ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
155 弟達と社会科見学へ
「それで、その、社会科見学ってどこに行くんですか?」
中間試験の打ち上げを焼肉店で行った翌日。三日ある試験休みの初日。
約束した朝の九時にホウゲツ学園の校門前へと全員が集まったところで、ラクラちゃんが尋ねてきた。合わせて、セト達の視線も俺に集中するが……。
何だか皆、妙に落ち着かない様子だ。
恐らくだが、日々の鍛錬を休むことに不安感があるのだろう。
ちょっと危ない傾向が出つつあったのかもしれない。
勿論、自主的な鍛錬自体はよくないことではないが、何ごともやり過ぎは禁物だ。
強迫観念にかられてやるような形では、結局のところ効率は悪くなるのだから。
「イサクさん?」
「ああ、ごめん」
四人の様子に複雑な気持ちを抱いているとラクラちゃんに呼ばれ、意識を戻す。
とりあえず、最初の質問にちゃんと答えよう。
本当は「着いてからのお楽しみ」とか勿体振るつもりだったが、今の彼らには早々に目的地を明確にして鍛錬と同じぐらい意義があることを示した方がいい。
「今日は、この国で一番の複製師さんの工房に行く予定だよ」
「……複製師?」
そんな俺の言葉を耳にして、何とも微妙な顔をしながら呟いたのはトバル。
複製師とは、複合発露によって祈望之器の模造品を作り出す職人のこと。
両親がその複製師である彼は、その跡を継いで欲しいと望まれている。
そうした背景がある中で、自身に関連のある職業の工房を社会科見学で訪れると告げられ、何となく狙い撃ちにされているように感じたのかもしれない。
なので――。
「そう。エノスさんやクレーフさんと同じ複製師だ」
敢えて軽い口調と共に彼の両親の名を出して、他意がないように振る舞っておく。
……正直なところ、その意識は皆無とは言えない部分もある。
両親以外の複製師の仕事を見ることは、彼にとっても悪いことではないはずだから。
勿論、その上で複製師ではない道を選んだとしても、俺は彼を応援するつもりだが。
とは言え……。
「実は、ちょっと武器が欲しかったんだよ」
もしセト達を誘っていなくても、たとえ断られていたとしても行くつもりだった。
自分の用事につき合わせることが丁度、彼らのためにもなるかもしれないと考えたからこそ四人を誘ったのだ。
一応、先方にアポイントを取った段階でその辺も考慮に入れて人数が増えるかもしれないとは伝えてあったので、どちらに転んでも問題はない。
「ええと、武器、ですか? 真・複合発露も使えるイサクさんが?」
俺が口にしたその目的に対し、ラクラちゃんは不思議そうに首を傾げながら続ける。
「複製した祈望之器って元のそれより位階が下がったり、性能が変化したり、基本的には劣化するはずですよね? イサクさんに必要とは思えないんですけど」
彼女の言っていることは、複製の説明としては概ね合っている。
それ故、第六位階。即ち俺が所有する印刀ホウゲツのようなオリジナルの祈望之器でもなければ、真・複合発露や暴走・複合発露が飛び交う戦いに持ち出すのは心許ない。
だから実際、戦闘系の複合発露を持つ少女化魔物と真性少女契約を結んでいる少女征服者であれば、祈望之器の複製品をわざわざ購入する者は少ない。
精々、少女化魔物に依らずに魔物を討伐するハンターぐらいのものだ。
オリジナルを複製した第五位階の一品ならば、あるいは複合発露を用いた戦いの足しになるかもしれないが、如何せん値が張るし。
そういう訳で、基本的に複製は日常生活に役立つ祈望之器を量産するのに使われる。
これから移動手段として使うつもりのバスもどきなど最たるものだ。
「何か理由があるんですか?」
「うん、まあ、ね。何ごとにも例外はあるものでさ。丁度この前、複合発露による攻撃を封じられたような状態で戦って、武器のありがたみを感じたばかりなんだ」
ラクラちゃんの問いに対し、武器が欲しいと言った理由を少し嘆息気味に答える。
前回。リビングデッドの上位少女化魔物の暴走を鎮静化した時。
