異世界バトスポッ!
にじゅうさんたまっ!
ポーーンッ……
「あ」
舞い上げた灰ボールさんは頭に当たり、予想していた方向とは別の明後日の方向に飛んでいった。
「にゃあ!一回で失敗にゃ!」
「………」
あれれ、君はひねくれ者さんなのかな?
大丈夫、恥ずかしくないからね~、こっちだよっ!
スッ
ストンッ
「!」
「にゃ!?」
ちょっと驚いたけど…君を落としたりしないよ。
大丈夫だからね。
「変な方向に飛んでったのに…足を伸ばして…落ちる前にギリギリ足に乗せたにゃ!これはセーフにゃ!?」
「……ええ、地面にはついてないわよね」
「……そうよ、けどまだ一回よ。そこから軌道に戻せるかしら?」
黒いローブの女の子が私に問う。
そんなの…………簡単だよ!
私は斜めに伸ばした足を自分の方に寄せる。
足の甲に乗せたボールは素直についてきてくれた。
そっかぁ、触れていると素直になるんだねぇ。可愛いねぇ。
もっかい上げてみよっか?
ポーンッ
「あ」
足から上げたボールはまた明後日の方向に飛んでった。
「!……おかしいわ、今のボールの上げ方であんな方向に飛んでいくはずがない」
「にゃ、もしかしたら…ボールに魔法がかかってるにゃ!」
あれれ、君は凄く素直になれない子なんだね。
大丈夫、私は君を受け止めるよ。
ストンっ
私は飛んでいったボールが地面につくまえに距離を詰め、再び足の甲に乗せた。
「!!」
「にゃ!?あんな方向まで一瞬で……飛んでく方向がわかってたのかにゃ!?」
よしよし、それなら君に合わせるよ。
君の行きたい方向に私が行くから、それならずっと遊んでいられるね。
「やっ、とっ、えいっ」
トンっ、トンっ、トンっ、トンっ。
トントンっ、トントンっ、トントンっ。
トントントンっ、トントントンっ、トントントンっ。
「す、すごいにゃ!!ボールが……だんだん……おたまに吸い寄せられるみたいに…」
「……ええ、まるで…意思を持っているかのよう。ボールが生きているようだわ…」
トンっ、トンっ、トンっ、トンっ、トンっ。
うふふ、楽しいねぇ。
夢中で今何回か数えてなかったよ、ううん、何回でもいいよね。
いつまでも一緒にいるよ。
「やっ、とっ、んっ」
<すげぇ…何者だ?><誰だっていいよ!頑張れー!><あとちょっとだぞ!>
「おたま!あと二十回だにゃ!」
「頑張って!おたま!」
ワァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!
よしよし、終わったらぎゅってさせてね?
ずっと遊んでたいけど…ずっとは遊んでいられないんだ。
いつかまた遊ぼうね?
トンッ トンッ トンッ トンッ
<84!85!86!87!88..!>
周りから歓声とカウントが聞こえる。
もうそんなにいっちゃったのかぁ、少し名残惜しいなぁ。
トンッ トンッ トンッ
<90!..91っ!92っ!93っ!>
「にゃ!…94っ!…95っ!……96っ!…97………98…………99っ…………!」
「100っ!やったわねおたまっ!」
ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!
あれ?もう終わっちゃったのかな?
しょうがない、じゃあ最後は私の胸においで。
ギュッ
私は灰ボールさんを胸に乗せ両腕で包み込んだ。
よしよし…いい子だね~。
私のボールさんじゃないから…次いつ会えるかはわからないけど、また必ず会おうね。
「にゃは、やったにゃ~おたま!100万あれば色々買えるにゃよ!」
「そうね、これで当分困る事はないから大事に使いなさい。さぁ、賞金を………………………あれ?黒いローブの子は?」
………あれ?
辺りを見回すと黒いローブの女の子はいなくなってた。
お客さん達も探してくれたけど…どこか行っちゃったみたい。
「にゃーっ!!詐欺だにゃ!参加料だけ持ってかれたにゃ!」
「やっぱりね……店の知り合いに聞いてもそんなイベント知らないみたい……それどころかこの騒ぎにも気づかなかったって。恐らく幻惑系統の魔法を使われたんだわ」
そうなんだ、怖いなぁ…街の中で魔法なんか使われたらたまったものじゃないよ。
………ん?あれ?っていう事は……
「もしかして…このボールさん…貰っちゃっていいのかな!?」
「当然だにゃ、本当なら100万貰えるはずだったんにゃから。一万も払ってるしにゃ」
ぷるぷるぷるぷる…
「おたま?」
「やったぁぁーーーーーっ!!うふふ、君はもう私の子だねぇ。名前つけてあげようねー!うふふふ」
「!」ビクッ
異世界での初めての私のボールさんだよ!
もう君はずっと一緒だよ!地球にも持っていけるかな!?
ううん、必ず持っていくよ!
「にゃ………おたまが暴走しはじめたにゃ…」
「そのボールにかける情愛はどこから生まれるのかしら…」
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<城下町>
ワイワイ…ガヤガヤ…
スタスタスタスタ……ドンッ!
「痛っ、おい!どこ見て歩いてんだ!」
「うっさいわね!男なんだからアンタが避けなさいよ!」
「あぁん!?んだとこの……っ」
サァァァァァァァァァァッ…
幻惑魔法【誘の香】
「………あ……ま……………はぁぁ、すみませんでしたご主人様ぁ…」
「ふん、まったく…せっかくいい気分なのに台無しにしないで」
「……ふふっ…やっぱりあの子がアイノタマだったわ…ふふっ、アタシの魔法にかかったボールをものともしないとはね。アタシの目に狂いはなかったわ……必ず…試合に出場してもらうわ」
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