キリストにAI開発してもらったら、月が地球に落ちてきて人類滅亡の大ピンチ! 前代未聞、いまだかつてない物語があなたの人生すら変えてしまう ~ヴィーナシアンの花嫁~
31.体重10gの天使
さて、ネズミの実験は大成功という事で、いよいよ人体との接続だ。
しかし、無脳症とは言え人体は神聖なもの。法的、道徳的になるべく問題ないようにクリスと相談を重ね、妊娠12週未満の中絶した胎児を貰う事にした。
この週齢の胎児は一般にすぐ死んでしまうし、法律的にも医療廃棄物だ。
そこをクリスの神の技で何とか延命し、BMI接続手術に耐えられるまで大きく育てる計画だ。
再度実験室に簡易無菌室を展開し、人工胎盤を用意し、受け入れ準備を進める。
ただ、例え無脳症で中絶胎児であっても人体実験は禁忌だ。バレたら逮捕、収監は避けられないだろう。もはや後戻りはできない。人類の後継者創造のために我々は犯罪者の道を行くのだ。
◇
受け入れの日が来た。
クリスから電話があり、今晩赤ちゃんを受け取るそうだ。
血液型はRh+のAB型、俺と同じ型なので、育成には俺の血を使う。
俺はまず、使い捨ての手術衣に着替え、無菌室に入って全体に消毒薬を散布し、必要な機材をセットした。
その後、人工羊水を透明なバッグに満たして人工子宮とし、人工胎盤も消毒してセットした。
後は赤ちゃんの到着を待つばかり。
しばらく待つとクリスが淡く光るバッグを持って急ぎ足でオフィスに戻ってきた。
メンバーが心配そうに見守る中、まず、クリスは俺の血を抜いて人工胎盤に入れる。
何の躊躇もなくサクッと俺の静脈に注射針を差し込むクリス。
医療技術者としても相当に優秀じゃないか。
俺の血を1リットル抜いて人工胎盤を満たす。ポンプのスイッチを入れると俺の血が人工胎盤の中をぐるぐると回っていくのが分かる。
俺の身体の血は全部で5リットルくらい。1リットル抜くとさすがにクラクラする。
しかし、これから週に何回もこうやって人工胎盤を満たし続けないといけない。
実に気が重いがAB型は俺しかいないので仕方ない。
続いて、赤ちゃんの準備だ。
クリスのバッグから慎重に赤ちゃんを取り出す。
包みをそーっと開けると、身長6cm位の赤い小さな生き物が出てきた。
「え? これが赤ちゃん!?」
美奈ちゃんは思わず声を上げる。
確かに見た目は小さな両生類の様な気味悪い生き物である。体重も10g程度しかない。とても赤ちゃんというイメージではない。
しかし、これはれっきとした人間の赤ちゃんなのだ。
ついさっきまでお母さんのおなかの中にしっかりといたのだ。
クリスは赤ちゃんのお腹から伸びている細い へその緒に慎重に針を刺す。
そして血管にうまく刺さったら針を固定し、人工胎盤と繋げる。
赤ちゃんの血液が人工胎盤の中を通るのを確認した後、赤ちゃんに各種センサーを取り付け、その後人工羊水の中にそっと入れる。
人工羊水の温度、血液の酸素濃度や血糖値、心拍、血圧などの数字をみる。
「うーん、血圧がちょっと弱いのかな……」
赤ちゃんの心拍は異常に速く、ちゃんと血圧が測れている自信がないが予想よりも低い。
しかし、何があっても我々に打てる手などない。
そもそもこの週齢で生き延びさせる医療技術を人類はもっていないのだから。
うちにはクリスの癒しというチートがあるから可能性があるが、普通はお手上げなのだ。
人工羊水のバッグの封を閉じてとりあえず受け入れは完了。
クリスはそばの椅子に座り、手をかざし、癒しの技を発動する。
赤ちゃんは淡い光に包まれてバイタルの数値も若干改善した。
今、一番怖いのは感染症、細菌が入ったら一発で赤ちゃんは死んでしまう。
しかし赤ちゃんに薬は使えない。使ったらちゃんと育たないからだ。
クリスには申し訳ないが、しばらく安定するまではつきっきりで見てもらわないとならない。
クリスごめんね。
