ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
AR10 次なる事件の前日譚(裏)
「君が遭遇した次なる大事件。その遠因が彼にあったことは、今の君も知るところだろう。しかし、彼にとっては甚だ不本意だったと言っていい。ことこの件に関してのみ言えば、正直、彼を責めるのは少々酷なことかもしれない。けれども――」
***
「くそっ、馬鹿なことをしてくれたな!」
部下から緊急の報告を受け、俺は彼を下がらせてから苛立ち混じりに吐き捨てた。
それから机を殴りつけるようにしながら立ち上がり、執務室の後方で黙したまま控えている少女化魔物達を振り返る。
しかし、感情のまま動いても碌なことにはならない。
一度、深呼吸して気持ちを静め、それから悉く狂化隷属の矢が腕に突き刺さっている彼女達の内の一人、悪魔(バティン)の少女化魔物に顔を向ける。
「トラレ。転移の準備をしろ」
そして俺は、彼女に暴走・複合発露〈千里縮地・一弾指〉の使用を促した。
返事はないが、伝わっていることは経験から分かっているので気にしない。
「行き先は辺境の小都市ウラバの外れ。数ヶ月前に解体したはずの第五研究所だ。そこで大きな問題が生じてしまった」
続けて目的地を指示しつつ、近くに立つ二人の少女化魔物へと視線を向ける。
「ファルン、セレス。お前達もついてこい」
そう彼女達に呼びかけてからトラレの肩に触れると、ファルンとセレスもまた倣う。
それと同時に、トラレが速やかに己の力を発現させる。
次の瞬間、俺はその三人と共に、少女祭祀国家ホウゲツの首都たるモトハからも学園都市トコハからも大分離れた位置にあるウラバという小都市へと転移した。
出現位置は、人間至上主義組織スプレマシーにおいて、人類に益となる様々な研究開発を行うための施設の一つ。第五研究所のエントランスだ。
余談だが、転移の力の使用者は転移先の状況を感覚的に把握できるため、壁の中に出現したりすることはない。
「よし。行くぞ」
風属性の祈念魔法を用いて周辺を探知しながら、慎重に進み始める。
内部構造は、隠し通路を含めて施設の図面を見て知っているつもりだ。
敷地もそう広くはない。状況の確認はすぐに済むだろう。
そう思っていたのだが……。
「新しい隠し部屋があるな。もし万が一、俺の指示に従わなかったことが露見した場合への備えか。全く以って小賢しい」
しばらく前、組織内の目立った急進派を粛清した後。
第五研究所は、維持するメリットがないため、解体が決定したはずだった。
実際にそうしたとの報告も受けている。
だが、緊急報告の内容からすると、それは嘘だったらしい。
急進派の残党がこの研究所を保持し続けていた上、俺が最近ヒアリングの末に却下したとある研究を提案した者達と接近し、独断で実験を開始していたようだ。
内容的に資金が多く必要のない類の研究だったことも、こうなった一因と言えよう。
いずれにせよ、まだまだ俺の組織内における影響力は完全ではないということだ。
「こっちだ。遅れるなよ」
後ろに続く三人に振り向くことなく告げ、探知を頼りに奥へと歩いていく。
やがて。問題が生じたと思われる隠し部屋に近づくにつれ、備品の損壊、破損物の散乱などが視界の中で目立ち始める。
更には……隠し通路がある部屋の扉が力任せに壊されていたばかりか、扉を出てすぐの壁に大穴が空き、屋外へと何かが逃げていったかのような痕跡が見て取れた。
非常にまずい事態だ。
「ちっ」
思わず舌打ちしてしまうが、そちらはもはや対処のしようがない。
諦めて目的の部屋に入る。
すると、隠し通路の出入口もまた完膚なきまでに破壊されており、隠し部屋へと続く階段が露出していた。だからこそ、探知で隠し部屋の存在が分かったのだろう。
本来なら、探知対策としてパッキンなどで完全に風の通りを遮断しているはずだ。
……ともかく、この階段の下が目的地だ。
十一名の気配が存在しているが、動きはない。危険はないだろう。
それでも一定の警戒は保ちながら、そこを下りていく。
「やはりか」
半ば想定していた光景が目に映り、顔をしかめる。
そこには人型の存在を拘束する器具がついた椅子が、十脚程度乱雑に置かれていた。
内八脚は空席で、倒れていたり、足が圧し折れていたりするものもある。
残る二脚には未だに男と女が拘束され、塞がれた口から何やら呻き声を漏れていた。