再生能力を持つ彼女の行動を妨げようとサユキとの真・複合発露〈万有凍結・封緘〉を用いて攻撃したが、上位少女化魔物による暴走・複合発露の身体強化を上回ることができず、最終的に印刀ホウゲツに頼らざるを得ない状況に追い込まれた。
勿論、その時に複製した祈望之器の武器があったところで、さして過程も結果も変わらなかっただろうが……。
「これから先、相手の複合発露でこちらの複合発露を妨害されたり……もしかしたら祈望之器で複合発露を封じられたりする可能性がないとは言えない」
世の中には、祈念魔法や複合発露を封じ込める封印の注連縄なんてものもあるのだ。
複合発露や祈念魔法なしで戦わざるを得ない状況に陥ることは、十分にあり得る。
もしそうした事態が衆人環視の中で起こった場合、国宝たる印刀ホウゲツを用いて戦ったら「私が救世の転生者です」と言い触らしているようなものだ。
勿論、それ以外に選択肢がない状況なら躊躇うつもりはないが、予備の武器の一つぐらい用意しておいてもバチは当たらないだろう。可能ならば。
「ま、そういう訳で、元々複製師の工房に行こうとは思っていたんだ」
「成程……プロの補導員は色々と考えてるんですね」
納得して感心したような目を向けてくるラクラちゃん。
考え過ぎと言えば考え過ぎかもしれないが、複合発露の相性次第では一撃死もあり得る世界だ。臆病に対策を練っておくぐらいが丁度いい。
「何はともあれ、その道を究めた一流の職人さんの仕事を見ることは、きっと皆のためになる。自分自身の夢を目指す上でもね。……っと、バスが来たな」
定刻通り、学園前の停留所に近づいてくるバスへと視線をやりながら言う。
「さ、行こうか」
対して皆、素直に頷くと、先導するように停車したバスへと乗り込んだ俺に続いた。
既に補導員として活動している人間の実体験を伴った言葉だけに、この社会科見学を多少は意義があるものとして受け入れてくれたのだろう。
それから。
「ところで、イサクさんはどういう武器を扱えるんですか?」
「ヨスキ村にいた時に一通りは。だけど、一番はやっぱり刀かな」
「刀かあ。あ、もしかして、歴代の救世の転生者様に憧れて?」
「ん……ま、まあ、そんなとこかな。ははは」
そんな風に積極的に話しかけてくるラクラちゃんと主に雑談しながら、メルカバスで学園都市トコハをのんびり進むこと三十分弱。
目的地に最も近い停留所に辿り着き、バスが停車する。
降車して真っ先に目に映るのは、見覚えのある建物。特別収容施設ハスノハ。
その目と鼻の先にある一見するとそれとは分からない小さな屋敷こそが、今回の目的地である、この国一番の複製師がいる工房だ。
「…………この国一番?」
その質素な外見を見て、トバルが不審そうに首を傾げる。
気持ちは分からないでもないが、事前の貰った地図を確認する限りは間違いない。
とりあえず扉の前まで行き、呼び鈴を鳴らす。
しばらく待つと、中から何やら酷く重々しい足音が聞こえてきた。
合わせて、金属が擦れるような音も耳に届く。
やがて、それが屋敷の入口に至り、扉がゆっくりと開かれると――。
「ドチラ様デショウカ?」
機械的な抑揚のない声と共に、青銅製の人形が現れた。
予期せぬその光景に一瞬呆気に取られてしまう。
セト達も同様で、目を見開いたまま完全に言葉を失っていた。
「え、ええと……」
動揺したままでは年長者としての沽券に関わる、と何とか気を取り直して口を開く。
「トリリス様の紹介で参りましたイサクと申します」
「イサク様デスネ。伺ッテオリマス。中ヘドウゾ」
謎の人形に案内されるまま、俺が応対している間に一先ず我を取り戻した様子のセト達四人と共に屋敷に入って後についてくと、恐らく一番奥であろう部屋に通される。
すると、そこには右目を茶色の前髪で隠した小さな体躯の少女が一人。
隠れていない茶色の瞳で俺達を値踏みするように見ていた。
「もしかして貴方が……?」
「おうとも。ワシがこの工房の主。イッポンダタラの少女化魔物たるアマラ・ロリータじゃ。よろしく頼むぞ――」
そして俺の問いかけにしゃがれた声で応じた彼女は、更に真っ直ぐにこちらを見据えながら小さく口だけを動かして「救世の転生者よ」と続けたのだった。
