神に気に入られて異世界転生した俺は、救世と終焉の神殺しとなる

あざらし

59話 想いを伝えに  後編




4人に想いを伝えて、王城から戦略的撤退をし、カフェで気持ちを落ち着けて、現在時刻は昼過ぎである

王城での羞恥プレイに相当精神を削られたが何とか持ち直し、今はリアを探していた

学院に立ち寄ったがリアの姿は無く、今はギルドに向かう途中である

尚、学院に立ち寄った際に先輩の女子生徒から熱い視線を向けられ、男子生徒からは先輩、同学年問わず嫉妬と殺意を向けられた

嫉妬だけなら無視するが殺意は無視できないので逆に殺意を送ってやった

送られた奴は当然、発狂するか気絶した

教師が何事かとやってくると視線の先に俺がいたので何か言おうとして諦めた

お前ら、殺意は相応の覚悟を持って放てよ



で、現在はギルドの前なのだが、中が騒がしい・・

何かあったのかと思って中に入ると全員がこちらを見て



「SSSだ!ギルマス呼んで来い!指名依頼を出して貰うんだ!」



本当に何があったんだ?

とりあえず叫んでる冒険者に事情を聞いて・・・・

バンッ!!

俺は直ぐに飛び出し念話で地竜を呼ぶ



『お呼びですか?主殿』



『話しは後だ!いつでも飛び立てる準備をしてくれ!』



『承知しました』



そして俺は全力で探知魔法を使う

南東へ半日位の場所で殻竜3匹と冒険者が戦闘している反応を見付けたが、冒険者達のほとんどが瀕死の反応だった

俺は郊外に出て大声で「地竜!!」と叫び、背に飛び乗ると一気に空へと舞い上がる



「方角は南東!馬車で半日の辺り!時間はあまりない!5分・・いや、3分で行けるか!?」



「無茶を言うな主殿・・・20分はかかる」



「ゲートで短縮する!急げ!」



「承知した!」



その言葉を皮切りにゲートで距離を短縮して5分で現場へと着く

そこにはボロボロになりながら冒険者達を守るリアの姿があった



「リア!」



地竜の降下を待たずに背から飛び降り、殻竜に向かい落ちて行き蠢動を使って3体同時に殴って吹き飛ばす



「てめぇら!俺のリアに何してやがる!!」



叫ぶや否や3体の殻竜を更に殴り飛ばす

かろうじて動ける冒険者達はその異様な光景に息を呑む

呆然としている冒険者達に俺は叫んで



「てめぇら!見てる暇あるなら瀕死の者を回復させやがれ!リアも下がれ!その傷じゃ戦闘は命取りだ!」



「そう・・だね・・・ごめんね、ラフィ・・後は任せる・・よ」



そう言って倒れ込むリアを抱きかかえ、冒険者達の元へ連れて行く

当然お姫様抱っこしてである

冒険者達に一言



「リアを頼む」



そう告げて、殻竜へと向き直る



殻竜は理解していた

自分達は死ぬと

しかし、逃げなかった

いや、逃げられなかった

俺がそれをさせなかった



上空で地竜は畏怖していた

主の魔力が一気に爆発しても尚上がり続けており底が見えなかったのだ

そして、主の本気の怒り・・それは全てを滅ぼす力であった




俺は武器を持たず、ただひたすらに殻竜を殴り続けた

5分後・・・殻竜3体はその命を終える

俺はそれを放置し、リアの元へと向かう

瀕死の者も辛うじて命を繋いでる状態なので、広範囲回復魔法フィールドヒーリングスを発動し、瀕死の者は個別にヒールブレッシングをかけた

瀕死の者も目を覚まし始め、重傷者も多少動けるようになった

リアもある程度傷が癒え、意識も回復した

俺は安堵し人前である事を忘れリアを抱きしめた



「間に合って良かった」



抱きしめながら言われたリアは顔を真っ赤にして



「ラフィ君!?大丈夫!大丈夫だから!みんな見てるからぁぁ!!」



恥ずかしさで涙目になっていた

地竜はそれを上空で見ていて「主の奥方は命に代えても守らないと」と一人呟き決意を新たにしていた



俺も落ち着いた後、自分の行動を顧みて・・・羞恥に身悶えて頭を抱えた

俺のリアとか抱き着くとか何やってんだ俺はぁぁぁ!!

