キリストにAI開発してもらったら、月が地球に落ちてきて人類滅亡の大ピンチ! 前代未聞、いまだかつてない物語があなたの人生すら変えてしまう ~ヴィーナシアンの花嫁~
7.1万円札を1トン
「コンソメスープでございます」
ギャルソンが黄金色に輝くスープを持ってきた。
「美味しそう! いただきま~す!」
美奈ちゃんがすかさずスープを口に運んだ。
「うわぁ、ナニコレ? すごぉい!」
弾んだ声が部屋に響く。ここまで喜んでくれたらシェフも嬉しいだろう。
俺も一口飲んでみる。じんわりと優しい旨味が体中に広がり、手が止まらなくなった。まるで魔法だ。どれだけこのスープには手間がかかっているのだろうか。
「ねぇクリス、誠さんのプランだけど、何かいい手はないかなぁ?」
美奈ちゃんがクリスに振ってくれる。
「…。身体を乗っ取るような事は神は望まない」
「身体貸してくれる人がいればいいんでしょ?」
「…。本人以外が身体を動かすような事はダメだ」
クリスは毅然とした態度でダメ出しをする。
だが、美奈ちゃんも健気に頑張ってくれる。
「じゃ、本人がもう居なくなってしまった身体だったら?」
「…。居ないというのはどういう?」
「例えば……脳が無い人とか……。居ないか」
この美奈ちゃんの言葉でピンときた。
「あ、居るよ居る! 無脳症という病気の赤ちゃんだ!」
「…。脳の無い赤ちゃん?」
怪訝そうなクリスにスマホで検索した画面を見せた。
「これだよこれ、生まれてくる赤ちゃんの1000人に一人は脳が無い無脳症なんだ。そしてこの病気の子の多くは堕胎される。つまり殺されちゃうんだ。この子の身体をAIが使わせてもらうというのはどうだろう?」
「…。身体は健康だが脳が無い……。そして殺されてる……。人ではない事になるのか、これは……」
クリスは悩んでしまった。
確かに勝手に身体を借りるのはダメだが、そもそも借りる以前に身体に意識が無いのだから借りる相手がそもそもない事になる。
「クリス! これならいけるんじゃない?」
美奈ちゃんが無邪気にプッシュする。
クリスは腕組みをして目を瞑ったままだ。
アコースティックギターの落ち着いた調べが部屋を満たしていた。
俺はドキドキしながらワインを飲む。
目を開けたクリスが大きくワインを呷った。
「…。やはりこういうのは良くない。自然の摂理に反している! ……ただ……人類の未来を託すという一大事業であれば……ギリギリ……許されるかもしれない……」
クリスは苦しそうな顔をしながらそう言った。
「やったー! カンパーイ!」
美奈ちゃんが無邪気にはしゃいでワイングラスをぶつけてくる。
俺はホッとしてすぐには声が出なかったが、グラスを合わせる。
クリスもまだ思案を続けている様ではあったが、乾杯に応じてくれた。
次世代の地球人を作るプロジェクト、『深層後継者計画』がこの瞬間スタートする事になった。
大学時代からAIを研究しながら悶々としていた俺は、ここに新たな突破口を得たのだ。クリスとの出会いが全てを一変させてくれた。感無量である。ワインが体中に染み渡る。
「メインディッシュでございます」
ギャルソンがタイミングを見計らって皿を持ってくる。
美奈ちゃんに出された皿には、小さなパイの上からブラウンのソースがかかり、レタスが添えられている。
「これがフォアグラ?」
美奈ちゃんは見た目平凡なパイをしげしげと見ている。
「いいから切ってごらん」
美奈ちゃんが慎重にナイフを動かし、一口頬ばった。
「う、うわ~ナニコレ!?」
丸い目をして口を押える美奈ちゃん。
「フォアグラは美味いだろ?」
「こんなの初めて……」
上を向き目を瞑って余韻を満喫している。
美味しい料理は感動を呼ぶよね。
俺はステーキを堪能しながら、素敵なディナーになった事をクリスと美奈ちゃんに感謝した。
「…。で、誠よ、具体的にはどう進めるんだ?」
クリスは真鯛をナイフで切りながら聞いてきた。
「まずは会社を作ろう。AIベンチャーだ。そこでAIの開発を行う。そして準備が整った所で無脳症の赤ちゃんを手に入れて繋げる」
「へ~、ベンチャー企業作るんだ! いい感じ!」
「社長は言い出しっぺの俺でいいかな? クリスと美奈ちゃんは取締役。どう?」
「わーい、やるやる!」
美奈ちゃんはフォアグラをフォークに刺したままニコニコして言う。お行儀悪いですよ、姫!
