突撃砲兵?キチにはキチの理屈がある!
鍛冶補助士
「分かっているとは思うが、軍隊相手に問題を起こすなよ」
老婆が口火をきる、あのあと簡単な話し合いで荷受けにレオンも立ち会う事になった。
荷受け後一度この市街に戻ってくるので、別に指令書をアルに持たせて、自身は自宅に帰宅し、一日とはいえのんびりとすればよいのだが、取り止めた。
(この市街に軍屯所はない、前記の通り、一日の距離に一大軍事拠点が存在するためだ、野営準備がしてあったのもそのためだ)
考えを改めたのは、無用なトラブルを避けるためだ。口にこそ出さなかったが、アルの口の汚さと性格を考えての事だ、あれは長生きできるタイプではない、
絶対部下達と悶着を起こす。その時上官であらる自分が不在となると、かなり大きな問題となる。
それに、件のアルなのだが、当人に聞きたい事もあった。大した事でもないので後回しにしたら聞きそびれてしまった。
というわけで三年ぶりの帰宅は、一晩のみの滞在となった。
老婆の問いはレオンの辞去後の事だ。
「んだよ、婆さん。それよか先に金」
少しは口の聞き様もマシになった。老婆は軽く舌打ちすると、店主に顎をしゃくった。
「ほらよ。けどよ、お前本当によく稼ぐよな、あの車両自作だろ、売る気はねぇか?」
「ねえ!あってもてめえにだけは売らん‼」
「……なあ、なんでお前そんなに喧嘩腰なの?
そういう心の病気?キチがいの亜種?」
「それは、お前のママ。亜種にしてキング」
「よし、分かった。お前ら外にでろ」
これは老婆の言
「な!ママ俺関係ない」
「俺は悪くない。喧嘩売ってきたのはケツの穴のほう、だから無罪!」
「話がすすまねぇ!息の根とめるなり、心臓とめるなりして黙って話聞け!」
「へえへえ」
「ママ、俺も聞くのか?」
老婆は頷いた。
「おいアル、お前に仕事回して10日ほどだが、まあ仕事ぶりは悪くない。客とも今のところ揉めたことないしな」
驚いた事に、アルとの付き合いはまだ10日だ。
「揉めるのはママとだけだしな」
「いや、おまえら親子とだよ」
この二人は親子ほど歳が離れているが、波長が合うのか、わりと仲がいいようにみえる。
が、次の瞬間には平気で殴り合いをするので、要注意だ。
「黙って聞けといったよな」
老婆の声のトーンが下がる。
この老婆は、平気で殺しにかかってくるので更に注意が必要だ。流石に二人とも黙りこむ。
「この仕事が無事に終わったら、うちにこいよ面倒みてやる」
「あん?ママ、こいつ採用するのか?」
そんな話は、今まで上がった事が無いのだろう、寝耳に水だ。
「そうだ。仕事もこなせてるし、際限なしの馬鹿じゃなさそうだ。何よりもだ」
老婆はジロリとアルを一瞥する。
「この馬鹿野放しにしとくと、いずれ誰かに殺されるわ、だから目の届く所に置く」
「いや誰かにじゃなく、ついさっきババアに…って言うか、おい婆さん、さっきのババアはなんだ?婆さんだったぞ!」
「そう言えばアル、お前叔母さん相手にして、よく生きてるな?ママ、叔母さんだったんだろ?」
「それ言い出したら、お前のウンコはなんだ?」
「ウンコはねぇ、俺もよくわかんねぇ?とりあえず3号までシリーズ化した」
会話に収集がつかない、この部分だけ抜粋するとキチの団欒だ。
「訳が分からんから、そこは置いといて」
店主は途中で脱落した分、切り替えが早い。どうせ聞けば聞くほど混乱するのだ。
「……で、だ。どうするよ、うちにくるなら余計なトラブルから守ってやるぞ」
