ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
254 結界通しと有り触れた人形化魔物の被害
学園都市トコハのホウゲツ学園を発った俺は、真・複合発露〈裂雲雷鳥・不羈〉を以って再びランブリク共和国の都市ユースアルを目指していた。
既に日は落ちており、激しい雷光が夜の空から地上を照らしている。
速度を優先しているため、大分目立っているだろうが、状況が状況だ。
気にせずに突き進む。そもそも――。
「フェリト」
「ええ」
地上を離れて間もなく出した合図に従い、影の中のフェリトと共に使用している真・複合発露〈共鳴調律・想歌〉。
それによる循環共鳴の力で真に雷速と同等の速度へと近づいているが故に、地上から見る分には空を稲光が横に伸びていくようにしか見えないだろう。
それが人の手で引き起こされているものだとは、ほとんどの者が思うまい。
「こんなに早くからフェリト殿に力を使わせて大丈夫でありまするか?」
「心配いりません。イサク様は、戦いを長引かせるつもりはないでしょうから」
疲労を心配して影の中から問うてきたアスカに、イリュファが代わりに答える。
実際のところ、いくら理論上は無限に強化ができるとは言っても、循環共鳴を使い続けていると疲労が蓄積してしまうのは確かだ。
単なる移動時の使用は、下手をすると無駄な消耗になりかねない。
戦うよりも早く限界が来てしまっては意味がない。
しかし、イリュファが口にした通り、今回は長期戦に持ち込むつもりはない。
既に一度作戦に失敗し、大幅に時間をロスしているのだ。
可能な限り早く解決に持っていかなければ、犠牲が増えるばかりとなる。
移動速度を増幅しながら、最大限に強化された状態の一撃で勝負を決する。
最速最短の解決を目指すなら、それが最適のはずだ
「うまくいきまするか?」
「既に相手の手の内は分かっていますし、底も知れています。問題ありません」
アスカの問いかけにハッキリと答えるイリュファ。
更に彼女はそう断言した理由を続けて口にする。
「人形化魔物【コロセウム】は、本体はそう強くない人形化魔物と見て間違いありません。何故なら、結界に攻撃を加えたイサク様を脅威と認識したにもかかわらず、捕らえた住民にイサク様を襲わせたからです」
「……つまり、自分自身が戦うよりもその方が確実性が高いと判断した訳でありまするな。たとえ主様の同情心を利用しようとしていたとしても」
それだけで俺を排除することができると考えていたのなら、結局のところ、その程度の存在でしかない訳だ。
勿論、普通ならば第六位階相当の身体強化を施された上、異次元特効のない攻撃を無効化する住民達は十分に脅威となるはずだが……。
それを容易くあしらえるレベルの者が結界を突破することのできる手段を持った時点で、人形化魔物【コロセウム】は既に詰んでいると言っていい。
「その通りです。問題があるとすれば、街一つ分を覆い隠す結界の中のどこに本体がいるか、ですが……まあ、これに関しては、あの結界を超えることさえできれば大きな障害にはなり得ません。勝負は一瞬で決まることでしょう」
「無論、そこはワタシも心配しておりませぬ。主様は、巨大化した状態のワタシにすら勝利したお方でありますれば」
そうこう二人が状況の確認をしている間に、再びランブリク共和国の人間側の領域、フレギウス王国との国境に近い都市ノースアルが近づいてきた。
雷光に照らされたそこは、相変わらず半球形の薄膜に覆われている。
それを前にアスカ達も自然と口を閉ざし、放電音が静かな空に響く。
そんな中、俺は影から結界通しを取り出すと空中で体勢を整えた。
「さて……今度こそ終わりにしてやるぞ。人形化魔物」
当然、今度は地上から近づくような真似はしない。
人類に苦痛を与えて殺すことを至上の喜びとしているかの如き存在が相手だ。
もしかしたら中に閉じ込めた人々を結界に重ね合わせるように配置し、結界を破る一撃に巻き込ませて助けに来た人間に殺させようとしている可能性もある。
あるいは視認できるようにし、人質として用いるか。
だが、闘技場の人形化魔物の性質上、飛行という概念はない。
だから俺は、雷の如き鋭角の軌道と共にドーム状の膜の上部へと迫り、薄皮のみを断つように刃を振るった。
