ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~
046 当面の方針
「ただいま。遅くなって心配かけたな」
サユキの事件に関する諸々の事後処理を終え、村に帰ってきた父さん。
言葉の通り、あれから一週間と思ったより時間がかかった。
「主よ、体調はもう大丈夫なのか?」
「ああ。問題ない」
心配そうに言う母さんに、父さんが微笑みながら答える。
行きは急ぎだったので複合発露〈擬光転移〉を使用したそうなのだが、どうも都市に到着した辺りで調子を崩してしまったらしい。
そもそもサユキに右腕を凍らされるまで追い詰められ、更には彼女と村との間を複合発露で数度行き来し、戦いが終わったら都市へ報告。
休む間もなく動き続けては、勇者と謳われた父さんとて疲労も蓄積しようというものだ。
そういう訳で少し休んだ後、普通の交通機関を利用して帰ってきたらしい。
父さんに万が一のことがあれば、母さんの命にも関わるのだから当然の選択だろう。
とは言え、一蓮托生である母さんの問いかけに問題ないと答えているのだから、俺が過剰に心配することでもない。
「それで父さん。どうだった? 氷漬けになってた人達は元に戻ってた?」
まず個人的に、今回の件について最も懸念していたことを尋ねる。
真性少女契約を結んだパートナーとして、たとえどんなものであれ、サユキの行動の結果はしっかり知っておかなければならない。
この国では少女契約以前の少女化魔物の罪は法的に問われないとしても、だから知らん顔をしていいということにはならないだろうから。
「皆、元に戻ってたよ。恐らく俺達の腕が元に戻った時とほぼ同時に」
「そっか。……よかった」
その答えに一先ず安堵の溜息を吐く。
だが、外見的な影響のみが全てではない。
「後遺症とか、生活に影響とかは?」
「大丈夫だ。後遺症は見られなかったし、もし少女化魔物による被害があったことで生活に影響が出たのだとすれば国が補助してくれる」
まあ、国が法律として少女契約以前の罪を問わないことを定めたのなら、被害者にそれぐらいの補償があって然るべきだろう。
それはそれとしても……本当に被害が最小限で終わってよかった。
人死にが出なくてよかった。俺も皆も、サユキも含めて。
「本当に、よくやってくれた。お前のおかげで多くの人々が救われた。俺も鼻が高い」
「父さんと母さんが助けてくれたおかげだから」
父さんはフッと笑い、俺の頭を誇らしそうに撫でた。
「だが、命を懸けて頑張ったのは事実だ。奉献の巫女様も感心しておられた」
「何と! 奉献の巫女様がか!」
その言葉に母さんが驚きと喜びの入り混じった声を上げる。
「奉献の巫女様に?」
「今回の件はあの方から直々に依頼されたものだからな」
俺の問いに破顔して答える父さん。
奉献の巫女様はこの国の中枢を担う人物と聞く。相当名誉なことなのだろう。
「ただ、奉献の巫女様は以前セト達が襲われたことも鑑み、お前の名が広まると同じことが起こるではないかと懸念しておられる。公的にお前の手柄とはならないかもしれない」
「……それは別にいいよ。さっきも言ったけど、俺一人じゃ無理だった話だから」
実際、奉献の巫女様の言い分は正しいと思う。
名が知れれば、救世の転生者であることを疑われる可能性が高くなる。
「関連して、真性少女契約を既に結んだ子供が学園に入るのは双方にとって危険かもしれない。それ以前に学園そのものが役不足かもしれないとも仰せだった」
「そ、そうか。ならば、やはり村を離れる必要などないのではないか?」
と、お偉いさんの言葉に後押しされたように、母さんが自分の主張を改めて口にする。
「それはイサクの意思次第だろう。学園だけが都市の全てじゃないからな。勿論、お前が心配するのは分かるが……」
「む、むう」
母さんの本心としてはアロン兄さんのことがあって傍に置いておきたいのだろうが、それでも子供の意思を完全に無視する程非情にはなれないようで押し黙ってしまう。
いずれにせよ、大事に思われていることは感じられる。
「……俺は、学園に行くより兄さんやフェリトのお姉さんを探したい」
それでも、だからこそ自分の意思を示すことが互いのためになるだろう。
