一級警備員の俺が異世界に転生したら一流警備兵になったけどなんか色々勧誘されて鬱陶しい

冬野氷景

七十.警備兵、無双する



<ウルベリオン王国、キューピー山洞窟入口>


「ここが……危険度C級の盗賊団達の隠れ家……『冥邸洞ハーベスト』と呼ばれる洞窟か…」


「確認できている地下階層は現在…地下57階まで…その下は魑魅魍魎達の蔓延る階層で…『無大陸』に繋がっていると噂されています…魔物でさえ近づく事はできないとか…」


「何でもー古来から別世界の王、【冥王】が冥界との通用口に使ってたとか伝承では言われてるよー」


「そんな場所を隠れ家にするとはその盗賊団達も度胸があるというか何というか……一筋縄じゃいかなそうだな…」


「そうですね……しかし放っておけば近隣の町に被害が及ぶのは確実でしょう。ウルベリオン国にそんな蛮族を放置させておくわけにはいきません!」


「そーだねー、依頼されたし……アタシ達が盗賊団を倒しちゃおー」


「……そうだな!これが初仕事だ!盗賊団を蹴散らして俺達の名をあげるぞ!」




ズル…ズル…ズル……




「……?中から何か音がします!みんな!構えて!」




ズル…ズル…ピタッ




「ん?誰だお前ら?冒険者か?」




「な……人間!?あんたこそ誰だ!」
「こんな危険な場所で……一体何をされてるんですか!?」
「一般の人ー?盗賊団の一味には見えないしー……危ないから早く帰った方がいいよー?」


「俺は警備兵だ、依頼されて洞窟巡回警備をしてきたところだ。とりあえず冒険するなら地下57階以降には降りるなよ、化物だらけだ。面倒だから途中で帰ってきちゃった」


「け……警備兵…!?何言ってんだあんた…?」
「地下57階以降って……あなたは一体どこまで降りたというんですか?!」


「とりあえず興味本位で地下135階くらいまで巡回した。好奇心は猫をも殺すっていうのは本当だな。疲れた。俺、仕事だからって二度と頑張らない」


「……ち……地下135階!?…ほ…本当なら歴史的な所業ですよ!?う…嘘をつかないでください!」


「どうでもいい、途中の階層要所に回復薬とか宝箱とかしこたま置いといたから疲れたら使え。魔物は全滅させたから必要ないけど。そういえば途中偉そうな奴らが襲いかかってきたから倒して引きずってきたんだった。こいつ兵士に渡しといてくれ」


ポイッ、ドサッ!


「が……が……あがが…」ピクピク…


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冒険者ギルド新人一行はC級盗賊団の団長を捕らえた!
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「……」
「……」
「……」


「じゃ、お疲れ」


まったく、この世界の警備はどうなってるんだ。
いきなり新人警備兵に地下135階以上ある洞窟巡回警備なんてやらせるんじゃない、一人で。
しかも冒険者達のために宝箱とか置いてきてほしいって何の冗談だ。
こーゆーのって巡回警備してるやつが置いてたのかよ。


魔物とか全滅させちゃったからもうやる事はないな。
この洞窟の定期巡回警備は七日間の契約だ。
と、いう事はあと6日間はもう何もしなくていいな。
入り口で盗賊とかが来ないようにただ突っ立ってよう。


俺は洞窟から出た。


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「ふぅ」


俺は休憩に入り、入り口の横に座って一息つく。
時刻は夕暮れ、朝から1日で135階まで休憩無しで行ったから少し疲れたな。


そう、俺は色々あって異世界『オルス』で警備兵になった。
就職の儀式で神託みたいな感じで俺のステータスになったのは、【一流警備兵】。
そんな感じで警備兵になった俺達はその後、警備協会とかいうところに行って警備兵の仕事についての説明を受けた後、晴れて仕事が与えられたというわけだ。


面倒だからこれ以上の説明はしない、というか俺は誰に説明してるんだ。
一緒に警備兵になったムセンとシューズはまだ見習い扱いなのでいきなり現場に出る事はなく、王都で訓練をしている。