中間試験の打ち上げを焼肉店で行った翌日。三日ある試験休みの初日。
約束した朝の九時にホウゲツ学園の校門前へと全員が集まったところで、ラクラちゃんが尋ねてきた。合わせて、セト達の視線も俺に集中するが……。
何だか皆、妙に落ち着かない様子だ。
恐らくだが、日々の鍛錬を休むことに不安感があるのだろう。
ちょっと危ない傾向が出つつあったのかもしれない。
勿論、自主的な鍛錬自体はよくないことではないが、何ごともやり過ぎは禁物だ。
強迫観念にかられてやるような形では、結局のところ効率は悪くなるのだから。
「イサクさん?」
「ああ、ごめん」
四人の様子に複雑な気持ちを抱いているとラクラちゃんに呼ばれ、意識を戻す。
とりあえず、最初の質問にちゃんと答えよう。
本当は「着いてからのお楽しみ」とか勿体振るつもりだったが、今の彼らには早々に目的地を明確にして鍛錬と同じぐらい意義があることを示した方がいい。
「今日は、この国で一番の複製師さんの工房に行く予定だよ」
「……複製師?」
そんな俺の言葉を耳にして、何とも微妙な顔をしながら呟いたのはトバル。
複製師とは、複合発露によって祈望之器の模造品を作り出す職人のこと。
両親がその複製師である彼は、その跡を継いで欲しいと望まれている。
そうした背景がある中で、自身に関連のある職業の工房を社会科見学で訪れると告げられ、何となく狙い撃ちにされているように感じたのかもしれない。
なので――。
「そう。エノスさんやクレーフさんと同じ複製師だ」
敢えて軽い口調と共に彼の両親の名を出して、他意がないように振る舞っておく。
……正直なところ、その意識は皆無とは言えない部分もある。
両親以外の複製師の仕事を見ることは、彼にとっても悪いことではないはずだから。
勿論、その上で複製師ではない道を選んだとしても、俺は彼を応援するつもりだが。
とは言え……。
「実は、ちょっと武器が欲しかったんだよ」
もしセト達を誘っていなくても、たとえ断られていたとしても行くつもりだった。
自分の用事につき合わせることが丁度、彼らのためにもなるかもしれないと考えたからこそ四人を誘ったのだ。
一応、先方にアポイントを取った段階でその辺も考慮に入れて人数が増えるかもしれないとは伝えてあったので、どちらに転んでも問題はない。
「ええと、武器、ですか? 真・複合発露も使えるイサクさんが?」
俺が口にしたその目的に対し、ラクラちゃんは不思議そうに首を傾げながら続ける。
「複製した祈望之器って元のそれより位階が下がったり、性能が変化したり、基本的には劣化するはずですよね? イサクさんに必要とは思えないんですけど」
彼女の言っていることは、複製の説明としては概ね合っている。
それ故、第六位階。即ち俺が所有する印刀ホウゲツのようなオリジナルの祈望之器でもなければ、真・複合発露や暴走・複合発露が飛び交う戦いに持ち出すのは心許ない。
だから実際、戦闘系の複合発露を持つ少女化魔物と真性少女契約を結んでいる少女征服者であれば、祈望之器の複製品をわざわざ購入する者は少ない。
精々、少女化魔物に依らずに魔物を討伐するハンターぐらいのものだ。
オリジナルを複製した第五位階の一品ならば、あるいは複合発露を用いた戦いの足しになるかもしれないが、如何せん値が張るし。
そういう訳で、基本的に複製は日常生活に役立つ祈望之器を量産するのに使われる。
これから移動手段として使うつもりのバスもどきなど最たるものだ。
「何か理由があるんですか?」
「うん、まあ、ね。何ごとにも例外はあるものでさ。丁度この前、複合発露による攻撃を封じられたような状態で戦って、武器のありがたみを感じたばかりなんだ」
ラクラちゃんの問いに対し、武器が欲しいと言った理由を少し嘆息気味に答える。
前回。リビングデッドの上位少女化魔物の暴走を鎮静化した時。
再生能力を持つ彼女の行動を妨げようとサユキとの真・複合発露〈万有凍結・封緘〉を用いて攻撃したが、上位少女化魔物による暴走・複合発露の身体強化を上回ることができず、最終的に印刀ホウゲツに頼らざるを得ない状況に追い込まれた。
