School rifle.
始まった非日常
 「あそこに座られている、白羽さんですね」
 あの発言をもし、わざとしているのだとしたら、彼女は間違いなく悪女だ。
 俺はあの発言の後、男子からは 嫉妬と憎悪の籠った目で見られ、女子からはえ、いつの間に?みたいな顔をしている。
 それも致し方ないだろう。全て不知火に責任があるのであり、周囲は悪くない。
 「おい」
 その中の一人である陽平は、先程の挨拶とは打って変わって、低く淀んだ声を出した。
 「なんだよ」
 
 何となく彼の言いたいことが分かったが、一応聞いておく。
 「俺は、お前の友達だったよな?」
 「ああ」
 「だったら、なん(ry
 放課後。生徒たちは、自らの部活動に専念する時間帯だ。帰宅部である俺は、一目散に家に帰還し、仕事を始めるつもりはずだった。
「なんで、俺があんたに、学校案内しなきゃいけないんだよ……!」
 「何でですかねー?あと、私はあんたではなく不知火炎華です」
 つくづく癇に障る。朝の件といい、今といい、俺の不利益になることしかしない。
 
 「それで、丁度いいから聞くんだが。不知火の得物はなんなんだ?」
 「それはですね…」
 そう言うと、彼女は手を俺の方に向けてくる。
 「じっとしててくださいよ」
 (っ…………///)
 なんだろう、この心臓から込み上げてくる違和感は。その違和感は段々と大きくなり、熱だということが分かった。
 「体温調節が出来るのか……?」
 「ふふふ、そんなチャチなもんじゃないですよ。この世界に存在する熱エネルギー全てを、操れちゃうんですよ、えっへん」
 
 「マジかよ…」
 それが本当だとしたならば、どれほど恐ろしいことだろうか。
 「……ってことは、レンジ要らずじゃん……」
 「一人暮らし、苦労されてるんですね…」
 いつの間にか、話題が逸れてしまった。俺はここで話してるのも、先生から頼まれた手前、あまり良くないだろうと判断した。
 「じゃあ、一回、学校回ってみるでいいか?」
 
 「いや、その事なんですけど…」
 急に口篭る不知火。なにか不都合なことでもあったのだろうか。すると、彼女は徐にスカートのポケットから、情報端末を取り出す。慣れた手つきで画面をタップし、やがて指が止まる。そして、その画面を俺に見せて来た。
 「依頼か…」
 「はい。ここから、歩いて数分で着きます。私の能力を知ってもらうには丁度いいですね」
 
 「そうだな。よし、俺も準備が出来てるから、そのまま行くか」
 
  「あれ、白羽さ……じゃなくて先輩の得物は確か…」
  「ああ、フルオーダーメイドの狙撃銃だ。そいつは、今もここにある」
  俺は、そう言いながら自分の端末を叩く。
 「うーん………さしずめ、物体識別コードですかね?」
  「よく知ってるな、まぁ細かい話は後だ。今は、獸どものところに行くとしよう」
 「了解12海里ですー」
 「………」
 この日、俺は彼女のギャグセンスの無さに呆れた。
 その一方で、そんな事を思いつつ、俺は1つの疑問を抱いていた。
 (どうして依頼は、俺の端末に来なかったんだ?まるで彼女の端末にだけ依頼が来たみたいだ。いや、考え過ぎなのかか………?)
俺達は、高校から歩いてすぐの廃ビルの屋上に来ていた。本来は、安全面の確保が出来ないとか何とかで入れないのだが、そこはあの木塚さんが、どうにかしてくれたようだ。
 「まず、敵の情報整理からだな。おーい、ネクト」
 《ハイハイ、お呼びですかー?》
 「今回の標的についての情報を頼む」
 《はーい、了解です。まず、発生予想時刻は、今から約15分後です。次元数は、現出門の大きさ、周波数から考えると、3か4と推測されます》
 「凄いですねぇー。優秀なAIを持って先輩は幸せ者ですね」
 《えっへん!》
 「不知火、あまり此奴を甘やかさないでくれ。このポンコツは、すぐ調子に乗る」
 《な、ポンコツって!?》
  「まぁ、そんなこと言わずに………っと」
 「感じたか?」
 「はい…」
 「来るぞ」
  俺たちの視線は、ビルから見下ろすことの出来る交差点に集中していた。交差点には、平日とは言え、時間帯が時間帯の為、渋滞していた。
 
 突如として、交差点の中心部に歪みが発生した。
 歪みは、段々と大きくなり、やがて周囲のビルに及ぶまでになった。だが、人々も、車も誰もその違和感に気が付かない。
 いや、それより誰も影響を受けていないと行った方が正しいか。
 「演算開始」
 《了解……って、主、忘れたんですか?》
 「えっ?」
  俺は、いつもの癖で銃を端末から出そうとしたが、何故か止められた。
 「もう、今回は私がやるって言ったじゃないですか」
 「あ」
 《もう、しっかりしてくださいよー》
 「お前だけには言われたくない」
 ふと交差点に目を向けると、既に奴は来ていた。
  
