ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~

青空顎門

204 外出規制解除

 人形化魔物ピグマリオンへの備えとして外出に条件がついてから、おおよそ一週間。
 元々嘱託補導員としての仕事以外、プライベートでは基本的に遠出などしていなかったからか、俺は意外と不自由なく過ごしていた。
 一度、弟達と外食しに出かけるために、ルトアさんにいざと言う時の連絡係をお願いした時は本当に申し訳なかったけれども。
 使命に備えるために、時間が空けば鍛錬また鍛錬だったからな。

 そんな中、トリリス様達からは妙に学園外での気晴らしを勧められていたが……。
 一昨日辺りから、両親が(セト達と鉢合わせすることがないように)尋ねてくることもあって、十分いい気分転換になっていた。
 今は両親と一緒に訓練施設にいて、父さんとの手合わせを終えたところだ。

「うーむ。イサクも更に腕を上げたのう」
「仕事の合間を縫って、しっかりと鍛錬していたようだな」
「そりゃね。暴走した少女化魔物ロリータは油断できないし」

 久し振りに相手をして貰ったが、純粋に技を競うために身体強化のレベルは同等に設定しているため、技量も経験も勝る父さんにはまだまだ敵わない。
 と言うか、父さん自身も未だに成長の途中のようで、以前よりも技が冴えている。
 この世界では肉体の全盛期が元の世界とは比べものにならないぐらいに長いので十分あり得る話だが、それでも既に高いレベルにあった状態からと考えると流石だ。
 一層、敬愛の念が深まる。
 たとえ複合発露エクスコンプレックスありでも、互いの構成的に未だ確実に勝てるとは言いがたいしな。
 と言うか、相変わらず開始条件次第では完封されてもおかしくはない。

「イサクには、補導員という仕事が合っているんだろうな」
「……そうじゃな」

 父さんの言葉を受け、複雑そうな微妙な表情を浮かべる母さん。
 適正があろうとなかろうと、危険な職業であることに変わりはない。
 母親として心配する気持ちはまた別というものだろう。

「しかし、イサクも今自ら口にしたが、決して油断はしてはならぬぞ。相性次第では大番狂わせも十分あり得るのが、複合発露による戦いじゃからな」
「うん。勿論」

 当然、そんなことは重々承知の上ではあるけれども、俺を案じる母さんからの言葉だ。
 改めて胸にしっかりと刻み込んでおこう。
 どれだけ強くなろうと基本は大事だ。

「うむ。いい子じゃ」

 俺の頭をくしゃっと撫でて言いながら、母さんは慈しむように笑いかけてくる。
 それを父さんは微笑ましげに見守っていた。
 そんな両親にくすぐったさを感じつつも、されるがまま親の愛情を堪能する。
 素直に受け入れるのもまた、一つの親孝行というものだ。
 前世では思春期には中々実行することができなかったし、若くして命を落としてしまったため、その通り行動できた回数もほんの僅かばかりのものだったけれども。

「む」

 と、今現在俺達が使用している第一訓練室に誰かが入ろうとしている気配を感じ、同じくそれを察知した母さんが俺方離れてそちらを見る。
 それから一瞬遅れて扉が開き、入ってきたのは――。

「イサク君!」

 補導員事務局受付のルトアさんだった。
 彼女は笑顔で俺の名を口にすると、パタパタとこちらに駆け寄ってきた。

「ルトアさん、どうしたんですか?」
「はい。えっと……」

 俺の問いに、彼女はチラッと父さんと母さんに視線を向けてから口を開いた。

「トリリス様から学園長室に来て欲しいとのことです」
「あ、そうですか。分かりました」

 両親を意識して具体的な部分を告げないようにしたとするなら、とわざわざ推し量らなくとも、俺もとい救世の転生者に話があるのだろうことは明らかだ。
 彼女に頷き、両親に振り返る。

