一級警備員の俺が異世界に転生したら一流警備兵になったけどなんか色々勧誘されて鬱陶しい

冬野氷景

五十九.面倒くささゲージ



パラパラパラパラッ…サァァァァァァァァァァァッ……


ザワザワ…ザワザワ…


「おい!無事か!?」「あ…あぁ…浅い切り傷だけだ…石の破片がとんできたのか…」「何が起きたんだ…?」「勇者様と…あの警備兵が突然爆発して…」「まだ戦えたのかっ…あの魔物っ…!」「住民達はっ!?」「ケガ人が少しっ…!」「勇者様はっ!?」「まだ爆煙がっ…だけど勇者様がこの程度でヤられるわけないだろっ…!あの警備兵だって爆破をものともしなかったんだ……きっと…」


パラパラパラパラッ……サァァァァァァァァァァァッ……


ズドンッ!ズドンッ!ガキィィンッ!!


「煙が晴れて……ほらっ!戦いの音がするっ!金属音がっ…!きっと勇者様が戦ってらっしゃるの……………………………え?」


--------------




「はぁぁぁぁぁぁっ」


俺は深いため息をつきながらクソライオンの爪撃を銃で受け止めた。


ググッ……!


力、強いなこのクソライオン。
まともに力比べしたら負けるだろうな、俺は腕力もやる気もないし。


スルッ


「おおっ!?」グラッ


俺は爪と競り合う銃を手前に引き、力比べを受け流す。
それによりクソライオンはバランスを崩しこちらに倒れこんでくる。


カチッ


ビーッドゴオオォォォォォォォォッッンッ!!


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」




ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!


俺は事前に溜めておいたレーザービームを倒れこんできたクソライオンの腹に撃ち込んだ。
衝撃と勢いでクソライオンは宙に浮いて遠くまで吹っ飛んだ。
地面に叩きつけられたクソライオンの巨体のせいでこっちまで揺れる。


ガバッ


「っわはははははっ!やるじゃねえかやるじゃねえか!さすがだぜ!こんなたぎる戦闘は久しぶりだっ!爆破無効化の技術!近接攻撃は一切当たらねぇ…見切りの技術!緩急をつけた距離自由自在のレーザー攻撃!最高だぜ!攻略し甲斐があるってもんだ!さぁ!こいや!」


うわっ(ドン引き)
なにはしゃいでんだこのクソライオン。


何事も無かったかのようにクソライオンは俺との戦闘を楽しんでいる。
腹にレーザーが直撃したのに。
やっぱり内部に撃ち込まないとダメか。
しかし、さすがに警戒したのか口の中に撃ち込むスキは無くなっている。


ふむ、どうしたものか。
体に当てても効かないし、これじゃ俺の面倒くささゲージがどんどん溜まっていってジリ貧だ。




「はぁぁぁぁぁぁっ」


俺は再度ため息をつく。
原因は言うまでもなく、横で苦しそうにして倒れているアホだ。


「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」


勇者、勇者様、ヒーロー、ブレイバー。


肝心要の勇者はクソライオンの技術スキルの爆破一発で瀕死に陥っている。
俺は回復魔法も使えないし回復アイテムも持ってないからどうにもできない。
せっかくボスを任せようと思ったのに、来て即行でただの足手まとい。
とりあえずこいつにとどめを刺されないようにいちいち俺が盾みたいに攻撃を受けなきゃいけない始末。


こいつ、本当に勇者か?
勇者なら『攻撃無効』とか『スキル無効』とかそんなん持っておけよ。
ちゃんとレベルあげてから助けに来い。


まったく、まぁこんなアホはもうどうでもいい。
あのクソライオンをどうにかする方法を考えないとな。


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-遡る事数分前-



【ムセン・アイコム視点】


「はぁっ…!はぁっ…!はぁっ…!」


ガクッ


今にも体力が無くなりそうな私は膝から崩れ落ちます。
イシハラさんの方はどうなったんでしょうか…あの獅子のような魔物との戦闘をまだ続けているのでしょうか…。
戦いながら遠目に行ってしまったのでよく見えません。


凄く気になりますし、本当はイシハラさんの方へ向かいたい。
けど、ケガしている人々を放っておけない。


私は予備用の銃を使い、回復技術を使用します。


(まだっ…!まだまだっ…!)


