真っ黒マントのうさぎさん

石ノ森 槐

第2話

結局私の熱意が勝ったというか押し通したおかげで、みゆきは頷いてくれた。
そして、あの話から1週間くらい経った今日。
私たちは平日を丸っとサボって龍央の家が見える路地に来ていた。

「莢菜…もし何かあったらすぐに大きな声出すんだよ?」
「心配し過ぎだって。」

みゆきは最後まで私の行動を止めたいみたい。でも、私の気持ちはもう変わらない。あいつのためにもここで引き留められているわけにはいかないの。
すると、サトが私の顔を覗き込んだ。
「莢菜…分かってあげて。みゆきだって、それに私だって怖いところに行くって言ってるの止めたいのは一緒。」

「…うん。ありがとう、二人とも…止めないでくれて。」
なんだかんだ言ってもみゆきもサトも私のが決めたことにあまりいい顔はしなかったけど信じてここまでついてきてくれた。それだけでも、私はもう辛いことはないよ。

「それじゃ、何かあったらすぐに何かアピるんだよ?」
「分かった。」
私が改めてもう一度深呼吸をした時、サトが私の髪にピンを一本差し込んだ。

「…サト?」
「これ…私とおそろいなの。みゆきも…はい。これで私たちは一緒。お守りみたいなものなんだけど…ね。」

サトはそう言いながらみゆきの髪にも差し込んだ。

「ありがと…。」
サトとみゆきに思いっきり笑顔を向けてから、私は歯を食いしばってひとり龍央の家…【龍道会】の扉をノックした。
このご時世…普通インターフォンの一つもあると思うんだけど…。遅れてるというか…なんというか…。

なんて扉を睨み付けて心の中で文句を言っていたら、木で出来た両開きの扉の右側が開いた。
そこには、こないだの文化祭で来たお客…あの紋付き袴の男の人の横にいたスーツの男が私と目を合わせた。

「何か御用ですか。」
「」

やばい…何言うか決めてた言葉すっ飛んだ…。
頭の中…真っ白…。

でも何か言わないと…余計に怪しまれるよね…?
私は微かに息を整えて、出るまんまの言葉をぶつけた。

「“うさぎ”はいます…か?」
スチャッ

やらかした…やばたん…やばたにえん。なんて気が付いたときには私の額には黒い銃が押し当てられていた。

「なぜその名を口にする?貴様…何者だ。」
「…普通の高校生にこれは見たとこ悪くないですか?」

私は目で銃を指して銃越しに男を睨みつけた。
すると、男は不機嫌そうに眉間にしわを寄せると、口元だけ笑った。

「…入れ。」
「」
男の言葉に、私は短く息を吐きながら一歩目を踏み入れた。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品