「じゃあ、父さん、母さん。トリリス様のところに行ってくるから」
「待つのじゃ、イサク。妾達も一緒に行く」
「ええ?」

 対して、何故だか鼻息荒く言う母さんに、困惑気味の声と共に視線で理由を問う。

「またぞろ厄介事でも押しつけようと言うのじゃろう。余りイサクにばかり負担を強いるなと妾が文句を言ってやろう」

 それに答えるように、母さんは腕を組んで理は我にありとばかりに堂々と答えた。
 確かに救世の転生者としての仕事を差っ引いても、嘱託補導員になって半年も経っていない人間がやるような仕事とは思えない面倒な内容が結構あったのは事実ではある。
 が、そこまで行くとモンスターペアレントに足を突っ込んでしまうのではなかろうか。
 ……いや、まあ、母さんは少女化だけれども。
 そんな益体もないことを含め、どうやってこの母親を鎮めようかと考えていると――。

「あ、ファイム様とジャスター様にはヒメ様から指名緊急依頼が出ています! 補導員事務局の方にすぐ向かって頂きたいのですが……」
「む、ヒメ様がか」

 都合よくと言うべきか、仕事の依頼、それも奉献の巫女たるヒメ様からの特別な依頼が入ったようで母さんは幾分か冷静になったように真面目な表情に切り替えた。

「承知した。が、ルトアよ。妾のことは母と呼ぶように言ったじゃろう」

 かと思えば、きりっとした顔のままそんなことを言い出す母さん。
 そこは譲れない部分なのかもしれない。

「いえ、あの、仕事中ですので。公私混同はいけません!」
「その割には、イサクのことはイサク様ではなくイサク君と呼んでおるではないか」
「う、そ、それは……その……」
「ふむ。どうやらルトアは妾の娘としての自覚がまだまだ足りないと見える。ヒメ様の指名緊急依頼が終わったら、少し教育をしてやる必要がありそうじゃな」
 ニヤリと悪い笑顔を浮かべながら、母さんはルトアさんにじりじりと迫る。

「ひ、ひえっ、ゆ、許して下さい! お母さん!」

 その軽い脅しを含む言動に怯え、ルトアさんは即座に屈する。
 ちょっと申し訳なくも思うが、俺と真性少女契約ロリータコントラクトを結んだということは母さん達とも長い長いつき合いになるということだ。
 後でフォローを入れておくにしても、こればかりは慣れて貰うしかない。
 母さんも娘にちょっかいをかけたいだけで、決して憎らしく思っている訳ではないし。

「分かればいいのじゃ」

 ともあれ、そんなルトアさんの反応に満足したように母さんは大きく頷き、それから俺を振り返って言葉を続ける。

「さて、イサクよ。妾達も補導員事務局に向かうが……余り度が過ぎた要求だったならば一先ず保留して妾達に相談するのじゃぞ」
「うん。分かった」

 心配性な母さんに若干苦笑しながら応じ、一緒に訓練施設から出たところで両親やルトアさんと別れて早速学園長室を目指す。
 いつもの道順を辿り、いつもの流れで部屋に入り……。

「もしかして、また人形化魔物ですか?」
「その通りだが、そうではないのだゾ」

 挨拶を終えて用件を尋ねた俺に返ってきたのは、謎かけ染みた答え。
 一体何が言いたいのか、と首を傾げていると、大きな机の脇に立つディームさんがトリリス様の代わりに口を開いた。

「今後しばらく、人形化魔物はジャスターやシニッドに対応して貰うのです……」
「え? ですが――」

 強化された人形化魔物相手には救世の転生者以外では攻撃力が足りずに倒すことができないからこそ、俺にお鉢が回ってきたのではなかったか。

祈望之器ディザイアードの複製改良を応用した新しい技術が確立したおかげでナ。奴らでも人形化魔物を討つに足る力を生み出すことができるようになったのだゾ」
「新しい技術、ですか?」

 そんな。急に。
 いや、技術的なブレークスルーは積み重ねの上に発生することもあれば、小さなきっかけ一つである日急激に起こり得るものでもあるけれども。
 しかし、まあ、ディームさんが頷くところを見るに、嘘ということはないだろう。

