一級警備員の俺が異世界に転生したら一流警備兵になったけどなんか色々勧誘されて鬱陶しい

冬野氷景

七十五.サビ残



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-警備兵イシハラナツイの洞窟警備4日目の出来事-


<冥邸洞ハーベスト地下50階>


「………なぁ、もう帰らないか?何か魔物の死体だらけだし……変な爆発に巻き込まれるし気味悪いぞここ……運良くそばに回復薬が入った宝箱があったから良かったけど……爆発で死ぬとこだったじゃんか……」


「駄目ですよ……まだ盗賊団【豚の砂】を確認できていません……リーダーと思わしき人物は……あの警備兵とやらが捕まえてましたけど…きちんと確認せねば」


「相変わらず真面目だねー、ルレリアは。あたしは飽きたから帰りたいよー」


「そうだよなミリー、もうすぐ57階だしさ……もういいだろ」


「しっ!静かにクレス!何か……足音がします」


タッタッタッタッタッタッ……


<おい!野郎共!アニキはいたか!?>
<いえ!姿が見えやせん!もっと地下じゃないっすか!?>
<絶対探しだせ!警備のアニキが俺達の(新)リーダーなんだ!>
<シュヴァルトハイムの王女様も一緒だ!見つけだすぞ!>


タッタッタッタッタッタッ…………


「………」
「………」


「あれは……盗賊団【豚の砂】……警備のアニキがリーダー?それに……シュヴァルトハイムの王女?!」


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-時は戻り現在-


<貧民区>


「初めまして、私はシュヴァルトハイム国第二王女【エメラルド・バルト・ルイム】であると感じます。皆さま宜しくお願い致しますと申しますと感じます」


訳のわからない言葉でエメラルドは全員に挨拶をした。
今この場にはムセン、シューズ、ウテン、ならず者達が5人ほどいる。
この小屋に。


「小屋じゃないなのよ!いきなり押し掛けてきて失礼にもほどがあるのよ!アタシの家なのよ!」


「久しぶりだなエミリ、息災だったか?」


「当たり前なのよ!10日ぶりくらいじゃないなのよ!それほど久しぶりじゃないなのよ!!」


そう、俺達は貧民区にあるエミリの家に来ていた。
理由はウテンが人目につかない場所に今のうちに移動した方がいいと言ったから。


どうやら俺には王女誘拐の嫌疑がかけられているらしい。
まったく誤解も甚だしい。


「とりあえずいー君、事情を説明して」


ウテンが俺に話を促す。
俺は現場で起きた事を説明した。


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<ウルベリオン城.『玉座の間』>


「陛下、マルグラフ候がお見えになったわよ」


「……うむ」


「一体何の話なの突然謁見したいなんて?諸侯会議では言い訳ばかりしていたくせに、どうしても魔物を突破させた事を取り繕いたいのかしら?もう話は済んだのに」


「ジャンヌ、例の噂については確認はとれたのか?」


「ダメね、噂に過ぎないし……意外とあの男抜け目がないわ。それにさすが軍事地区だけあって諜報部でも尻尾を掴むのは難しいかもね」


「……ふむ、引き続き探ってみてほしい。事実ならば……すぐに対処せねばなるまい」


「ええ、わかってるわ。じゃあお通しするわね」


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<再び、エミリの家>


「…イシハラさんのお話はわかりました。確かにイシハラさんに落ち度はありませんが……それでもこうなってしまった以上、もうやるしかないですよ」


「Why?」


「何ですかその発音!?ふざけてる場合じゃないですよ!今すぐ王女様をお城にお連れして誤解を解くべきです!!でないと……更なる誤解を生み出すだけです!ウテンさん、今はまだ公には発表されてないのですよね!?」


「そう、今は裏が取れるまで諜報部で話は止まってる。事情はわかった、ムセン・アイコムの言う通り。すぐに王女を連れて弁明させるべき。いー君は迷っていた王女を保護しただけ、今ならそれで話が通る」


まったく、何故そんな事しなきゃならないんだ。
とんでもないサービス残業だ、俺、サービス残業許さない。


「……………」


話の渦中にいるエメラルド王女は下を向き、暗い顔をしたまま動かない。


「とりあえずエメラルドちゃんだっけー?あなたもイシハラ君と一緒に謝ってきなよー。エメラルドちゃんが原因なんだしー」


シューズが遠慮なくエメラルドに言った。
仕方あるまい、警備協会かいしゃに行く前にちょっと王のところにでも行くか。


俺がエメラルドを引き連れていこうとすると、小さな声でエメラルドが話し出した。


「……………………嫌でございます、と私は強く感じます」


「……え?王女様……?今……何て?」


「私は……あの人の元に行くのは嫌なのです、と強く拒否します」


王女は小さな声で、それでもはっきりと力強く決意した顔で言った。


「………嫌と言われましても……どういう事ですか?何か……理由でもあるのですか?あの人とは……どなたの事を言っているのです?」


ムセンがエメラルドに言う。


「……………皆様、お話を聞いて……くださいますか?」


そして、王女は話し始めた。
面倒なので俺はいつも通り寝ながら話を聞く事にした。









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