ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~

青空顎門

214 とりあえず合流

 一旦ホウゲツ学園に戻り、学園長室にてトリリス様達に簡潔的な報告をした後。
 俺達はすぐさま引き返し、太平洋上を飛行中の飛行機もどきマナプレーンを目指していた。
 時間はそれ程経過していないし、まだ全行程の五分の一も進んでいないはず。
 なので、合流まで五分というところだろう。
 まあ、そんなに慌てずともアーク複合発露エクスコンプレックス裂雲雷鳥イヴェイドソア不羈サンダーボルト〉の速さなら、たとえ到着一時間前まで寮でのんびりしていても余裕でマナプレーンに追いつくことができるけども。
 それでは余りにも情緒がないからとトリリス様達に諭され、また、一人乗客がいなくなった状態を取り繕うライムさんの負担も考え、可能な限り早く戻ることにしたのだ。
 勿論、俺が戻ったからと言って全く精神干渉せずに済む訳でもないが……。
 認識を弄る度合いが減るのは間違いない。
 弄られる方も弄られる方で可哀想だし、精神干渉はなるべく最小限にしておきたい。
 というところで俺は今正に空を翔けている訳だが、それはそれとして――。

「やっぱり既定路線、だったんだろうな」

 俺からの報告を受けたトリリス様達の様子を思い出し、小さく呟く。
 二人共、俺が三大特異思念コンプレックス集積体ユニークジズの少女化魔物ロリータたるアスカと真性少女契約ロリータコントラクトを結んだことに僅かたりとも驚く素振りを見せなかった。
 加えて、その部分に関して返ってきたのは「了解したのだゾ」という簡潔な一言だけ。
 最初からそうなると分かっていたかのような反応だった。

「当然でございましょう。主様は救世の転生者でありますれば」

 納得半分呆れ半分な俺の呟きに応じ、若干テンション高めに言うアスカ。
 俺が救世の転生者であることは影の中でイリュファが手始めに教えたのだが、どうも彼女、自分を倒したのが名の知れた存在だったことに安堵と喜びを抱いているようだ。
 まあ、どこぞの馬の骨に負けるより気分的にマシなのは確かだろう。

「暴走したワタシを正面から打ち倒して正気に戻すなど、有象無象には不可能なことでありまする。そして、ワタシはワタシに真正面から勝利した者にしか服従しませぬ故」

 少しだけ補足してくれたディームさんによると、アスカがそうだったように三大特異思念集積体は皆、力で屈服させられると従順になるのだと言う。
 何でも過去の救世の転生者達の中にも三大特異思念集積体との戦いを経て真性少女契約ロリータコントラクトを結んだ者がおり、そうした記録が残っているのだとか。
 彼女らは生まれながらにして一つの領域の頂点に立っているがためにプライドが非常に高く、だからこそ逆に、それを圧し折られてしまうと半ば信奉するように従う訳だ。
 とは言え、アスカの言葉の端々には未だ一定の自尊心のようなものが感じられるが。
 それが少しポンコツ臭を発している原因と言えなくもない。

「でも、レンリと真性少女契約を結んでるラハって、アスカと同じ三大特異思念集積体の少女化魔物のはずなのに、アスカみたいな感じじゃなかったわよね?」

 と、影の中からフェリトが首を傾げているような気配と共に問うてくる。
 それは確かにそうだった。
 実際。レンリ自身もまた、リヴァイアサンの少女化魔物たるラハさんの気ままな行動には時々手を焼いているようなことを漏らしていた。
 関係が悪いようには全く見えなかったが、少なくとも従順という感じではない。

「それは恐らく、戦って屈服させた訳ではないからでありましょう。助力を乞い、ある程度の力と意思を示し、協力を取りつけたのではありますまいか」
「そういうこともあり得るのか?」
「ええ、まあ、その……暴走してさえいなければ、話は通じますれば」

 自分は完全に暴走状態にあったため、少々歯切れ悪く言うアスカ。
 バツが悪そうな彼女は一先ず置いておくとして……確かに、管理されていない少女化魔物にしても、生まれながらに必ず暴走している訳じゃないからな。
 巡り合わせ次第では、暴走することなく普通に暮らしていても何らおかしくはない。
 実際、マナプレーンが開発されて運航が始まってさえいなければ、このアスカにしても世界中の空を旅しながら穏やかに生きていたのかもしれないし。
 ……もっとも、現実には暴走してしまって話も何も通じなくなった結果、打ち倒す以外に彼女の暴走を鎮め、その力を得る術はなくなってしまっていた訳だが。

「まあ、時系列的にレンリがラハさんと契約を結んだのは、父親アクエリアル皇帝からアガートラムを奪う前だしな。さすがにそれで三大特異思念集積体に勝つのは無理な話だ」

 いくら今回のアスカ程でも、以前刃を交えた時のレンリ程でもないにしても。
 身体強化を含む第六位階の力を複数行使できる相手に、第五位階以下の力を以って打ち勝つのは不可能だ。他の少女化魔物と契約していたという話も聞いていないし。
 となればアスカの言う通り、それ以外の方法で協力を取りつける以外にない。

「とは言え、あくまで三大特異思念集積体に正面から勝てなかっただけのこと。そのレンリ? 殿は侮れませぬ。間違いなく一廉の人物でございましょう。真性少女契約を結んだとなれば、相手に己の力や意思を心の底から認めさせたということでありますれば」