「…。いいんじゃないか? 社長」
クリスはそう言って微笑んだ。
「ありがとう。では役員3人でスタートだ。最初の仕事は資本金を集める事だな」
「…。お金か…。幾ら位集めるんだ?」
「囲碁のAIを作るのにかかったコンピューターの費用が60億円と聞いたので、少なくとも100億円は必要……なんだよね」
「100億円!? そんな天文学的なお金どうすんの!?」
美奈ちゃんが目を丸くしてこちらを見る。
「美奈取締役! 俺たちのやろうとしてるのは人類の未来を託す事業だぞ、100億円位でビビッてどうするんだ?」
「でも100億円なんて想像した事もないよ……」
一般の人にとって100億円とは一生縁のない規模の金額だ。もちろん俺もない。
「確かに100億円って1万円札にしたら1トンくらいの重さになるからなぁ」
「1トンの1万円札!? すごぉい!」
美奈ちゃんは反応がビビッドでいいね。
「…。誠よ、お金の当てはあるのか?」
「100億円となるとすぐには……。どこかの大きな企業と組まないと無理だろうな……」
一介のサラリーマンエンジニアに100億円の当てなどある訳ない……。
「修一郎よ!」
美奈ちゃんがワインをクルクルさせながら言う。
「シュウちゃんの会社に出させればいいわ! あそこ幾らでもお金あるし」
それを聞いたクリスは、ちょっと考えると美奈ちゃんに言った。
「…。なるほど、相談してみよう。修一郎君に電話してもらえるかな?」
「オッケー!」
美奈ちゃんはスマホを取り出して発信した。
「シュウちゃん? こんばんわ~。……。そうそう、フォアグラが美味しいの! でね、今すぐ銀座来て欲しいの! え? 忙しい? え~? あ、ちょっと待って、クリスに代わるね!」
「…。修一郎君、素敵なディナーをありがとう。……。そう、それは大丈夫です。で、ちょっと相談をさせて欲しくて。いや、大丈夫、いい話です。忙しい? その左手に持ってるのは何? いや、なんとなくですが。それでお父さんも一緒にお話しを。そう、お父さんは銀座にいるみたいだからぜひ一緒に。うん、そう、分かりました、では一時間後に」
詳細は聞かないが、クリスを相手にすると言うのは大変な事だよな。
皆でデザートと珈琲を堪能し、外へ出た。
会計はもちろん修一郎持ち、値段は見ると怖そうだったから見ずにサインしておいた。ごちそーさま!
