一級警備員の俺が異世界に転生したら一流警備兵になったけどなんか色々勧誘されて鬱陶しい

冬野氷景

四十四.防衛戦



ウテンは俺達に言った。


『ウルベリオン王都が戦場になる』


ムセン、シューズ、スズキさん、エミリがその言葉の意味を頭の中で反芻はんすうしているようだ。
誰も何も言わずウテンの次の言葉を待っているようにも見える。


「だからすぐに戻って力を貸してほしい、特にいー君。魔王軍と戦争するならあなたの力は必要」
「魔王軍とやらが街に到達するまでの時間は?」
「わからない。現在王国の十二騎士のうち三名が軍を率いて防衛地点の『ガレン砦』に向かっている。そこで時間を稼げればあと1日は猶予があるはず」


だもん騎士の所属する騎士団か。
だもん騎士も中隊長を倒すくらいだし大丈夫だとは思うけど。
だがウテンの言い方だと時間稼ぎくらいしかできないように聞こえるが。


「恐らく。確認された情報だと魔王軍の軍勢は野良魔物を含めると騎士軍勢の倍以上いる。しかも……魔王軍は幹部【テロリズム】が指揮を取っている」


【テロリズム】?
なんかどっかで聞いたような気がする。


「そ…その幹部とは一体…そんなに危険な存在なのですか?」
「当たり前、ムセン・アイコム。魔王に次ぐ危険な存在。『四業』と呼ばれる『悪職』に就く魔王軍四天王。その力は極めて強大。一国を生身で落とせる程」
「そんな……」
「もう既に住民の避難や各国への支援要請や高名技術者の戦闘配備をさせてはいるけど…それでもどうなるかはわからない」


「た……大変なのよ……お母さんがっ!街がっ!」
「シャイナ…!リィナ…!今すぐに戻りましょう!」


エミリとスズキさんが血相を変えている。
家族が街にいるんだから当然だろう。


「落ち着いて。馬車は用意してある。馬車なら街まで四時間ほどで着く。十二騎士団が足止めしていれば充分に猶予はある」


「わかった、行くとしよう」
「はい!」
「うん、わかったー」
「ぴぃ!」


俺達はウルベリオン王都へ向け出発する。




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〈最終防衛地点『ガレン砦』〉


ドォンッ!!ドゴォォォンッ!!ドォンドォンッ!!!ゴオッ!!ドォンドォンドォンドォンッ!!ドゴォォォンッ!!


「大筒隊!ーーーーーーっ!!!」


ドォンドォンドカァァァッン!!ドゴォォォンッ!!


「……っ!!駄目です隊長っ!!数が一向に減りませんっ!!更に北西より小鬼部隊が到来っ!!」
「騎士団が来るまで何としても耐えろっ!!ここを突破されれば王都は戦火に包まれる!!」
「しかしっ……!!兵力差がありすぎますっ!!このままでは部隊は全滅します!!」
「っ!!くそっ!!やはり我々では…どうする事も…できないのか!」


バサッ




「その通りですわよ。所詮『防衛隊』に選ばれた兵など下の下。最初から期待などしていねぇですわ。雑魚はひっこんでいろよですわ」
「あははっ!ツリーお姉さん、またお上品な言葉が交じってるよ?相変わらずだなぁ。それよりこの戦いが終わったら胸揉ませてよ?」
「いい加減にしないとぶっ殺すですわよ?エロガキが。気持ち悪いからこれが終わったら二度とワタクシに近寄るんじゃねぇぞ、ですわ」
「アクア姉さんもツリー姉さんもつれないなぁ、男とばかり仕事でつまらないんだよー僕」


シュルシュルシュルシュルシュルシュルシュルシュルッ………


ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザク!!


