真っ黒マントのうさぎさん

石ノ森 槐

第1話 

「おは~。」
「あ、さやおはよう!」
「化粧のノリ悪すぎだったわ。」
「それな。」

あ、みんなにまだ自己紹介しないまま学校来ちゃってた笑。

私、中村莢菜なかむらさやなは、姫西高校2年の女子高生ってやつで~す。
え?化粧なんて校則ゆるい?校則なんて守るわけないじゃ~ん。

だってこれでも女子高生なんだよ?
お化粧しても浮いてこないぴちぴちしたお肌なんだよ?

こんなラッキーな時に化粧しないなんて学校のおばさん先生たちまじかわいそすだよね。

「あ、あの、中村さんたち。お化粧はしないできた方がいいです。」
あ、今日も来た。こいつは私のクラスのルーム長、燈湖龍央ひうみたつひさ
漢字むずいっての。

こいつは、自分からルーム長になるなんて言って、私たちに毎日文句を言ってくる。

「はぁあ?」
「何、キモおう。」
最初に声を出したのが、みゆき。その隣がさと。
二人とも、高校からのずっ友なんだよね。

「お化粧は、校則でダメって言われてます。」
「は?なにこうそくって。キモおのくせに生意気言ってんなよ。」
「違くね?キモ『おう』じゃね?」

「あ、そうだったわ。さや天才!!」
私らが楽しくだべってたら、キモおうはいつの間にか席についていた。

こいつっていつもこんなで、なんかまじでムカついてくるんだよね。
いつまでも言ってくるとかなくて、毎日1,2回注意してくるだけ。

ってこいつの事はもういいよね。
ずっ友な二人がいてくれて毎日ハッピー!!

・・・だったんだけど。


「え?バイト?」
「そ~。だから今日は一緒に帰れないの。マジごめん!!」

今日は、みゆきは放課後にすぐにバイトが入っちゃったらしい。
ってことは、今日はサトと二人ってことか。

それもまた楽しいからいいけどねッ!!
私はさとの方に向き直った…んだけど。

「実はうちも…」
「え~!さとも?」
「ねぇちゃん熱出してさ~。うちが帰って姪っ子の面倒見ないといけないの。」

そっか…だったら今日は私一人か。
「まじ私ボッチ決定じゃん!」
私が一人うなだれると、みゆきが私の背中をパシンとたたいた。

「った~!何よ~。」
「じゃさ、クラスのやつだれかナンパしちゃいなよ!!」
「え~、いや無理しょ。みゆきじゃあるまいし。」
「行けるって~。たとえば・・・キモおうとか。」

「ブフッ」
「いや、まじありえないしょ!!私にも選ぶ権利あるじゃん!」
「アイツは確かに…きついわ。」
「わかってて言うなし~。」

ひとしきり笑いながら、私は少しは一人で帰っても良いかな…なんて甘く考えていたんだ。

……………………………………………………………

そして放課後。
「じゃね~。」
「うん。今日本当にごめんね!!」
「大丈~。」

……とは言ったものの……。

私の通るところって……不良が山ほどいるって有名なんだよね……。
実際いつもいるし。

「一人で帰るのは嫌だけど……、他いないし……。」
「……あの。」

私が振り返った先には、
「何、たつおう。」
「……大橋の下は通らないほうが……。」
「大橋?」
「青くて大きな橋です。」

あぁ、私の通る所か……。って
「あんたに言われなくても分かってる。」
「そうですか……。」

こいつは納得したのか、下を向いてトボトボとクラスを出て行った。
……何あれ……。

いつもあんなこと言ってきたことなんかなかったのに……。

私は帰る準備を済ませて学校を出た。

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