異世界バトスポッ!

冬野氷景

にじゅうよんたまっ!



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それから私達はお店の中を見て回ったよ!
凄かった!この世界には予想以上に球技の数が多かった!
そのほとんどが物騒なものだったけど…たぶん球技の数に限っていえば地球よりも多かったよ。
公式化されてない球技を含めると100以上もあった!
ボールの種類も90以上あるんだって!
うふふ、楽園だねぇ。いつか全部の球に埋もれて暮らしてみたいなぁ。
でもお店では私が暴走するからってミュリお姉さんが各球技の球を見せてくれなかったよ!ひどい!
でもいいんだ。
その子達とはいつかフィールドで語り合うから。
今は灰ボールさんをお家まで無事に持って帰らないとね!


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<王立図書館>


お店を出てから数分歩いたところには凄く大きな図書館があったよ!
何より感動したのは…この図書館…丸いんだよ!!
でっかいボールみたいな図書館で油断するとコロコロ転がっていっちゃいそうだよ!
うふふ、飽きさせてくれないなぁこの街!さすがボールアイって名前なだけはあるよ!
この図書館球欲しい!って言ったらミュリお姉さんとニャンちゃんに呆れた目で見られたよ…ひどいよ…。
私は図書館に入って地球とか異世界召喚の事について調べたよ!


「うーん……ダメね…地球なんて文字はどこにも出てこないわ…」


ミュリお姉さんは凄い速さで片っ端から本を漁って速読していたよ!
一時間もしないうちに百冊くらい読んでた!
凄いなぁ…それに申し訳ないなぁ…。


こっちに来て今まであまり気にしてなかったけど…異世界なのに言葉は日本語で通じるんだよね。
でも文字はさすがに違うみたいで本を開いたらまるで象形文字みたいなのがずらっと並んでて目眩起こしちゃったの!
だからミュリお姉さんに地球の事調べてもらってて…私はと言うとニャンちゃんにこの世界の文字を教えてもらってるんだ!
凄く頭痛いし眠いけど……


「にゃ~…ウチも勉強は嫌いなんだにゃ~…」
「ニャンコは文字を教えてるだけでしょう……うーん、もっと古い文献じゃないとダメなのかしら…こことは違う世界はいくつかあるみたいだけど…地球…アース………ないわね……それともアプローチを変えて召喚録を辿っていけば………」


みんなが私のためにやってくれてるんだもん!
私も頑張らなきゃ!


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<ヴェルクスフェザールーク城客室>


~夜~


図書館で地球の情報が何も出てこなかったから私達はお城に帰ってきたよ!
部屋にいたらお仕事を終えたミーちゃんとフウちゃんも帰ってきた!
私達は今日あった事をお話ししたよ!


「情報は何もありませんでしたか…ごめんなさい、わたしの方も何も……」
「私もだ、秘蔵文書を盗み見てみたが何も出てこなかった」


さらっとフウちゃんがとんでもない事言ったけど大丈夫なのかな?


「ごめんなさい、おたまさん」
「ううん、こちらこそだよ!お仕事で疲れてるのにごめんね…」
「とんでもありません、明日もまた色々聞いてみますね」


「それにしてもおたまにそんな才能があったとはな」
「ええ、ボールの扱いなら球技選手の中でもきっと上位に入るわよ。氷球の重い球とかそういう球じゃなければね」


氷球ちゃんもいつか軽々と遊べるようになればなぁ…
15kgもあるからいっぱい筋肉つけてムキムキになればもしかしたら手で持てるかもしれないよ!


「やめなさい、そんなおたま見たくないわ。……そうね、明日はあなたの『属性』を調べに行きましょうか。それに応じた魔法を修得できればどんな球でも扱えるかもしれないわ」


属性かぁ。
風とか氷だったらカッコいいよね!
でも回復とか防御とかもいいなぁ…他にはどんな属性があるんだろう?
私も魔法を覚えられるのかな?


「にゃ~、明日はウチは行けないにゃ。ダンジョンに皆と潜ってくるにゃ」
「ダンジョン?」
「そうにゃ、ウチは冒険で生計を立ててるからにゃ。これでも『引き付けのニャンコ』って名で有名なんにゃよ」


ひきつけ(痙攣)を起こした猫ちゃん?
大変だよ!病院いかなきゃ!


