転生したら天使に職業を選べと言われたので全部選んだら大変なことになりました

神王

第一章 三話 女の子に会いました。(2)

「うおおおおおおあああっ!!!」



俺は炎に包まれ、周りが焼け野原になっていくのが分かる。



「あああああ……あれ……?」



確かに熱いとは感じたが火傷の一歩手前程度で留まり、炎が消えてゆく。



「むむむ?」



俺は急いでステータスの体力を確認する。



HP:243102/250671



最大値の左の現在値のようなものが減っている。



あまり減ってない……?



「あーあ、ちょっとやりすぎちゃった。この場所の泉気に入ってたんだけどなー。」



魔王と名乗る女の子の声が煙越しに聞こえる。

こっちの砕けた口調の方が自然体なのか。



「あの……」



煙がちょうど晴れたので女の子に話しかける。



「なに?……えええええええ!?!?!?!?!?!?!?!?」



女の子がなにやらとても驚いている。



「貴方防御魔法貼ってなかったわよね!?というか魔法使えないわよね!?!?」



防御魔法もやはり存在するのか。



「確かに貼ってなかったが……魔法は使えるぞ?」



女の子に言う。



「だから魔力が見えないって言ってるでしょ!!魔力が無ければ魔法は使えないの!!」



「魔力ならあるはずなんだが……」



どうしてだ……?



「あ」



もしかしたらこのペンダントが俺の魔力を隠してるからなんじゃないのか?



「何よ」



「多分このペンダントが俺の魔力を隠してるからだ。」



「へぇ……そんな魔道具があるのね。外してみなさい。」



「ああ」



「まあどーせヒューマン程度の魔力なんてたかが知れて…」



言われるがまま、俺はペンダントを外す。その瞬間、女の子の声が聞こえなくなる。



「外したぞ……ん?」



目の前に女の子の姿が見えない。



「どこ行ったんだ?」



周りを見渡すと、正面の奥の木の裏の根元でうずくまっているのが見えた。



「ん?どうした?」



俺は女の子の方まで歩いてゆく。



「何よ……!?その魔力……!!」



「ん?何かあったのか?」



俺は女の子の目の前まで近寄る。



「なあ……」

「ご、ごめんなさい!!許してくだしゃいっっ!!!」



「!?」



何故か女の子は涙目になりながら怯えていた。



いやさっきまでの態度は何!?変わりすぎじゃね!?



「だ、大丈夫か?」



「殺さないでください!!!!私はヒューマンを襲ったりしてませんからっ!!ごめんなさいっ!!むしろ仲良くしたいのに……」



俺は後ろを振り向き、誰かいないか確認する。



「いないな……」



どうやら俺に言っているようだ。



「どうしたんだ?」



「とうとう私を見つけて殺しに来たんでしょ!!私は何も悪いことしてないからっ!!」



涙目になりながら命乞いのようなものをし始める。



「いや俺ただの旅人なんだが……というかなんだこの態度の変わり様は……」



「殺さないの……?」



「別に殺す気なんてないぞ」



俺がそう答えると、急に女の子が黙り込む。



「本当に?」



「ああ」



「私と仲良くしてくれるの?」



「あ?あ、ああ」



「私デーモンだよ?」



「あ、ああ」



「…………」



女の子が突然黙り込む。



「どうし……」



俺が話しかけようとした途端、なぜか座ったまま倒れこむように俺に抱きついてきた。



「うわあああああああん!!!!!怖かったよおおおおおおおっ!!!」



一体何が起きているんだ。

……というか、胸が当たってる。



「……なんでそんな泣いているんだ?」



「だってこんな異常な魔力持ってるヒューマンが来たら!!私を殺しに来たのかと思うじゃん!!!というか私を殺そうとしなかったヒューマンなんて初めてだよ!!!」



女の子が泣きながら言う。本来の口調に戻ったようだ。



とりあえずペンダントはまたつけておこう。俺の魔力、なんかヤバいらしいし。



「どうしてお前が殺されるんだ?」



俺はしゃがんで目線の高さを同じにし、話しかける。



「ヒューマンと私たちデーモンは1000年くらい前まで戦争をしててね?それで私たちは負けちゃって、魔王のお父さんが殺されちゃったんだ。でも私が生きてるから、ヒューマンが殺しにくるんじゃないかって思ってるの。ヒューマンは私たちデーモンをひどく嫌ってるみたいだし……」