俺はいきなり現場で、しかも一人でこの洞窟の施設警備的な事を任された。
まぁ訓練なんて面倒なだけだからそれはいいけど。


「いきなり一人で新人を現場に出すなよ、まぁ気楽でいいか」


そんなわけでここが異世界での俺の初現場なわけだ。
定期巡回警備は昼夜問わず、この洞窟(施設)で異常が無いか見回る事。
普通施設警備なら仮眠所があったり交代要因がいるもんだが、そこは警備兵が人手不足な異世界。
そんな気の利いたものはなかった。


「まぁなんとかなるか」


とりあえず食料などは現地調達のサバイバルだな。
コンビニとかスーパーとかないし。


寝床は適当に洞窟内にでも作ればいいか。
何か異変があったらすぐ向かえるように入口付近にしとこう。


「マップも記録したし、とりあえずやる事はこんなもんか」


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【一流警備兵技術『ダンジョン(施設)把握』】
        +
【異界アイテム・スマホ技術『異界マップ+脳内メモ』】
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俺の視界、右上には洞窟内部地下135階までのマップが詳細に表示されている。
これで人や魔物が洞窟に入ればすぐにわかる。


さて、今日はもうこのへんにして寝床の準備を…


ダダダダダダダダダッ………


「い…いやぁぁぁぁぁぁ~諦めていただけたらありがたいんです~!」




寝床の準備を進めるか。
敷き詰める草かなんかあれば充分だな、寒くないし。
ちなみに警備協会からは警備兵装備品一式を渡された。
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◇イシハラナツイ 現装備
・頭 身躱みかわしのバンダナ E 
・体 鎖かたびら E
・体 常闇マント E
・足 足甲  E
・武器 ライトセイバー
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マントを掛け布団にしよう。
火はおこせるし、あとは食料だ。
とりあえず洞窟内には魔物の死体が散乱してるから食うものには困らない。
しかし、血抜きとか防腐処理とか料理に関する事はまったくわからん。
しまったな、ムセンに聞いてくるんだった。




ダダダダダダダダダッ……


「そっ…そこの方っ!!危ないんです逃げていただけたらとわたしは思うんです!」




鳥は精霊界とやらに呼ばれて今いないし。
ウテンは顔を迂闊にみんなにさらしすぎたとか何とかで行動を自重してるとかなんとかかんとか。


ふむ、困った。
料理できないぞこのままじゃ。
それに洞窟内に魔物の死体おきっぱなしも衛生的に良くないかもしれない。


ザッ


「げっへへ…観念しろや、顔を隠してもわかるぜ…ここは俺達盗賊団の縄張りだ、逃げ場はねえ!」


「ぅぅ…怖いと思わなくもないです…何故わかったのかわたしは不思議でならないんです…しかし、わたしは捕らわれるわけにはいかないと思うんです!」


「その回りくどい喋り方でバレバレなんだよ!諦めて大人しくするんだな!悪いようにはしねぇからよ…」


ザザザザザザザザザッ!


「ぅぅ…下劣な輩達に囲まれたみたいです…!捕まるくらいなら舌を噛んで死にますと思うんです!」


「くく、やってみな!おめぇら!捕まえろ!」




ブォン


「いや、お前らうるさい」




ザシュッ…ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュッ…




「「「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」」




俺はうるさくて偉そうな奴らをライトセイバーで斬りつけた。


まったく、予定外労働だ。
わざわざ俺のところへ来てイベントを巻き起こすんじゃない。


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「あ、あのっ!助けていただいてありがとうございましたとわたしは思ったのです!」


うるさい奴らに絡まれてた女は俺に頭を下げて話しかけてきた。
なんか面倒くさい喋り方だったからとりあえず無視した。


「お強いのですね…わたしは驚いたと感じたのです!何かお礼させていただきたいと…わたしは今思うのです」


パサッ…


女は被っていたフードを取り、俺に顔を見せた。
エメラルドグリーンの透き通る長い髪を肩のところで二つに結び、埃で汚れた顔を少しはたいて女は言った。


「わたしは隣国…『シュヴァルトハイム』の第二王女【エメラルド】だと思うのです、何かわたしにできる事を仰っていただけたらわたしは嬉しいと思います」




「飯作ってくれ」




俺は『ソーセージハム』とかいう国の王女【エスプレッソ】に飯を作るよう頼んだ。



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