 確かに。
 暴走していなければ話は通じるとは言っても、あくまでも話が通じるだけ。
 それを受け入れるかどうかは、また別の話だ。
 プライドの高い存在に契約者の命と繋がることになる契約を結ばせるのは、ある意味では力で屈服させるよりも遥かに難しいことと言えるかもしれない。
 レンリは、それだけ強くラハさんの力を求めたのだろう。その目的のために。

「一度会ってみたいものでありますな」
「……まあ、この仕事が終われば、何度でも会うことになるさ」
「その方と親しいのでございまするか?」
「レンリちゃんはサユキと同じでイサクのことが大好きだから」
「旦那様、なんてイサクのことを呼んでるしね。人間じゃなかったら真性少女契約をアッチから迫ってきても全く不思議じゃないぐらいだわ」
「何と。ワタシと同じ三大特異思念集積体と真性少女契約を結んだ傑物にそこまで惚れ込ませるとは……さすがはワタシの主様でございまする」

 サユキとフェリトの言葉に、感心したように唸るアスカ。
 まあ、あの子はスタート地点が大分特殊だからな。
 そこまで称賛されるのは、ちょっと困ってしまう。
 ここは話題を変えるとしようか。

「っと、見えてきたな」

 そう思ったところで、マナプレーンの機影を視界が捉えた。
 鳥っぽい雰囲気はあるが、相変わらず何故普通に飛べるのか違和感のある形状だ。
 ちなみに、この広い大空で迷うことなく一直線にここまで来ることができたのは、〈裂雲雷鳥・不羈〉と共にアスカとの真・複合発露も併用したからだ。
 三大特異思念集積体であるだけに一つの複合発露エクスコンプレックスに複数の能力が含まれており、飛行状態にある存在の位置を把握することもできる。
 最初、彼女が正確にマナプレーンを捉えて襲撃してきた時のように。

 ともあれ、目視できれば到着したも同然。
 俺は一気に接近すると祈望之器ディザイア―ドとしての特性によって安定した気流の範囲の中に入り、一時間程前に機内から出た時と同じハッチに取りついた。
 内部とマナプレーンの外の一定範囲は気圧が同じになっており、また、ロックも外されたままになっていたため、極々当たり前にハッチを外から開けて中に入って閉める。
 たとえ高度一万メートルを飛行中にドアが開いても、前世の航空機パニック系の映像で見たような現象が起こることはない。
 やはり祈望之器はとんでもない道具だ。
 そう改めて実感しながら、一先ずライムさんの部屋を目指して廊下を歩く。
 近くに人の気配も少女化魔物の気配もない。
 多分、ライムさんがこの近辺には人が近づかないようにしてくれていたのだろう。
 自分達と俺を除く設定で。
 やがて彼らの部屋の前に至り、軽くノックすると――。

「戻ったか」

 すぐに扉が開き、ライムさんが部屋から顔を出しながら言った。

「ジズ排除の一報は既に伝わっている。さすがはイサクだな」
「ありがとうございます、ルシネさん」

 彼の後ろからそう続けた彼女には感謝の意を示しておく。
 しかし、情報が早いな。こんな空の上で。
 恐らく、ここにも情報伝達の役割を持つムニさんの分身体がいるのだろう。
 まあ、いくら救世の転生者が囮になったと言っても、結果が伝わらないといつまでもジズの追撃に怯えながら飛行することになるしな。
 当然と言えば当然か。

「しかし、チラッと見たジズの大きさには目を疑ったぞ」
「本当に。よく勝てたものだ」
「ええ。実際、かなりギリギリでしたよ」

 あそこまで大規模に、かつ全霊の力を発現させたのは初めてのことだったし。
 循環共鳴による力の増幅がなければ、間違いなく勝つことはできなかっただろう。

「にしては、何と言うか……いい運動をした、みたいな顔だぞ?」
「そうですか? …………いや、でも、確かにそういう部分もあるかもしれません。海上だったこともあって、今回は周囲への影響を余り考えずに全力を出せましたから」

 補導員の戦いは基本的に少女化魔物を救うための戦い。
 それだけに本来なら手加減は不可欠。
 人類の敵たる人形化魔物ピグマリオンが相手なら殺す気で戦っても何ら問題ないが、しかし、この前のように街中に現れられては周囲を気にせずに戦う訳にもいかない。
 だから、不謹慎ながら少しスッキリした部分がなかったとは言えない。
 その辺が少し顔に出ていた可能性はある。
 アスカの暴走も鎮静化でき、補導自体も問題なく済んだ訳だしな。

「全く。まだまだ成長途中だったとは言え、よく救世の転生者とことを構えたものだ。私達は。事実を誤認するということは本当に恐ろしいものだな」

 そんな俺の様子を前に、若干呆れ気味に自嘲するようにルシネさんが呟く。
 そうは言うが、今でも身体強化中でなければ精神干渉によって完封される可能性は十分にある。正直なところ、敵対したら二人はトップクラスに恐ろしい。
 俺を上回る速さで奇襲をかけることのできる父さんと同レベルだ。

「まあ、何にせよ、これで一先ず問題は一つ解決だ。もう一つについては諸々あちらに着いてから。行って帰ってで疲れているだろうから、しばらく部屋で休んでいるといい」
「機内の施設を利用したい時はつき添うから、いつでも私達に言ってくれ」

 ジズの件さえなければ、今後のフライトに問題はないはず。
 ならば、トリリス様達から勧められているように、しばらくはのんびりと空の旅を楽しんでもいいかもしれない。そういう訳で――。

「はい。では、また後で」

 とりあえず俺は彼らの部屋を辞去し、割り当てられた自室へと戻ったのだった。

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