リアも普段とは違って恥じらっており、何となくぎこちない

と言うかリアさんや・・・公衆の面前で告白した君が何を恥ずかしがっとる

心の中でツッコみつつ、何とか冷静に戻って状況を説明してもらう



今いる複数の冒険者達はそれぞれがパーティーを組んで3パーティーいるそうだ

それぞれが別の依頼なのだが、たまたま合流したそうで、その内の2パーティーは前日から受けた依頼を終了して帰る途中

残る1パーティーはリアが助っ人で参加し、討伐依頼を受けてこなしているところだったそうだ



討伐依頼も無事に終わり、全員で帰ろうとなった時に南東から土煙が見えて戦闘態勢に入ったが、いざ出会った魔物は殻竜でしかも3体・・

パーティーにゲートを使える者がいたので救援を呼びに言って貰ったとの事だ

ならば何故、全員でゲートで帰還しなかったかを聞くと、魔力の問題で一人しか潜れないそうだ



で、救援を呼びに行ったのが冒険者になりたての新米だった

半分は救援で半分はそいつだけでも逃がしたのだと

現パーティーの中では、リアが一番ランクが高く実力もあるのでリアを軸に討伐していたが、実力差があり直ぐに戦線は瓦解

リアが辛うじて持たせていたそうだ



全く無茶をする・・・心臓には悪いが、良い女である

俺は地竜を呼び、全員を乗せれるかと聞く

問題ないとの事で、俺を含めた18人が地竜に乗って王都まで帰還した





ギルドは歓声で溢れ返った

救援依頼をしに来た者の話では絶望的だったのに、全員が生きて帰ってきたからだ

身体のあちこちに傷があり装備はボロボロである

ふらついている者もいて、率先して席に座らせる

傷はある程度癒えても失った血までは戻らない

リアも致命傷はないがそれなりに失血している為かふらついている

俺はリアをお姫様抱っこして「送ってくる」とだけ告げてギルドを後にした



ギルドからリアの家へ行こうとも思ったが、結構血を失っているなと思い、俺の屋敷の方へと行き先を変える

道中、リアが質問してきたのでそれに答える



「さっき俺のリアって言ってたよね?それってそう言う事で良いのかな?」



「そう言う事だな・・・色々話そうと思ってたがそういう雰囲気でもないし簡潔に纏めるか」



「ボクは聞きたいけどなぁ」



「長くなるからまた今度な。まぁ、リアに告白されて色々悩んで考えて、答えが出たらリアが好きな事に気付いたかな」



「簡潔過ぎるよぅ・・・でもそっか、好きなんだ・・」



「好きだな・・」



「何処が好きなの?」



「小さくて可愛い所」



「それ外見だけじゃん」



「他にもあるぞ。真っ直ぐな所とか物怖じしない所も好きだな。後、俺に持ってない物を持ってる所かな」



「持ってない物?」



「目標」



「もう達成したから無くなっちゃった」



「リアならすぐに新しい目標たてるだろ?」



「バレてたか。次はそうだなぁ・・子供かな」



「気の早い事で。それも何年かすれば達成だな」



「後は皆で楽しく仲良く暮らすかな・・・死ぬまで達成できそうにない目標」



「それは問題ないだろ。達成したも同然だ」



「そっか・・」



「そうだ・・」



その後はただ沈黙だけが流れた

お姫様抱っこは恥ずかしいみたいで、顔を俺の胸に当てて隠しながら会話していた

屋敷までもう少しと言う所でリアが声を掛ける



「正直、もう駄目だと思った・・・ラフィ君が来てくれた時、すごく安堵した。でも後を任せた自分が悔しかった・・」



「リアは十分強いよ」



「でも、悔しかった・・・ラフィ君に背中を預けて貰えるくらい強くなりたい」



「強さって何だと思う?」



「・・・守れる力」