「違うにゃ!魔物を引き付けて隙を作る役目の事にゃ!」
「なんだぁ…良かったぁ…って魔物って何だっけ?」
「ざっくり言うと…人を襲うモンスターの事にゃ、街の外には結構いるんにゃよ。そして未だに人が踏み入れられない領域に行って魔物を倒したり洞窟でお宝を見つけたりするのが冒険者だにゃ」
「楽しそうだね!でも危ないんじゃないの…?」
「まぁ危険は付き物にゃよ、でも無茶はしないにゃ。今はスポーツ選手でもあるからにゃ!」


「ええ、気を付けてね。本シーズンにあなたの力は必要不可欠なんだから」
「任せるにゃ!」
「じゃあ明日はあたしとおたまだけね。明日お城まで迎えに来るわね」
「では解散するか」


え!?皆どこか行っちゃうの?!


「それはそうよ、昨日はご厚意でお城に泊まらせてもらったけどあたしは選手専用の寮住まいだし…ニャンコは城下に住んでるしミィシャンは修道院だし……フウジンも自分の館があるしね。そんな何泊もさせてもらうわけにはいかないわ」


……そっかぁ…寂しいけど…しょうがないよね……。
みんな自分のお家があるし…お仕事もあるんだもんね…。


「そんな顔しないの、あなたはこれからどうするか考えなさい。養子の話もそんなに悪いとは思わないしね、少なくともそれで生活は安泰するもの。ただスポーツをしたいのならちゃんと交渉するのよ?」


うーん、そっかぁ。
ちゃんとお話しないといけないよね、頑張ってみるよ!


「もし放り出されたらウチのとこに来るといいにゃ、ボロいけどもう一人分くらいなら寝泊まりできるにゃよ」
「私の館でも構わん、街からかなり離れているがな」


みんな優しいなぁ…でもいつまでも甘えてるのもダメだよね!
私は私なりにこれからどうしたいのか考えないと!


「じゃあ、また明日ねおたま」


バタン


「…………………」


異世界に来てからずっとみんなといたから…今初めての一人の時だよ。
不安だけど…前に進まないと!
まずは地球にすぐに帰れなかった場合のお仕事の事と住む場所のこと考えなきゃ!
メイレーさんに頼んでお城で何かお仕事しながら住まわせてもらうことってできるかな?
でも私……お料理も洗濯もできないんだよね…掃除なら何とか!
まずはメイレーさんにお話してみなきゃ!恩返しをしないとね!


あとは…どのスポーツに専念するかだよね…これが一番難しい!
とりあえずどこかで色々なスポーツを体験させてもらえればいいんだけど…




ガシャァァァァァァァァァンッ!!


「わぁぁぁぁぁっ!?」


色々考えていたら急に窓が割れて何かが飛び込んできたよ!
なになに!?私はびっくりして尻餅をついたよ!


ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ……


割れた窓から室内へ風が循環して不気味な音を鳴らす。
飛び込んできたのは……あ!
昼間に会った黒いローブの女の子だった。
フードが風でめくれて、その顔が露わになった。


綺麗な薄い緑色の髪!エメラルドグリーンだよ!
それを耳の上で結んでツインテールにして……わぁっ!耳長い!
変わったお耳さんだよ!
なんか怒ってるように見えるのは…切れ長でつり目の印象のせいかな?
でも目大きくてとても美人さんだよ!


「ちっ、さすが王国兵士達…一筋縄じゃいかないわ。のんびりしてる余裕はないわね」


でも何しにここに?
……まさか!ボールさんを取り返しにきた!?
ダメだよ!渡せないよ!
私は急いで灰ボールさんを胸に抱き締めた。


「手荒にはしたくないけど…ここじゃゆっくり話せないわね…仕方ない」


ふわぁっ…


風に乗って何かいい香りが飛んできたよ!
ふわぁぁ……なんかすごく眠くなってきちゃった……よ……。


「…ふ、………わね………アンタ………は………試合………のよ」


眠くて声ももう聞こえない…。
閉じそうになる視界が最後にとらえたのは……何か……悲壮な決意をしたような……少し悲しそうなツインテールの子の顔だった。





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