異世界バトスポッ!

司時 緋水銀

じゅうはちたまっ!



〈ボールアイ王国・ヴェルクスフェザールーク城「玉座の間」〉


「よく来てくれた、私が王国の現君主…リーフデウ・ヴェルクス・フェザールーク・フォン・クーゲルだ。非常に素晴らしい試合であったぞ、チーム…ボールアイの選手達よ」


名前長いっ!
一文字も覚えられなかったよ!?もう一度言ってほしいけど…そんな失礼な事できないなぁ…。
指さされて名前復唱してみろとか言われたらどうしよう…。


私達5人は今…ボールアイ王国の王様のお城にいる。
教科書とかで見た海外のお城って感じで大きくて凄く綺麗!
お城の中にはガチャガチャと音を立てて歩く鎧の兵士さんやメイド服姿の給士さんや侍女さんが沢山いて…本当に漫画で見るようなファンタジーな異世界なんだと改めて実感した。


「「「「はっ!有り難き御言葉!」」」」


バッ!
あわわ…みんなが片膝をついて王様にひれ伏す。
つられて私も片膝をついて作法にあやかった、ぅう…緊張するよ~。
みんなを見るとフウちゃん、ミュリお姉さんは慣れているといった感じで堂々としていた。
対象的にミーちゃんとニャンちゃんはどこかそわそわしていて落ち着かないといった感じ、二人もやっぱり緊張してるんだ。


王様が座る玉座は3つあって…そこには髭を蓄えたワイルドなおじさん…ナントカナントカ王様が中央に座ってる。
両脇には凄く綺麗な女の人と…さっきの王子様。
じゃああの綺麗な人は……………女王様?(※違います)


「かしこまらなくて良い、此度は私からの礼で来てもらったのだ。楽にしてくれ、大臣…あれを」
「はいはい……」


私達の隣にいたおばあちゃんがゆっくりと裏手から何かを運んでくる。
おばあちゃんは大臣さんだったんだね~……大臣って何する人かわからないけど!


「よいしょ…よいしょ…」


おばあちゃんがふらふらしながら何かを運んできた。
それは大きな宝箱、まるで海賊の船にでもあるかのようなやつ!
あんな大きい宝箱持って…おばあちゃん大丈夫なの!?


「うわぁー?」


ドタッ!ガチャンッ!


「おばあちゃんっ!?」


おばあちゃんがつまずいて転んじゃった!
大丈夫かな!?助けないと!


「何をやっている大臣!失礼のないようにと言ったはずだ!」


助け起こそうとすると王様がおばあちゃんに怒鳴った。
そんな言い方ってないよ!一生懸命運んでたのに!
そもそもおばあちゃんに重そうなもの運ばせちゃだめだよ!


「すみませんねーお嬢さんー大丈夫ですからー」
「失礼をしたお客人。手を貸さなくともよい、それは大臣の仕事だ」


玉座に座る3人は驚く程冷たい眼をして静観していた。
何で…?仕事だからとか王様だからとかお客さんだからとかよくわからないけど…何でおばあちゃんにそんな事するの?
おばあちゃんは大事にしなきゃいけないんだよ。


みんなの方を見ると…みんなも事態を静観していた。
もしかして……異世界、この世界ではこれが当たり前なの…?
みんなはこんなに酷い事を絶対黙って見過ごすような人じゃないのに……。
「おたま、言う通りにして」


ミュリお姉さんが静かな声で私に言う。
どうして!?助け起こすのもダメなの!?ミュリお姉さんはこんな事静観できる人じゃないのに!どうしちゃったの!?


………………ううん、そうじゃない。
私……そういえばみんなについて何も知らなかった…。
私はほんの数時間前にこの世界に来たばかりだった、みんなとはまだ出会って数時間でしかなかったんだ…。
一時的にチームの一員になって…一緒に試合をして…みんなで全てを懸けて…試合に勝つ事ができて……わかった気になってただけだ。
それでも…たった数時間でも…みんなは…信頼できる人達だって…思ってたのに…。
それは間違ってたの……?


「どうされましたお客人?楽にしていてくださいな……婆や、さっさと立ちなさい」


女王様が初めて言葉を発した。
恐くなるほどの冷たい声……さっきの試合の相手キャプテンさんの魔法よりも遥かに冷たい。


「はいー奥様ー」
「この場では王妃と呼びなさいな、何度も言っているはずよ」
「申し訳ありませんー」


おばあちゃんが針のむしろになる。
王子様も我関せずといった感じでどこ吹く風……イケメンなのは顔だけなんだね。


私はこれから先どうしたらいいのか……この人達に相談するつもりだった。
偉い人なら地球に帰る方法とかもわかるんじゃないかって。
……でもやめたよ、これがこの世界では当たり前なのかもしれない。
違う世界では価値観とか文化とか…当たり前に違うのかもしれない。
それに…心のどこかで…きっとこの国はいい国なんだって…この国の人達はいい人達なんだって勝手に思ってた。
でも違った。勝手な思い込みだったんだね……


ガシッ!


