ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~

青空顎門

213 自然界の掟?と新しい仲間

 俺の腕の中で突拍子もないことを言い出したジズの少女化魔物ロリータ
 彼女は今も俺に掴まることなく完全に体を預けた状態でいるため、もし俺が支えるのをやめてしまったら重力に従って海に落下しかねない。
 まあ、そうなったらそうなったで、ちゃんと空を飛んで墜落は防ぐとは思うけれども。
 ただ、そう予測することはできていても確実とは言えないし、何より少女の形をした存在を放り捨てる形になるのは何ともモヤモヤする。
 なので、彼女がアクションを起こさない限り、お姫様抱っこのままでいるしかない。
 と言った状態の下、まず彼女の真意を確かめるために口を開く。

「……だったら、俺と真性少女契約ロリータコントラクトを結ぶこともできるって言うのか?」
「無論でありまする」

 本来ならば際どい内容のはずの俺の問いかけ。
 それに対し、ジズの少女化魔物は間髪容れずに肯定した。
 更に彼女は、フェリトと同じく風属性を示す緑色ながらも大分薄い色合いの瞳をこちらに真っ直ぐ向けたまま、本気であることを強調するように続ける。

「先程の言葉に、嘘偽りはございませぬ」

 ……身も心も勝者である俺のもの、か。
 それが自然界の掟とも言っていたな。
 随分と極端な考え方をする子だ。
 もしかすると、群れのボスを決めるような感覚でいるのかもしれない。
 三大特異思念コンプレックス集積体ユニークたるジズは一体しか存在しないはずだが、空に属するものという枠組みを一つの大きな群れと見なす形で。
 何にせよ、人間社会から遠く離れたこの空に生まれ落ち、そのままそこに留まっていた彼女だけに、そのようなシンプル過ぎる価値基準でものを考えているのだろう。
 人の形をしていても厳密には人ではない以上、そういうことも十分あり得る話だ。
 こちらの常識だけで彼女達を推し量ろうとしないよう気をつけなければならない。

「ところで、一つよろしいでしょうか?」
「ん? 何だ?」
「疾く空を跋扈する不届き者を誅すべきであるとワタシは愚考致します。このままアレらを捨て置いては、この空を統べるべき主様のご威光が損なわれてしまいますれば」
「いや、それは……って、主様?」
「真性少女契約を結ぶとあらば、そうお呼びするのが適切でございましょう」

 どうやら彼女の中ではもう、そこに関しては確定事項になっているらしい。
 思い込みも激しい性格のようだ。
 しかし、それはとりあえず後回しにするとして……。
 いずれにしても、飛行機もどきマナプレーンを敵視したままでいられては正直困る。
 今は俺に全権委任した形で一歩引いて見ているから一先ず収まっているようだが、そこはちゃんと納得して貰わないと再び暴走状態に陥りかねない。
 なので、それらしい言葉を並べ立て何とか言い包めるとしよう。
 ……ええと、そうだな。

「あれは人間が空を移動するための翼のようなものだ。決して空に仇なす異物じゃない」

 思念の蓄積という概念的な謎パワーで飛んでいる訳だから、環境の汚染も皆無。
 更には、バードストライク対策に鳥よけの機能もあるという話だし。
 もっとも、所詮は複製品。
 さすがにジズを追い払うことまではできなかったようだけれども。

「ですが――」
「むやみやたらと排斥するだけが、統治者のやるべきことじゃない。アレもまた今や空に属するもの。ああいったものをも従わせてこそ空を司ると言うに足る。……違うか?」

 途中、反論しようとした彼女を遮って強く断定し、それから最後に柔らかく問う。
 すると、彼女は小さく唸りながら考え込むように瞑目した。
 そして、たっぷり数十秒後。

