは無いので仕方ない・・今度作ってみるか

タネを大量に作って行き、気付けば1時間弱経っていた

そこにリリィとミリアが来て



「なんかすごいね、ラフィ」



「どんな食事が出てくるか楽しみです」



好奇心旺盛こうきしんおうせい・食欲旺盛しょくよくおうせいである



少し雑談しているとナユ一家とリア一家がやってきた

更に数分後、公爵一家と俺の家族が来て、時を置かずしてミリアの家族とヴァルケノズさんにイリュイア王妃がやって来た

夕食会30分前にランシェス王族がやって来たので、一気に仕上げの調理に入る

本来は既に作っておかなければならないが『出来立てが一番美味しいんですよ』と言ったら、多少なら待つとのお言葉を貰ったからだ



お好み焼きを焼きながら、天ぷらを揚げていく

今回も味がわかりやすい様に天ぷらは塩のみだが、きめ細やかさが違う塩を用意した

20分程で全ての調理が終わり、最後にみそ汁とご飯を器に入れて、メイド達に運んで貰う

初めて見る食べ物に、驚き、戸惑っている、が腹の虫は正直なようだ



ソースはウスター系なのでかけすぎ注意と告げ、プチ晩餐会が始まる

あら汁は骨に気を付けるように告げて、皆が一口飲む

・・・無言だが反応は悪くないと思う



次に天ぷらを勧めるのだが、どうも一部の野菜がお気に召さないみたいだ

その野菜とは一部の根野菜で、貴族の晩餐会にはほぼ使われない食材らしい

なので、俺が一口食べてみると、ナユの家族以外も訝しむように口に運び入れて・・絶賛する

衣はパリッとし、中の野菜は甘みがあり、塩がそれを引き立てる



「どんな魔法を使ったのだ!?」



とは陛下の言葉であるが、それに俺は



「食材本来の旨みを理解してるだけです」



と返した

ナユの家族も普段食べなれている野菜とは全く違う味に驚いていた

ここまで来たら何も疑わなくなる

お好み焼きも絶賛で、米も天ぷらやみそ汁と合うので絶賛される

米は元々が竜王国のもので、イリュイア王妃もラナもいつもと違う味と驚き、ほとんど無言で食べていた

天ぷらはまだお替わりはあると言えば、全員がお替わりする程の人気だった



因みに米だが、今の味にするのには結構苦労した

品種改良が間に合わない以上、炊き方で工夫するしかないわけで

俺がとった方法は、米を炊く時の水を少なくし、足りな分を野菜のゆで汁を冷まして入れ、甘みを出して蒸らす時間を少し多めにとったのだ

ここに辿り着くまでにはかなり試行錯誤した

前世の米とは微妙に違うので、異世界知識が役に立たなかったのだ

全智をフル活用して試行錯誤し、ようやく出来た炊き方なのだ



全てが好評のまま、食後のデザートに移る

デザートはアイスクリームにした

アイスクリームの課題は〖どう冷やして凍らせるか?〛だったが魔法で何とか出来た

それと、前世のアイスとは少し違う作り方になっている

生クリームを使ってないのだ

材料はあるし、魔法で何とかなるのに、何故か存在しないので作ってみた

作り方は、卵を黄身と白見に分け、白身を角が立つまで混ぜ、黄身と砂糖を加え、混ぜて冷やす

冷やしたら牛乳を加えて、混ぜて凍らせて完成

こちらも大絶賛である





これで夕食会は終了なのだが・・・陛下が「レシピを教えろ!」と五月蠅かった

なので、どれか一つならと言ったら、アイスと天ぷらで悩み始めたので



「決まったら後日教えてください」



と言って、話を終わらせた

リアフェル王妃を筆頭に女性陣は



「アイスクリームのレシピを。相応の金額は出しますよ」



と言われたので、個人で楽しむだけにして欲しいと告げて教えた

陛下の意見は聞かれず、アイスクリームで一致となった

陛下ってランシェスの頂点なのに、王妃の陛下への扱いが雑過ぎる

陛下は人知れず目から雫が流れていた・・・・・



そうそう、レシピの公開はしないように言っておいた

評価が良ければ店を出しても良いかなぁと思っていたりするからな

そこへ婚約者全員が耳元で



「「「「「「これで商売するの?」」」」」」



などと言って来た時は、焦って思わず



「なんでわかったの!?」



と聞き返してしまったくらいだ

そんな皆の言葉は



「「「「「「そんな感じがしたから」」」」」」



の一言である

(婚約者達に隠し事ってもしや不可能?)

ちょっと冷汗が流れてしまった



そして、王族の・・いや、リアフェル王妃の耳は地獄耳だった事を伝えておく

今のこそこそした会話を聞き逃さなったのだ!

こちらへきて耳元で



「私に任せてくれるなら悪い様にはしませんよ」



等と言ってくる始末である

貴族とは鋭い生き物であると自覚させられる

リアフェル王妃の動きに反応し「そう言う事か」と何やら気付いた様子

婚約者である皆を見ると目で『諦めましょう』と告げていた

がっくしと肩を落とし観念する俺・・・

周りの大人たちは笑顔である・・クソったレが!!



俺は天ぷらとアイスのレシピを無条件で公開した

米も頼まれたが流石にこれは断った

試行錯誤した上に俺自身、まだ改良の余地があると思っていたからだ

素直にそれを告げると引き下がってくれた



お好み焼きは生地だけ教えた

名前の通りお好みなので基本の生地だけ教えて、後は試行錯誤するようにと言った

これも、渋々だが納得した

と言うか、全部聞かれて教えるわけ無いだろうが!!

流石に少しきつめで言ったのから、何とか米とみそ汁のレシピは死守した形だ



今度からはもう少し上手くやろう・・・と心に決めた所でお開きとなった

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