問一 この三角関係の答えを求めてください。

花水木

問四



 次の日の朝。いつものように登校をしていると、隆司が後ろから話しかけてくる。

「おいっす、みな子。おはよー」

「おはよう。隆司」
  
 私ぐらいになると隆司のちょっとした変化が分かったのだが、髪や服装が整えてられており、いつもより恰好いい印象だった。

「みな子。お前に折り入って相談があるんだけどいいか?」

「うん。いいよ! 何でも聞いて」

「俺、これから前川さんにどういうアプローチをしていけばいいと思う?」

 昨日までの私ならば、こんな質問をされればすぐに固まって返答に困ってしまったりするのだろうが、今の私はもう前とは違う。

「んー、そうだな。みどりは優しくておしゃれな人が好きだって言ってたから、さり気なく何かを手伝ってあげたり、服装に気を使ったりしたらいいんじゃない?」

「ふーん、そうかわかった。てか、まじありがとな。いや、みな子は俺の恋のキューピットだな!」

 目を合わせて無邪気に微笑みかけて来る隆司に不意に心を奪われ、何とか自我を保とうと首を振って邪念を振り払い気持ちを引き締める。

「どした? みな子」

「な、なんでもない!」

「あ、わかった!」

 私の気持ちに勘づかれたのではないかと思い、神妙な面持ちで振り返る。

「俺に先越されたことを悔しがってるんだろ? 大丈夫だって、お前にだって彼氏ぐらいすぐできるって、黙ってりゃ普通に可愛いんだからさ」

「……まだ上手くいくかわかんないのに、なーに言ってんのよっ!」

 私の気持ちに気づかれていないことや、容姿を褒められたことなど、色々な感情が押し寄せて来るが、それに流されず、いつもの幼馴染ポジションとして冗談めかして隆司の背中を叩く。

「いや、大丈夫だ、きっと。みな子がこんなに応援してくれてるんだから。本当にありがとう」

 しみじみと感謝の念を伝えられると、なんだかこちらも照れくさくなって、ついつい意地悪したくなってしまう。

「あ、でも。あのハンチングは死ぬほどダサいからやめといたほうがいいよ」

「お、お前。それ、俺が初めてかぶってきた時はかっこいいって言ってたじゃんかよ!?」

「かっこいいなんて言ってないよ。ただ、個性的でいいんじゃない? って、言っただけ」

「っんだよもう。告白の時はそれかぶって行こうと思ってたのによ……」

「なら、良かったじゃない。今、本当のこと聞けといてさ」

「ったく、俺はどうしたらいいんだよ」

 本気で落ち込んでいる様子の隆司に、昔一緒に見た某ディズニー映画の動きを真似をして元気づけてあげる。

「普通でいいんじゃない? そう、今こそありのままの姿見せるのよ!」

「少しも寒くないわ。ってか?」

「うん。そのネタは時期外れだし、少し寒いけどね」

「お前、人にやらせといてひどいな」

 今朝は、ずっとそんな会話をしながら二人で登校した。

 会話の内容は大体がみどりのことばかりで、隆司は私の髪には一切触れてこなかった。
 もうきっぱり諦めたはずだったのにな。それでもたった一言だけでもいいから、隆司の口から似合ってるって言葉が欲しかった。

 だから私のことなんかが目に入らないくらい隆司は、みどりのこと好きなんだろうな。
 やっぱり髪を切ったくらいじゃ、恋の病はまだ治らないみたい……。


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