今度はそれこそ膜を裂くような微かな手応えと共に、結界通しが振り抜かれる。
直後、街を覆っていた膜に裂け目が生じ――。
「成程、【コロセウム】か」
薄膜を通して見えていた景色とは全く異なる光景が目に飛び込んできた。
古代ギリシャのコロッセウムを街一つ分ぐらいに広げたかの如き様相。
だが、破滅衝動に穢されているかのように全てが赤黒い。
長時間この中にいると気が滅入りそうだ。
中心では今正に、二人の人間が剣と盾を手に原始的な戦いを繰り広げている。
視界の端、結界の縁の辺りには、案の定と言うべきか、ノースアルの住民達が闘技場を取り囲むように立っている。まるで人間の盾のような状態だ。
……全く以って邪悪としか言いようがない。
「全て、凍りつけ!!」
それを認識した俺は激しい怒りと共に、循環共鳴によって大幅に強化された真・複合発露〈万有凍結・封緘〉を即座に解き放った。
瞬間的に、世界を区切る膜ごと結界内の全てが凍りつく。
誰も動くことのできない停止した世界が顕現する。
移動時間を十分に使って極限まで威力を増幅しているが故に、街一つ分という広範囲に影響を及ぼして尚、滅尽・複合発露の副次効果による第六位階相当の身体強化状態を以ってしても凍結を破ることができる者が現れることはない。
もし、この場で行動できるものがあるとすれば……。
それから一瞬の後、巨大な闘技場とそれを覆い隠していた膜が世界に溶けるように消え去り、氷漬けの存在はノースアルに再び出現した住民達のみとなる。
「そこか」
そんな街の片隅で、風の探知が住民とは別の人型の何かを察知する。
結界内に作った密閉空間にでも隠れひそんで凍結から逃れ、滅尽・複合発露を解除して人に似た形となった【コロセウム】と考えて間違いない。
だから俺は、それを目がけて雷光を纏いながら突っ込み――。
「消え失せろ」
人の形ながら人ではないことを確認すると共に、氷の刃を用いて対象が認識することのできない速度で縦一文字に切り裂いた。
勿論、それだけでは終わらない。
更に幾度も斬撃を繰り返し、元が人の形と連想できない程にバラバラにした。
直前に見たところでは人の肩幅程度の小さなコロッセウムを胴体に、剣奴のような鉄仮面と無機質な手足が生えたような姿だったが、見る影もない。
後は消滅を待つのみだ。
「馬鹿、ナ……」
「え?」
そして、ブツ切りの形すら保てずに赤黒くドロドロに溶けていくそれは、最後にそうノイズの混じったような奇怪な声を発してから完全に消え去った。
一応、文献等でそういった事例があることは知っていたし、全く感じが違うものの【ガラテア】の肉体であるテアも普通に会話をすることができる。
だが、これまで対峙してきた人形化魔物は言葉を発することがなかったため、少なからず動揺してしまった。
これもまた、救世の転生者を要する世界の危機が着実に迫っている証左だろう。
「イサク様、ともあれ住民を解放しましょう」
「……ああ、分かってる」
闘技場の人形化魔物【コロセウム】が消え失せた場所をしばらく見据えていた俺は、促すイリュファに頷くと気持ちを切り替えた。
そして数名ずつ順次凍結を解除し、もう殺し合わなくていい旨を伝えていく。
反応は二つ。安堵し喜ぶ者と、苦しみと共に深く沈み込む者。
当然ながら既に何度も殺し合いは繰り返され、少なくない犠牲者が出ている。
俺にできる限りのことはしたと思うが、重苦しい感情を抱かざるを得ない。
加えて、強要されたこととは言え、殺し合わねばならない極限状況の中で日常では好ましくない行動を取ってしまった者もいるだろう。
仕方がないことだと思うが、人間の心は簡単に割り切れるようにできていない。
住民達がこれまで通りの生活を送っていけるのか、少し心配にもなる。
「これもまたアレらの所業の結果です」
そんな俺を前に、人形化魔物への憎悪を隠さずに告げるイリュファ。
これまでの彼女の激しい感情に、改めていくらかの共感を抱く。
人形化魔物は正しく人類の敵だ。
救世の転生者として、その犠牲となる者を可能な限り減らさなければならない。
そう改めて己に言い聞かせ――。
「ともあれ、ここから先は私達が口を挟める問題ではありません。ランブリク共和国の人間でもありませんし。今日は帰って休みましょう」
「……そうだな」
