一級警備員の俺が異世界に転生したら一流警備兵になったけどなんか色々勧誘されて鬱陶しい
四十八.王都戦争③
ザワザワ…ガヤガヤ…
〈ウルベリオン王都郊外『地下大聖堂』第一区〉
「おい!街はどうなったんだ!?警備兵!!」
「いつまでここに閉じ込もっていればいいの!?」
「状況はどうなってるんだ!?ちゃんと知らせろ警備兵!!」
「えぇい!!やかましいっ!!確認中だ!!貴様らは黙って大人しくしていればいいんだ!!」
「何だ警備兵のくせにその態度は!!」
「そうよ!わたくしは貴族なのよ!?」
「有事の際に身分なぞ関係あるかっ!!ゴミ共が!!何だ貴様らはっ!」
「マ、マルボウさん落ち着いてくださいっ!」
ギャアギャアッ!!ギュウギュウ!!
カツ…カツ…カツ…
「あらあらぁ、混乱でパニックが起きてるわねぇ…だめよぉ。警備兵さん、力に力で返しちゃあ。狭い場所では余計にみんなイラだつものなんだからねぇ…それを落ち着かせるのが警備さんのお仕事でしょおう?」
「………」
「グランマさんっ…そうなんですけどっ…こんな事態は初めてでっ…」
「あなたは?」
「はっ!前期警備兵試験に合格した【ハクテ】でありますっ!職業案内所で以前グランマさんにはお世話になりましたっ!」
「そう…ハクテちゃん、警備さんはどんな事態でも冷静に対処しなきゃあいけない…ただ生命の安全を守るだけが警備さんじゃないのよぉ。状況を素早く整理して、簡潔に、それでもわかりやすく伝え安心させてあげる…人々の『心』の安寧も守ってあげなくちゃいけない…『心』の拠り所になるのも警備さんなのよぉ」
「……心の…」
「……とはいえ、この状況は新米さんには難しいかもしれないわねぇ…少し力を貸してあげるわぁ」
【職業適性検査官技術『念写千里眼』】
パァァァァァァ………
「っ!?グランマの持つ水晶に…街の様子が写し出されて…っ!?」
「これが今の街の状況ねぇ……北門の魔物達は…騎士さん達が守護してくれてるみたいよぉ……住民達は…今のところ無事みたいねぇ、他の区画に順調に誘導されてるみたいよぉ」
「街は…家は無事なのか…」「良かった…商品は無事か…」「さすが騎士様だ……避難しなくても大丈夫そうじゃないか…」
ザワザワ……スタスタ…
「…何とか落ちついてくれました~…ありがとうであります!グランマさん。この分なら住民の避難は何とか間に合いそうでありますね」
「……そう楽観はできないわよぉ…今はまだ、ねぇ…」
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〈ウルベリオン王都.王城階段前〉
「軍師マリオン様!貴族街の守備配置完了しました!」
「うむ、それならば良いでおじゃる。他を捨ておいてでも王と貴族様達だけは守らなければならないでおじゃる。王は御自身の身を捨ておいて民を守ろうとしているでおじゃるが……現状の兵力で住民全員を守る事は…この頭脳をもってしても叶わないでおじゃる。それならば…ワチキは王の命に背いてでも…国を再建できる者達を生かすでおじゃる。チミもそう思うでおじゃるであろう?ウルベリオン王国最強騎士、【アーサー・シャインセイバー】殿?」
「無論だ、だからここにいるんだろ。命や職業には格差があって当然だ、役に立たねぇ者を生かす必要はない」
「うむ、王の理念は理解できなくもないでおじゃるが…有事には邪魔にしかならないでおじゃる。ワチキ達は独自に動くておじゃる、絶対に王達に魔物は近づけないでおじゃるよ」
「魔物達の目的は勇者さんなんだろ?どこ行っちまったんだ?」
「不明でおじゃる、捜索中でおじゃるよ」
「……まぁいいさ、他の騎士達は街を守る事に必死らしいからな。足止めくらいはできんだろ、いざとなったら俺様が全部ぶっ潰してやるさ。仮令攻め込まれようが…上の貴族街と城だけは絶対守ってやるよ」
「うむ、頼むでおじゃる。全隊、街に何が起きてもここを離れる事は許さんでおじゃる!城の守護に全精力を注ぐでおじゃるよ!」
チャキッ!!
