突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!

蟹江カニオ

クーデター

 一口で言えば、軍事クーデターだ。


 元々がテュネス共和国は連合王国寄りだったのだが、フランク、アルニン連合商工会の交易調略により、テュネス資本のフランク傾倒化が事の発端になった。


 連合王国人は、此度躊躇なく武力行使した事からも判る様に、気質がドライだ。


 大陸内海の、交易海路を確保している驕り故か、同盟国とは思えない程の関税を、貿易に課していたのだ。


 そこを付込んだのだ。いや、別にテュネスと連合王国の離間を図ったわけではなく、単純に貿易による商工活動の活性化、市場の開拓が目的だったのだ。




 テュネスがまだ別の国名だった頃から、アルニン、(こちらも別の国名だったが)と貿易が盛んであり、イレニア海のコルス島を経由して三点交易を結んでいた。


 太古に於いては、コルス島の領有をめぐり大規模な戦争となり、結果アルニン帝政下に属州となった経緯がある。


 歴史的にテュネスとアルニンは関わりが深いのだ。




 テュネス資本は、連合王国からの同盟離脱を選択した。


 潤沢な資金の元、親フランクアルニン議員を擁立し、テュネス議会を席巻した。


 フランク、アルニン同盟に加盟することが、最終的な目的で、途中までは成功していた。


 軍部の掌握まであと一歩の所で、四連合王国が武力行使してきたのだ。


 テュネス議会は、アルニン商工会議所を通じてアルニン、フランクに救援要請をした。


 まだ、正式な外交ルートが確立していなかった事もあるが、アルニンの商工会議所は、準国家機関とも呼べる組織であり、商工会擁立議員を通じてアルニン政府と対話可能だったからだ。


 そもそもテュネス資本に、最初に接触してきたのは、アルニンの商工会議所だ。


 軍事行動的な結果は、四連合王国の完勝で終ったが、これは如何にも不味い遣り口だった。


 建前でも、テュネス議会と対話から入り、交渉を経て、最終的に決裂したなら武力行使も分からないでもない。


 いきなり海上封鎖した上で、議会と交渉では、纏まる物も纏まらない。


 テュニス沖海戦勝利は、逆にテュネス議会を頑なにさせただけだった。


 そこで、連合王国は現議会に見切りをつけ、親連合王国だったテュネス海軍に目をつけた。


 テュネス共和国首都テュニスは海洋都市だ、太古から交易で栄えてきたのだから、当然だ。


 海軍も当然首都に駐留しており、首都制圧は瞬く間だった。


 テュネスに於ける軍事クーデターだ。


 海軍擁立の、親四連合王国派議員による暫定政府が発足したわけだが、
 なかなかどうして親フランク、アルニン派議員はしぶとかった。


 海軍が陸上部隊を有さない事もあり、初動で多数の議員を取り逃がした。


 そしてその多くが内陸部の陸軍基地に逃避し、自らが正統政府を宣言したのだ。


 現在、テュネスは政府が二つある状態だ。そして、テュネス資本は正統政府を後援し、再びアルニン商工会議所を頼った。


 四連合王国はを宣言した。


 内乱を内政と言い切る当たり、如何にも連合王国だが、一連の流れが出来すぎていて、怪しすぎる。


 特に反連合王国議員を取り逃がすなど、作為としか見当たらない。


 先ずは様子見で、事態如何で介入する事が容易に推測される。


 いや、介入する大義名分を入手するために、内政不干渉などと宣言し、他国の介入待ちなのかも知れない。


 ……やはり、流れが出来すぎている。テュネスの離反時より、テュネスの属国化の図面が、四連合王国により立案されていた可能性がある。


 作為的、無作為的であろうが、テュネスの現状は内乱状態だ。


 大雑把に海軍イコール、四連合王国派、陸軍イコール、フランク、アルニン派と色分けしたが、実はそうでもない。


 テュネス資本は軍部の掌握に梃子摺ってはいたが、掌握に失敗していた訳ではなく、他の海軍基地、陸軍は概ねフランク、アルニン派を送り込んでいた。


 最悪でも中立表明まで持ち込んでいた。


 状況は、フランク、アルニン派の正統政府側が有理だ。


 ここで、目に見える形でフランク、アルニンの支援を得られれば、陸軍、海軍、共に中立宣言していた軍団、艦隊がこちらの支持を表明するだろう。


 逆もまた然りだが。


 四連合王国はフランク王国の動向を見るために、内政不干渉を宣言している。


 フランク王国としては、やはり不干渉を宣言せざるを得ない。


 列強二国の介入では、テュネスを焦土とする全面戦争に発展するからだ。


 フランクとしては、大して価値の無い南方大陸の一国家に思い入れも無いのだ。


 連合王国が積極的内政不干渉とするならば、
 フランクは消極的内政不干渉だろう。


 ただ、アルニン政府の、いや、アルニン商工会議所は話が別だ。テュニスは足の早い商用快速挺ならば、一日半の距離の大市場だ。


 アルニン商工会議所としても、投資した金額以上の回収がなければ、手を引けない。


 アルニン政府を焚き付け、軍事的な支援、最低でも、アルニン政府公認支援を引き出す必要があった。


 軍派兵は流石に不味い。連合王国介入の口実を与える事になる、フランクの派兵中止要請も来るだろう。


 物資支援が妥当だろうが、政府としての後押しが弱い。


 そんな中、アルニン軍総合総司令本部より、ひとつの提案が成された。


 物資(武器弾薬を含む)支援に新型砲との貸与を盛り込み、新型砲の扱い伝授の為、一小隊の砲兵派遣をしたらどうかとの案だ。


 戦闘目的で無く、また小隊レベルの派遣なら問題無かろうとの事で、この案は採用となる。


 ……こののスペックと、その本当の目的は、一部の政府要人にのみ伝えられた。

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