涙目のまま女の子が話す。



「私は他のデーモンたちに助けられて生き延びて、ここに私たちデーモン以外誰も入れないように結界を作ったの。でも魔王城にいないし、従えてる人もいないから、時間が経つにつれてどんどん他のデーモンたちが寿命を迎えちゃってね、結局あのドラゴンだけが残ったの」



俺そのドラゴン倒しちゃったのか……それはかなり悪いことをしたな……



「すまん。そのドラゴンはさっき倒してしまった」



「やっぱりそうなんだね。さっき地響きがしたからもしかしたらって思ってたんだ。別に話せるわけじゃなかったから特に悲しみとかは無かったけど、守ってくれるドラゴンがいなくなっちゃったから私はもうここには居られないね……」



俺はなんてことをしてしまったんだ。

流石にこればかりは責任を取るべきだな….…

それに、こんな少女を独りのまま放っておくわけにはいかない。



「それなら、俺についてこないか?」



このままだと居場所もなさそうだしな。



「私が……?」



「ああ」



「私なんかがついて行っていいの……?私デーモンだよ?」



「もちろんだ。俺にとっては別にデーモンとかヒューマンとかはどうでもいい事だ。俺はちょうど仲間が欲しかったところなんだ。」



この世界でくらい、仲間を作らせてくれ。



そう言った途端、女の子の頰に涙が流れる。



「それに私がデーモンってバレたら貴方も大変だよ?」



言われてみればそうだな。いい手段はないものか……



ー幻影術師・魔力偽装/視覚偽装ー



急に頭に魔法が思い浮かぶ。これを使えばいいんだ!



「それなら大丈夫だぞ」



「え?」



「魔力偽装、視覚偽装。」



俺は女の子に魔法を二つかける。



「これで多分ヒューマンと会ってもヒューマンとして扱われるぞ。」



「こんな魔法が使えるんだ!!ありがとう!!」



急に俺に抱きついてくる。意外と可愛い所があるじゃないか。

胸が相変わらず俺の心を揺さぶってくるが。



「それじゃあ俺について来てくれるか?」



「うん!!」



「やっぱり最初に会った時の口調よりこっちの方がいいぞ」



「え?あっ……!」



女の子がふと気がついたように固まる。



「魔王っぽい感じを目指してたんだけど……こっちの方がやっぱいい……?」



「ああ。」



「じゃあそうする!」



なんか一気に懐かれたな。



「ほら、立つぞ」



俺は少女に手を差し伸べる。



そして少女はその手を数秒眺め、ぎゅっと掴んだ。



「私はエッシェル・アストラル!よろしくね!」



エッシェルが俺の手をとり、立ち上がる。



「ああ。俺はタケル・ミズタニだ。よろしく!」



まさか俺が差し伸べた手を取ってくれる人が現れる時がくるなんて驚きだ。



「そういえば街を目指してたんだが……どこに行けばいいんだ?」



「もしかして行く宛てもなく歩いてたの?」



「ああ。」



「そうなんだ!ここから一番近い街はあっちの向きにしばらく歩いたところにあるスクワだね!」



意外と人間のことを知っているのか。助かった。



「ありがとう。それじゃあそこまで行くぞ!」



「うん!」



こうして俺たちの旅が始まった。

                                                                                                                  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー                   皆さんこんにちは(こんばんは)、神王です。誤字脱字がありましたら、いってください。あと、お気に入りとハートをお願いします。これからも転生したら職業を選べと言われたので全部選んだら大変なことになりましたをよろしくお願いします。

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