「それってどんな……」
「これだゾ」

 俺の問いを待っていたかのようにトリリス様が机の天板に乗せたのは、何やら布のようなものがリムに巻かれた小型のクロスボウと禍々しい色合いの矢だった。
 よくよく見ると、矢羽がクロスボウに巻かれた布を加工したようなものになっている。

「ええと、何の祈望之器の複製改良品なんですか?」
「このクロスボウもどきはガーンディーヴァ。そこに巻かれた布はメギンギョルズ。そして、矢はフラガラッハの複製改良品だゾ。この矢羽にもメギンギョルズを使っているナ」

 それぞれ聞いたことがある名前だ。
 ガーンディーヴァとフラガラッハは、いつだったかレンリが見たいと言っていたもの。
 メギンギョルズはセトが目をつけていたもので、現在行方不明と聞いていたが……。
 どうやら秘密裏に少女祭祀国家ホウゲツが回収していたらしい。

「巻きつけた対象の効果を大幅に強化する布、メギンギョルズ。如何なる矢も本体と同位階に引き上げた上で強化し、必中の概念をつけ加える弓、ガーンディーヴァ。目標を追尾し、射抜いた対象に破滅の呪いを植えつける剣、フラガラッハ」

 一気に三つの祈望之器の効果を説明し、一息ついてからトリリス様は言葉を続ける。

「それらの複製改良品に、本体のみならず効果対象諸共自壊する特性をつけることによって一度限りだが、オリジナルを遥かに越える威力を発揮できるようになっているのだゾ」

 更に彼女は「そもそもにして一回使い切りだから特にデメリットもない優れた複製改良の方法だゾ」と最後につけ加えて締め括った。
 一度だけ第六位階オリジナルと同等の力を出せる代わりに、一度使用すれば砕け散る複製改良品。
 その特性に合致した、と言うよりも、合致し過ぎと言った方がいいぐらいの手法だ。
 確かに、そこまで強化を重ねれば人形化魔物を倒し得る攻撃力を生み出せるだろう。
 しかし――。

「これって割と危険な技術では」
「確かに、威力が強過ぎるからナ。しかし、心配はいらないゾ。今回のような事態に特別に貸与されるのみで厳重に管理するつもりだからナ」

 まあ、人形化魔物相手なら使わずに倒すのは無理だろうし、一度でも使えば効果を完全に失う以上は、内部の者が横流しでもしない限り流出の心配はない。
 製作もアマラさんのところだろうし……。
 五百年、救世を優先して活動してきたヒメ様達が他国の人間相手にこれを使用することなどあるはずもなし、社会が混乱するようなことはなさそう、か。

「ジャスターやシニッドレベルの少女征服者ロリコンなら、これを活用して人形化魔物を倒すことは十二分に可能なのです……」

 それはそうだろう。
 父さん達でさえ強化された人形化魔物を倒すことができないとされた理由は、偏に攻撃力不足に他ならないのだから。
 たった一撃に過ぎなくとも、可能性があれば、どうとでもする。
 それが真の強者というものだ。
 更には必中、追尾機能まであるのなら、もはや鬼に金棒と言って過言ではない。

「そう言う訳でナ。イサクはまた以前の通り、気軽に外出していいのだゾ」
「なのです。たまには旅行とかに行ってみるのはどうなのです……?」
「はあ……いえ、それは……」

 何故だか、これが本題とばかりに強く勧めてくる二人。
 一応、ホウゲツ学園近辺に張りつく必要がなくなったのは事実だとは思うけれども。
 それにしたって、どうしてここまで。
 時間があるなら鍛錬に励めと言う立場ではないのだろうか。
 そう思いながら微妙な反応をしていると、トリリス様は呆れ気味に軽く嘆息した。

「では、イサクには別の仕事を頼みたいのだゾ」

 それから彼女は、仕方がないとでも言いたげな表情で切り出し――。

「実は二つ程、問題があってナ。イサクには、そちらをどうにかして欲しいのだゾ」

 かと思えば、割と真面目な口調でそう告げたのだった。

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