勿論、その時に複製した祈望之器の武器があったところで、さして過程も結果も変わらなかっただろうが……。
「これから先、相手の複合発露でこちらの複合発露を妨害されたり……もしかしたら祈望之器で複合発露を封じられたりする可能性がないとは言えない」
世の中には、祈念魔法や複合発露を封じ込める封印の注連縄なんてものもあるのだ。
複合発露や祈念魔法なしで戦わざるを得ない状況に陥ることは、十分にあり得る。
もしそうした事態が衆人環視の中で起こった場合、国宝たる印刀ホウゲツを用いて戦ったら「私が救世の転生者です」と言い触らしているようなものだ。
勿論、それ以外に選択肢がない状況なら躊躇うつもりはないが、予備の武器の一つぐらい用意しておいてもバチは当たらないだろう。可能ならば。
「ま、そういう訳で、元々複製師の工房に行こうとは思っていたんだ」
「成程……プロの補導員は色々と考えてるんですね」
納得して感心したような目を向けてくるラクラちゃん。
考え過ぎと言えば考え過ぎかもしれないが、複合発露の相性次第では一撃死もあり得る世界だ。臆病に対策を練っておくぐらいが丁度いい。
「何はともあれ、その道を究めた一流の職人さんの仕事を見ることは、きっと皆のためになる。自分自身の夢を目指す上でもね。……っと、バスが来たな」
定刻通り、学園前の停留所に近づいてくるバスへと視線をやりながら言う。
「さ、行こうか」
対して皆、素直に頷くと、先導するように停車したバスへと乗り込んだ俺に続いた。
既に補導員として活動している人間の実体験を伴った言葉だけに、この社会科見学を多少は意義があるものとして受け入れてくれたのだろう。
それから。
「ところで、イサクさんはどういう武器を扱えるんですか?」
「ヨスキ村にいた時に一通りは。だけど、一番はやっぱり刀かな」
「刀かあ。あ、もしかして、歴代の救世の転生者様に憧れて?」
「ん……ま、まあ、そんなとこかな。ははは」
そんな風に積極的に話しかけてくるラクラちゃんと主に雑談しながら、メルカバスで学園都市トコハをのんびり進むこと三十分弱。
目的地に最も近い停留所に辿り着き、バスが停車する。
降車して真っ先に目に映るのは、見覚えのある建物。特別収容施設ハスノハ。
その目と鼻の先にある一見するとそれとは分からない小さな屋敷こそが、今回の目的地である、この国一番の複製師がいる工房だ。
「…………この国一番?」
その質素な外見を見て、トバルが不審そうに首を傾げる。
気持ちは分からないでもないが、事前の貰った地図を確認する限りは間違いない。
とりあえず扉の前まで行き、呼び鈴を鳴らす。
しばらく待つと、中から何やら酷く重々しい足音が聞こえてきた。
合わせて、金属が擦れるような音も耳に届く。
やがて、それが屋敷の入口に至り、扉がゆっくりと開かれると――。
「ドチラ様デショウカ?」
機械的な抑揚のない声と共に、青銅製の人形が現れた。
予期せぬその光景に一瞬呆気に取られてしまう。
セト達も同様で、目を見開いたまま完全に言葉を失っていた。
「え、ええと……」
動揺したままでは年長者としての沽券に関わる、と何とか気を取り直して口を開く。
「トリリス様の紹介で参りましたイサクと申します」
「イサク様デスネ。伺ッテオリマス。中ヘドウゾ」
謎の人形に案内されるまま、俺が応対している間に一先ず我を取り戻した様子のセト達四人と共に屋敷に入って後についてくと、恐らく一番奥であろう部屋に通される。
すると、そこには右目を茶色の前髪で隠した小さな体躯の少女が一人。
隠れていない茶色の瞳で俺達を値踏みするように見ていた。
「もしかして貴方が……?」
「おうとも。ワシがこの工房の主。イッポンダタラの少女化魔物たるアマラ・ロリータじゃ。よろしく頼むぞ――」
そして俺の問いかけにしゃがれた声で応じた彼女は、更に真っ直ぐにこちらを見据えながら小さく口だけを動かして「救世の転生者よ」と続けたのだった。
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