Recollection~SとМを間違えたら~

石ノ森 槐

言い争い

「だから、それだと利益が上がらないっているじゃないですか!!」

「薄利多売でも、それですこしでもここのリピーターが増えたらいいじゃないですか!!」

「それだとブランドが下がるって何回も言って「だからそれだと新規がこないって言ってんですよ!!」

「グルルル…」
「はぁ、はぁ…。」


「「とりあえず二人とも落ちつこうッ!!」」

「「だってそっちがッ!!」」

「お前の気持ちはわかったからまず落ち着け。冷静に進めなきゃダメだろ」

「そうよ。喧嘩腰じゃ何も進まないわ。」


なんでこんな言い争うようなことになったかというと…


………………………………………


「ではこれから『野菜大好き!!ビスケット』の企画会議を始めます。」

名刺の交換を済ませてからすぐに会議は始まった。
司会は坂井が担当になっていたのか、ペラペラと概要を説明する。

「では、営業部部長からお願いします。」

「…はい。」
おわっ…先にこっちかよ…。
俺は慌ててマウスに手をかけた。

トン…
「落ち着いてクリックすればいいからな。」
「…はい…。」

俺の緊張が伝わっていたのか、矢間根さんは俺の肩に手を置いてそっと囁いた。

よかった…少しはこれで落ち着けそうだ…。

俺はやっと顔を上げることができた…んだけど…ッ

な、なんか…坂井に睨まれてるのですがッ!!!!

…というか、俺というより…矢間根さんを睨んでる…?

…ん?why!?

矢間根さんは気がつかないのか、さっさと話を進めていってる…視線とか感じないのかな…。

「我々が考えるコンセプトは、『高級ブランド化』です。」

カチッ

「子供の好き嫌いが学力に影響を及ぼしています。」

カチッ…カチッ

「そこでLEDの光による苦味や臭みといった嫌いになる原因を排除した野菜を使い、おいしいビスケットにすることを考えています。」

カチッ…カチッ

「価格は、他社に比べ少し高くなりますが、人気効果や宣伝により売れ行きは好調になるでしょう。……以上です。」

カチッ…カチッ…カチッ

ガタンッ
発表が終わって、矢間根さんは座って『フゥ…』と息を吐いた。

…矢間根さんも緊張してたのかな…。
「大丈夫ですか…?」

「ん?…あぁ。」

珍しく矢間根さんが疲れて見える…話終わってからペットボトルのお茶が一気に半分終わった。

「チッ…では、次は□□会社 チーム長矢間根さん、お願いします。」

…ん!?今、舌打ちが聞こえたような…。
恐る恐る顔を向けると…ッ!!??

なんで坂井が怒ってらっしゃるのかしらァ~ッ!!!!????←誰やねん…。

俺は慌てて目を伏せた。

「私たちのコンセプトは『安心・安価』です。」
「野菜を多く、かつ安全に手に入れるために、農家の方の顔と名前を商品WEBに示し、規格外の野菜を仕入れます。」
「苦味や臭みは、無添加の調味料を使用し、より親御さん達の手に取りやすい商品を考えています。…プレゼンは以上です。」

…これの方がいい企画な気が…。ッてダメダメ!!!!俺は、このプレゼンを通さないとッ!!

「ありがとうございました。…では質疑応答に移ります。」

ビクッ…
この"質疑応答"は俺が任さえた大仕事だッ!!
俺は1人鼻息を荒くした。

「では僕から…。」
はじめに手を挙げたのは坂井だった。

「はい…っ。」
「ブランドを高級化する必要性はあるんですか?」

ギクッ…一番来て欲しくなかった質問だ…。
…落ち着いて…資料を見ながら言えばッ
「あなたの意見を…企画としてではなく、あなたの考えを述べてください。」

…ジーザス……ッ。

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