様子を見ていた美奈ちゃんが言う、
「これ、本当に人類の後継者に育つのかしら?」
「育てるしかないんだよ、もう後戻りできない……」
俺は自分に言い聞かせるように答える。
「バレたら牢屋行きよね?」
「バレない様にお願いします、姫」
「でもまぁ、私、総務経理だから、牢屋行きは誠さんだけね!」
そう言ってニヤッと笑う姫。
「え~!? 俺達仲間じゃないか!」
「監獄仲間にはなりたくないわ」
そう言ってシッシッと俺を追い払う仕草をする。
「美奈ちゃん……そんなぁ……」
俺が情けない声を出すと美奈ちゃんは、
「しょうがないわねぇ……じゃ、イザと言う時は一緒にこのオフィスに立てこもってあげるわ!」
また、訳分からないことを言い始めた。
「え!? 警察と徹底抗戦すんの!?」
俺が驚くと、
「私が人質になってあげるから、包丁持って『この女の命が惜しければヘリを用意しろ!』って言いなさいよ」
「何だよ、さらに罪を重ねろって言うのか?」
「毒を食らわば皿までよ!」
なんだか楽しそうなんだが……
「でも、立てこもっても解決しないよね?」
「最後は突入した特殊急襲部隊に撃たれるの」
「はぁ!? 殺されんの俺!?」
あまりの展開に唖然とする俺……
「で、私の膝枕の上で誠さんは最期に『あいしてる……』って言うのよ」
殺された挙句、告白させられてるし…… なんなのこれ?
「私は……『ごめんなさい、でも、死なないで!』って涙をポロポロ流すんだわ!」
「フられて終わりかよ!」
「で、三日後に遺体安置室でクリスに復活させてもらえば完璧よ!」
そう言って嬉しそうに人差し指を振る美奈ちゃん。
ハッハッハッ!
オチに使われたクリスにはウケたようで、笑ってる。
俺は全然笑えないんだけど……
「…。でも、生き返らせないですよ」
ですよね~……
絶対バレちゃいかんって事だな。美奈ちゃんに殺されるわ。
あーなんかクラクラしてきた……血が足りないのかも……
クリス、俺の造血細胞にもヒールをお願い……
しかし、無脳症とは言え人体は神聖なもの。法的、道徳的になるべく問題ないようにクリスと相談を重ね、妊娠12週未満の中絶した胎児を貰う事にした。
この週齢の胎児は一般にすぐ死んでしまうし、法律的にも医療廃棄物だ。
そこをクリスの神の技で何とか延命し、BMI接続手術に耐えられるまで大きく育てる計画だ。
再度実験室に簡易無菌室を展開し、人工胎盤を用意し、受け入れ準備を進める。
ただ、例え無脳症で中絶胎児であっても人体実験は禁忌だ。バレたら逮捕、収監は避けられないだろう。もはや後戻りはできない。人類の後継者創造のために我々は犯罪者の道を行くのだ。
◇
受け入れの日が来た。
クリスから電話があり、今晩赤ちゃんを受け取るそうだ。
血液型はRh+のAB型、俺と同じ型なので、育成には俺の血を使う。
俺はまず、使い捨ての手術衣に着替え、無菌室に入って全体に消毒薬を散布し、必要な機材をセットした。
その後、人工羊水を透明なバッグに満たして人工子宮とし、人工胎盤も消毒してセットした。
後は赤ちゃんの到着を待つばかり。
しばらく待つとクリスが淡く光るバッグを持って急ぎ足でオフィスに戻ってきた。
メンバーが心配そうに見守る中、まず、クリスは俺の血を抜いて人工胎盤に入れる。
何の躊躇もなくサクッと俺の静脈に注射針を差し込むクリス。
医療技術者としても相当に優秀じゃないか。
俺の血を1リットル抜いて人工胎盤を満たす。ポンプのスイッチを入れると俺の血が人工胎盤の中をぐるぐると回っていくのが分かる。
俺の身体の血は全部で5リットルくらい。1リットル抜くとさすがにクラクラする。
しかし、これから週に何回もこうやって人工胎盤を満たし続けないといけない。
実に気が重いがAB型は俺しかいないので仕方ない。
続いて、赤ちゃんの準備だ。