労うように告げたイリュファに頷き、俺は複雑な気持ちを胸の内に抱えながらホウゲツへの帰途についた。
既に日は落ちており、激しい雷光が夜の空から地上を照らしている。
速度を優先しているため、大分目立っているだろうが、状況が状況だ。
気にせずに突き進む。そもそも――。
「フェリト」
「ええ」
地上を離れて間もなく出した合図に従い、影の中のフェリトと共に使用している真・複合発露〈共鳴調律・想歌〉。
それによる循環共鳴の力で真に雷速と同等の速度へと近づいているが故に、地上から見る分には空を稲光が横に伸びていくようにしか見えないだろう。
それが人の手で引き起こされているものだとは、ほとんどの者が思うまい。
「こんなに早くからフェリト殿に力を使わせて大丈夫でありまするか?」
「心配いりません。イサク様は、戦いを長引かせるつもりはないでしょうから」
疲労を心配して影の中から問うてきたアスカに、イリュファが代わりに答える。
実際のところ、いくら理論上は無限に強化ができるとは言っても、循環共鳴を使い続けていると疲労が蓄積してしまうのは確かだ。
単なる移動時の使用は、下手をすると無駄な消耗になりかねない。
戦うよりも早く限界が来てしまっては意味がない。
しかし、イリュファが口にした通り、今回は長期戦に持ち込むつもりはない。
既に一度作戦に失敗し、大幅に時間をロスしているのだ。
可能な限り早く解決に持っていかなければ、犠牲が増えるばかりとなる。
移動速度を増幅しながら、最大限に強化された状態の一撃で勝負を決する。
最速最短の解決を目指すなら、それが最適のはずだ
「うまくいきまするか?」
「既に相手の手の内は分かっていますし、底も知れています。問題ありません」
アスカの問いかけにハッキリと答えるイリュファ。
更に彼女はそう断言した理由を続けて口にする。
「人形化魔物【コロセウム】は、本体はそう強くない人形化魔物と見て間違いありません。何故なら、結界に攻撃を加えたイサク様を脅威と認識したにもかかわらず、捕らえた住民にイサク様を襲わせたからです」
「……つまり、自分自身が戦うよりもその方が確実性が高いと判断した訳でありまするな。たとえ主様の同情心を利用しようとしていたとしても」
それだけで俺を排除することができると考えていたのなら、結局のところ、その程度の存在でしかない訳だ。
勿論、普通ならば第六位階相当の身体強化を施された上、異次元特効のない攻撃を無効化する住民達は十分に脅威となるはずだが……。
それを容易くあしらえるレベルの者が結界を突破することのできる手段を持った時点で、人形化魔物【コロセウム】は既に詰んでいると言っていい。
「その通りです。問題があるとすれば、街一つ分を覆い隠す結界の中のどこに本体がいるか、ですが……まあ、これに関しては、あの結界を超えることさえできれば大きな障害にはなり得ません。勝負は一瞬で決まることでしょう」
「無論、そこはワタシも心配しておりませぬ。主様は、巨大化した状態のワタシにすら勝利したお方でありますれば」
そうこう二人が状況の確認をしている間に、再びランブリク共和国の人間側の領域、フレギウス王国との国境に近い都市ノースアルが近づいてきた。
雷光に照らされたそこは、相変わらず半球形の薄膜に覆われている。
それを前にアスカ達も自然と口を閉ざし、放電音が静かな空に響く。
そんな中、俺は影から結界通しを取り出すと空中で体勢を整えた。
「さて……今度こそ終わりにしてやるぞ。人形化魔物」
当然、今度は地上から近づくような真似はしない。
人類に苦痛を与えて殺すことを至上の喜びとしているかの如き存在が相手だ。
もしかしたら中に閉じ込めた人々を結界に重ね合わせるように配置し、結界を破る一撃に巻き込ませて助けに来た人間に殺させようとしている可能性もある。
あるいは視認できるようにし、人質として用いるか。
だが、闘技場の人形化魔物の性質上、飛行という概念はない。
だから俺は、雷の如き鋭角の軌道と共にドーム状の膜の上部へと迫り、薄皮のみを断つように刃を振るった。
今度はそれこそ膜を裂くような微かな手応えと共に、結界通しが振り抜かれる。
直後、街を覆っていた膜に裂け目が生じ――。
「成程、【コロセウム】か」
薄膜を通して見えていた景色とは全く異なる光景が目に飛び込んできた。
