一級警備員の俺が異世界に転生したら一流警備兵になったけどなんか色々勧誘されて鬱陶しい

冬野氷景

十五.異議申し立て



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-ムセン・アイコム視点-


………………………………………………………はい?
今………この方、何て仰いました……?
聞き間違いでなければ、イシハラさんと結婚したいと仰いませんでしたか?
いやいや、そんなはずありませんよね……。
面識すらないイシハラさんと何故そうなるかわかりませんもん…。


「断る」
「ダメ?」
「駄目だ」
「んー…そっかぁ、じゃあどのくらいしたら結婚してくれる?」
「四年後くらい」
「四年かぁー…長いなぁ。うん、わかった。じゃあアタシ隣で待つよ、それなら良い?」
「無き事もないにすべからず」
「わかったー、じゃあアタシ、イシハラ君についてくね」


「ちょちょちょちょっと待ってください!!」


私は思わず二人の会話に割り込みました。


何ですか今の会話!?
全く理解不可能だったのですが会話として成立していましたか!?
でも何故かお二方は通じ合っていましたが……本当に二人共面識ないんですか!?


「何だ?」
「何だじゃありませんよ!け、結婚の意味わかってるんですか!?イシハラさん!」
「婚姻…夫婦間の継続的な性的結合を基礎とした社会的経済的結合で、その間に生まれた子が嫡出子として認められる関係」
「何ですかそのどこかから引用したような台詞は!充分わかってるじゃないですか!なのに何故契約でもするかのようにホイホイと受けてしまうのですか!」
「結婚と契約は広い意味では同義だろう」
「そうですけどそういう事じゃありませんよ!!」
「何を怒ってるんだ、そもそも受けた覚えはない。四年後くらいといったんだ」


ダメです!話がまるで噛み合いません!


「ねぇねぇ、何で四年後くらいなの?」
「まだ俺が無職だからだ」
「なるほどー、しっかりしてるんだー。でも大丈夫だよ、アタシお金いっぱいあるし」
「そもそもお前いくつだ」
「15歳」
「この世界での婚姻できる年齢は?」
「………17」
「どちらにせよ駄目だろう、だから四年後くらいだ」
「ちぇー、もしかしたら早まる?」
「無き事もあらず」
「わかったー、じゃあ待ってる」


何ですかこの会話!?
何か暗号めいたものでも使ってます!?


「シュ、シューズちゃん!冗談だよね!?僕達がついてるのに!」
「そ、そうそう!何でこんな得体の知れないやつなんかに!?」


この方の周囲にいた男の人達も何かざわざわしてますけど関係ありません!


「関係無い人達は騒ぐなら出ていってください!!病室ですよ!これは当事者達の問題なんですから!」


私も当事者ではない無関係な立場ですけど関係ありません!
私は周囲の関係無い人達を追い出した。


バタン!!


「そ、そもそも貴女は何のつもりでイシハラさんに結婚なんか申し込んでいるのですか!?初対面ですよね!?」
「うん、そうだよ。でもいい人がいたら初対面でも関係ないよー。アタシはその為に今まで試験受けてたんだから」
「け、結婚相手を見つけるためにですか!?」
「うん、今までいい人いなかったから。これが初めてのプロポーズだけど問題ないよね?」
「大いにあります!よく知りもしない相手と結婚などできるはずもないです!」
「それはこれから知っていくんだよー」
「…そ、そもそもお相手の了承を得て初めて成り立つものですよ!」
「うん、四年後の了承は得たしアタシは待ってるよー」


ダメです!こっちの方ともまるで話が通じません!
まるでイシハラさんが二人いるようで……女性のイシハラさんです!
一体何を考えてるのか全くわかりません!?


「そ、そうやって色んな人に結婚を申し込んで周りの人達に気を持たせて…何か企んでいるのではないですか!?」


あれ?
私も何言っているのか段々わからなくなってきました…。
そもそも何で私がこんなに意固地になっているのでしょうか…?
イシハラさんに結婚してほしくないから…?
そ、そんなわけありませんよ!まだ出会って数日なんですからそんな気持ち抱くはずが……。
そう!この世界にいるうちはイシハラさんを支えるって誓ったばかりじゃないですか!それです!
私はお世話になっているイシハラさんを守るんです!


「うん?あ、さっきまでいた人達のこと?あの人達は今までの試験からアタシに勝手についてきてる人達だよー、アタシが頼んで一緒にいるわけじゃないよー」
「そ、それを拒否しないのですか?」
「うん、だってどうでもいい人達だし、いてもいなくても変わらないよね」


可哀想な言い方ですけど……女の子につきまとっているんですから同情の余地はありませんね。


「そろそろいいかなぁ?アタシ、イシハラ君のとこに行きたいなぁ」
「え!?あ…あれ!?イシハラさんはどこに行ったんですか!?」
「関係ない人達と一緒に出ていったよー」


馬鹿なんですかあの人は!?
何で当事者が何喰わぬ顔でさっさと退出してるんですか!?
そうでした!あの人はそういう人でした!


「それじゃあアタシは行くね」


バタン


シューズという女の子は出ていってしまいました。
私も追いかけたいですけど…そうしたら病人の方が一人になってしまいます……私がついていないと。
大丈夫ですよね……イシハラさんなら…。


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「ふぅ」


俺は大いに満足した。
てっきり夕食は仕出し弁当的なものだと思ったら、一室を貸しきったまさかの豪勢なビュッフェ方式。
並んでいた料理は見た事の無いものばかりだったが味は申し分ない。
しかし今この世界は魔王とやらと戦争中とかいってなかったか?
どこからこんな予算が出てくるのやら。
まぁどうでもいい、満腹だからこれで勝つる。


「お気に召しましたかね?イシハラさん」


なんか室内にはさっきの秘書女がいた。
どうやら秘書女が食事を用意したらしい、仕事ってこれだったのか。


「大変満足だ、しかしまだ試験も通るかわからない、しかも警備兵にこんな豪勢に振る舞っている余裕があるのか?」
「国王様からのお達しですね、ワタクシ達の国王様は公明正大なお方で悪人でない限りどのような職業でも平等に扱って下さいますからね。特に人手不足の警備兵こそ国を守る大事な職業として手厚く支援してくださっていますね」


あのキングオブ王様か。
中々いい国みたいだなこの国は。


「そして国王様より貴方達に言付かっておりますね。『異界より…』

「長そうだから言わなくていい。あの王様の言いたい事はわかってるし恨む気もないから気にするなと言っておいてくれ」


どうせ国民を守るために勇者どもを蔑ろにはできなくて俺達を守れなかったとかそんな謝罪文だろう。
事情はわかってるからいちいち謝らんでもいい。


「……お聞きした通りだいぶ変わったお人ですね、貴方は。イシハラさん、貴方が警備兵試験を通過する事をワタクシもお祈りしていますね。きっと貴方なら……警備兵の現状を無茶苦茶に壊してくれる。そんな気がしますからね」


そんな気はさらさらないが勿論言われるまでもなく合格するさ、ダルくならなければ。


その後は変な女が一緒に風呂に入ろうとしてきたりしたが、面倒だったので追い出して寝た。
こうして試験一日目を終えた。

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