街灯が煌めく銀座の街をみんなで歩く。
夜になって冷え込んできたようだ。もう夏も終わりだ。
薄手のネイビーのアウターを取り出し、ちょっと寒そうにしている美奈ちゃんにかけてあげた。
「あら、誠さん、いいの? ありがとう!」
「取締役の健康管理も社長の仕事です」
そう言って恭しく胸に手を当てて目を伏せ、執事の真似をする。
「本当に…… 私が取締役でいいの?」
ちょっと申し訳なさそうに上目遣いで言う。
「この3人はなんだか凄い良いチームだと思うんだよね。美奈ちゃんにしかできない事、沢山あると思う」
俺は本心でそう伝えた。
「ふ~ん、ただの女子大生なんだけどなっ!」
軽くピョンと飛んで嬉しそうな笑顔で俺を見る。
クリスを説得できたのも美奈ちゃんのおかげだし、美奈ちゃんには俺にとってはまさに女神。銀座の明かりを反射してキラキラ輝くピアスを見ながら、俺はこれから始まる大冒険に胸が高鳴っていた。
ギャルソンが黄金色に輝くスープを持ってきた。
「美味しそう! いただきま~す!」
美奈ちゃんがすかさずスープを口に運んだ。
「うわぁ、ナニコレ? すごぉい!」
弾んだ声が部屋に響く。ここまで喜んでくれたらシェフも嬉しいだろう。
俺も一口飲んでみる。じんわりと優しい旨味が体中に広がり、手が止まらなくなった。まるで魔法だ。どれだけこのスープには手間がかかっているのだろうか。
「ねぇクリス、誠さんのプランだけど、何かいい手はないかなぁ?」
美奈ちゃんがクリスに振ってくれる。
「…。身体を乗っ取るような事は神は望まない」
「身体貸してくれる人がいればいいんでしょ?」
「…。本人以外が身体を動かすような事はダメだ」
クリスは毅然とした態度でダメ出しをする。
だが、美奈ちゃんも健気に頑張ってくれる。
「じゃ、本人がもう居なくなってしまった身体だったら?」
「…。居ないというのはどういう?」
「例えば……脳が無い人とか……。居ないか」
この美奈ちゃんの言葉でピンときた。
「あ、居るよ居る! 無脳症という病気の赤ちゃんだ!」
「…。脳の無い赤ちゃん?」
怪訝そうなクリスにスマホで検索した画面を見せた。
「これだよこれ、生まれてくる赤ちゃんの1000人に一人は脳が無い無脳症なんだ。そしてこの病気の子の多くは堕胎される。つまり殺されちゃうんだ。この子の身体をAIが使わせてもらうというのはどうだろう?」
「…。身体は健康だが脳が無い……。そして殺されてる……。人ではない事になるのか、これは……」
クリスは悩んでしまった。
確かに勝手に身体を借りるのはダメだが、そもそも借りる以前に身体に意識が無いのだから借りる相手がそもそもない事になる。
「クリス! これならいけるんじゃない?」
美奈ちゃんが無邪気にプッシュする。
クリスは腕組みをして目を瞑ったままだ。
アコースティックギターの落ち着いた調べが部屋を満たしていた。
俺はドキドキしながらワインを飲む。
目を開けたクリスが大きくワインを呷った。
「…。やはりこういうのは良くない。自然の摂理に反している! ……ただ……人類の未来を託すという一大事業であれば……ギリギリ……許されるかもしれない……」
クリスは苦しそうな顔をしながらそう言った。
「やったー! カンパーイ!」
美奈ちゃんが無邪気にはしゃいでワイングラスをぶつけてくる。
俺はホッとしてすぐには声が出なかったが、グラスを合わせる。
クリスもまだ思案を続けている様ではあったが、乾杯に応じてくれた。
次世代の地球人を作るプロジェクト、『深層後継者計画』がこの瞬間スタートする事になった。
大学時代からAIを研究しながら悶々としていた俺は、ここに新たな突破口を得たのだ。クリスとの出会いが全てを一変させてくれた。感無量である。ワインが体中に染み渡る。
「メインディッシュでございます」
ギャルソンがタイミングを見計らって皿を持ってくる。
美奈ちゃんに出された皿には、小さなパイの上からブラウンのソースがかかり、レタスが添えられている。
「これがフォアグラ?」
美奈ちゃんは見た目平凡なパイをしげしげと見ている。
「いいから切ってごらん」
美奈ちゃんが慎重にナイフを動かし、一口頬ばった。
「う、うわ~ナニコレ!?」
丸い目をして口を押える美奈ちゃん。
「フォアグラは美味いだろ?」
「こんなの初めて……」
上を向き目を瞑って余韻を満喫している。
美味しい料理は感動を呼ぶよね。
俺はステーキを堪能しながら、素敵なディナーになった事をクリスと美奈ちゃんに感謝した。
「…。で、誠よ、具体的にはどう進めるんだ?」
クリスは真鯛をナイフで切りながら聞いてきた。
「まずは会社を作ろう。AIベンチャーだ。そこでAIの開発を行う。そして準備が整った所で無脳症の赤ちゃんを手に入れて繋げる」
「へ~、ベンチャー企業作るんだ! いい感じ!」
「社長は言い出しっぺの俺でいいかな? クリスと美奈ちゃんは取締役。どう?」
「わーい、やるやる!」
美奈ちゃんはフォアグラをフォークに刺したままニコニコして言う。お行儀悪いですよ、姫!