 一言で言うなら、奴は亀だった。
 大きな甲羅を背に纏い、甲羅から首と四つの足が突き出ている。ただ1つ亀と違うのは、大きく発達した爪が手足にあることだろう。
 「おい、あいつ硬そうだぞ?」
 「あれぐらいなら、問題ないです」
 《あの甲羅は、戦車砲くらいなら軽く受け止めますよー》
 「見てて下さいよ、やってみせますって」
 彼女はそう言うと、先程俺にやった様に手を前に出し、集中する。
 やがて、彼女の目の前には、炎の塊が出現する。それも、一つや二つでは無い。数え切れないほどの炎塊が形成されていく。それらは、ひとつに纏まり大きな塊となった。
 「すぅ、、、、剣現っ!」
 彼女の口から、駄洒落とも正式なものとも取れる技名が叫ばれる。
 声に呼応するように、塊は、炎剣へと姿を変えた。
 彼女は、柄を掴む。だが、火傷する様子はない。きっとなにかの仕組みで炎は、彼女自身の体には影響しないようになっているのだろう。
 次の瞬間の事だった。
 ズドォォォォォッッッッッッッッッッッッッッンンンンンン!!!!!!!
 「消えた!?いや、空気を爆発させて、文字通り飛んだのか?」
 信じ難い事だった。少しでも調整をしくじれば、体はいとも容易く引き裂かれる。度胸と技術の両方があって、初めて為せる技だった。
 俺の動体視力を究極まで鍛えた眼は、すぐに彼女の姿を捉えた。まさに、剣が振り下ろされ甲羅と衝突する直前だった。
 その時、音は無かった。爆発により、加速された剣の動きが音速を超えたのだ。断末魔の叫びも無い。斬られた相手が、痛みを感じる前に絶命したのだ。
 スパッ、と些か情けないと思う程の音がすると、亀が『ズレた』。その後、亀は細かい粒子へと姿を変え、完全に何もかも消え去った。血すら残さずに。
 《対象の絶命を確認。対象の原生次元への回帰を確認。依頼達成ですね……》
 ネクトが驚きつつ、事後確認をした。
 不知火が戻ってくると、俺は疑問をぶつける。
 「おい、この依頼仕組んだだろ?」
 「後輩の初舞台だって言うのに、お疲れの一言も無いのですか?」
 「質問に質問で返すな。俺の端末にだけ依頼の内容が通知されなかった。明らかにおかしいだろ?」
 「はぁ…やっぱりバレてましたか……」
 「当たり前だろ。それで?どうしてこんなことした?」
 俺が問い詰めると、彼女はバツが悪そうに話し始めた。
 「それはですね……」
 あの発言をもし、わざとしているのだとしたら、彼女は間違いなく悪女だ。
 俺はあの発言の後、男子からは 嫉妬と憎悪の籠った目で見られ、女子からはえ、いつの間に?みたいな顔をしている。
 それも致し方ないだろう。全て不知火に責任があるのであり、周囲は悪くない。
 「おい」
 その中の一人である陽平は、先程の挨拶とは打って変わって、低く淀んだ声を出した。
 「なんだよ」
 
 何となく彼の言いたいことが分かったが、一応聞いておく。
 「俺は、お前の友達だったよな?」
 「ああ」
 「だったら、なん(ry
 放課後。生徒たちは、自らの部活動に専念する時間帯だ。帰宅部である俺は、一目散に家に帰還し、仕事を始めるつもりはずだった。
「なんで、俺があんたに、学校案内しなきゃいけないんだよ……!」
 「何でですかねー?あと、私はあんたではなく不知火炎華です」
 つくづく癇に障る。朝の件といい、今といい、俺の不利益になることしかしない。
 
 「それで、丁度いいから聞くんだが。不知火の得物はなんなんだ?」
 「それはですね…」
 そう言うと、彼女は手を俺の方に向けてくる。
 「じっとしててくださいよ」
 (っ…………///)
 なんだろう、この心臓から込み上げてくる違和感は。その違和感は段々と大きくなり、熱だということが分かった。
 「体温調節が出来るのか……?」
 「ふふふ、そんなチャチなもんじゃないですよ。この世界に存在する熱エネルギー全てを、操れちゃうんですよ、えっへん」
 
 「マジかよ…」
 それが本当だとしたならば、どれほど恐ろしいことだろうか。
 「……ってことは、レンジ要らずじゃん……」
 「一人暮らし、苦労されてるんですね…」
 いつの間にか、話題が逸れてしまった。俺はここで話してるのも、先生から頼まれた手前、あまり良くないだろうと判断した。
 「じゃあ、一回、学校回ってみるでいいか?」
 
 「いや、その事なんですけど…」
 急に口篭る不知火。なにか不都合なことでもあったのだろうか。すると、彼女は徐にスカートのポケットから、情報端末を取り出す。慣れた手つきで画面をタップし、やがて指が止まる。そして、その画面を俺に見せて来た。
 「依頼か…」
 「はい。ここから、歩いて数分で着きます。私の能力を知ってもらうには丁度いいですね」
 
