ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
AR23 影の中の少女達
「仲間が増えれば増える程、救世という使命を果たし易くなることは間違いない。勿論それは、仲間達の間に不和が生じなければ、の話だけれどね。もっとも、それに関しては何の心配もいらなかったことは君も知るところだろう。皆、個性的ではあっても望んで君が悲しむような真似をする子達ではなかったからね。けれど、だからこそ――」
***
「基本的な部分としては、このようなところでしょうか」
新しく可愛らしい巫女風の衣装をイサク様に仕立てて貰ったアスカに、一先ず少女祭祀国家ホウゲツにおける常識を教えること一時間半程度。
三大特異思念集積体であるからか彼女は基本的なスペックが非常に高いらしく、一聞いて十知るが如く私の説明を一通り理解した様子だった。
元々知識もある程度持って生まれていることも、影響しているかもしれない。
しかし、特筆すべきはその凄まじい集中力だろう。
「感謝致しまする、先生」
区切りをつけて話を終えた私に、素直に頭を下げて礼を尽くすアスカ。
イサク様と真性少女契約を結ぶこともできずにいる身勝手で浅ましい私を、そんな風に彼女が先生などと呼んで顔を立ててくれていること。
本来、人間のルールに迎合したりはしない空の支配者たる身でありながら、真摯に人の世の常識を学んで社会に溶け込もうとしていること。
それらは偏にイサク様が力を以って彼女を屈服させたからに他ならない。
特に、暴走を鎮めることに成功したという点がとても大きい。
当然と言うべきか、たとえ知識を持たぬ少女化魔物であっても、暴走状態の方が普段の己よりも遥かに強大な力を振るうことができることは無意識的に理解している。
それ故に、暴走していない彼女達に打ち勝つよりも、より従順になるらしいのだ。
「これで主様のお役に立てまする!」
彼女の心情は、圧の強い目の笑みと共に口にしたその一言に全て集約される。
イサク様を敬い、その役に立とうとしているがために、最も長いつき合いでありながらも半端な状態に留まり続けている私のような卑怯者でさえも尊重している。
その上で、本来の己の生き方には不要だった知識をも吸収しようとしている訳だ。
そんな一途とも言える姿は眩しく、胸の奥に重苦しいものが沈み込んでいく気がする。
実のところ、アスカ……ジズの少女化魔物は意図的に暴走させられたようなものなのだ。
と言うのも、空を王たるジズに断りも入れずにマナプレーンを飛ばし続けていれば、いずれ彼女の逆鱗に触れることは分かり切ったことだったからだ。経験則に基づけば。
当然ながら、マナプレーンは近年の発明であるため、ジズに関しては初めての事態だ。
それは間違いない。
かつて似たような事態を引き起こしたのは、リヴァイアサンの少女化魔物だ。
勿論、レンリ様の契約相手であるラハではない。あくまで別の個体の話だが……。
その彼女は我が物顔で海を行き交う船に怒り狂い、暴走してしまったのだ。
それを当時の救世の転生者が力を以って鎮めて真性少女契約を結んだところ、暴走していない状態での力比べに勝利した場合よりも従順さが過剰な程に増していたらしい。
そうした事実を踏まえた上でマナプレーンの運行をとめずにいた訳だから、トリリス様達にとってイサク様が暴走状態のジズと対峙したことは想定の内だったとも言える。
ただ……アスカの強さについては彼女達の想定を完全に上回っていたようにも思う。
当世の人形化魔物の力に関して当初見誤っていたように、人口増加による強化という要素を全く計算に入れていなかったのだろう。
しかし、いずれにしても、トリリス様達の共犯者でもある私は複雑な気持ちを抱かざるを得ない。たとえ今回の件については与り知らぬことだったとしても。
「リクル殿にフェリト殿、サユキ殿、それとテア殿は何をされているのでするか?」
そんな私を余所に、他の四人に近寄っていって興味深そうに尋ねるアスカ。
イサク様を絶対の主を定めた上で皆との関係を考えているおかげか、私のみならず、彼女達についても対等か目上ぐらいに捉えているらしい。
「花札だよ。テアちゃんが好きだから」
「花札、でございまするか」
アスカは、サユキから返ってきた答えに小首を傾げつつ繰り返す。
それに関する知識はどうやら持ち合わせていなかったらしい。
だが、カード遊びであることは理解したようで――。
「その……ワタシもご一緒させて下さいませぬか?」
アスカは大分前のめりになり、サユキに顔を近づけながら問いかけた。
「テアちゃん、いい?」