『サンシャイン・キュアライト』


パァァァァァァァァァァァッ…


「傷が治ってく……あの警備兵の子…なんで…あんなに…あそこまでして…」「ママー!痛いの治ったよー!ふしぎだねー!」「……あそこにいる…お姉ちゃんがね、痛いのとんでけって…してくれたのよ」「そうなんだー!ありがとーお姉ちゃん!……でも、お姉ちゃんがいたそうだよ?いたいの?どうして?」「………」


『サンシャイン・キュアライト』


パァァァァァァァァァァァッ…


ビキビキビキッ…!


「うぁぁぁぁっ!!…はぁっ!…はぁっ!」


ついに全身に鈍い痛みが走るようになりました。
もう、腕もあがりません。


けど、だから何なんですか。


『サンシャイン・キュアライト』パァァァァァァァッ…


ポタッ…ポタッ…


「!貴女っ……血がっ……」


「……え…?」


私は住民の方の視線を受け、違和感のある鼻を触ります。


(鼻から……血が……)


いつの間にか…息苦しさが消えて…代わりに鼻から少し出血をしていました。
それが何を意味するのか直感します。


これ以上技術を使用すれば、本当に……


「ぅうっ…」「うぁぁぁぁっ!!痛いよぉぉっ!」「た…助けて…」


「………」


目前にはまだ苦しんでいる方々がいます。


(……私……私にできる事……)




考えるまでもありませんよね?イシハラさん。
貴方から教わりました。


すぐ諦めるから何もできない、考えても無駄なら前へ進め。


壁を乗り越えようとする事が、強さ。


ありがとう、イシハラさん。
私、少し強くなれたでしょうか?
貴方についていきたくて、ついていけたから、こんな事までできるようになりました。


前の私だったら、ただおろおろして…きっと何もできずに、何もせずに魔物に殺されていました。


貴方に会えてよかった。


伝えたい事がありましたけど…もう言えそうにないです。


パァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ……




「!!ダメっ!ムセン・アイコムっ!!」


私を魔物から守ってくれていたウテンさんの声がかすかに聞こえます。
もう……視界も暗いのでよく見えませんけど…ありがとうございますウテンさん。


これが最後の力…諦めるんじゃありませんよ。
せめてありったけで…ここにいる人達の命を繋ぎます。
私の命をもって。


さようなら、シューズさん、スズさん、エミリさん、ぴぃさん。


イシハラさん。








『サンシャイン……【大神官技術『奇跡ヒール』】


パァァァァァァァッ……


ドサッ


「…………………え?」


「よく頑張りましたね、ムセン・アイコム様。人々をお救いくださり、ありがとうございます」


「「「だ……大神官様っ!!!」」」


技術を使おうとして倒れ込んだ私を…女神様が支えてくれました。
いえ、神話の女神様のようにお綺麗ですけど…このお方は…試験でもお会いした大神官様…。


「マルグリーテ、まだケガしている方々の治療を。私はムセン・アイコム様の治療をします」
「わかりました!大神官様!」


「だい……しんかんさま……」
「貴女様に敬意を表します…と、言いたいところですが些か無茶をしすぎですよ。あと一歩遅ければ手遅れでした。貴女はもう少し自愛すべきです、貴女がいなくなれば悲しまれる方もいるでしょう」


【大神官技術『奇跡ヒール』】


私の体力はすぐに回復し、痛みも出血も嘘のようになくなります。


(あたたかい…私は…このような安心感を皆さんに与えてあげられたでしょうか…?)


「勿論ですよ、ムセン・アイコム様」


そう言って大神官様は微笑みました。
あれ?声に出てましたか…?イシハラさんの癖がうつっちゃいましたかね…?


私もそれがおかしくて…微笑みました。




「…………………ちっ、仕方ないのん。あのブス…死んでくれれば良かったのに…いいところで邪魔されたのん、もう出ていくしかないのん」


バッ




「もう安心なのん!異界の【白の魔導師】リィラ・ホワイティアがあんた達のケガを治してやるのんっ!」























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