クリスのバッグから慎重に赤ちゃんを取り出す。
包みをそーっと開けると、身長6cm位の赤い小さな生き物が出てきた。
「え? これが赤ちゃん!?」
美奈ちゃんは思わず声を上げる。
確かに見た目は小さな両生類の様な気味悪い生き物である。体重も10g程度しかない。とても赤ちゃんというイメージではない。
しかし、これはれっきとした人間の赤ちゃんなのだ。
ついさっきまでお母さんのおなかの中にしっかりといたのだ。
クリスは赤ちゃんのお腹から伸びている細い へその緒に慎重に針を刺す。
そして血管にうまく刺さったら針を固定し、人工胎盤と繋げる。
赤ちゃんの血液が人工胎盤の中を通るのを確認した後、赤ちゃんに各種センサーを取り付け、その後人工羊水の中にそっと入れる。
人工羊水の温度、血液の酸素濃度や血糖値、心拍、血圧などの数字をみる。
「うーん、血圧がちょっと弱いのかな……」
赤ちゃんの心拍は異常に速く、ちゃんと血圧が測れている自信がないが予想よりも低い。
しかし、何があっても我々に打てる手などない。
そもそもこの週齢で生き延びさせる医療技術を人類はもっていないのだから。
うちにはクリスの癒しというチートがあるから可能性があるが、普通はお手上げなのだ。
人工羊水のバッグの封を閉じてとりあえず受け入れは完了。
クリスはそばの椅子に座り、手をかざし、癒しの技を発動する。
赤ちゃんは淡い光に包まれてバイタルの数値も若干改善した。
今、一番怖いのは感染症、細菌が入ったら一発で赤ちゃんは死んでしまう。
しかし赤ちゃんに薬は使えない。使ったらちゃんと育たないからだ。
クリスには申し訳ないが、しばらく安定するまではつきっきりで見てもらわないとならない。
クリスごめんね。
様子を見ていた美奈ちゃんが言う、
「これ、本当に人類の後継者に育つのかしら?」
「育てるしかないんだよ、もう後戻りできない……」
俺は自分に言い聞かせるように答える。
「バレたら牢屋行きよね?」
「バレない様にお願いします、姫」
「でもまぁ、私、総務経理だから、牢屋行きは誠さんだけね!」
そう言ってニヤッと笑う姫。
「え~!? 俺達仲間じゃないか!」
「監獄仲間にはなりたくないわ」
そう言ってシッシッと俺を追い払う仕草をする。
「美奈ちゃん……そんなぁ……」
俺が情けない声を出すと美奈ちゃんは、
「しょうがないわねぇ……じゃ、イザと言う時は一緒にこのオフィスに立てこもってあげるわ!」
また、訳分からないことを言い始めた。
「え!? 警察と徹底抗戦すんの!?」
俺が驚くと、
「私が人質になってあげるから、包丁持って『この女の命が惜しければヘリを用意しろ!』って言いなさいよ」
「何だよ、さらに罪を重ねろって言うのか?」
「毒を食らわば皿までよ!」
なんだか楽しそうなんだが……
「でも、立てこもっても解決しないよね?」
「最後は突入した特殊急襲部隊に撃たれるの」
「はぁ!? 殺されんの俺!?」
あまりの展開に唖然とする俺……
「で、私の膝枕の上で誠さんは最期に『あいしてる……』って言うのよ」
殺された挙句、告白させられてるし…… なんなのこれ?
「私は……『ごめんなさい、でも、死なないで!』って涙をポロポロ流すんだわ!」
「フられて終わりかよ!」
「で、三日後に遺体安置室でクリスに復活させてもらえば完璧よ!」
そう言って嬉しそうに人差し指を振る美奈ちゃん。
ハッハッハッ!
オチに使われたクリスにはウケたようで、笑ってる。
俺は全然笑えないんだけど……
「…。でも、生き返らせないですよ」
ですよね~……
絶対バレちゃいかんって事だな。美奈ちゃんに殺されるわ。
あーなんかクラクラしてきた……血が足りないのかも……
クリス、俺の造血細胞にもヒールをお願い……
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