そんな彼女の圧を感じる行動を前にしてサユキは全く物怖じした様子もなく、そんな自身と対照的に自分の後ろに半分隠れてしまったテアを振り返って確認を取る。
「……うん」
すると、問われたテアはサユキの着物を掴みながら顔を出し、小さく頷いた。
そうしたテアの様子を、サユキを筆頭にフェリトやリクルも微笑ましげに見ていた。
彼女の成長を喜ぶ年長者の心持ちだ。
ちなみにテアはトランプなどよりも花札の方が好きらしい。
理由は絵柄の種類が多くて華やかで綺麗だから、だとか。
そういう考えを抱くことができる情緒、何よりこれまでの言動を見てきたおかげで、心の深いところで人形化魔物に嫌悪感を持つ私も彼女に関しては大分慣れたが……。
「ありがとうございまする、テア殿!」
初対面の時の私とは大きく異なり、アスカにはテアへの忌避感が全くないようだ。
あるいは、空の覇者たる力を以ってすれば大半の人形化魔物など大した脅威にならないため、一般人や一般少女化魔物より根本的なところで嫌悪感が薄いのかもしれない。
特に戦闘力もなくか弱いテアを、一々敵視する理由などどこにもないだろう。
「でも、ルールは分かるの?」
「いえ、全く」
「そっか。じゃあ、テアちゃん。アスカちゃんに教えて上げて」
「え……私?」
サユキに急に促され、テアは戸惑ったような顔を見せる。
無茶振りされた新入社員のような反応だ。
「そうそう。アスカちゃんはテアちゃんのすぐ下の妹みたいなものだからね」
「妹? ……私、お姉ちゃん?」
驚きの余りサユキの背中から出てきたテアは、珍しくパッチリ開いた目と共に自分を指差しながら誰にともなく尋ねる。
「そうでありまするな。ワタシは新参者でありますれば」
対してアスカが彼女の言葉を否定することなく、あっけらかんと同意を示した。
そんな風に扱われることに、不快感のようなものは全くないようだ。
「……最強の末妹ね。下剋上されそう」
「ですです。と言うか、アスカはそれでいいのですか?」
「無論。ワタシの力が如何に強くとも、主様はそれを上回りまする。不和を生めば即座に処罰されましょう。ワタシは主様の望むままあるのみにございまする」
「ああ……」
リクルの問いに目力の強い笑顔で答えたアスカに、フェリトが半分呆れ半分納得といった感じに嘆息してから続ける。
「これはまた、サユキとは別ベクトルの妄信、狂信ね。まあ、少女化魔物って割とそういう子が多いみたいだけれど。三大特異思念集積体ともなれば尚更かしら」
思念の蓄積によって生じる魔物の発展形である少女化魔物だけに、一種の拘り、偏執的な思考がどこかしらに必ず存在する。この私でもそうだ。
自分達もまたそうした部分があるため、そういう個性という程度にしか思わない。
勿論、特に害がない限りは、の話だが。
「私、お姉ちゃん……」
そんなようなことを話している三人の言葉はテアの耳には届いていないようで、サユキの脇で彼女は一人そう噛み締めるように呟く。
何となく表情に責任感のようなものが芽生えているようにも見える。
人間に照らし合わせると歪にも程があるし、ほんの些細なものに過ぎないだろうが、あるいは、これもまた彼女の成長の一助になるものなのかもしれない。
……最凶の人形化魔物【ガラテア】の器たる彼女の。
そして、こういったものの積み重ねこそが、救世の鍵となるものでもあるのだ。
「アスカ」
ともあれ、テアは意を決したように顔を上げ、自分が座る横を二度軽く叩く。
その意図をくみ取って、アスカは彼女の隣に姿勢よく正座する。
「まず、こいこいのルールから教える」
「よろしくお願い致しまする」
「うん。こいこいは基本的に二人で遊ぶゲーム。それぞれ八枚札を引いて、お互いの間に更に八枚札を並べる。交互に手番が来て、場にある札を同じ系統の札が手札にあれば合わせて取ることができる。そうして集めた札で役を作って――」
趣味とも言えるものの説明だからか、いつも以上に饒舌に語るテア。
アスカはそれに口を挟むことなく、静かに耳を傾けている。
「だから、とりあえず札の絵柄を一通り覚える。それから役の組み合わせを」
「承知致しましてこざいまする」
「とりあえず私の後ろで見学しながら覚えるといい」
それから一巡り分の勝負を行った後、アスカと私も加わって、もう第何十回目かも分からない花札こいこいトーナメントが開催される。
皆の姦しくも楽しげな様子を、その輪の一部として肌で感じる。
しかし、だからこそ私は心の奥底では罪悪感を一層募らせて……。
それでも、そうした感情を顔に出してしまうような、より罪深い真似を決してしないように必死に表情を取り繕い続けた。