まるでマフィアの勧誘だ、ただ入社したほうがトラブルが増える事は間違いない。
「折角だが、断るよ」
「なんだと‼お前まさか小姐に殺されかけた事を根にもってるのか!殺すぞ‼‼」
「…ママ…」
これは店主の反応が正しい、マフィアの勧誘より質が悪い。
「そうじゃねえ!別に俺は運送屋になりたい訳じゃないからな、理由はそんだけだ」
二人は逆に腑に落ちない。
「何言ってんだ、あんなゴツイ車両作っていながらよ」
「お前みたいな馬鹿が、他に働ける訳ないだろ。何言ってやがる間抜け」
「口が汚ぇな、あれ作ったのは趣味みたいなもんだ。うちは船もってる漁師だよ」
「なんだと?持船漁師だと?」
昔も今も船は高価だ、メンテナンスにもかなり費用がかかる。だがそれをペイできるほど、船を自己所持していれば儲かった。
これはどんな商売でも同じだろう。
今している運送業も、アルが車両を持ち込んでいるから仕事を回せるのだ。ただの馬子なら、天引いた人足代しか貰えない、桁がひとつ違う。
「わからないね、漁師が嫌だから車作って運送やってるんじゃないのか」
「別に漁師は嫌いじゃない、アレ造るのに金が掛かりすぎただけだ、親父の手伝いで手間賃もらっても、全然返済に足りない。だから割りの良い仕事回してくれ。借金返済したらアレで遊ぶ」
「なんだか、分かったような分からないような話だな、つまり運送で食ってくつもりはないんだな?」
「ふうん、ソコソコ稼いで後は遊んで暮らす訳かい、お前らしいっちゃらしいな。金が欲しくなったら働くんだろ?」
「そりゃ勿論、ただ漁師やるか運送やるか鍛冶屋やるかは分からん」
「なんだよ、鍛冶屋ってのは」
「俺は鍛冶補助の資格持っている」
鍛冶補助資格とは、つまるところ見習い資格だ
この時代、コークスによって旧来の徒弟制度が崩壊しつつあった。
後でも触れるがコークスは高温で燃焼するため、鉄の鋳造が可能となった。そのため徒弟制度により秘匿されてきた技能は部分的に無意味な技となっていた。
国はコークス使用を推奨し、またその使用法を資格化して解放した。
鍛冶補助とはグレード的には最下級の資格だが、最低限これがないと、そもそもコークスすら購入できないし、扱いかたも分からない。
老婆が口火をきる、あのあと簡単な話し合いで荷受けにレオンも立ち会う事になった。
荷受け後一度この市街に戻ってくるので、別に指令書をアルに持たせて、自身は自宅に帰宅し、一日とはいえのんびりとすればよいのだが、取り止めた。
(この市街に軍屯所はない、前記の通り、一日の距離に一大軍事拠点が存在するためだ、野営準備がしてあったのもそのためだ)
考えを改めたのは、無用なトラブルを避けるためだ。口にこそ出さなかったが、アルの口の汚さと性格を考えての事だ、あれは長生きできるタイプではない、
絶対部下達と悶着を起こす。その時上官であらる自分が不在となると、かなり大きな問題となる。
それに、件のアルなのだが、当人に聞きたい事もあった。大した事でもないので後回しにしたら聞きそびれてしまった。
というわけで三年ぶりの帰宅は、一晩のみの滞在となった。
老婆の問いはレオンの辞去後の事だ。
「んだよ、婆さん。それよか先に金」
少しは口の聞き様もマシになった。老婆は軽く舌打ちすると、店主に顎をしゃくった。
「ほらよ。けどよ、お前本当によく稼ぐよな、あの車両自作だろ、売る気はねぇか?」
「ねえ!あってもてめえにだけは売らん‼」
「……なあ、なんでお前そんなに喧嘩腰なの?
