温冷

森近 名森

温冷





砂が風で流れていく。サーーーーーーーーーっという音が頭の中を反射する。1人の兵士がライフルを片手に昔は緑があふれたであろう荒野を歩き続ける。



時は少し前に遡る。少女は兵士になる前ただの16歳のあどけないただのブロンド色の髪をした子供であった。しかし、国は戦争中であり、両親は少女を育てる為に自分の食べ物を少女に与え、自分たちを二の次にした。たまに国が食料を増やしてくれるが、その増やしてくれた分ですら、少女に全て与えた。
 全ては愛する娘の為に
この念いだけが両親の支えであった。同時に少女も、ここまで自分を念ってくれる両親を大切に念っていた。
 ある時、少女は両親を念い、自ら兵隊に参加した。毎日の訓練は辛かったが、いつも両親のことを想い、頑張り続けることができた。

 そして、戦場に赴く日である。両手のライフルをギュッと抱きしめ、唇を少し強く噛んだ。これは訓練の繰り返しだ!自分にそう言い聞かせ、足を動かす。味方以外見つけた敵は全て殺せ!上官に言われたこの言葉を思い出す。故郷の両親を思い、歩いていたその足を更に速く動かす。ダダダっと兵士達が土を蹴る音以外まだ聞こえない。
 すると、1つの爆音が耳を突き抜ける。右のところにいた部隊は10数人ほどまるで風に飛ばされた紙屑のように吹っ飛ぶ。同時に少女の手が汗で滲む。少女は、周りとは別の場所へ走り、岩と味方を背にうずくまる。ライフルを今まで以上に強く抱きしめ、不規則に聞こえる爆音と銃撃をただずっと聞き続けるばかりである。
 しばらくすると、音は止んだ。少女は、ビクビクしながら、岩の陰からこっそり背にしていた場所を見る。そこには味方の姿はない。ただそこには銃などが落ちているばかりである。少女は、そこにゆっくりと近づこうとしたが、何かが焼き焦げたような臭いが、鼻をつんざき、途端に嘔吐してしまう。少女の顔は青くなり、両親が頭をよぎる。すると目から涙がこぼれ、今にもこの軍の誇りを脱ぎ捨てたい情けなさが少女を苦しめる。少女は、このまま帰れるわけもなく、岩など隠れれるところを転々として敵陣に近づいた。
 すると、後ろから人が近づいてきた、少女はすぐさま銃口をその者に突きつけ、聞いた。何者だ!と。その近づいた者は、ただの女であった、年は自分の母に近そうな感じで老けていた。少女は突きつけていた銃口を少し緩める。老いた者は言う。私は、あなたが敵だともう国の民です。と。少女は不思議に思った。何故わざわざ敵であると教えるのか、その羽織っている砂や風除けのローブには別に敵国の紋章などは入っておらず、敵か味方も分からないような様であったのだ。なのに、この老いた者は、自ら敵だと名乗ったのだ。その疑問は束の間、少女は見られた以上、この者を敵国に帰すわけにはいかなかった。門の近くにいるであろう兵士に自分の存在を伝えられ、自分がやられると言う恐怖感が少女を催促する。同時に少女の頭は。両親の顔が常に現れる。ライフルをずっと構えたままその手は震えている。目からは、止めどもなく涙が溢れ出る。すると、老いた者が何かを少女に呟くと、少女は、その引き金を引く。少女は、強く握りしめていたライフルを地面に落とし、その場に崩れ落ちる。
 しばらくすると、敵兵が転げ落ちている死体に気づき、近づく。そこには、少女の姿は既になかったようだ。



少女は、荒れ果てた地を歩き続け、何を思うか、その瞳には両親はいない。ブロンドの髪は紅く、黒く染まっていた。目は元は青色であったが、澄んではおらず、虚無である。


やがて少女は、敵国に捕まった。どんな仕打ちを受けたかは知らない。やがて、処刑の日が来て、少女は処刑場へ向かう。少女は、最後の言葉を聞かれた。
 「ありがとう。」
少女は、そう言うと処刑を執行された。倒れるその場には冷たい死体、しとりと地に溢れる暖かい滴があった。



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