1分の時があれば

TOMO_music

悲しみの図書室

向かっていると少しずつ小走りになっていく。なぜ、あいつは、なぜ、なぜ。息が荒くなっていくのがわかる。図書室に着き、息を少し整えてから、一応ドアをノックして入る。そこにはすずの姿があった。すずはビックリしたような、悲しんだような、無感情なような言葉に表せられないような顔をした。
「なんで、来たの。」
その声は悲しみの湖に溺れたミミズような声だった。僕はすぐに話し出す。
「なんでって、すずが心配だからだよ。」
「どうせ心配なんてしてないくせに。」
「なんで、そんなこと言うんだよ。」
「私の何がわかるの?」
すずの言葉は止まらなかった。
「私は、今まで色々な事を考えて、行動してきた。でも、何も報われなかった。神様は私を見捨てた。」
「そんなこと言うなよ。悪い事ばかりじゃないだろ?」
「確かに、悪い事ばかりじゃないよ。でも、良い事と、悪い事の比率がおかしすぎる。毎日、毎日、平凡に過ごせる亮はいいよね。特に、悩みもないでしょ?」
確かに平凡に暮らしているし、悩みも特にない。僕は言い返す事が出来なかった。
「出て行って。」
声の大きさは大きいと言えないが、すずは確かに言った。僕に、出て行ってほしいと。僕は、その言葉の通りにすることしか出来なかった。僕は、何も言わずに図書館を出ることにした。廊下を歩いていると、僕の様子が気になったのか、結実が立っていた。そして、いつになく不機嫌だ。
「どうしたの?」
と聞くと、結実はため息をつきながら、大きな声で、
「あんた、馬鹿じゃないの!」
周りの空気はより一層凍り付いた。今までに感じたことが無いような雰囲気だった。
「すずちゃんは、どんなに一人で抱え込んでると思ってんの!そんな、話を亮が聞かなくてどうする!」
「それなら、結実が話せばいいだろ!」
その声が廊下中に響き渡った。自分でもこんなに声が出るのものかと、びっくりした。そして少しの沈黙があった。
「わかったよ、亮君には失望したよ。」
「そうしてくれ。」

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