そう考えて口を開く。
「イサク……」
対して母さんは複雑な表情を浮かべた。
そう言ってくれるのは嬉しいが、無茶はして欲しくないという感じか。
少しの間、沈黙が場を支配する。
「お前の気持ちは分かった。しかしな」
やがて瞑目して考え込んでいた父さんが目を見開き、真剣な声色と共に口も開いた。
「お前が探偵の真似ごとをする必要はない。餅は餅屋だ。探知系に特化した複合発露を持つ少女征服者に任せるべきだ」
探知に特化しているロリコンとか危険なワードのような気がしてならないが、真面目な話の最中なのでスルーしておく。
「けど、父さん――」
「お前やお前と契約した彼女達の複合発露は斥候向きでもない。例えば、今回の彼女のような状況に突然遭遇して対処できるか?」
「それは……」
確かにあの状況。
超高速移動が可能な複合発露〈擬光転移〉と凍結に耐え得る力を持つ真・複合発露〈火炎巨竜転身〉を兼ね備えた父さんでもなければ退却すら不可能だったに違いない。
「勿論、あの子と真性少女契約を結んだ今、基本的な攻撃力は俺よりも上だろう。少女征服者全体から見ても、間違いなく総合的に上位の力はある。しかし、複合発露の戦いは素直に強ければ確実に勝てるという訳じゃない」
特異な能力。完全な初見殺し。
そんな少女化魔物と突発的に遭遇することも十分考えられる訳だ。
「でも、俺は父さんと母さんの役に立ちたいし、フェリトのお姉さんを助けたいんだ」
「……分かってるさ。けどな。表立って動くことだけがその方法じゃないぞ」
「イサクよ。妾とて感情だけで村を出て欲しくない訳ではない」
そこへ横から母さんが言葉を挟む。
「サユキを得たお前が村にいてセトを守ってくれれば、父も妾も動き易くなる。お前の兄やフェリトの姉の情報を得た時に即応し易くなるじゃろう」
「強行偵察や威力偵察も、今のところはイサクよりも俺の方が適しているからな」
第六位階上位の身体強化と第五位階の高速移動。
この二つがあれば、大抵の危機から抜け出すことができるだろう。
それこそフェリトの姉であるセレスさんと遭遇し、その暴走・複合発露の影響を受けて祈念魔法が使えないような状況に陥っても。
「勿論、お前の力が必要となったら、遠慮なく頼らせて貰う」
父さんはそれまでの厳しい表情を少しだけ崩しつつも真摯な口調で告げる。
その場凌ぎで言っている訳ではないと分かる。
適材適所。
失敗は死にも繋がりかねない物騒な世界だ。そうすべきなのは確かだろう。
それでも今一割り切れずにいると――。
「イサク様はこれまで力の扱いを学んできましたが、実際に複合発露を持つ敵と戦うにはまだまだ不十分です」
それまで黙って話の推移を見守っていたイリュファが口を開いた。
「これからはこの世界に存在する数多の少女化魔物、その複合発露がどのようなものかを中心に学んでいくべきでしょう。将来のためにも」
「つまり、イリュファは学園に行くべきって言いたいのか?」
「いいえ。学園のカリキュラムに従っていては得られる情報量が不十分となってしまいます。この村で、私がお教え致します」
村を離れず、セト達を見守りながら、か。
未だ、救世の転生者が相対すべき人形化魔物ガラテアの行動は散発的。
まだ表立って動くべき時ではないのかもしれない。
少女征服者による救済を望まない人間至上主義組織スプレマシーなどというものもあるし、目をつけられることでデメリットはあってもメリットはない。
「分かった。……父さん、母さん。俺はとりあえず村に残るよ。それでセト達を守りながら、自分も強くなれるように努力する」
諸々を考慮に入れてそう結論する。と、それを聞いた母さんがちょっと嬉しそうな顔をして、しかし、すぐに表情を引き締めた。
その隣では父さんがそんな母さんの姿に苦笑していた。
「俺達の役に立ちたいというお前の気持ちは嬉しいし、仲間の身内を助けたいという気持ちも尊いものだ。しかし、何もかも一人でやろうとはしなくていい」
「その通りじゃ。これから先、大人になろうとも妾達を頼ってよいのじゃからな」
「うん。ありがとう、父さん、母さん」
こうして……俺は一先ず焦って都市に向かうようなことはせず、もうしばらくの間この村で皆と過ごすことに決めたのだった。
