最強職は勇者?いいえ、武器職人です

てるてる

1章 王国編 9話 死者の狂宴

気づくと、檻の中にいた。

おそらく札幌ドームの半分位の大きさだ。

地面は赤褐色の土が敷かれている。

上下左右、どこにも抜け出せそうな場所はない。

「ここは、死の狂宴場」

そこに、低い、聴く者に恐怖を植え付ける声が
響いた。

「貴様らにもう一度現世へで生活できるようになるチャンスを与えよう。」

言われて、気づいた。この檻の中に俺以外の
人がいることに。

周りの人々は訝しげな顔で聞き耳をたてている。

少しの間を置いたあと、声の主は
彼ら、いや、俺達に絶望を振り落とした。

「貴様らで殺し合いをしろ。最後にその中で
立っていた者が私と勝負し、私を負かせれば
その者は現世で生き返る。」

みな、唖然とした。

生き返れるのは一人ということに。

生き返るために、他者を殺さなければならないことに。


檻の中に静かな、それでいてピリついた
空気が突然発生する。

不意に、視界の端で血飛沫が舞った。

視線を向ける。そこには、首から上のない体と、

何かを振り抜いた体勢で静止している男がいた。

それを皮切りに、

黒い鉄棒で囲まれた赤暗い閉鎖空間は──






阿鼻叫喚の地獄と化す。

子供の喚く声、男の悲痛な声、女の甲高い叫び声。

地面は瞬く間に粘性を持つ赤い液体に満たされ、

上空を色鮮やかな魔力の塊が覆い尽くす。

狂気に満ちた顔で他者を嬲るもの。

他者との交渉を試みるもの。

人間の生への執念が垣間見得る。

「さあ、戦え、戦って戦って勝ち残れ!」

狂的な響きを伴って声が上空から降り注ぐ。

俺は、その状況を見て、恐怖した。

しかし、それ以上に思ったことがあった。

『醜い』

人の生への執着。これほど見るに堪えないものは
なかった。

一人傍観していると一人の女性が倒れ込んできた。

できるだけ衝撃を受けぬよう優しく受け止めた。

先程から争ってるのは男たちだけだった。

もっと言うなら女達は襲われていた。

だから、女子供は守っておこう。

その考えは

甘かった。受け止めた女が突然こちらの首筋を
目掛け飛びかかってきた。

俺は驚きつつも
即座に女の横っ面に掌底を叩き込む。

女の胸倉を左手で掴み、足を掛け、仰向けに倒す。

と同時、跳躍、

膝を女の喉元に落し入れる。

断末魔をあげることさえできず、女は絶命する。

この空間でのスキル使用は可能。

先程までのはスキルによる殺し合いだった。

スキルの使用にはMPが必須となる。

要するに、さっきのは回数制限のある殺人。

だが、ここに、異なるものが現れた。

スキルを使わず、無手にて敵を屠るものが。

もう一度言おう。スキル発動にはMPが必須であり、

MPが切れたものは純粋に殴る、蹴るしかない。

しかしそこに、ただの体術で軽々と人を殺すもの
が出てきたらどうだ?

切れるはずのMPはなく、体力の続く限り
殺戮を行えるものが出たとしたらどうだ?

答えは...2択。

集団で囲い、そのものを最優先に殺す。

己の死を受け入れ、抵抗をやめる。



俺は、ゆっくりとその場を立ち上がり、

周囲を睥睨した。

争っている者はなく、全員の意識が俺に、
正確には俺と俺が殺した女に向いていた。

つまり、全員の選択は後者。

そう、判断した時、突如、光が爆ぜる。

ドサッドサッ

背後で重いものが倒れる音が連続してなる。

振り返ると、さっきまで争いあっていた者達が

倒れ、無数の粒子となって消えていっていた。

きっかり20秒後。檻の中には俺以外いなくなった。

何が起きたのかわからなかった...

わかりたくなかった...

また、1人になるのは嫌だった..しかも

集団が突然いなくなる...そんなのはもう・・体験
したくなかった。




俺以外の存在が消えた檻の中に、

音もなくそれ・・は入ってきた。

全身を黒い布のようなもので覆い、

右手に血を滴らせる黒い大鎌。

左手には緑黄色に光る球、真っ赤に発光する球、
毒々しく光る球が浮遊していた。

本来顔があるはずの場所には黒い靄がかかっている。

「余興はたのしんでもらえたかな?」

頬が強ばるのを感じる。

「お、お前は誰だ」

声が上擦る。今までに感じたことの無いプレッシャーを目の前の黒ずくめの敵対者から感じる。

「我は...死神だ。この世界の死を司っている。
さあ、生か死か。我と戦い、運命の2択を決めろ。」


落ち着け。集中しろ。

あまりに突飛的な宣戦布告。

深呼吸を繰り返し、死神に向か───

「─ッ!」

声にならない声をあげ、防衛本能全開で後ろに
吹っ飛ぶ。

直後、俺が立っていた空間が切り裂かれた。




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