神に気に入られて異世界転生した俺は、救世と終焉の神殺しとなる

あざらし

51話 神樹国と妖精族


昨日の会談は色々あった
本当に色々あった
終わったと思えば次が出て、今度こそと思えば次が出る
地獄の無限ループであった
婚約者達が俺の両親に自己紹介を終えた後の会談は要約するとこんな話だ

婚約発表をする時期の最終確認
竜王国王妃とラナの滞在に関する事
ラナの留学と飛び級について
ミリアの滞在先と留学について
婚約発表をする時の関係者各位へのランシェス王国滞在について
その他諸々である

間に夕食と休憩を取りつつ、色々な事が遅くまで話し合われた
そのほとんどは婚約関係についてなので文句は言えなかった

3国同盟についても話し合われ、神樹国次第では4国同盟を結成する話迄出た
更に俺の爵位に関してだが、ランシェス王国を第1に考えた上で神聖国と竜王国でも爵位を与え、この世界では過去の歴史と合わせても5人といない複数国の爵位持ち貴族になる事が決定した
爵位に関しては、神聖国と竜王国ともに最上位の別称号を既に認めている為、公爵にするしか無いそうだ
これに反発したのがランシェス王国で、話は平行線をたどる事になる

お互い譲らずに最終的に出した結論は・・・後日改めてだ
問題の先送りとも言う
そもそも、神聖国と竜王国も自国で総意が取れているわけではない
そこを責められての後日改めてなのだ
遅く迄会談になったのはこれが原因である事は言うまでもない
夜遅くになってしまったので会談していた全員は王城での宿泊となった
うちの両親は話し合いの最中は蚊帳の外であったのも付け加えておく

翌日、王城にて朝食を取り、出立の準備(着替え程度)をして、一行は神聖国を経由して神樹国へと向かう
途中、神聖国にてミリアの家族と枢機卿2名を拾って行く
神聖国に着いたのは昼前であったが、再出立には中途半端であったので神聖国で1泊して、翌日に神樹国へと向かう事となった
紆余曲折があったものの竜王国を出立して14日目に神樹国へと着いた



レラフォード神樹国
妖精族と精霊が共存する国
妖精族とはエルフとも呼ばれているのだが、俺の知ってるエルフとは少し違っていた
容姿や身体的特徴は前世のラノベやゲームなんかと変わらない
相違点は背中に2枚一対か4枚二対の羽が生えている事だ
全てのエルフに羽があるわけではなく、羽のあるものは上位種族、又は先祖返りと言われているようだ

妖精族は従来の魔法に種族特性魔法で精霊魔法というのを使える
精霊に力を借りて行使する魔法で、その威力は最低威力でも上級の威力になる
最大威力は歴史上でも王級までしか記録には無い
術者の練度と精霊の強さにも比例している為、ほとんどの者は超級までしか扱えない
聖級までの威力を出せる者は少ないと言う
だが、実際の上限は神話級まで出せる

レラフォード神樹国は歴史も古く、その歴史は数千年を軽く超える
寿命も長く、最低でも2百年以上は生きるとされている
羽のある者は更に長命であるが流石に建国時を知っている者はいない

レラフォード神樹国はその名の通り、ほとんどが木に覆われていて国土の半分が森になっており、更に森の中央には象徴とも呼べる大樹がある
大樹のある場所が国の中心部なのだが、名前が無いので何と呼べば良いかわからず不便なのであった
また中央部には、精霊の間と呼ばれる神聖な場所があるそうで、外部からの者は勿論入れないし、近寄る事すら禁忌である
国の者でさえ精霊の間には儀式以外は入れない
ただ、全てにおいて例外というものは存在する
精霊が迎えに来て誘われた場合のみ、精霊の意思として全ての禁忌は除外される



一行は現在、レラフォード神樹国にある森の入り口にいる
国土の全てが森ではなく、全体の3分の1は平野に谷や山もあり、穀倉地帯とかもあったりする
そんな国の森前で、神樹国からの迎えを一行は待っていた

森には結界が張られており、案内無しでは基本辿り着けない
例外は二つ、結界を破壊しながら進むか精霊に導かれるかだ
前者は途方もない魔力が必要な為、魔道具を駆使しないと不可能
後者は精霊が人間に姿を見せる訳も無く不可能
結論としては大人しく待つしかないのが正解である