「半分正解」



「じゃあもう半分は?」



「生き残る事」



「生き残る・・」



「死んだらそれまでさ・・自分の世界はそこで終わってしまう。だから自分にとって大切で、特別な人を守って生き残るのが強さだと思うぞ」



「それは・・・間違って無いと思うけど」



「一人で出来る事なんてたかが知れてるのさ。だから俺は皆を頼るし守る。俺は力があるだけだからな。でも、足りないものは沢山ある。だから皆に助けてもらう」



「そっか・・私も・・・ラフィ君を・・たすけ・・・ら・・」



そう言ってリアは寝てしまった

安心しきったのだろう

緊張が解けた事もあると思う

そのまま歩いて屋敷に着き、メイドに部屋を用意させ、リアを寝かせる

幸せそうな寝顔である

「おやすみ」と言って額にキスをして部屋を出る

時刻は夕方で、最後の大切な人に会いに行く



高台には夕日が差し込み一人の女性が待っていた

俺はその女性の名前を呼ぶ



「ナユル」



女性は振り向くと俺の名を呼ぶ



「ラフィ」



沈黙が流れる・・・

先に沈黙を破ったのはナユルであった



「ラフィ・・ミリアさんと色々話しました。だから、勇気をもって言います。私はラフィが好きです。愛してます。スタンビードの時、もう駄目だって・・誰か助けてって・・・最後に浮かんだのは両親でも仲間でもなくラフィでした。でも、年も離れているし貴族と平民じゃ無理だって・・諦めてました。でも・・・やっぱり諦めるのは嫌です!こんな私でも・・・好きになってもらえますか?」



ナユルは泣きながら・・懺悔でもするかのように想いを伝えてきた

俺はナユルにこう返そうと思う



「ナユルの気持ち・・・少しはわかるよ。平民とか貴族とか関係なく、誰かに想いを告げるのは怖いんだ。俺もそうだったから。今の関係が壊れる事が怖かった。知ってたナユル?俺の初恋ってきっとナユルだと思うよ」



「ラフィが私を気に入ってるのは知ってましたよ。でも、初恋は今知りました」



「改めて言うと恥ずかしいな、これ」



「フフッ」っと笑い、目に涙はあるが泣き止んでくれたので良かった

ナユルは表情豊かでないと・・・

少しの沈黙の後、俺は手を前に出して



「俺はナユルが好きだ。誰かに渡すつもりはない。年なんてたった5つだ・・・問題ない。ナユル・・・・いや、ナユ!俺の女になれ!」



ナユは両手を口に当て、また泣きながら俺の手を取り



「私はラフィの女です!一杯愛して下さい!私はラフィ以上に愛しますから」



そうはっきりと告げたナユルの手を引き、俺の元へ引き寄せ抱きしめる

俺よりちょっと低いナユをしっかりと抱きとめ頭を撫でてやる

ナユは暫く泣いていた・・・

ナユが落ち着くまで抱きしめ、頭を撫でて、ちょっと苛めてみた



「ナユはさ、年齢の事を気にしてるけど俺と同い年って言われても違和感ないぞ」



「はうっ!気にしていることを・・・」



「あ~でも身体つきは大人の女性か」



「ラフィ・・何か変わりました?」



「変わったというより、本来の自分を出してるが正解かな?それよりもう大丈夫か?」



そう言うとナユは頷き・・キスをしてきた

夕日に照らされて二人は唇を重ね続ける

そして、自然と唇を離す

ナユは満足げに



「ラフィから不意打ち取りました」



と言ってちょっと嬉しそうだ

そんなナユに俺はちょっとだけ笑った

こうして収穫祭前に俺の婚約者は6人に増えたのであった



収穫祭迄後数日・・・これ以上何もありませんように・・・

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