突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!
テュネス争乱
「伍長さん、班員どうするの?」
コロンボ軍曹は、第三砲台一号台場三番砲手に配属が決まっている。
偶然ではなく、ダッドが一号台場に引っ張ってきたのだ。
レオンは第三砲台副守備長、兼、第三砲台付火砲術研究室室長、兼、独立機動砲兵小隊隊長(予定)なので、流石に一号台場守までは手が回らない。
後任士官に配役する予定だが、未だに士官は回ってこず、補佐役だったダッドが臨時に台場守を勤めており、その役職職権を乱用したのだ。
「それなんだけど、相変わらず定員割れしてるんだよね。掃除手は兎も角、装填手は育てるには時間がかかるから、横から引っ張りたいな」
「まあ、何とか考えよう。それよかコロンボ、お前教育で居なかったから、知らないだろうがな、こいつが発明した砲弾がすげぇのよ」
……箝口令は?
「ああ、班長、じゃない、曹長。噂にしか聞かないけど、散弾だって?砲弾が?威力はどんな」
「知りたいか?なら、三砲研入りな」
「三砲台火砲術研究室だったっけ、俺所属してるよ」
「いや、どこの配属になるか分からなかったから、一度籍が抜けた」
「ふうん、今面子は誰と誰なの?」
「パルト中尉が室長だろ、こいつだろ、俺、ブブエロ、ピエト、ラップ、コート、ガリレイ技術少尉、たった今お前が増えた」
ラップ兵長とコート一等卒は、レオンの班員だ。
「?何で開発部の人が混ざっているの?」
「……こいつの開発した砲弾が、秘匿される事になってな、作り方を知った技術少尉も抱え込む事になった」
「アル、一体なにを拵えたんだよ」
「ただの人殺しの道具だよ。何でも効率が良いらしいよ、良すぎて砲兵の心傷が危惧されるそうだ、軍師さんがそう言ってた」
「……砲兵のって、本当に何を作ったんだよ、それから軍師さんが誰かは聞きたくない」
「面白そうな話だな、俺にも聞かせてくれ」
話に割って入ってきたのは、ダーレン曹長だ。
興奮状態になると涙を流すと云う、第二砲台名物男だ。
ここは三砲台一号台場詰所、第二砲台所属の者が、ついウッカリ入り込める場所ではない。
つまり、
「なんだ、ダーレンのオッサンも三砲台移動かよ、他にも一、二砲台の知った顔を見たけど、今第三が人気の部所なのかよ」
「それがよ、そうなんだ。三砲台もそうだが、研究室を新設したんだろ、若いのはそっち志望だ」
機動砲兵構想は、軍轄酒保から駄々漏れだ。
まあ、演習であれだけ耳目を集めていて、火砲術研究室設立だ。
機動砲兵隊設立を、予想出来ない筈も無い。
地味な兵科が一転して戦場の華だ、若い砲兵が転属したがるのも判る話だ。
「んじゃオッサンは?話振りからして、三砲研志望って訳じゃ無いんだろ」
「上と合わなくてな、抜けてきた」
これは只の軽口だ、大体第二砲台の方でも士官連中は処分されていて、彼の上官は配属待ちで不在だ。
「んじゃ、こっちの上なら合うのかよ」
尺の関係で割愛したが、実はレオンの評価は高い。
これもアルの砲撃に隠れてしまい、目立たない功績だったが、機動架台が囮となることで砲兵が前進、築塁、支援砲撃と、彼は十分に任務は達成していたのだ。
もしアルの必中砲撃が無かったとしても、囮砲撃だけで任務は達成し、どのみち、歩兵による三砲台包囲、占拠は完了した筈だ。