「「「「「「「はっ!」」」」」」」
--------------
〈ウルベリオン王都.西門付近〉
「門兵長!!第四班、住民の避難を完了しました!」
「わかった!残りは…3つの班か…アマクダリさんの手順書のおかげでスムーズに行ってんな。まだ住民は多いがこれなら間に合うかもしれねぇ…」
スタッ
「はぁ…はぁ…貴様は…門兵か?門からは離れろと指示を受けたはずだ、ここで何をしている?」
「……あんたは…冷笑の騎士さんか」
--------------
◇騎士アクア・マリンセイバー視点
--------------
私は西門内部に降り立った。
良かった、まだ門は破壊されてないし魔物も侵入していないみたい。
間に合った…!
「勿論…魔物の侵入を許しちまった時の足止め役さ。まだ西区画の避難は終わってねぇからな……ま、時間稼ぎになるかはわからねぇが」
「………たったこれだけの兵力でか?」
見たところ…門兵は数十人しかいない…。
こんな数じゃ…しかも門兵の力じゃあ…命を無駄にするだけじゃない…。
「それでも…それで一人の命でも救われんならやるしかねぇでしょうや。それが俺達『門兵』の仕事だからな」
「……………ふっ、そうか」
『王都兵士』…兵士の中でも先天的な適職の才を持つ者だけが選ばれるいわゆるエリート達。
各地に派遣される兵と違い、王都兵は優れた技術を持つ者しか選ばれない。
城を守護する護衛兵、近衛兵。
見習い騎士となる騎士兵。
そして、城下を守る門兵。
役職は違うけどウルベリオンに常駐している兵は皆が優れた技術を持っていると聞いた。
だからかわからないけど…皆、矜持が高くて…住民には偉そうにするくせに私達騎士や勇者には媚びへつらう兵士ばかりで…正直、あまりウルベリオン兵は好きではなかった。
積極的に話そうとも思わなかったから…知らなかった。
こんな兵士もいるんだ。
ピカッ
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!
ガラガラガラガラッ!!
「「!!?」」
突然閃光が走り、門と街壁の上段の一部が崩れ落ちた。
街の外の空が崩れ落ちた部分から顔を覗かせる。
「何だぁっ!!?砲撃かっ!?魔物達は大砲まで持ってきてるのかよ!?」
門兵長が驚きの声をあげる。
いえ……北門で見た魔物達は武器こそ持っていたものの…攻城兵器のようなものは用意していなかった。
恐らく『技術』をもっているから不用と考えたのだと思うけど…それじゃあ…あれは魔物の『技術』による攻撃っ!?
魔物達は一体どこまで力をつけているの!?
ピカッ…ドォンッドォンッドォンッドォンッドォンッドォンッドォンッドォンッドォンッ!!
ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラッ…ズドドドドドドドドドドドドッ!!
「うわっ!?」
「…くっ!!」
連続で閃光が走り、門と街壁は壊されていく。
西門を守る騎士団達は……っ!!もしかして…もう…。
ドドドドドドドドドドドド………
《ギャアァァァァッ!》《グォォォォォッ!!》《ガォァァァッ!》
「さぁな、行きなサイな、魔物達ぃっ!ユウシャを探しだしなさいな!」
ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!
土煙の中から多くの魔物が現れた。
先頭にいる隊長格らしき魔物のかけ声と共に魔物達が咆哮する。
「人の言葉を喋ってやがる…あれが…役職に就いた魔物…っ!」
「……臆したか?怖じ気づいたのなら逃げても構わんぞ」
「…へっ、冗談じゃねえですよ。冷笑騎士さんこそ…評判通りなら俺らの事なんぞ見捨てるような人間じゃなかったんですかぃ?」
「……騎士である私がか?心外だな」
「すみませんねぇ、どうやらくだらねぇ噂に過ぎなかったようだ。じゃあ……やりますか!美人騎士さん!」チャキッ
「…あぁ!」チャキッ
騎士団を退けるような魔物の軍団相手に…私が勝てるなんて思えない。
けど、これで…私は本物の『騎士』になれる。
私が時間を稼いで…みんなが助かれば…それでいい。
ジャンヌ様……ナツイ。
見ててね、私の…騎士道を!
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