「……鳥もまたかつて地を駆けた命の一つ。翼を得たことで空を生きる場とした存在。確かに、主様のお言葉通りでございまする。ワタシが浅はかでありました」

 彼女は目を開くと、どこか反省したように理解の意を示した。
 思ったよりも大分ちょろい。
 そもそも彼女は生まれ持った性質、人がジズにつけたラベルに従っていただけで、実質的には生まれて間もない子供のようなものに過ぎないのだろう。
 真性少女契約について知っている様子だったりと、多少なり知識はあるようだが……。
 人生経験などあってないようなもので、対人スキルの熟練度はほぼほぼゼロ。
 だから断定するような言葉には弱く、そのまま鵜呑みにしてしまったのかもしれない。
 素直なのは悪いことじゃないが、悪い奴に言葉巧みに騙されそうで心配だ。
 と言うか、既に半ば俺に騙されているような感もあるけれども。

「やはり主様こそこの空を統べ、ワタシを従わせるに足るお方であります。さあ、疾く真性少女契約を結びましょう」

 そして確信を得たような様子を見せ、その話に自ら戻っていく彼女。
 全く以って軽くない決断のはずなのだが、という俺の心配を余所にグイグイと来る。
 一応、真性少女契約を結ぶことに関し、こちらにデメリットは特にない。
 三大特異思念集積体の強大な力を得られるのは大きな利点だし、事前に抱いていたその存在に対するイメージ(主に、ラハさんの変なところでプライドが高い感じ)とは全く違って素直ポンコツ感のある彼女は可愛らしく、好ましい印象が現時点ではあるし。
 いや、まあ、人外ロリコンたる者。人外ロリに悪い印象などそうそう抱かないし……親密になれるのなら親密になりたいのが本音だが。
 それはそれとして。
 この仕事を俺に寄越したトリリス様達も多分、そうなったらそうなったで構わない、と言うか、むしろそうなった方が救世に都合がいい、ぐらいに考えているはずだ。
 三大特異思念集積体を野放しにしておきたくはないだろうし、何より、そんな彼女が並みの教育機関に収まるような器とも思えない。

「……真性少女契約を結んだら、俺が死ねば君も死ぬことを理解しているのか?」
「無論。しかし、主と定めた以上は一蓮托生。至極当然のことにござりまする」

 一番のネックになるはずの部分も、彼女は平然と受け入れている様子。
 こうなると反対に。
 もし契約に前のめりな彼女をここで拒否したら間違いなく色々拗れることだろう。
 下手をすると別の方向で暴走しかねない感もある。
 基本的には力を示さなければ認めないタイプっぽいし。
 そして力を一度認めれば、この従順さ。
 そんな彼女を力で以って補導した時点で、ある意味、手をつけてしまったようなもの。
 ならば、しっかり責任を取らなければ不義理というものでもあるだろう。
 後は、彼女がその選択を後悔しないよう相互理解を重ねる努力をしていくしかない。
 そう自分が納得するに足る理由を頭の中に並べ、それから彼女に対して口を開く。

「分かった。じゃあ……っと、そう言えば名前を聞いてなかったし、名乗ってもいなかったな。俺はイサク。イサク・ファイム・ヨスキだ」
「あ、ワ、ワタシも失念しておりました。誠に申し訳ございませぬ、主様。ワタシはアスカと申しまする」
「アスカか。いい名前だな。なら、アスカ。真性少女契約を結ぼうか」
「はい!」

 そうして真性少女契約のための既定の言葉を口にすると、ジズの少女化魔物改めアスカは一切悩むことなく即座に承諾を口にする。
 呆気なくも真性少女契約はここに結ばれた。
 先程まで苛烈な戦いを繰り広げていたことが嘘のようなスピード契約だ。