すぐさま近寄って彼らの体を押さえつける器具を外してやっても、焦点の合わない目で虚空を眺めながら意味のない音を発するのみ。
まともな思考は残っていないと判断せざるを得ない。
更には、四肢の末端から体が崩れ始めている。
このままでは余命幾許もないが、俺に彼らを癒やす術はない。
報告通りなら、これは第五位階の力による現象。祈念魔法では癒やせない。
「ファルン!」
仕方なく、俺は応急処置として彼女の暴走・複合発露〈身命石変・無尽〉を使用し、二人を一瞬の内に石化させた。
石化した存在は内部の状態に変化が生じなくなる。疑似的に時が止まる訳だ。
それならば、死を先延ばしにすることができる。
一つホッと息を吐く。
それから俺は、視線を別のものに移した。
彼らより優先すべきものではないが、この場には虫の息となっている人間が依然として九名存在している。こちらはとある非道な実験を行った研究員達だ。
一様に床に倒れ伏し、その体からは多くの血が流れ出ている。
「一番マシなのは……」
その中から猶予がありそうな一人を選び、それ以外は椅子に座っていた二人と同じようにファルンの力で石化させておく。
祈念魔法で癒やすにしても俺の体力が持たない。特に、失った血を補うとなると。
トラレは対象と接触していなければ共に転移できないため、一人一人運んでいくしかないが、それでは時間的に間に合わないだろう。
と言うか、そもそも、そうする義理は俺にはない。
何故なら、彼らは俺の指示に従わなかった存在。粛清の対象だ。
むしろ放置してもいいぐらいかもしれないが……。
これをやったのは実験台にされた者達のはず。
さすがに被害者である彼らを人殺しにするのは忍びない。
この場に即死した者がいないのは、彼らの無意識の躊躇によるものだろうし。
「おい。起きろ」
そして俺は、残った一人だけに祈念魔法で最低限の治療を施し、気つけを行った。
治癒の祈念魔法を使用した影響で体がだるくなるが、顔に出さないように注意する。
意識を取り戻した男に僅かたりとも侮られないように。
「お、お前……貴方はテネシス代表!?」
その彼は、俺の顔を見るや否や驚愕と共に口を開く。
言葉遣いを途中で慌てて正したところを見るに、急進派の残党だろう。
「何故、この研究を実行に移した? 何故、俺の指示に従わなかった?」
そんな相手に、強い口調で問い質す。
余りにも非道な実験内容だったから。
余りにも危険が大き過ぎると予測されたから。
それを理由に中止に追い込んだと言うのに。
「答えろ!!」
「わ、私達は上からの指示に従ったまでのことです」
目を泳がせながら逸らす男に舌打ちする。
明らかに、何とか誤魔化してこの場をやり過ごそうとしている。
だが、ハッキリ言わせて貰えば、彼らの動機など予想がついていた。
素直に話せば、多少は恩情をかけてもよかったが……。
「そうか。ならば、ファルン」
静かに、冷たく、後方に控えていた少女化魔物に呼びかける。
この期に及んで保身に走る愚者は必要ない。
「……え?」
そして次の瞬間、男は間抜けな声を最後に物言わぬ石の彫像と化してしまった。
「人間至上主義者が人体実験を行うなど笑い話にもならない」
驚いた顔で固まるそれを見ながら、吐き捨てるように言う。
彼らは人間至上主義者ではない。自分至上主義者でしかない。
欲望のまま、他人を蔑にしても構わないと思う邪悪な存在だ。
「人間の感情など、細部まで御せるものではないだろうに」
だが、俺もまた同じ穴の貉でしかないのかもしれない。
俺は、人間至上主義組織に属してこそいるが、その思想には興味がない。
気兼ねなく利用できるものを利用している。それだけだ。
全ては俺の目的を果たすために。
そのためならば、彼らを上回る外道に成り果ててもいい。
いや、必要とあらば、そうなってでも完遂しなければならないのだ。
そう強く強く己に言い聞かせながら、もう一度だけ床に転がる石の像と椅子に座る四肢が崩れかけている像を見る。
これらは、持ち帰るよりもここに残しておく方が使い道がある。
それに、余り長居もしていられない。
「行くぞ。トラレ、ファルン、セレス」
だから俺は、石化させた彼ら全員をその場に置き去りにしたまま、人間至上主義組織スプレマシーの本部、その執務室へと転移したのだった。