ただ、侵略戦争の場合は前者の行動を取るしか無い
森の入り口には呼び鈴ではないが来訪を知らせる魔道具が置いてある
盗まれない様に厳重な結界も張られているが、一部のみ解除されており中に入る事が可能である
盗もうとすれば、結界が中に入った者を閉じ込める様になっており、発動条件は魔道具を少しでも持ち上げると発動するし、定位置から動かしても発動する
既に魔道具を起動して30分程になるが未だに迎えは来ない
1時間程経ち、ようやく案内人が来るが遅すぎだろ

案内人が迎えに来て一行を見渡し、最後に竜達を見てちょっと驚いていた
案内人のエルフは、ここから徒歩になり竜達は入れないと告げてから、竜達には茶竜一族の場所があるので、そちらに案内するように手配するとの事だ
一行は案内人の後をついて行く
竜達とは一先ずお別れである

案内人の後ろを一行はひたすら付いて行く
森の中は木漏れ日が差し込み、それでいて少しひんやりとしている
案内人の話では中央に近付くほど魔物はいなくなるそうだが、この森に生息する魔物自体が元々が少ないそうだ
森の外縁部に魔物は生息しているが、食用に出来る魔物しか何故かおらず、他国との戦争でもない限り争いはほぼ無いらしい

ほぼと言う理由には訳がある
それは人攫いが来て奴隷市に売られるためである
大半の国では犯罪奴隷と借金奴隷以外は違法奴隷として扱われる
しかし、一部の国では奴隷は財産でコレクションでもある
妖精族は高値で取引されるため人攫いとの争いはあるのだ
だが、森から出なければそういう心配はほぼない
このほぼという言い方についてだが、稀に魔道具で結界の一部を破壊され、たまたま外縁部にいた者を攫われる為だ
攫われた者の大半は森から出た穀倉地帯に多く、神樹国は頭を抱えている

そう言った雑談をしつつ後を付いて行く
1時間程歩くと大樹がある中央へと到着した
見た感じ1時間では着きそうにない距離であったが、恐らく結界のせいだろう
俺はこの結界の属性を森に入ると同時に理解していた

この結界は時空間属性を軸に火・水・風・地・光の属性で構成されている
時空間で空間を歪ませ残りの属性で方向感覚を狂わせ幻覚を見せていた
迷いの森と言われても全く違和感がない素晴らしい結界なのだが、これほどの結界を誰が張ったかが疑問であった
これだけの結界を構築させ維持するには、構築に途方もない演算と維持には人では絶対に不可能な魔力を必要とする
妖精族は人族より魔力が多いとはいえこの結界の維持は不可能だ
疑問ではあったが他国の秘密でもあるので推測だけしておくに留めた

案内人が足を止めて「少しお待ち下さい」と告げ、他より少し豪華な家へノックをして入って行く
1,2分後に「どうぞお入り下さい」との声を機に部屋へと入って行く
全員が家に入り会談場所へと案内される
とある1室の前で案内人が止まり「こちらで代表がお待ちです」と告げてその場を後にした

護衛であろう妖精族が2人おり、片方がドアを開き中に入るように促す
全員が中に入り、息を呑む
そこには絶世の美女とも言うべき妖精族が座っていた
部屋で一人待っていた人物は微笑むと席に座る様に促し、全員が見惚れつつも席へ座ると挨拶を始める

「レラフォード神樹国代表、バズゼリナ・レラフォードです。ようこそ神樹国へ。それで今回の急な会談は何の御用件、でしょうか?」

そう言って少し攻撃的に聞いてきたが、この感じはあまり良くないし、歓迎もされていないと感じたので、場の雰囲気を変えるためにとりあえず俺が代表して相手に提案を出す

「初めましてレラフォード代表。俺はグラフィエル・フィン・クロノアス。ランシェス王国の男爵です。先ずはお互い自己紹介から始めませんか?」

そう言うと、キョトンとした後にプッ!と笑い出す代表
何が可笑しいのかわからんけど、とりあえず場の雰囲気は少しは変えれたようだ
代表はこちらの提案に応じてそれぞれ自己紹介を始める
護衛の冒険者は後ろに立っており、全員が軽く自己紹介を済ませて議題へと移る
4国同時会談の事は事前に使者を送って伝えておいたが、まさか他国のトップがそれぞれ来るとは予想してなかった様で驚いていた

