最強職は勇者?いいえ、武器職人です

てるてる

1章 王国編 4話 戦闘訓練と異変

 翌朝、意識を微睡みの中から引き起こしながら、
身長164cmの体を柔らかい感触の外へ押し出す。

ゴンッ

「っつ」

 ベッドから落ちて頭をぶつけた..か。

 まだ冴えきらない頭で今の音の原因を考えていると

「大和、早くしねえと朝食に間に合わねえぞ」

近藤の声で昨日のことを思い出す。

「あ、そうか。俺ら異世界に来て、」

「さっさと着替えてくれ。飯を食いに行きたい」

「ごめん、わかった。」

 そうか、ベッドで寝てたからいつもの感覚で
出ようとしたら落ちたのか。

そういや、昨日王女様がルームメイトは
一蓮托生のパートナーだからなるべく共に
行動しろって言ってたな。

 そんなことをぼんやりと考えながら学ランに
着替える。服、これしかないからね。

「よし、んじゃ行こうぜ」

「ああ」

そういって部屋を出て1階の食堂で洋食とも
言い難い料理(美味かった)を食べ、20分休憩を
とって訓練場へと足を踏み入れた。

 乾いた砂。半球状の形で上空を覆う謎の膜。

 右手側には宿舎と思われる少し古びた建物。

 これ以外にこの訓練場には何もない。

 他は訓練中の騎士団と勇者様御一行だけだ。

 明良の所へ行くと丁度、

「全員来たな」

という凛としたが聞こえた。咄嗟に振り向くと

魅入ってしまう様な赤髪と
パッチリと開いた真紅の瞳を持った
女性が立っていた。

「王国近衛騎士団団長エリティアだ。
今日からお前達の戦闘訓練を担当する。」

「あ、よろしくお願いします」

みんなで一斉に礼をする。

「うむ、まず近接職、魔法職に別れてくれ」

と、指示がとんだ。え、生産職はわけないの?
疑問に思ったから聞いてみる。

「すいません、生産職なのですがどうしたら
いいですか?」

団長さんは訝しげな顔をして、

「生産職は1人もいないと報告を受けているが?」

「え、いや、俺は生産職、武器職人ですよ」

「ステータスプレートを見せてみろ」

 仕方ないので見せる。騎士団長が唸っている。

「今回は近接職の方で訓練してくれ
今日、リリナ姫に聞いてみよう。」

 あ、今日はもう諦めて訓練に参加しろと...
 
 まあ、いいか自衛の手段はあっても悪いわけでは
ない。

「よし、魔法職。宮廷内の宮廷魔道士長を
呼んでいる、そいつに訓練をつけてもらえ」

「近接職、あの宿舎から武器をもってこい」

 と、次の指示。

 みんなは大喜びで宿舎へ飛び込んで行った。

 俺もそれについて行く。

 宿舎の中の武器庫に着いた時、異変が起こった。

まず、頭が割れるような頭痛が到来、
その後、記憶がごちゃ混ぜにされるような感覚。

嘔吐感が込み上げ、視界が霞む。倒れまい、
吐くまいと意識をギリギリ保ち、
壁に吊るされていた木剣をとる。

 直後、自分の体に異物が入る。床に倒れ込み、
盛大に暴れる。気絶すらも許してくれない激痛が、
虫が体の中を這いずり回るような不快感が、

「か..はっ」

声と同時に出ていく。周囲へ目を向けると
嫌悪を抱いた目でみんながこちらを見ていた。
俺は真っ赤に染まった視界でみんなを見据え、
右手に木剣を持ち、立ち上がる。
そして──



「よし、戻ってきたな。今日は私と
1体1の模擬戦をしてもらう。スキルは使用不可、
純粋なお前達の能力を知りたい。」

と、言うと、拳聖の職を得た剛が

「スキルを使わねえ模擬戦で俺らのこの世界での
実力がはかれるか!」

と言うと、他のクラスメイトも剛に続き
騎士団長に不満をぶつけ始める。

 顔に青筋を作った騎士団長様が帯剣している剣の
鞘に手をのばし、抜剣する─


直前、我らが勇者暁 明良登場。

「みんな確かに僕達はこの世界で最強の力を得た。
でも、これから戦うのは"軍"だよ?個々の力が
戦争に与えることが出来る影響なんて
微々たるものだ。もしかしたら僕達には一人で
戦況をひっくり返す力があるかもしれない。
でも、それは力を十二分に使えなければ
意味がない。どんなに強大な力を持とうとも、基はただの高校生なんだよ?
だから今は基礎を学び、体力、知力、連携、
様々な能力を鍛え、
この力にあった使い手にならなきゃならない。
嫌なことから目を背けて強くなることなんて出来ない。だから、今は魔王軍との戦争になるまでの
間は、エリティアさんの指示に従って行動しよう」

んー言ってることは正しいけど、

そんな言葉でこいつらが簡単に納得するかな?

....後ろから納得の声...

 まあまとまったからいっか。

 で、騎士団長様と1体1なんだけど、酷いもんだな。

 一応剣道部とか空手部いるはずなのに
みんな簡単にやられてく。しかも騎士団長、
汗かいてねえんだぜ?もうね、化け物確定。

 と、そんなこと考えてたらいつの間にか俺の番。

 騎士団長と、一直線の位置に立ち、視界の中心
に定める。そのまま互いに睨みあう。

 ん?なんかおかしい。上手く説明出来ないが
何か自分の体の奥から熱が出てくるような
感じがする。

「どうした、早くかかってこい。」

なんだろう。(この武器じゃない)頭に音が流れる。

 (槍を創れ俺の真価は槍でこそ発揮される)

 音に促されるまま、本能の向くまま、スキル発動。淡い緑黄色に包まれた木製の両手剣が
1m70cm程度の槍の形に変わっていく。

 (じゃあ、いっちょやるか)

 相手の瞬きの瞬間銀髪・・をたなびかせ、

懐へと潜り込む、そして、槍技『螺旋』を発動。

 左腕の肉を軽く削ぐ。

「グッ!」

鳩尾を中心に全身に衝撃が走り、吹き飛ぶ。

「く、貴様、武器職人ではなかったのか!」

 『敵』が何か言っているがどうでもいい。

とにかく、『敵』を屠る。片手で握っていた槍を
両手で持ち直す。そして、歩く。

距離1m。止まる。紅の瞳と銀の瞳・・・が交錯する。

 赤の髪と武器を型どる木が交差する。

 直後、訓練場の内壁から轟音が鳴り響く。

 その音を響かせた張本人は、

「今日の訓練は終わりだ。各自解散!」

 そう言って王宮へ姿を消した。

 後に残ったのは今の結果に呆然とする近接職の
人間と、左腕を有り得ない方向に曲げ、
顔中の穴という穴から血を垂れ流して倒れ伏す
少し小柄な黒髪の男子だけだった。

彼は宮廷魔道士が駆けつけ、
治癒魔法を使わなければ
脳の損傷が原因で植物人間、下手をすれば
死んでいたような状態だった。





その日の夜、王女の部屋でとある密談が行われた。
内容は──





『早急的異分子の排除』







異世界生活2日目の夜が終わる。
太陽が夜の幕を開け、朝の到来をその身をもって
知らせてくる。
地獄の日々が始まる

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