そういう心の病気?キチがいの亜種?」
「それは、お前のママ。亜種にしてキング」
「よし、分かった。お前ら外にでろ」
これは老婆の言
「な!ママ俺関係ない」
「俺は悪くない。喧嘩売ってきたのはケツの穴のほう、だから無罪!」
「話がすすまねぇ!息の根とめるなり、心臓とめるなりして黙って話聞け!」
「へえへえ」
「ママ、俺も聞くのか?」
老婆は頷いた。
「おいアル、お前に仕事回して10日ほどだが、まあ仕事ぶりは悪くない。客とも今のところ揉めたことないしな」
驚いた事に、アルとの付き合いはまだ10日だ。
「揉めるのはママとだけだしな」
「いや、おまえら親子とだよ」
この二人は親子ほど歳が離れているが、波長が合うのか、わりと仲がいいようにみえる。
が、次の瞬間には平気で殴り合いをするので、要注意だ。
「黙って聞けといったよな」
老婆の声のトーンが下がる。
この老婆は、平気で殺しにかかってくるので更に注意が必要だ。流石に二人とも黙りこむ。
「この仕事が無事に終わったら、うちにこいよ面倒みてやる」
「あん?ママ、こいつ採用するのか?」
そんな話は、今まで上がった事が無いのだろう、寝耳に水だ。
「そうだ。仕事もこなせてるし、際限なしの馬鹿じゃなさそうだ。何よりもだ」
老婆はジロリとアルを一瞥する。
「この馬鹿野放しにしとくと、いずれ誰かに殺されるわ、だから目の届く所に置く」
「いや誰かにじゃなく、ついさっきババアに…って言うか、おい婆さん、さっきのババアはなんだ?婆さんだったぞ!」
「そう言えばアル、お前叔母さん相手にして、よく生きてるな?ママ、叔母さんだったんだろ?」
「それ言い出したら、お前のウンコはなんだ?」
「ウンコはねぇ、俺もよくわかんねぇ?とりあえず3号までシリーズ化した」
会話に収集がつかない、この部分だけ抜粋するとキチの団欒だ。
「訳が分からんから、そこは置いといて」
店主は途中で脱落した分、切り替えが早い。どうせ聞けば聞くほど混乱するのだ。
「……で、だ。どうするよ、うちにくるなら余計なトラブルから守ってやるぞ」
まるでマフィアの勧誘だ、ただ入社したほうがトラブルが増える事は間違いない。
「折角だが、断るよ」
「なんだと‼お前まさか小姐に殺されかけた事を根にもってるのか!殺すぞ‼‼」
「…ママ…」
これは店主の反応が正しい、マフィアの勧誘より質が悪い。
「そうじゃねえ!別に俺は運送屋になりたい訳じゃないからな、理由はそんだけだ」
二人は逆に腑に落ちない。
「何言ってんだ、あんなゴツイ車両作っていながらよ」
「お前みたいな馬鹿が、他に働ける訳ないだろ。何言ってやがる間抜け」
「口が汚ぇな、あれ作ったのは趣味みたいなもんだ。うちは船もってる漁師だよ」
「なんだと?持船漁師だと?」
昔も今も船は高価だ、メンテナンスにもかなり費用がかかる。だがそれをペイできるほど、船を自己所持していれば儲かった。
これはどんな商売でも同じだろう。
今している運送業も、アルが車両を持ち込んでいるから仕事を回せるのだ。ただの馬子なら、天引いた人足代しか貰えない、桁がひとつ違う。
「わからないね、漁師が嫌だから車作って運送やってるんじゃないのか」
「別に漁師は嫌いじゃない、アレ造るのに金が掛かりすぎただけだ、親父の手伝いで手間賃もらっても、全然返済に足りない。だから割りの良い仕事回してくれ。借金返済したらアレで遊ぶ」
「なんだか、分かったような分からないような話だな、つまり運送で食ってくつもりはないんだな?」
「ふうん、ソコソコ稼いで後は遊んで暮らす訳かい、お前らしいっちゃらしいな。金が欲しくなったら働くんだろ?」
「そりゃ勿論、ただ漁師やるか運送やるか鍛冶屋やるかは分からん」
「なんだよ、鍛冶屋ってのは」
「俺は鍛冶補助の資格持っている」
鍛冶補助資格とは、つまるところ見習い資格だ
この時代、コークスによって旧来の徒弟制度が崩壊しつつあった。
後でも触れるがコークスは高温で燃焼するため、鉄の鋳造が可能となった。そのため徒弟制度により秘匿されてきた技能は部分的に無意味な技となっていた。
国はコークス使用を推奨し、またその使用法を資格化して解放した。
鍛冶補助とはグレード的には最下級の資格だが、最低限これがないと、そもそもコークスすら購入できないし、扱いかたも分からない。
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