議題の一つ目は神樹国で何か異変は無いかとの質問から始まった
その質問には特に変わりはないとの回答であったが「何故そんな事を聞く?」と逆に質問されたのでここ数年の話をした
代表は話を聞くと「外ではそんな事が・・」と驚いていたが聞かれた理由には納得した様で特に変化は無いと再度言い直し一つ目の議題を終えた

次の議題は各国との条約と竜王国との条約についてだが、ここでちょっとした騒ぎになる
精霊が会談場に姿を現したのだ
それも全員が認識できるような形で
これにはこの場にいた者が全員慌てた
普段はそこまで慌てない俺もちょっと慌てた位だ

先にも言った通り精霊は人の前に、まず姿を見せない
妖精族の前にすら滅多に姿を見せないのにこの場に現れたのだ
流石に動揺するなと言う方が無理である
精霊は辺りを見回すと俺の方を向き語り掛ける

「貴方が従えし者?それとも私達?」

精霊の言葉の意味が解らない
そもそも従えし者って何だ?私達って精霊達って事だよな?結構混乱していたが、今度は神樹国代表が呆気に取られるような発言を精霊はする

「私達に会いに来て。お話しましょ。待ってる」

それだけ言って精霊は姿を消した
後には静寂だけが残っていた

突然の珍客により会談場は静寂と化している
訪れた者は精霊の姿を見たことに
待っていた者は精霊の誘いを受けた者がいて
どのくらいの時間が流れたのかわからないがその静寂は突如破られる
先程案内してくれた者が会談場へノックもせずに入って来て

「代表!茶竜族の長が訪ねてまいられました!確認したいことがあり、至急こちらにおられるクロノアス殿とお会いしたいとの事です!」

更に珍客が来たようであった
茶竜は余程の事が無い限り中央には来ないらしい
中央に来たと言う事はそれだけ何かあったと言う事だ
代表は報告に来た者の言葉で我に返り、会談者全員へ

「申し訳ないが一時会談を中断したい。こちらも状況確認がしたいので、申し訳ないがしばし待っていて欲しい」

と中断を申し込み、全員がそれに同意した
今、この場にいる全員の気持ちはとりあえず落ち着こうで一致していた
代表は席を立ち、状況の確認へと向かう
茶竜に指名された俺も一緒に来て欲しいと言われ、共に向かう事にする

神樹国中央広場
ここには現在、6種族の竜が降り立っていた
正確に言えば6種族の竜の長である
風牙は風竜の長を辞めてはいるが、後を継ぐ者が現状いないので暫くは長を務めてるらしいが、本人曰く「さっさと辞めたい」と言っている
それと、風竜族は神龍の眷属であると同時に風牙の眷属にもなっているので、風牙が代表でもある

広場だが普段は開けた場所で祭りや祝い事に使用される
それ以外は茶竜族族長の着陸場所としても使われるのだが、着陸前には事前に連絡が行くので今回の様な事は滅多に無く、それ故に異常事態であったのだ
広場には6竜が威風堂々として、俺が来るのを待っていた

代表に連れられて広場へ共に向かうと、6竜の内4竜が頭を下げ俺に礼をする
白竜は地に座り、茶竜は俺を見下ろす
広場から遠巻きにこの光景を見ていた者は驚きを隠せない
竜が人に頭を下げたのだ
更にその内の1竜は片膝をつき臣下の礼まで取っている
妖精族からすれば竜に臣下の礼をさせる者など畏怖そのものである

隣にいる代表も驚きを隠せずにいた
7天竜とも呼ばれる属性竜が6体同時にこの場に降り、うち4竜は頭を下げ、更にその内の1竜は臣下の礼を取っている
はっきり言って異常で、信じられない光景である
残る2竜の内、白竜は傍観し、茶竜は威風堂々とした姿を見せていた
(この少年は一体何者なの?)
代表が瞳をこちらに向けつつ、俺と茶竜の対談が始まった

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