アルの必中砲撃が余計とまでは言わないが、イレギュラーではあったのだ。
その戦術眼、大胆さ、また自身の意見を尊重された事もあり、ダーレンは配属移動願いを出していたのだ。
この状況下で、よく配属移動願いが通ったものだと思ったが、豪腕の少佐の暗躍が否めない。
南方大陸の方がキナ臭くなってきているのだ。
少佐にしては、機動砲兵小隊をいち早く編成したくもある。
「まあ、上手くやっていけると思うぜ。そんな訳でよろしくな」
「よろしくな、ったってな。なあ、砲班移動じゃないんだろ、班員どうするよ?今コロンボとその話をしてた所だ?」
「人気部所だと言っただろ、心配はいらないよ募集をかけただろ」
特に三砲研の宣伝はしなかったが、三砲台の人員募集はかけたのだ。
果たしてダーレンの言った通り、応募者は殺到した。いや、下士官以下限定だが。
兵科も歩兵科、輜重科、砲兵科とおおよそ想定した兵科から志願が集り、また体力的に優れ者が多く現在選考中だそうな。
こうして、そう面白くも何ともない流れで、
後の独立機動火砲部隊の母体小隊が編成されていった。
機動架台四両、野戦砲新型四門、旧型六門。そして野戦仕様重火砲一門が初期武装となる。
三砲研の活動は、重火砲の入荷と共に多忙だった。
人員が増えたが、歩兵科、輜重科上がりは初期教育から施さねばならず、とても火薬を扱う装填手教育までは手が回らない。
幸い砲手は集まったので、装填手も兼任だ。
機動架台砲班構成は、砲手、掃除手、掃除手、掃除手、といった構成だが、適正を見ながら教育していく事になった。
スリーマンセルで無いのは、機動架台の為に押手が必要だからだ。掃除手は押手も兼任する。と言うか押手は全員兼任だ。
人員、装備が整い、三砲研の主任務である、アルの砲撃解析が始まった。
風向、風量は仕方ないとして、定点からの砲撃で火薬量の違いによる、火砲仰角の取り方。
新型砲弾の適正砲撃距離の算定。
機動砲撃時の仰負角や地角補正、火砲方位角調整など、必中状態から逆説的に命中に必要なデータを収集し、砲撃命中精度の向上に努めた。
これは表にまとめられ、砲手の必需携行品となる。
こうして、三砲台、三砲研は実力を高めていった。
南方大陸の一国家で内乱が発生した。
これは大方の予想通りだ。フランク王国が先の海戦で敗北し、国威が低下したのだから。
ただ、事態は些かややこしく、国威を上げた筈の四連合王国支持派が劣勢状況だ。
その国の名はテュネス共和国。
そもそもの争乱の発祥国だ。
コロンボ軍曹は、第三砲台一号台場三番砲手に配属が決まっている。
偶然ではなく、ダッドが一号台場に引っ張ってきたのだ。
レオンは第三砲台副守備長、兼、第三砲台付火砲術研究室室長、兼、独立機動砲兵小隊隊長(予定)なので、流石に一号台場守までは手が回らない。
後任士官に配役する予定だが、未だに士官は回ってこず、補佐役だったダッドが臨時に台場守を勤めており、その役職職権を乱用したのだ。
「それなんだけど、相変わらず定員割れしてるんだよね。掃除手は兎も角、装填手は育てるには時間がかかるから、横から引っ張りたいな」
「まあ、何とか考えよう。それよかコロンボ、お前教育で居なかったから、知らないだろうがな、こいつが発明した砲弾がすげぇのよ」
……箝口令は?