 「そうだな。よし、俺も準備が出来てるから、そのまま行くか」
 
  「あれ、白羽さ……じゃなくて先輩の得物は確か…」
  「ああ、フルオーダーメイドの狙撃銃だ。そいつは、今もここにある」
  俺は、そう言いながら自分の端末を叩く。
 「うーん………さしずめ、物体識別コードですかね?」
  「よく知ってるな、まぁ細かい話は後だ。今は、獸どものところに行くとしよう」
 「了解12海里ですー」
 「………」
 この日、俺は彼女のギャグセンスの無さに呆れた。
 その一方で、そんな事を思いつつ、俺は1つの疑問を抱いていた。
 (どうして依頼は、俺の端末に来なかったんだ?まるで彼女の端末にだけ依頼が来たみたいだ。いや、考え過ぎなのかか………?)
俺達は、高校から歩いてすぐの廃ビルの屋上に来ていた。本来は、安全面の確保が出来ないとか何とかで入れないのだが、そこはあの木塚さんが、どうにかしてくれたようだ。
 「まず、敵の情報整理からだな。おーい、ネクト」
 《ハイハイ、お呼びですかー?》
 「今回の標的についての情報を頼む」
 《はーい、了解です。まず、発生予想時刻は、今から約15分後です。次元数は、現出門の大きさ、周波数から考えると、3か4と推測されます》
 「凄いですねぇー。優秀なAIを持って先輩は幸せ者ですね」
 《えっへん!》
 「不知火、あまり此奴を甘やかさないでくれ。このポンコツは、すぐ調子に乗る」
 《な、ポンコツって!?》
  「まぁ、そんなこと言わずに………っと」
 「感じたか?」
 「はい…」
 「来るぞ」
  俺たちの視線は、ビルから見下ろすことの出来る交差点に集中していた。交差点には、平日とは言え、時間帯が時間帯の為、渋滞していた。
 
 突如として、交差点の中心部に歪みが発生した。
 歪みは、段々と大きくなり、やがて周囲のビルに及ぶまでになった。だが、人々も、車も誰もその違和感に気が付かない。
 いや、それより誰も影響を受けていないと行った方が正しいか。
 「演算開始」
 《了解……って、主、忘れたんですか?》
 「えっ?」
  俺は、いつもの癖で銃を端末から出そうとしたが、何故か止められた。
 「もう、今回は私がやるって言ったじゃないですか」
 「あ」
 《もう、しっかりしてくださいよー》
 「お前だけには言われたくない」
 ふと交差点に目を向けると、既に奴は来ていた。
  
 一言で言うなら、奴は亀だった。
 大きな甲羅を背に纏い、甲羅から首と四つの足が突き出ている。ただ1つ亀と違うのは、大きく発達した爪が手足にあることだろう。
 「おい、あいつ硬そうだぞ?」
 「あれぐらいなら、問題ないです」
 《あの甲羅は、戦車砲くらいなら軽く受け止めますよー》
 「見てて下さいよ、やってみせますって」
 彼女はそう言うと、先程俺にやった様に手を前に出し、集中する。
 やがて、彼女の目の前には、炎の塊が出現する。それも、一つや二つでは無い。数え切れないほどの炎塊が形成されていく。それらは、ひとつに纏まり大きな塊となった。
 「すぅ、、、、剣現っ!」
 彼女の口から、駄洒落とも正式なものとも取れる技名が叫ばれる。
 声に呼応するように、塊は、炎剣へと姿を変えた。
 彼女は、柄を掴む。だが、火傷する様子はない。きっとなにかの仕組みで炎は、彼女自身の体には影響しないようになっているのだろう。
 次の瞬間の事だった。
 ズドォォォォォッッッッッッッッッッッッッッンンンンンン!!!!!!!
 「消えた!?いや、空気を爆発させて、文字通り飛んだのか?」
 信じ難い事だった。少しでも調整をしくじれば、体はいとも容易く引き裂かれる。度胸と技術の両方があって、初めて為せる技だった。
 俺の動体視力を究極まで鍛えた眼は、すぐに彼女の姿を捉えた。まさに、剣が振り下ろされ甲羅と衝突する直前だった。
 その時、音は無かった。爆発により、加速された剣の動きが音速を超えたのだ。断末魔の叫びも無い。斬られた相手が、痛みを感じる前に絶命したのだ。
 スパッ、と些か情けないと思う程の音がすると、亀が『ズレた』。その後、亀は細かい粒子へと姿を変え、完全に何もかも消え去った。血すら残さずに。
 《対象の絶命を確認。対象の原生次元への回帰を確認。依頼達成ですね……》
 ネクトが驚きつつ、事後確認をした。
 不知火が戻ってくると、俺は疑問をぶつける。
 「おい、この依頼仕組んだだろ?」
 「後輩の初舞台だって言うのに、お疲れの一言も無いのですか?」
 「質問に質問で返すな。俺の端末にだけ依頼の内容が通知されなかった。明らかにおかしいだろ?」
 「はぁ…やっぱりバレてましたか……」
 「当たり前だろ。それで?どうしてこんなことした?」
 俺が問い詰めると、彼女はバツが悪そうに話し始めた。
 「それはですね……」
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