***
「イリュファは常に君達の傍にいるだけに、私達よりも遥かに大きな辛く苦しい思いを抱き続けていたことだろう。何故ならば、イサクに真の仲間が増えれば増える程、君と同じ運命を辿る子が増えてしまうということでもある訳だからね」
***
「基本的な部分としては、このようなところでしょうか」
新しく可愛らしい巫女風の衣装をイサク様に仕立てて貰ったアスカに、一先ず少女祭祀国家ホウゲツにおける常識を教えること一時間半程度。
三大特異思念集積体であるからか彼女は基本的なスペックが非常に高いらしく、一聞いて十知るが如く私の説明を一通り理解した様子だった。
元々知識もある程度持って生まれていることも、影響しているかもしれない。
しかし、特筆すべきはその凄まじい集中力だろう。
「感謝致しまする、先生」
区切りをつけて話を終えた私に、素直に頭を下げて礼を尽くすアスカ。
イサク様と真性少女契約を結ぶこともできずにいる身勝手で浅ましい私を、そんな風に彼女が先生などと呼んで顔を立ててくれていること。
本来、人間のルールに迎合したりはしない空の支配者たる身でありながら、真摯に人の世の常識を学んで社会に溶け込もうとしていること。
それらは偏にイサク様が力を以って彼女を屈服させたからに他ならない。
特に、暴走を鎮めることに成功したという点がとても大きい。
当然と言うべきか、たとえ知識を持たぬ少女化魔物であっても、暴走状態の方が普段の己よりも遥かに強大な力を振るうことができることは無意識的に理解している。
それ故に、暴走していない彼女達に打ち勝つよりも、より従順になるらしいのだ。
「これで主様のお役に立てまする!」
彼女の心情は、圧の強い目の笑みと共に口にしたその一言に全て集約される。
イサク様を敬い、その役に立とうとしているがために、最も長いつき合いでありながらも半端な状態に留まり続けている私のような卑怯者でさえも尊重している。
その上で、本来の己の生き方には不要だった知識をも吸収しようとしている訳だ。
そんな一途とも言える姿は眩しく、胸の奥に重苦しいものが沈み込んでいく気がする。
実のところ、アスカ……ジズの少女化魔物は意図的に暴走させられたようなものなのだ。
と言うのも、空を王たるジズに断りも入れずにマナプレーンを飛ばし続けていれば、いずれ彼女の逆鱗に触れることは分かり切ったことだったからだ。経験則に基づけば。
当然ながら、マナプレーンは近年の発明であるため、ジズに関しては初めての事態だ。
それは間違いない。
かつて似たような事態を引き起こしたのは、リヴァイアサンの少女化魔物だ。
勿論、レンリ様の契約相手であるラハではない。あくまで別の個体の話だが……。
その彼女は我が物顔で海を行き交う船に怒り狂い、暴走してしまったのだ。
それを当時の救世の転生者が力を以って鎮めて真性少女契約を結んだところ、暴走していない状態での力比べに勝利した場合よりも従順さが過剰な程に増していたらしい。
そうした事実を踏まえた上でマナプレーンの運行をとめずにいた訳だから、トリリス様達にとってイサク様が暴走状態のジズと対峙したことは想定の内だったとも言える。
ただ……アスカの強さについては彼女達の想定を完全に上回っていたようにも思う。
当世の人形化魔物の力に関して当初見誤っていたように、人口増加による強化という要素を全く計算に入れていなかったのだろう。
しかし、いずれにしても、トリリス様達の共犯者でもある私は複雑な気持ちを抱かざるを得ない。たとえ今回の件については与り知らぬことだったとしても。
「リクル殿にフェリト殿、サユキ殿、それとテア殿は何をされているのでするか?」
そんな私を余所に、他の四人に近寄っていって興味深そうに尋ねるアスカ。
イサク様を絶対の主を定めた上で皆との関係を考えているおかげか、私のみならず、彼女達についても対等か目上ぐらいに捉えているらしい。
「花札だよ。テアちゃんが好きだから」
「花札、でございまするか」
アスカは、サユキから返ってきた答えに小首を傾げつつ繰り返す。
それに関する知識はどうやら持ち合わせていなかったらしい。
だが、カード遊びであることは理解したようで――。
「その……ワタシもご一緒させて下さいませぬか?」
アスカは大分前のめりになり、サユキに顔を近づけながら問いかけた。
「テアちゃん、いい?」
そんな彼女の圧を感じる行動を前にしてサユキは全く物怖じした様子もなく、そんな自身と対照的に自分の後ろに半分隠れてしまったテアを振り返って確認を取る。
「……うん」
すると、問われたテアはサユキの着物を掴みながら顔を出し、小さく頷いた。
そうしたテアの様子を、サユキを筆頭にフェリトやリクルも微笑ましげに見ていた。