サユキの事件に関する諸々の事後処理を終え、村に帰ってきた父さん。
言葉の通り、あれから一週間と思ったより時間がかかった。
「主よ、体調はもう大丈夫なのか?」
「ああ。問題ない」
心配そうに言う母さんに、父さんが微笑みながら答える。
行きは急ぎだったので複合発露〈擬光転移〉を使用したそうなのだが、どうも都市に到着した辺りで調子を崩してしまったらしい。
そもそもサユキに右腕を凍らされるまで追い詰められ、更には彼女と村との間を複合発露で数度行き来し、戦いが終わったら都市へ報告。
休む間もなく動き続けては、勇者と謳われた父さんとて疲労も蓄積しようというものだ。
そういう訳で少し休んだ後、普通の交通機関を利用して帰ってきたらしい。
父さんに万が一のことがあれば、母さんの命にも関わるのだから当然の選択だろう。
とは言え、一蓮托生である母さんの問いかけに問題ないと答えているのだから、俺が過剰に心配することでもない。
「それで父さん。どうだった? 氷漬けになってた人達は元に戻ってた?」
まず個人的に、今回の件について最も懸念していたことを尋ねる。
真性少女契約を結んだパートナーとして、たとえどんなものであれ、サユキの行動の結果はしっかり知っておかなければならない。
この国では少女契約以前の少女化魔物の罪は法的に問われないとしても、だから知らん顔をしていいということにはならないだろうから。
「皆、元に戻ってたよ。恐らく俺達の腕が元に戻った時とほぼ同時に」
「そっか。……よかった」
その答えに一先ず安堵の溜息を吐く。
だが、外見的な影響のみが全てではない。
「後遺症とか、生活に影響とかは?」
「大丈夫だ。後遺症は見られなかったし、もし少女化魔物による被害があったことで生活に影響が出たのだとすれば国が補助してくれる」
まあ、国が法律として少女契約以前の罪を問わないことを定めたのなら、被害者にそれぐらいの補償があって然るべきだろう。
それはそれとしても……本当に被害が最小限で終わってよかった。
人死にが出なくてよかった。俺も皆も、サユキも含めて。
「本当に、よくやってくれた。お前のおかげで多くの人々が救われた。俺も鼻が高い」
「父さんと母さんが助けてくれたおかげだから」
父さんはフッと笑い、俺の頭を誇らしそうに撫でた。
「だが、命を懸けて頑張ったのは事実だ。奉献の巫女様も感心しておられた」
「何と! 奉献の巫女様がか!」
その言葉に母さんが驚きと喜びの入り混じった声を上げる。
「奉献の巫女様に?」
「今回の件はあの方から直々に依頼されたものだからな」
俺の問いに破顔して答える父さん。
奉献の巫女様はこの国の中枢を担う人物と聞く。相当名誉なことなのだろう。
「ただ、奉献の巫女様は以前セト達が襲われたことも鑑み、お前の名が広まると同じことが起こるではないかと懸念しておられる。公的にお前の手柄とはならないかもしれない」
「……それは別にいいよ。さっきも言ったけど、俺一人じゃ無理だった話だから」
実際、奉献の巫女様の言い分は正しいと思う。
名が知れれば、救世の転生者であることを疑われる可能性が高くなる。
「関連して、真性少女契約を既に結んだ子供が学園に入るのは双方にとって危険かもしれない。それ以前に学園そのものが役不足かもしれないとも仰せだった」
「そ、そうか。ならば、やはり村を離れる必要などないのではないか?」
と、お偉いさんの言葉に後押しされたように、母さんが自分の主張を改めて口にする。
「それはイサクの意思次第だろう。学園だけが都市の全てじゃないからな。勿論、お前が心配するのは分かるが……」
「む、むう」
母さんの本心としてはアロン兄さんのことがあって傍に置いておきたいのだろうが、それでも子供の意思を完全に無視する程非情にはなれないようで押し黙ってしまう。
いずれにせよ、大事に思われていることは感じられる。
「……俺は、学園に行くより兄さんやフェリトのお姉さんを探したい」
それでも、だからこそ自分の意思を示すことが互いのためになるだろう。
そう考えて口を開く。
「イサク……」
対して母さんは複雑な表情を浮かべた。
そう言ってくれるのは嬉しいが、無茶はして欲しくないという感じか。