私はおばあちゃんを助け起こす。
これが正しいかどうかはわからない、でも…絶対に間違ってはいない!


「おばあちゃん、座ってて。私が運ぶから」
「…………」


「お客人、何をしている?「私が」手を貸さなくとも良いと言ったのだが?」


ビリビリビリビリビリビリッ……


王様から凄い威圧感が私に向けられた。
うん、凄く怖い……やっぱり王様になる人ってどこか違うんだなって思う。
手と足が震える、逆らったりしたらもうこの国にはいられないかもしれない。


でも、ただそれだけ。
私は……そんな事で自分の考えを変えたくない。


「うん、ごめんなさい。でもただのおじさんが何を言っても私にはどうでもいいから」
「「「おたまっ!?」」」


みんなが騒ぎ出す。
ごめんね、迷惑かけて……せっかく試合に勝ってご褒美とか貰えたかもしれないのに。


「…いくらお客人とは言え…言ってはならない言葉くらい弁えて然るべきでは?我が夫をただのおじさん呼ばわりとは…極刑にも値すると理解しておられますか?」
「うん、だって王様は部下とか民とかの事を一番に考えるでしょ?おばあちゃんに優しくしてない時点で私の中でもうただのおじさんだから、王様じゃないよ」


「おたまっ!!」


フウちゃんが私に掴みかかる、ごめんね?
でも……もう私はここにはいたくない。
だから……


「邪魔しないで」
「っ!?」


私はフウちゃんに精一杯の冷たい目を返す、ごめんね?
でもみんなもおばあちゃんにそんな目を向けたんだよ?


「ごめんなさい、ここにいるみんなは無関係ですから…罪になるなら私だけを牢にいれてください。それと…この件にもうおばあちゃんを巻き込まないでください、私が勝手にやった事ですから」


そう言って私は宝箱を持ち上げようとする。
みんなはこれを受けとる権利があるよ、でも…ただの助っ人の私にはない。


ぅう…勢いでとんでもない事言っちゃったかな~…でも後悔してないよ!正解はわからなくても…間違いではないから!
昔からこうなんだよ…頭にくる事があると絶対に自分の意見を変えない頑固なところがあるってお母さんによく言われてた…。
うーん…治すべきかな~…でも簡単には治らないんだよねー…ボールを愛する事を止められないように……




「よいしょっわわわわっ!!??」


ステーンッ……ドタッ!!コロンッ……………


宝箱を力いっぱい持ち上げようとしたら思いの外軽くて…勢いをつけすぎたせいで思い切りのけぞって転んじゃった!


「……………」
「「「「「…………」」」」」


やっちゃった……私…いつの間にこんな怪力になったんだろ…。
せっかく自分がやるって言ったのに…宝箱飛んでっちゃったよ…。
………あれ?宝箱開いてるけど…何も入って……ない?




「くっ……くくくっ……」
「ぷっ……」
「わははははははははっ!!なるほどなるほどっ!よーくわかった!流石お前が見初めただけの事はある!」


ドッ!!


みんなから一斉に笑われた。
酷いよ……そうやって失敗した人を笑う国なんだここは!


すっ……


「ごめんなさいねぇ…おたまちゃん。手…とれるかぃ?」


おばあちゃんから手を差し出される、ぅう…かっこ悪い…。
助けたつもりなのに助けられてるよ……私は羞恥心に苛まれながらもおばあちゃんの手をとった。


グッ!!


「うわわっ!?強いっ!?力強いっ!?」
「おお、よしよし。ごめんねぇ……騙しちゃって…今までのは全部演技なんだよ」


…………………え?
おばあちゃんは私を抱き寄せて私に言った。


「済まなかったなおたまちゃん。ちょっと確かめさせてもらったのさ…おたまちゃんがどんな人間であるかを」


おじさんは今までとは打って変わってフランクに私に謝罪した。
演技?今までのやりとりが?


「そうだにゃ、ここに来るまでの間に大臣さんに言われたのにゃ。一芝居打っておたまがどんな人物かを知りたいってにゃ」


私が?どうして?何のために?


「当然の疑問ですわね、リーベ。後は貴方自身で言いなさいな」


女王様が王子様を見て言った。
王子様はリーベっていうんだね、そうやって短い名前なら覚えられるよ。
そんなどうでもいい事を思っている私に王子様から言われた言葉は…異世界に来てから氷の球に出会った時くらいに衝撃的なものだった。




「あ、あいのたまっ!試合を見て…私は…君に惚れてしまったんだ!どうか…私の妻になってほしい!」




………………………………………………え?





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