***
「彼、テネシス・コンヴェルトが人間至上主義組織スプレマシーの現代表である以上、一定の責任がある。たとえ末端の独断専行によるものだったとしてもね。そもそも完全に統制が取れていれば、そんなことにはならなかったのだから」
***
「くそっ、馬鹿なことをしてくれたな!」
部下から緊急の報告を受け、俺は彼を下がらせてから苛立ち混じりに吐き捨てた。
それから机を殴りつけるようにしながら立ち上がり、執務室の後方で黙したまま控えている少女化魔物達を振り返る。
しかし、感情のまま動いても碌なことにはならない。
一度、深呼吸して気持ちを静め、それから悉く狂化隷属の矢が腕に突き刺さっている彼女達の内の一人、悪魔(バティン)の少女化魔物に顔を向ける。
「トラレ。転移の準備をしろ」
そして俺は、彼女に暴走・複合発露〈千里縮地・一弾指〉の使用を促した。
返事はないが、伝わっていることは経験から分かっているので気にしない。
「行き先は辺境の小都市ウラバの外れ。数ヶ月前に解体したはずの第五研究所だ。そこで大きな問題が生じてしまった」
続けて目的地を指示しつつ、近くに立つ二人の少女化魔物へと視線を向ける。
「ファルン、セレス。お前達もついてこい」
そう彼女達に呼びかけてからトラレの肩に触れると、ファルンとセレスもまた倣う。
それと同時に、トラレが速やかに己の力を発現させる。
次の瞬間、俺はその三人と共に、少女祭祀国家ホウゲツの首都たるモトハからも学園都市トコハからも大分離れた位置にあるウラバという小都市へと転移した。
出現位置は、人間至上主義組織スプレマシーにおいて、人類に益となる様々な研究開発を行うための施設の一つ。第五研究所のエントランスだ。
余談だが、転移の力の使用者は転移先の状況を感覚的に把握できるため、壁の中に出現したりすることはない。
「よし。行くぞ」
風属性の祈念魔法を用いて周辺を探知しながら、慎重に進み始める。
内部構造は、隠し通路を含めて施設の図面を見て知っているつもりだ。
敷地もそう広くはない。状況の確認はすぐに済むだろう。
そう思っていたのだが……。
「新しい隠し部屋があるな。もし万が一、俺の指示に従わなかったことが露見した場合への備えか。全く以って小賢しい」
しばらく前、組織内の目立った急進派を粛清した後。
第五研究所は、維持するメリットがないため、解体が決定したはずだった。
実際にそうしたとの報告も受けている。
だが、緊急報告の内容からすると、それは嘘だったらしい。
急進派の残党がこの研究所を保持し続けていた上、俺が最近ヒアリングの末に却下したとある研究を提案した者達と接近し、独断で実験を開始していたようだ。
内容的に資金が多く必要のない類の研究だったことも、こうなった一因と言えよう。
いずれにせよ、まだまだ俺の組織内における影響力は完全ではないということだ。
「こっちだ。遅れるなよ」
後ろに続く三人に振り向くことなく告げ、探知を頼りに奥へと歩いていく。
やがて。問題が生じたと思われる隠し部屋に近づくにつれ、備品の損壊、破損物の散乱などが視界の中で目立ち始める。
更には……隠し通路がある部屋の扉が力任せに壊されていたばかりか、扉を出てすぐの壁に大穴が空き、屋外へと何かが逃げていったかのような痕跡が見て取れた。
非常にまずい事態だ。
「ちっ」
思わず舌打ちしてしまうが、そちらはもはや対処のしようがない。
諦めて目的の部屋に入る。
すると、隠し通路の出入口もまた完膚なきまでに破壊されており、隠し部屋へと続く階段が露出していた。だからこそ、探知で隠し部屋の存在が分かったのだろう。
本来なら、探知対策としてパッキンなどで完全に風の通りを遮断しているはずだ。
……ともかく、この階段の下が目的地だ。
十一名の気配が存在しているが、動きはない。危険はないだろう。
それでも一定の警戒は保ちながら、そこを下りていく。
「やはりか」
半ば想定していた光景が目に映り、顔をしかめる。
そこには人型の存在を拘束する器具がついた椅子が、十脚程度乱雑に置かれていた。
内八脚は空席で、倒れていたり、足が圧し折れていたりするものもある。
残る二脚には未だに男と女が拘束され、塞がれた口から何やら呻き声を漏れていた。
すぐさま近寄って彼らの体を押さえつける器具を外してやっても、焦点の合わない目で虚空を眺めながら意味のない音を発するのみ。
まともな思考は残っていないと判断せざるを得ない。
更には、四肢の末端から体が崩れ始めている。