少しの間、沈黙が場を支配する。
「お前の気持ちは分かった。しかしな」
やがて瞑目して考え込んでいた父さんが目を見開き、真剣な声色と共に口も開いた。
「お前が探偵の真似ごとをする必要はない。餅は餅屋だ。探知系に特化した複合発露を持つ少女征服者に任せるべきだ」
探知に特化しているロリコンとか危険なワードのような気がしてならないが、真面目な話の最中なのでスルーしておく。
「けど、父さん――」
「お前やお前と契約した彼女達の複合発露は斥候向きでもない。例えば、今回の彼女のような状況に突然遭遇して対処できるか?」
「それは……」
確かにあの状況。
超高速移動が可能な複合発露〈擬光転移〉と凍結に耐え得る力を持つ真・複合発露〈火炎巨竜転身〉を兼ね備えた父さんでもなければ退却すら不可能だったに違いない。
「勿論、あの子と真性少女契約を結んだ今、基本的な攻撃力は俺よりも上だろう。少女征服者全体から見ても、間違いなく総合的に上位の力はある。しかし、複合発露の戦いは素直に強ければ確実に勝てるという訳じゃない」
特異な能力。完全な初見殺し。
そんな少女化魔物と突発的に遭遇することも十分考えられる訳だ。
「でも、俺は父さんと母さんの役に立ちたいし、フェリトのお姉さんを助けたいんだ」
「……分かってるさ。けどな。表立って動くことだけがその方法じゃないぞ」
「イサクよ。妾とて感情だけで村を出て欲しくない訳ではない」
そこへ横から母さんが言葉を挟む。
「サユキを得たお前が村にいてセトを守ってくれれば、父も妾も動き易くなる。お前の兄やフェリトの姉の情報を得た時に即応し易くなるじゃろう」
「強行偵察や威力偵察も、今のところはイサクよりも俺の方が適しているからな」
第六位階上位の身体強化と第五位階の高速移動。
この二つがあれば、大抵の危機から抜け出すことができるだろう。
それこそフェリトの姉であるセレスさんと遭遇し、その暴走・複合発露の影響を受けて祈念魔法が使えないような状況に陥っても。
「勿論、お前の力が必要となったら、遠慮なく頼らせて貰う」
父さんはそれまでの厳しい表情を少しだけ崩しつつも真摯な口調で告げる。
その場凌ぎで言っている訳ではないと分かる。
適材適所。
失敗は死にも繋がりかねない物騒な世界だ。そうすべきなのは確かだろう。
それでも今一割り切れずにいると――。
「イサク様はこれまで力の扱いを学んできましたが、実際に複合発露を持つ敵と戦うにはまだまだ不十分です」
それまで黙って話の推移を見守っていたイリュファが口を開いた。
「これからはこの世界に存在する数多の少女化魔物、その複合発露がどのようなものかを中心に学んでいくべきでしょう。将来のためにも」
「つまり、イリュファは学園に行くべきって言いたいのか?」
「いいえ。学園のカリキュラムに従っていては得られる情報量が不十分となってしまいます。この村で、私がお教え致します」
村を離れず、セト達を見守りながら、か。
未だ、救世の転生者が相対すべき人形化魔物ガラテアの行動は散発的。
まだ表立って動くべき時ではないのかもしれない。
少女征服者による救済を望まない人間至上主義組織スプレマシーなどというものもあるし、目をつけられることでデメリットはあってもメリットはない。
「分かった。……父さん、母さん。俺はとりあえず村に残るよ。それでセト達を守りながら、自分も強くなれるように努力する」
諸々を考慮に入れてそう結論する。と、それを聞いた母さんがちょっと嬉しそうな顔をして、しかし、すぐに表情を引き締めた。
その隣では父さんがそんな母さんの姿に苦笑していた。
「俺達の役に立ちたいというお前の気持ちは嬉しいし、仲間の身内を助けたいという気持ちも尊いものだ。しかし、何もかも一人でやろうとはしなくていい」
「その通りじゃ。これから先、大人になろうとも妾達を頼ってよいのじゃからな」
「うん。ありがとう、父さん、母さん」
こうして……俺は一先ず焦って都市に向かうようなことはせず、もうしばらくの間この村で皆と過ごすことに決めたのだった。
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