「ああ、班長、じゃない、曹長。噂にしか聞かないけど、散弾だって?砲弾が?威力はどんな」
「知りたいか?なら、三砲研入りな」
「三砲台火砲術研究室だったっけ、俺所属してるよ」
「いや、どこの配属になるか分からなかったから、一度籍が抜けた」
「ふうん、今面子は誰と誰なの?」
「パルト中尉が室長だろ、こいつだろ、俺、ブブエロ、ピエト、ラップ、コート、ガリレイ技術少尉、たった今お前が増えた」
ラップ兵長とコート一等卒は、レオンの班員だ。
「?何で開発部の人が混ざっているの?」
「……こいつの開発した砲弾が、秘匿される事になってな、作り方を知った技術少尉も抱え込む事になった」
「アル、一体なにを拵えたんだよ」
「ただの人殺しの道具だよ。何でも効率が良いらしいよ、良すぎて砲兵の心傷が危惧されるそうだ、軍師さんがそう言ってた」
「……砲兵のって、本当に何を作ったんだよ、それから軍師さんが誰かは聞きたくない」
「面白そうな話だな、俺にも聞かせてくれ」
話に割って入ってきたのは、ダーレン曹長だ。
興奮状態になると涙を流すと云う、第二砲台名物男だ。
ここは三砲台一号台場詰所、第二砲台所属の者が、ついウッカリ入り込める場所ではない。
つまり、
「なんだ、ダーレンのオッサンも三砲台移動かよ、他にも一、二砲台の知った顔を見たけど、今第三が人気の部所なのかよ」
「それがよ、そうなんだ。三砲台もそうだが、研究室を新設したんだろ、若いのはそっち志望だ」
機動砲兵構想は、軍轄酒保から駄々漏れだ。
まあ、演習であれだけ耳目を集めていて、火砲術研究室設立だ。
機動砲兵隊設立を、予想出来ない筈も無い。
地味な兵科が一転して戦場の華だ、若い砲兵が転属したがるのも判る話だ。
「んじゃオッサンは?話振りからして、三砲研志望って訳じゃ無いんだろ」
「上と合わなくてな、抜けてきた」
これは只の軽口だ、大体第二砲台の方でも士官連中は処分されていて、彼の上官は配属待ちで不在だ。
「んじゃ、こっちの上なら合うのかよ」
尺の関係で割愛したが、実はレオンの評価は高い。
これもアルの砲撃に隠れてしまい、目立たない功績だったが、機動架台が囮となることで砲兵が前進、築塁、支援砲撃と、彼は十分に任務は達成していたのだ。
もしアルの必中砲撃が無かったとしても、囮砲撃だけで任務は達成し、どのみち、歩兵による三砲台包囲、占拠は完了した筈だ。
アルの必中砲撃が余計とまでは言わないが、イレギュラーではあったのだ。
その戦術眼、大胆さ、また自身の意見を尊重された事もあり、ダーレンは配属移動願いを出していたのだ。
この状況下で、よく配属移動願いが通ったものだと思ったが、豪腕の少佐の暗躍が否めない。
南方大陸の方がキナ臭くなってきているのだ。
少佐にしては、機動砲兵小隊をいち早く編成したくもある。
「まあ、上手くやっていけると思うぜ。そんな訳でよろしくな」
「よろしくな、ったってな。なあ、砲班移動じゃないんだろ、班員どうするよ?今コロンボとその話をしてた所だ?」
「人気部所だと言っただろ、心配はいらないよ募集をかけただろ」
特に三砲研の宣伝はしなかったが、三砲台の人員募集はかけたのだ。
果たしてダーレンの言った通り、応募者は殺到した。いや、下士官以下限定だが。
兵科も歩兵科、輜重科、砲兵科とおおよそ想定した兵科から志願が集り、また体力的に優れ者が多く現在選考中だそうな。
こうして、そう面白くも何ともない流れで、
後の独立機動火砲部隊の母体小隊が編成されていった。
機動架台四両、野戦砲新型四門、旧型六門。そして野戦仕様重火砲一門が初期武装となる。
三砲研の活動は、重火砲の入荷と共に多忙だった。
人員が増えたが、歩兵科、輜重科上がりは初期教育から施さねばならず、とても火薬を扱う装填手教育までは手が回らない。
幸い砲手は集まったので、装填手も兼任だ。
機動架台砲班構成は、砲手、掃除手、掃除手、掃除手、といった構成だが、適正を見ながら教育していく事になった。
スリーマンセルで無いのは、機動架台の為に押手が必要だからだ。掃除手は押手も兼任する。と言うか押手は全員兼任だ。
人員、装備が整い、三砲研の主任務である、アルの砲撃解析が始まった。
風向、風量は仕方ないとして、定点からの砲撃で火薬量の違いによる、火砲仰角の取り方。
新型砲弾の適正砲撃距離の算定。
機動砲撃時の仰負角や地角補正、火砲方位角調整など、必中状態から逆説的に命中に必要なデータを収集し、砲撃命中精度の向上に努めた。
これは表にまとめられ、砲手の必需携行品となる。
こうして、三砲台、三砲研は実力を高めていった。
南方大陸の一国家で内乱が発生した。
これは大方の予想通りだ。フランク王国が先の海戦で敗北し、国威が低下したのだから。
ただ、事態は些かややこしく、国威を上げた筈の四連合王国支持派が劣勢状況だ。
その国の名はテュネス共和国。
そもそもの争乱の発祥国だ。
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