古代ギリシャのコロッセウムを街一つ分ぐらいに広げたかの如き様相。
だが、破滅衝動に穢されているかのように全てが赤黒い。
長時間この中にいると気が滅入りそうだ。
中心では今正に、二人の人間が剣と盾を手に原始的な戦いを繰り広げている。
視界の端、結界の縁の辺りには、案の定と言うべきか、ノースアルの住民達が闘技場を取り囲むように立っている。まるで人間の盾のような状態だ。
……全く以って邪悪としか言いようがない。
「全て、凍りつけ!!」
それを認識した俺は激しい怒りと共に、循環共鳴によって大幅に強化された真・複合発露〈万有凍結・封緘〉を即座に解き放った。
瞬間的に、世界を区切る膜ごと結界内の全てが凍りつく。
誰も動くことのできない停止した世界が顕現する。
移動時間を十分に使って極限まで威力を増幅しているが故に、街一つ分という広範囲に影響を及ぼして尚、滅尽・複合発露の副次効果による第六位階相当の身体強化状態を以ってしても凍結を破ることができる者が現れることはない。
もし、この場で行動できるものがあるとすれば……。
それから一瞬の後、巨大な闘技場とそれを覆い隠していた膜が世界に溶けるように消え去り、氷漬けの存在はノースアルに再び出現した住民達のみとなる。
「そこか」
そんな街の片隅で、風の探知が住民とは別の人型の何かを察知する。
結界内に作った密閉空間にでも隠れひそんで凍結から逃れ、滅尽・複合発露を解除して人に似た形となった【コロセウム】と考えて間違いない。
だから俺は、それを目がけて雷光を纏いながら突っ込み――。
「消え失せろ」
人の形ながら人ではないことを確認すると共に、氷の刃を用いて対象が認識することのできない速度で縦一文字に切り裂いた。
勿論、それだけでは終わらない。
更に幾度も斬撃を繰り返し、元が人の形と連想できない程にバラバラにした。
直前に見たところでは人の肩幅程度の小さなコロッセウムを胴体に、剣奴のような鉄仮面と無機質な手足が生えたような姿だったが、見る影もない。
後は消滅を待つのみだ。
「馬鹿、ナ……」
「え?」
そして、ブツ切りの形すら保てずに赤黒くドロドロに溶けていくそれは、最後にそうノイズの混じったような奇怪な声を発してから完全に消え去った。
一応、文献等でそういった事例があることは知っていたし、全く感じが違うものの【ガラテア】の肉体であるテアも普通に会話をすることができる。
だが、これまで対峙してきた人形化魔物は言葉を発することがなかったため、少なからず動揺してしまった。
これもまた、救世の転生者を要する世界の危機が着実に迫っている証左だろう。
「イサク様、ともあれ住民を解放しましょう」
「……ああ、分かってる」
闘技場の人形化魔物【コロセウム】が消え失せた場所をしばらく見据えていた俺は、促すイリュファに頷くと気持ちを切り替えた。
そして数名ずつ順次凍結を解除し、もう殺し合わなくていい旨を伝えていく。
反応は二つ。安堵し喜ぶ者と、苦しみと共に深く沈み込む者。
当然ながら既に何度も殺し合いは繰り返され、少なくない犠牲者が出ている。
俺にできる限りのことはしたと思うが、重苦しい感情を抱かざるを得ない。
加えて、強要されたこととは言え、殺し合わねばならない極限状況の中で日常では好ましくない行動を取ってしまった者もいるだろう。
仕方がないことだと思うが、人間の心は簡単に割り切れるようにできていない。
住民達がこれまで通りの生活を送っていけるのか、少し心配にもなる。
「これもまたアレらの所業の結果です」
そんな俺を前に、人形化魔物への憎悪を隠さずに告げるイリュファ。
これまでの彼女の激しい感情に、改めていくらかの共感を抱く。
人形化魔物は正しく人類の敵だ。
救世の転生者として、その犠牲となる者を可能な限り減らさなければならない。
そう改めて己に言い聞かせ――。
「ともあれ、ここから先は私達が口を挟める問題ではありません。ランブリク共和国の人間でもありませんし。今日は帰って休みましょう」
「……そうだな」
労うように告げたイリュファに頷き、俺は複雑な気持ちを胸の内に抱えながらホウゲツへの帰途についた。
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