「では、主様。末永くよろしくお願い致しまする」

 その彼女は飛行の祈念魔法を使用すると俺の腕の中から一旦離れ、そう神妙に言いながら丁寧に一つ礼をしてから顔を上げた。
 もう既に深い忠心が感じられる瞳の色は既に表した通り。
 目はパッチリしている、と言うか、し過ぎて視線の圧が強い。
 瞳と同じく風属性を示す薄緑色の髪は背丈程の長さのものを左右で束ね、翼を思わせるような末広がりに膨らんだツインテールになっている。
 小柄な体を包んでいる縄文時代の日本人のような貫頭衣は少々みすぼらしいので、彼女が嫌がらなければ後で何か別のものを繕うとして……。
 表情全体はキリっとしていて、幼い顔立ちながら大人びた雰囲気がある。
 マナプレーンで待つライムさんのパートナー、ルシネさんに少し印象が近い。
 ……近いだけで、実態はポンコツ感が割と強いけれども。

「ああ、よろしくな」

 そんなアスカに頷きながら告げると、彼女は口元に笑みを湛えて「はい」と応じた。
 真性少女契約周りは急な話だったけれども、これで一段落と言えるだろう。

「さて、一先ず二つの問題の内の一つは解決した訳だけど……」
「一度、ホウゲツ学園に戻って簡単にでもトリリス様かルトア辺りに報告しておいた方がよろしいのではないでしょうか」

 さっさとマナプレーンに追いついてウインテート連邦共和国を目指すべきか、あるいは……と思案していると、影の中からイリュファにそう提案される。
 さすがに長いつき合いだけに、俺の考えはお見通しのようだ。
 ともあれ、たとえ一度、ホウゲツに戻ってもマナプレーンには追いつけるからな。
 報連相は大事だし、とりあえずイリュファに従うとしよう。

「そうだな。じゃあ、アスカも一旦俺の影の中に入っていてくれるか? ついでに俺の仲間達……家族と親交を深めておいてくれると助かる」
「承知致しましてございまする」

 アスカは俺の言葉に素直に頷くと、腕の辺りにできていた影に入っていく。
 とほぼ同時に、自己紹介の声が聞こえてきた。

「アスカさん。私はイサク様の従者のイリュファです。社会の常識など分からないことがあれば、私かリクルにお申しつけ下さい」
「リクルです。よろしくお願いしますです」
「で、私はフェリトよ。色合いが微妙に被るのが少し引っかかるけど、同じくイサクと真性少女契約を結んだ者同士、よろしく頼むわね」
「まさしく。同じお方を主と仰ぐ者として、よろしくお願い致しまする。お三方」

 比較的常識人な三人は特に問題ないだろう。
 アスカの方も、三大特異思念集積体として他の少女化魔物を見下す様子もない。

「そちらのお二人は――」
「サユキはサユキだよ。アスカちゃんがイサクのことを大切に思う限り、サユキはアスカちゃんのお友達。だから、遠慮しないで何でも言ってね」
「は、はあ」

 三人とは大分趣の異なるサユキには戸惑っている様子を見せるアスカ。
 とは言え、それはむしろ常識的な反応と言える。

「で、この子はテア。ちょっと人見知りが激しいけど、嫌わないで上げてね」
「……テア、です」
「テア殿。サユキ殿もよろしくお願い致しまする」

 サユキの陰に隠れているであろうテアが脳裏に容易く浮かぶが、最初を考えると初めて会った他人に挨拶できるようになったのは感慨深くもある。
 そんなテアの頑張っている感が伝わったのか、アスカの声色も柔らかくなる。
 これで、この場でできる顔合わせは一通り済んだか。
 後は、社会に属したことのない彼女に常識を教える必要があるが……。

「テアについては少々事情が込み合っていますので、それも含めてこれから色々と説明致しましょう。まずイサク様についてですが――」

 諸々の教育については、イリュファに任せておけば大丈夫だろう。

「……さて、一旦戻るか」

 そういう訳で、俺はまずトリリス様にジズ補導完了の一報を伝えるため、彼女達から意識を戻し、学園都市トコハのホウゲツ学園を目指して空の移動を始めた。

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