彼女の成長を喜ぶ年長者の心持ちだ。
ちなみにテアはトランプなどよりも花札の方が好きらしい。
理由は絵柄の種類が多くて華やかで綺麗だから、だとか。
そういう考えを抱くことができる情緒、何よりこれまでの言動を見てきたおかげで、心の深いところで人形化魔物に嫌悪感を持つ私も彼女に関しては大分慣れたが……。
「ありがとうございまする、テア殿!」
初対面の時の私とは大きく異なり、アスカにはテアへの忌避感が全くないようだ。
あるいは、空の覇者たる力を以ってすれば大半の人形化魔物など大した脅威にならないため、一般人や一般少女化魔物より根本的なところで嫌悪感が薄いのかもしれない。
特に戦闘力もなくか弱いテアを、一々敵視する理由などどこにもないだろう。
「でも、ルールは分かるの?」
「いえ、全く」
「そっか。じゃあ、テアちゃん。アスカちゃんに教えて上げて」
「え……私?」
サユキに急に促され、テアは戸惑ったような顔を見せる。
無茶振りされた新入社員のような反応だ。
「そうそう。アスカちゃんはテアちゃんのすぐ下の妹みたいなものだからね」
「妹? ……私、お姉ちゃん?」
驚きの余りサユキの背中から出てきたテアは、珍しくパッチリ開いた目と共に自分を指差しながら誰にともなく尋ねる。
「そうでありまするな。ワタシは新参者でありますれば」
対してアスカが彼女の言葉を否定することなく、あっけらかんと同意を示した。
そんな風に扱われることに、不快感のようなものは全くないようだ。
「……最強の末妹ね。下剋上されそう」
「ですです。と言うか、アスカはそれでいいのですか?」
「無論。ワタシの力が如何に強くとも、主様はそれを上回りまする。不和を生めば即座に処罰されましょう。ワタシは主様の望むままあるのみにございまする」
「ああ……」
リクルの問いに目力の強い笑顔で答えたアスカに、フェリトが半分呆れ半分納得といった感じに嘆息してから続ける。
「これはまた、サユキとは別ベクトルの妄信、狂信ね。まあ、少女化魔物って割とそういう子が多いみたいだけれど。三大特異思念集積体ともなれば尚更かしら」
思念の蓄積によって生じる魔物の発展形である少女化魔物だけに、一種の拘り、偏執的な思考がどこかしらに必ず存在する。この私でもそうだ。
自分達もまたそうした部分があるため、そういう個性という程度にしか思わない。
勿論、特に害がない限りは、の話だが。
「私、お姉ちゃん……」
そんなようなことを話している三人の言葉はテアの耳には届いていないようで、サユキの脇で彼女は一人そう噛み締めるように呟く。
何となく表情に責任感のようなものが芽生えているようにも見える。
人間に照らし合わせると歪にも程があるし、ほんの些細なものに過ぎないだろうが、あるいは、これもまた彼女の成長の一助になるものなのかもしれない。
……最凶の人形化魔物【ガラテア】の器たる彼女の。
そして、こういったものの積み重ねこそが、救世の鍵となるものでもあるのだ。
「アスカ」
ともあれ、テアは意を決したように顔を上げ、自分が座る横を二度軽く叩く。
その意図をくみ取って、アスカは彼女の隣に姿勢よく正座する。
「まず、こいこいのルールから教える」
「よろしくお願い致しまする」
「うん。こいこいは基本的に二人で遊ぶゲーム。それぞれ八枚札を引いて、お互いの間に更に八枚札を並べる。交互に手番が来て、場にある札を同じ系統の札が手札にあれば合わせて取ることができる。そうして集めた札で役を作って――」
趣味とも言えるものの説明だからか、いつも以上に饒舌に語るテア。
アスカはそれに口を挟むことなく、静かに耳を傾けている。
「だから、とりあえず札の絵柄を一通り覚える。それから役の組み合わせを」
「承知致しましてこざいまする」
「とりあえず私の後ろで見学しながら覚えるといい」
それから一巡り分の勝負を行った後、アスカと私も加わって、もう第何十回目かも分からない花札こいこいトーナメントが開催される。
皆の姦しくも楽しげな様子を、その輪の一部として肌で感じる。
しかし、だからこそ私は心の奥底では罪悪感を一層募らせて……。
それでも、そうした感情を顔に出してしまうような、より罪深い真似を決してしないように必死に表情を取り繕い続けた。
***
「イリュファは常に君達の傍にいるだけに、私達よりも遥かに大きな辛く苦しい思いを抱き続けていたことだろう。何故ならば、イサクに真の仲間が増えれば増える程、君と同じ運命を辿る子が増えてしまうということでもある訳だからね」
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