このままでは余命幾許もないが、俺に彼らを癒やす術はない。
報告通りなら、これは第五位階の力による現象。祈念魔法では癒やせない。
「ファルン!」
仕方なく、俺は応急処置として彼女の暴走・複合発露〈身命石変・無尽〉を使用し、二人を一瞬の内に石化させた。
石化した存在は内部の状態に変化が生じなくなる。疑似的に時が止まる訳だ。
それならば、死を先延ばしにすることができる。
一つホッと息を吐く。
それから俺は、視線を別のものに移した。
彼らより優先すべきものではないが、この場には虫の息となっている人間が依然として九名存在している。こちらはとある非道な実験を行った研究員達だ。
一様に床に倒れ伏し、その体からは多くの血が流れ出ている。
「一番マシなのは……」
その中から猶予がありそうな一人を選び、それ以外は椅子に座っていた二人と同じようにファルンの力で石化させておく。
祈念魔法で癒やすにしても俺の体力が持たない。特に、失った血を補うとなると。
トラレは対象と接触していなければ共に転移できないため、一人一人運んでいくしかないが、それでは時間的に間に合わないだろう。
と言うか、そもそも、そうする義理は俺にはない。
何故なら、彼らは俺の指示に従わなかった存在。粛清の対象だ。
むしろ放置してもいいぐらいかもしれないが……。
これをやったのは実験台にされた者達のはず。
さすがに被害者である彼らを人殺しにするのは忍びない。
この場に即死した者がいないのは、彼らの無意識の躊躇によるものだろうし。
「おい。起きろ」
そして俺は、残った一人だけに祈念魔法で最低限の治療を施し、気つけを行った。
治癒の祈念魔法を使用した影響で体がだるくなるが、顔に出さないように注意する。
意識を取り戻した男に僅かたりとも侮られないように。
「お、お前……貴方はテネシス代表!?」
その彼は、俺の顔を見るや否や驚愕と共に口を開く。
言葉遣いを途中で慌てて正したところを見るに、急進派の残党だろう。
「何故、この研究を実行に移した? 何故、俺の指示に従わなかった?」
そんな相手に、強い口調で問い質す。
余りにも非道な実験内容だったから。
余りにも危険が大き過ぎると予測されたから。
それを理由に中止に追い込んだと言うのに。
「答えろ!!」
「わ、私達は上からの指示に従ったまでのことです」
目を泳がせながら逸らす男に舌打ちする。
明らかに、何とか誤魔化してこの場をやり過ごそうとしている。
だが、ハッキリ言わせて貰えば、彼らの動機など予想がついていた。
素直に話せば、多少は恩情をかけてもよかったが……。
「そうか。ならば、ファルン」
静かに、冷たく、後方に控えていた少女化魔物に呼びかける。
この期に及んで保身に走る愚者は必要ない。
「……え?」
そして次の瞬間、男は間抜けな声を最後に物言わぬ石の彫像と化してしまった。
「人間至上主義者が人体実験を行うなど笑い話にもならない」
驚いた顔で固まるそれを見ながら、吐き捨てるように言う。
彼らは人間至上主義者ではない。自分至上主義者でしかない。
欲望のまま、他人を蔑にしても構わないと思う邪悪な存在だ。
「人間の感情など、細部まで御せるものではないだろうに」
だが、俺もまた同じ穴の貉でしかないのかもしれない。
俺は、人間至上主義組織に属してこそいるが、その思想には興味がない。
気兼ねなく利用できるものを利用している。それだけだ。
全ては俺の目的を果たすために。
そのためならば、彼らを上回る外道に成り果ててもいい。
いや、必要とあらば、そうなってでも完遂しなければならないのだ。
そう強く強く己に言い聞かせながら、もう一度だけ床に転がる石の像と椅子に座る四肢が崩れかけている像を見る。
これらは、持ち帰るよりもここに残しておく方が使い道がある。
それに、余り長居もしていられない。
「行くぞ。トラレ、ファルン、セレス」
だから俺は、石化させた彼ら全員をその場に置き去りにしたまま、人間至上主義組織スプレマシーの本部、その執務室へと転移したのだった。
***
「彼、テネシス・コンヴェルトが人間至上主義組織スプレマシーの現代表である以上、一定の責任がある。たとえ末端の独断専行によるものだったとしてもね。そもそも完全に統制が取れていれば、そんなことにはならなかったのだから」
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