「…。いいんじゃないか? 社長」
クリスはそう言って微笑んだ。
「ありがとう。では役員3人でスタートだ。最初の仕事は資本金を集める事だな」
「…。お金か…。幾ら位集めるんだ?」
「囲碁のAIを作るのにかかったコンピューターの費用が60億円と聞いたので、少なくとも100億円は必要……なんだよね」
「100億円!? そんな天文学的なお金どうすんの!?」
美奈ちゃんが目を丸くしてこちらを見る。
「美奈取締役! 俺たちのやろうとしてるのは人類の未来を託す事業だぞ、100億円位でビビッてどうするんだ?」
「でも100億円なんて想像した事もないよ……」
一般の人にとって100億円とは一生縁のない規模の金額だ。もちろん俺もない。
「確かに100億円って1万円札にしたら1トンくらいの重さになるからなぁ」
「1トンの1万円札!? すごぉい!」
美奈ちゃんは反応がビビッドでいいね。
「…。誠よ、お金の当てはあるのか?」
「100億円となるとすぐには……。どこかの大きな企業と組まないと無理だろうな……」
一介のサラリーマンエンジニアに100億円の当てなどある訳ない……。
「修一郎よ!」
美奈ちゃんがワインをクルクルさせながら言う。
「シュウちゃんの会社に出させればいいわ! あそこ幾らでもお金あるし」
それを聞いたクリスは、ちょっと考えると美奈ちゃんに言った。
「…。なるほど、相談してみよう。修一郎君に電話してもらえるかな?」
「オッケー!」
美奈ちゃんはスマホを取り出して発信した。
「シュウちゃん? こんばんわ~。……。そうそう、フォアグラが美味しいの! でね、今すぐ銀座来て欲しいの! え? 忙しい? え~? あ、ちょっと待って、クリスに代わるね!」
「…。修一郎君、素敵なディナーをありがとう。……。そう、それは大丈夫です。で、ちょっと相談をさせて欲しくて。いや、大丈夫、いい話です。忙しい? その左手に持ってるのは何? いや、なんとなくですが。それでお父さんも一緒にお話しを。そう、お父さんは銀座にいるみたいだからぜひ一緒に。うん、そう、分かりました、では一時間後に」
詳細は聞かないが、クリスを相手にすると言うのは大変な事だよな。
皆でデザートと珈琲を堪能し、外へ出た。
会計はもちろん修一郎持ち、値段は見ると怖そうだったから見ずにサインしておいた。ごちそーさま!
街灯が煌めく銀座の街をみんなで歩く。
夜になって冷え込んできたようだ。もう夏も終わりだ。
薄手のネイビーのアウターを取り出し、ちょっと寒そうにしている美奈ちゃんにかけてあげた。
「あら、誠さん、いいの? ありがとう!」
「取締役の健康管理も社長の仕事です」
そう言って恭しく胸に手を当てて目を伏せ、執事の真似をする。
「本当に…… 私が取締役でいいの?」
ちょっと申し訳なさそうに上目遣いで言う。
「この3人はなんだか凄い良いチームだと思うんだよね。美奈ちゃんにしかできない事、沢山あると思う」
俺は本心でそう伝えた。
「ふ~ん、ただの女子大生なんだけどなっ!」
軽くピョンと飛んで嬉しそうな笑顔で俺を見る。
クリスを説得できたのも美奈ちゃんのおかげだし、美奈ちゃんには俺にとってはまさに女神。銀座の明かりを反射してキラキラ輝くピアスを見ながら、俺はこれから始まる大冒険に胸が高鳴っていた。
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