「!!地中から木の根が飛び出して……魔物どもを串刺しにっ…!あの『技術』は………っ!!」


ヒラヒラヒラヒラッ……スタッ


「麗しく登場してやったぞですわ。王国十二騎士団序列六位【ツリー・ネイチャーセイバー】だぞ、ですわ」
「王国十二騎士団序列八位【ボルト・スパークセイバー】来たよー。うわっ、男ばっかり……いらなっ」


「騎士団だ!十二騎士団が来てくれたぞぉぉぉぉぉっ!」


《《うおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!》》


「うるせえぞ。ですわ、この程度の魔物達に苦戦してる奴らがアタクシを見てんじゃねぇぞですわ。ゴミどもが」


チャキッ


「いきますわよ、樹剣『グリーンセイバー』。ワタクシのオリジナル技術【創生ユグドラシル】。くそ食らえ、ですわ魔物ども」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………ッ


ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクッ!!


「す……凄い………百体以上の魔物を一瞬でっ……!これが……序列上位騎士の力っ…!」
「……よりによってこの二人か……しかしそんな事言っている場合ではないっ…!全軍好機だっ!二人に協力して魔物の数を減らせ!!」


《《うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!》》


ドゴォォォンッ!!ドォンドォンドォンッ!!キィンッ!キィン!ドカァァァッン!!ゴォッ!ドゴォォォンッドゴォォォンッ!!!


ドドドドドドドドドドドドドドッ………!!!ドゴォォォンッドゴンドゴンドゴンドゴンドゴンドゴンドゴンドゴンッ!!!ドスンドスンドスンドスンドスンドスンドスンドスンドスンドスンッ!!


「隊長っ!!新たに現れた小鬼部隊の方角から土煙と轟音がっ!土煙の中に巨体の影を確認っ!何かが迫っていますっ!小鬼部隊を率いる隊長格かと思われます!!」
「何という巨体だ………化け物かっ…!」


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小鬼部隊大隊長・オークの【トロルキング】が現れた!
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「フヘヘぇっ、俺様は【テロリズム】様のミギウデ…中佐の【トロルキ」


ゴロゴロゴロゴロ……バチィッ!!
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!!


「あはは、むさいやつの自己紹介なんていらないよー。早く死んでくださいね?僕、気分悪いよ」


「なっ…!?何だっ…!!いきなり雷が降って…オークを直撃した!?あの少年騎士かっ…!?」
「わずか16歳で十二騎士団に抜擢された…天才少年…あれが…序列八位…【ボルト・スパークセイバー】…」


グラッ…


ドドォォォォォォォォォォォォォォンッ!!


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オークの【トロルキング】は倒れた!
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「案外大した事ないね、【テロリズム】の軍勢ってのも。勇者様に頼らなくても僕達だけでいけちゃうんじゃないかな?」
「当然ですわ、勇者様の手をわずらわせるなんて騎士の名折れじゃねえか、ですわ。ワタクシが幹部もぶっ殺してやるですわ」


「強い……!流石…国を守る騎士だ!この勢いで…っ!」




キィィィィィィィンッ……………ビカッ




ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!


「「!!」」




ゴオオオオオオオオオオオオオォォッ!




パラパラパラパラッ…………


………


「………………ふぅっ、危なかった~。まさか突然魔物達が爆発するなんてね……あらら、魔物達と一緒に防衛部隊がほとんど壊滅しちゃったね~……魔物達の悪あがきかな?」
「違ぇよ、ですわ。今のは…恐らく幹部【テロリズム】の『技術』…味なマネしやがってですわ……!」




ドスン……ドスン……ドスン…ドスン…ドスン…ドスン


「そぉら、おいでなすったですわ」チャキッ
「本当だ、あれが…魔王軍四業幹部【罪業のテロリズム】…いくよ、雷剣『イエローセイバー』!」カチャッ


ドスン…ドスン…ドスンッ!!


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魔王軍幹部【罪業のテロリズム】が現れた!!
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「わっはっはっ、ちょっと強そうなのがいるじゃねぇか。ちょうど良いや、お前ら勇者の前の肩慣らしになれ」

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