問一 この三角関係の答えを求めてください。
問三
私と隆司は帰路が全く同じなので、下校途中で出会うことが多々ある。
今日も前に一人で帰っている隆司の背中を見つけ、驚かせてやろうとそっと後ろに忍び寄り、急に声をかけてやった。
「よっ、隆司!」
「っ!? ……んだよ。みな子か」
隆司は私を見て少しだけ驚いたあと、浮かない顔をしてまた歩き出す。
「さっきから一人で何考えてんのさ?」
「別に、お前には関係ないだろ」
隆司は私なんか気にもとめず、何かを考えてる風に空を見つめ、うんうん唸りながら腕を組む。
「何よー? 教えなさいよ」
「はぁ。……まぁでも、お前にだったら、別にいいか」
私があまりにもしつこく聞くので黙秘を諦めた様子の隆司は、考えていたことを素直に白状する。
「んー? なになに気になる」
「実は俺、前川さんのことが好きなんだ。だから思い切って来週くらいにでも告白をしようと思うんだ」
私は隆司の言葉を理解出来ず……いや、理解は出来ていたのかもしれない。だが、それをすぐに受け止めることが出来ずに、その場に固まってしまう。
それはもう随分前からわかっていたことだとしても、隆司の口からだけは決して聞きたくない言葉だったからだ。
「みな子? おーい、どうしたんだ?」
「あー、う、うん。いいんじゃない。みどりは私なんかが言うのもなんだけど、凄くいい子だし。私なんかよりめっちゃくちゃ可愛いしさ」
適当なことを口走りながらも私は、涙腺に大量の涙が溜まっていくのを感じていた。
「おうっ! そうだよな。マジで応援してくれてありがとな、みな子!」
隆司の何も知らない純真無垢な笑顔に悲しくなり、私もこの気持ちをさらけ出せば楽になるのかと思い、もういっそ口に出そうかとも考える。
だが、隆司の恋を邪魔してしまうのは今一番やってはいけないことだと感じ、私はきつく口をつぐんだ。
「ごめん。私ちょっとこの後、急用を思い出しちゃったから先に帰るね」
「? おう、そうか。それじゃあまた明日な!」
「うん。……また、明日」
それから隆司のほうを一切振り返ることなく、家へと走り出す。
あのまま二人で帰っていたら多分私は、隆司に八つ当たりをしていたと思う。
この中で誰が一番悪いかっていったら、意気地が無く何もせずにダラダラとこの関係をずっと維持していた私の方なのに……。
家に帰ってから、とりあえず私は近くにある美容院へ向かう。
もう何年も切ってない髪を切るのに少し躊躇したけれど、さっきのことを思い出して吹っ切ってショートボブにしてもらった。
失恋をすると髪を切るというなんとも在り来りなことをしてみたのだが、やってみると案外気持ちが落ち着く。
今振り返ると、隆司に結局好きだという気持ちが伝えられなかったけど、こういう気持ちになれたことも大切にしたいなと思った。
コメント
水野真紀
面白いですー
僕の作品もちょっとは覗いてくれたら、、、